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ゆうゆうかんかん 悠悠閑閑

悠悠閑閑へようこそ! 当ブログはフォーチュンクエストトラパス中心サイトです。 二次小説や日記などがメインの ブログ名のまま、のんびり運営です。 よろしければどうぞ!

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《振り向いて!》



「ねぇ!笑顔が素敵な彼女!」

「・・・・・・・。」

「あのー、そこの可愛いお嬢さん。」

「・・・・・・・。」

「おいっ!方向音痴のマッパー!!」

「えぇっ!?私!?」
df7193be.jpg




























「ふん。・・・もういい。」

「え、何?ちょっとトラップー!?」

「・・・・・・・・。」

「どうしたの?用だった?」

「・・・・・・・・。」

「・・・世界一口が悪くって、ギャンブル好きのトラブルメーカーで・・・」

「・・・おめぇ、ケンカ売ってんの?」

「けど、盗賊の腕はピカイチで交渉上手、いつでも私を見つけ出してくれる、頼りになるかっこいい盗賊さん。」

「・・・なんだよ。」

「ふふ。大好きだよ!トラップ!!」

「!!なっ!おまっ・・・!?ばっ//////」


めでたし、めでたし。


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《真夜中の散歩》



満月の月明かりの中に伸びる、2人の影。
時間は夜中になっていた。さすがに、こんな時間に散歩している人はいない。
私とトラップは、お互いが聞き取れるくらいの大きさの声でしゃべっていた。
だって時間が時間だからね。
村の中を抜けて村の外に出る。私はトラップに連れられて、小高い丘に来た。


「すっごーい!月が綺麗だし、明るいね。」
そう言って私が腰を下ろすと、トラップも隣に座った。
「ん。・・・そうだな。・・・・。」
カンテラを持たずに出た私たちだったけど、お互いの顔くらいははっきり見える。そんな月明かり。
普段こんな時間に外に出ないでしょう?しかもトラップも一緒だから迷子の心配もないしね。
あははっ。
私はすっごく楽しくって、ニコニコしっぱなし。
さっきからいろいろトラップに話しかけるんだけど、・・・なんだかトラップってば変。
やけに口数が少ない。

「どうしたの?トラップ。具合悪いの?」
さっきまでは普通だったのに、一体どうしたんだろう?急に心配になってきた。
「なんでもねーよ。」
「本当に?しんどかったら、家に帰ってもいいよ?」
私が聞いても「大丈夫だから。」の一点張りだし・・・。
うーん。ま、いっか。本当にどこか悪かったら彼の事だ、ちゃんと言うだろう。

私は気を取り直して、改めて満月の夜空を見上げる。
夜空の中で満月の存在は、かなり大きく見えた。
そう言えばキットンが、「今夜は十五夜ですね。」って言ってた気がする。
ぼーっと月を見上げてる私のほっぺたに、突然何かが触れた。
びっくりして振り向くと、トラップがこっちを見つめている。
つまり私のほっぺに触れているものは、トラップの長くて綺麗な指だった。

「??トラップ・・・?」
どうしたんだろう。やっぱりトラップ、変だよね。
「・・・おめぇ、俺がこの前言った事、全然解ってねぇな。」
いきなりそんな事を言われても、なにがなんだかさっぱり解らない。
「この前・・・?」
首をかしげて考える。はて、何の事?
そんな私を見て深いため息をついたかと思うと、伸ばしたままの手をあごまで下げて、
「俺はちゃんと忠告した。忘れたおめぇが悪い。」
そう言ったかと思うと、トラップの顔がだんだん近づいてくる。
「トラ・・・?」
どうしてトラップの顔がこんなに近いんだろう・・・。
「キスしてもいいか?」

どきんっ!!

顔がボッと一気に熱くなる。
「なっ!?キス・・・って!?」
今トラップ、私に「キスしてもいいか?」って聞いたのよね!?私の聞き間違い・・・じゃないよね?
頭の中でトラップのセリフをリフレインする度に、どんどん体が熱くなる。
「イエスか、ノーか。5秒以内に返事。」
月明かりに照らされたトラップの顔は、かっこよかった。
私、トラップとキスするの?
まっすぐに私を見つめてくるトラップの瞳をまっすぐに見つめ返して、私の中から湧き上がった素直な感情。


トラップとキスしたい。


そう思った瞬間、目を閉じた。
「時間切れ。」
ふっ、と息がかかったかと思うと、次の瞬間には唇が触れていた。
あぁ。心が通ったキスってすっごく幸せなんだ。
触れた時と同じくらいの優しさで離れていった唇。
目を開けると少し不安そうなトラップの顔があった。

「大丈夫。私も同じだから。」
そう言ってにっこり笑うと、今度はさっきよりもトラップの感情が強く流れてくるキスだった。
私の中からも強く溢れ出てくるこの感情はきっと、特別な『愛しさ』なんだろう。

空に浮かんだ満月は静かに、沈み始めていた。



おしまい。


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《いつも君をフレームイン!》



倒しても倒しても、どこからか溢れ出てくる目の前の敵に集中してる時だった。

「パステル!後ろっ!!」
後ろからの叫び声に振り向きかけたその瞬間、ビシッとパチンコが命中した音が聞こえたかと思うと、
「ギュウウウウゥン!」
私の耳元で、黒トカゲ戦士の悲鳴が響く。
びっくりして振り向くと、私に恐ろしい牙を向けて、倒れこんでくるところだった。
「きゃああああー!!」
潰されるっ。
ダメだと解っていたのに、思わず目を瞑ってしまった。
その瞬間、
「ばかっ!しっかりっ目ぇ開けてろ!!」
ぐいっと腕を引かれて、倒れ掛かってくる黒トカゲ戦士から助け出してくれたのは、さっきから何度も私を叱責してくれているトラップだった。

「あ、ありがとうトラップ。」
お礼を言う私に容赦ない言葉が飛ぶ。
「お前さっきから見てりゃ、背中が隙だらけなんだよ!」
そう言いながらも、次々と襲ってくるモンスターにパチンコを打ち込んでいく。
すごいっ!!
・・・なんて、のんびり眺めてる場合じゃ無かった!私も目の前の敵、スネークフライに集中する。
トラップと背中合わせになりながら敵を倒していく。

すると突然、背中から
「つっ・・・!!」
トラップのうめき声が聞こえて慌てて振り返る。
「トラップ!?」
見ると、トラップの左頬に薄く血がにじんでいる。トラップが後ろにいなかったら、今頃私が怪我をしていただろう。
「大丈夫だから前向いとけっ!ボケッとすんな!!」
IMG_0001.jpg
























ほっ。取り合えずは大丈夫そう。
「う、うん!」
後でちゃんと手当てしてあげるからね!
そう心の中で叫びながら再び、正面を向いた私を横目で確認したトラップは、
「ったく。頼むぜ?パステル、俺の背中おめぇに預けるからな!」
と言って、彼も目の前の敵を睨み付けた。
「うん!任せといて!!」
勢いよく言った私の言葉に、背中ごしでトラップが笑っているのがわかった。



おしまい。


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《おちょこみょーり》



パステルの食事も終わって俺達は、男同士で固まっていろんな話をしていたところだった。
女同士の輪から一人こっちに向かって来たやつがいた。
ルーミィだ。
「ねぇ、とりゃーに聞きたいことがあるんら。」
「俺に聞きたい事?」
改まってどうしたんだ、こいつ。
そう思いながらもルーミィに目線を合わせる。

「とりゃー!『おちょこみょーり』ってなんらぁ?」
「はあぁぁ!?おちょこぉー???」
チビすけの訳のわからん質問に、思わず眉をしかめる。
「ちーあーうー!お、ちょ、こ!」
・・・だから何なんだよ、おちょこって。
俺がさっぱり理解して無いのが解ったんだろう。
ルーミィは腰に手を当ててキッと俺を睨んでる。
・・・・・・こいつ、将来すっげぇ気の強い女になりそうだな・・・。俺の勘はきっと当たるはずだ。

「とりゃーはぜんぜん、わかってないんら!ぱぁーるぅとるーみぃはおんにゃのこで、とりゃーはおちょこのこでしょ!?」
パステルとこいつがおんにゃのこ・・・?あぁっ!女の子か!?ってことはおちょこじゃなくて男、だな。
怒って膨れたほっぺを、むにぃーと引っ張りながら
「ばーか。おちょこじゃねぇよ。お、と、こ、だろ!?」
ルーミィの舌ったらずな言い方に振り回されるのは毎度の事だ。
言ってる事は一人前でも、やっぱりまだまだ子供なんだ。かわいいもんじゃねーか。

「ふんっだ。るーみぃバカじゃないもん!わかんないとりゃーがバカなんだもんね。」
・・・・さっき思った事は撤回してやる。やっぱ、かわいくねぇー!
「うっせーっの!ガキのくせして、どこでそんな言葉覚えてくんだよ。ったく。」
けっ。近頃のガキは口の利き方がなってねぇ。
ここは保護者として、ガツンと言ってやらねーとな。
なんて俺が考えていると、
「とりゃーがぱーるぅに、ゆってたんらおう!」
ビシッ!と、小さな手で指されてしまった。

こ、こいつ、よく見てんなぁ。恐るべしチビすけ。
「んで、おちょこ・・・じゃねぇ。男冥利がどーしたんだよ?って言うかまた、しょーもない言葉覚えやがって。一体、誰が教えたんだよ。」
男冥利なんて言葉、それこそ、こんなガキが言うことじゃねぇーつーの!
するとまた、驚きの答えが返ってきた。

「さっきね。ぱーるぅとピアスとキムがお話してたんだおう!」
ふむふむ。それは俺も知ってる。パステル曰く、ガールズトークってやつだろう。
「んで?」
「んでね。とりゃーは、おちょこみょーりにつきうってピアスがいってたんら。でもるーみぃ、おちょこみょーりって何かわかんなかったから、とりゃーに聞きに来たんら。」
「・・・・・・・・。」
はぁ!?その3人の会話から俺が男冥利に尽きる、っつう結論に至った過程がさっぱりわからねぇ。
なぜなら、俺には一切自覚がない!

「・・・・なあ、ルーミィ。男冥利に尽きるって言う前は、3人で何の話をしてたんだ?」
話の内容が気になる。俄然、気になる。
「えーっとね。キムがとりゃーみたいなゆーしゅーなシーフが一緒で、ぱーるぅにいいねって言ったんら。」
ほっほう。さすがキム、わかってんじゃねぇか。
「しょしたら、ぱーるぅがとりゃーはとりゃぶるメーカーで、口はわるいし、ぎゃんぶる好きだし、ねおきも悪いって言った。」
・・・あいつ。俺の悪口ばっかじゃねーか!くそっー!!
「んで、ちゅぎにキムがぱーるぅに、とりゃーのいいとこぜんぜんわかってないって怒ったんらけど、それを聞いたぱーるぅも、キムにおこっちゃったんだおう。」
んんん???それって・・・・
「そしたらピアスが、とりゃーはおちょこみょーりにつきうってわらったんら。」
もはや、今の俺にルーミィの言葉は、あまり聞こえてなかった。

多分、キムは諸手をあげて俺を褒めたんだろう。
確かにキムが俺のことを気に入ってくれてるのは、俺も感じている。
そしてパステルもそれを知ってるはずだ。
パステルの事だ、俺を褒めるキムに思わず、反論してしまったんだろう。(と思いたい・・・。)
その結果、キムからは「トラップの良い所がまったく解ってない。」発言をされてカチン!ときた。
これがクレイの事ならきっと、パステルも突っかかったりせず一緒になって褒めてたに違いない。
と、言う事は、パステルは俺の事だから、むきになったと考えるのが正しい気がする。
・・・つまり、パステルが俺の事を特別に思ってる・・・と考えるのは都合良すぎるだろうか?
思わずにやけてくる口元を左手で隠す。

「とりゃー?おかおあかいけど、どーしたんかぁ?良いことあったんかぁ?」
隠しきれてねーし。・・・顔まで赤いのかよ、俺は。
ちらっと、パステルを見る。
「・・・・ルーミィ。他にパステルは何か言ってなかったか?」
何を期待してるんだ俺。
うーん。と考えてたルーミィは
「なんにもゆってなかったおう!」
と、俺に現実を突きつけてくれた。
ま、そんなもんだろう。
しゃーねぇよな。軽くため息をついてると
「で、とりゃーはクシャミ、でたんかぁ?」
・・・ルーミィの思考回路が俺にはまったく理解できねぇ。
けど、こいつの行動は褒めてやらねぇとな。よしっ。

「なーにーをー言ってるんだあぁ??」
俺が思いっきり、ルーミィのお腹をこしょばしてやると、きゃーきゃーと喜んで笑い転げるルーミィがいた。



おしまい。


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《最後に想う人》



シロからやっとの思いで降りた俺は、不安定な地面を慎重に踏みしめながら、取り合えず視界に映った木陰に体を預けた。
が、この休憩が終わっても立ち上がれる自信は一切無い。

この体の異変はなんなんだ・・・?


昨日まではなんとも無かったのに、今日パステルに起された時にはすでに体が思う様に動かなくなっていた。
最初は疲れのせいかとも思ったが、明らかにそれと違うと自覚するのにそう時間はかからなかった。


体と頭が重たい。呼吸が荒く息苦しい。食欲が無い。足元もふらつく。

そんな体を引きずって無理やりパステルたちの食事に混ざったが案の定、腹は空いているはずなのに何も食べたくなかった。
言葉少なな俺の様子にクレイは気づいたのだろう。
目で「大丈夫か?」と聞いてきたクレイに一刻を争う今、うなずき返すのが精一杯だった。
みんなに迷惑だけはかけねぇようにしよう。と心に決めて。
でも・・・

・・・やっぱあの時、素直に体の不調を訴えておけば良かったんだ。
馬鹿か俺はっ!


だけど・・・もう・・・。



後悔した時には手遅れだった。
声は無音の空気になって俺の口を通り過ぎていく。
誰かに助けを呼ぶ力は残っていない。
あいつの名前を呼ぶ力すら・・・・・・。
視界がどんどん不透明になり、喉の奥からはヒューヒューと、か細い息を吐く。
背中からは未だかつて体験した事の無い、[『死』と言う名の闇が迫って来ているのが解る。

まずい!すっげぇーまずい!
キットン!ノル!クレイ!シロ!ルーミィ!パステル!!
頼む!助けてくれっ!!


聞こえるわけのねぇ俺の叫び。
いつの間にか闇は気配だけじゃなく、実体をもって俺を飲み込み始めていた。

よく回ってねぇ頭でも根っからの現実主義は、この事実からは逃げられない事を冷静に理解している。



・・・・嫌な性格してんな俺。


じり。


にじり。


一方的に支配していく闇にただ、ただ、絶望だけを感じて。
肩、背中、足・・・


いやだ!
こんなところで死んだらあいつがどんな顔をするか、解りきってるじゃねーか!
そんな顔させたくて、ずっと一緒に居たんじゃねぇだろっ!!??



膝、腹、腕・・・


くっ・・!!
くそっ!こんな闇に飲まれてんじゃねぇよ!
なさけねぇぞ、トラップ!



かすむ視界の向こうでパステルの笑顔をかろうじて捉える。
クレイと話しているパステルの嬉しそうなまぶしい笑顔に、苦しい呼吸が幾分楽になった気がする。





・・はっはは。すっげぇーな、あいつの笑顔は。それだけで俺をこんなにも勇気付けてくれる。



胸、首・・・顎・・・



・・・でも・・・



IMG.jpg































・・・・・・・・・・わりぃ






俺・・・・ダメかもしんねぇ・・・




ははっ



・・・・っ!笑えねぇ・・・




・・・・パステ・・・ル・・・・




・・・・・・パ・・・・ス・・・・テ・・・・。



嬉しそうな笑顔のまま、こっちに歩いてくるパステルの姿を見たのが最後。
俺の頭は一気に闇へ引きずり込まれていった・・・・。





暗闇の中、ただひたすら呼び続ける名は、ひとつ。

声の無いまま、叫び続ける想いもだた、ひとつ。

もう進まぬ足で逢いに行きたい人。

指先すら上がらない腕に抱きしめたい身体。


その全てに当てはまる人物なんか、この地球上探してもひとりしかいない。


・・・なあ・・・?


パステル。


願わくは・・・・・


お願いだから・・・・


俺の願いを叶えさせてくれないか?





おしまい。


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《仮面舞踏会》




今、私達パーティはなんとキスキン国に来ている。

ついにミモザ女王とナレオが結婚する事になったお祝いの式典が開かれる事になり、「パステル達にも是非、立ち会って欲しい。」と、ミモザ姫直々にご招待を受けた私達!
もちろん旅費は向こう負担だし、美味しい料理もお腹いっぱい食べれるはず。
・・・なにより、ミモザ姫の晴れの大舞台に立ち会えることが何より嬉しい。

と言う訳で、はるばる海を越えてキスキン国まで来た私たちなんだけど。
今、想像以上のもてなしに自分達の身分をすっかり忘れてしまいそうになっている6人と1匹・・・。
おほほほほ。なーんちゃって。
でもねー、仕方ないと思うんだ。
私とルーミィは毎日どこのお嬢様!?な服を着せてもらい、男性陣もどこの国の王子様?なんて格好をさせられた挙句、呼べばすぐに飛んでくるメイドさん達。あまーいお菓子に上品な紅茶、口に入れるだけでとろけるお肉なんかを毎食食べてるんだよ!?
きっと一生分の贅沢をしてると言っても、決して言いすぎじゃないと思う。
いつものジリ貧生活を忘れて、みんな夢のような生活を送っていた。
あ。もちろん、式典の方にもきちんと参列したよ!?
すっごくロイヤルな世界に気後れしながらも、ね。



そんなお城では日替わりでさまざまなイベントが行われていて、今日はなんと仮面舞踏会が行われるらしい。

みんなの衣装は内緒なんだって!!だからルーミィの衣装も教えてもらってない。
舞踏会会場でのお楽しみってことらしい。
仮面舞踏会だもんね。相手が誰か解らないって言うのが醍醐味なんだろう。
うわぁー!すっごく楽しみ!!
ちなみに私はパステル用に、と用意された衣装を見て口をあんぐり開けてしまった・・・。



全体を占める色は光沢を帯びた黒。
その黒に良いアクセントとなっているのが、豪華な純白のレース。
ハイネックやスカート、袖などの部分にすっごくセンスよくあしらわれていて、なんて言うかシンプルなデザインなのにゴージャス!!
しかも、な、なんと!
バックは腰くらいまで大きく開いていて、前はハイネックから胸の谷間が見えそうなくらいの穴が菱形に空いていた・・・。


無理!無理!無理!ぜーったいに無理!!
こんなの着てトラップに見つかったら、爆笑されるに決まってるじゃん!!
こんなセクシーなドレス絶対着れないよぉ!!マリーナならバッチリ似合うと思うけどさー!!
持って来てくれたメイドさんに
「・・・すみません。せっかく用意していただいて、こんな事言うのは大変失礼なんですが、なにか違う衣装はありませんか?」
と、心から申し訳ないなと思いながら断っている時だった。
 
トントン。

ノックして入ってきたのはミモザ姫・・・いやミモザ女王だった。
「どうだ?パステル。わたしが用意した衣装は気に入ってもらえたか?」
ううう・・・。本人に言うのはすっごく心苦しかったけど、私は正直に言う事にした。
「せっかく用意してくださったのに、大変心苦しいのですが、あのー。私には少し大胆すぎる気がして・・・」
私の申し出を聞いてミモザ女王は怒ったりせず、にっこりと微笑んで
「ふふ。だから私が直に見立てたのだ。せっかくの仮面舞踏会、楽しんでもらいたいからな。」
大丈夫だ。パステルなら絶対に似合うぞ。と言って強引にメイド達に着替えの指示をしていくミモザ女王・・・。
あれよあれよと言う間に着飾られていった私はすでに、私じゃない気がした。
お化粧もしてもらって仕上がった私を見て、ミモザ女王はとっても満足げにうなずいた。
「うむ。やっぱり私が思っていた通りだな。よく似合っている。」
そう言うと私に仮面を手渡した。
もーこうなりゃ、ヤケクソだ。トラップにだけは絶対にバレる訳にはいかない!!!
そう心に決めて私はミモザ女王と仮面を付けて、いよいよ会場へと向かった。



豪華なシャンデリアでキラキラと輝く会場は沢山の人で埋め尽くされていて、中央ではダンスが繰り広げられていた。

ふわあぁああ!すごーい!
入り口で感動していると
「パステル・・・、口は閉じておいた方がいいと思うぞ。」
ミモザ女王に注意されて、慌てて閉じる。
おっと、あぶない、あぶない。
「じゃあパステル、仮面舞踏会楽しんでくれ。」
そう言って手を振りながらミモザ女王は、人ごみの中へと消えていった。

・・・・え。1人でどうしたらいいの???
ダンスは基本的に男性から誘うものだし・・・・。
つまり誘われなかったら、ずーっと踊れ無いわけで。
と、とりあえずパーティのみんなを探そうかな?・・・トラップ以外を。
そう思ってあたりを見回してみるけど、とてもじゃないけど、すぐには見つかりそうに無かった。
だって・・・・・みんな仮面をつけてるんだもーん!!
まったくもって誰が誰だか一切、解らない。
なんだか、迷子になった時の気持ちにすっごく似てる気がする。くすん。

浮かれた気分が少ししぼんで、端の方に行きかけたときだった。
「私と1曲、踊ってくださいませんか?」
すらりと背の高い男性が恭しく、私に手を差し伸べていた。
「わ、私ですか!?」
予想だにしていなかった突然のお誘いに、間抜けな返事をしてしまった。
ひゃー!かっこ悪るすぎるよ・・・私。
私の返事に驚いたのだろう、目をぱちくりさせて男性は
「・・・え?えっと、すみません。失礼しました。」
そう言って、そそくさとどこかに去ってしまった・・・。がーん。

自己嫌悪。すっごく落ち込む・・・。
あーあ。せっかく男性から誘われたのに、私ってなんて馬鹿なんだろう。
きっとマリーナならこんな時、にっこり微笑んで「よろこんで。」とか難なくこなしてしまうんだろうなぁ。
・・・・!!!
そうだ!これだ!
次誘われたら、にっこり笑って「よろこんで。」って言ってみよう!
そんな事を考えていたら、再び声をかけられた。

「是非、僕と踊っていただけませんか?」
仮面の向こうは優しそうな声だった。
・・・よし!上手く返事をするのよ、パステル。
意気込んで返事をしようと顔を上げると
「私とも是非!」
・・・・・え???
「次は僕と踊ってください!!」
「いや!私と踊りましょう!」
「貴女と是非、一緒に躍らせてください。」
「抜け駆けするな!」
「俺が先に目を付けてたんだぞ!」
「声をかけたのは僕が先だ!」
数名の男性が言い争っていた。

何?この状況はなんなの!?
さっきの意気込みはどこかに飛んでいってしまった。
目の前の状況に困ってしまった私にある男性から、ひとつの提案が出された。
それは私に踊る相手を選んでもらおう。と言うものだった。
私が踊りたいと思う相手の手を取る。
単純で解りやすい解決方法に全員が納得したみたいだけど、選ぶ私は大変だ。

ど、どーしよう・・・。
一体誰を選べばいいのだろう。
目の間にずらりと並べられた、私よりも大きくがっしりとした男性の手。
顔を見てもみんな仮面を付けているからみんな同じに見えるし・・・。
き、決められないよー!
いっその事全員に「ごめんなさい。」と断ろうか?それなら公平な気もするけど・・・返事としてあまりにも失礼な気もする。
     ん。
並んだ手を見て必死に悩んでいた私の目に、一つ気になる手があった。
よしっ!

「この方と踊ります。」
自分の勘を信じてその手握って選ぶと、周りからは残念そうなため息が漏れた。
ごめんなさーい!!
心の中で必死に謝る。
でも、みんな育ちがいい人ばかりなんだろう。っていうか紳士だ。
私が選んだ答えに文句を言う人は、ひとりも無かった。
私に選ばれた金髪の男性は少し驚いていたけど、次の瞬間にはにっこりと笑って、
「・・・では、あちらへ参りましょうか。」
と私の手を握ってダンスの輪へと、優しくエスコートしてくれた。


踊っている人たちの邪魔にならない場所に、私の選んだ金髪の男性と向かい合って立つ。
すると、丁寧に腰を折り、
「私をお選びくださり、ありがとうございます。では改めて、私と踊って頂けますか?」
ときれいな手を差し伸べてくれた。
私はその手を取り、にっこりと微笑んで
「もちろんよろこんで。トラップ。」
と返事を返した。


「えっ・・・・!?」
私の返事に仮面の下で、大いに驚いてくれた金髪の男性。
しばらく沈黙の後、観念したのか仮面を取って被っていたカツラを脱いだ。
「・・・なんで解ったんだよ?」
「んー。へへっ・・・内緒!」
せっかくヅラまで被ったのにっ!とか何とか言って悔しがっているトラップ。
ふふふ。実は、沢山の男性の中から選ぶ時は私も気づいてなかったんだよね。
なんとなく、目に付いた手を選んだもん。
でもね、手を握ったら解ってしまった。

あ、トラップだ。って!

トラップは脱いだカツラを、近くにいたメイドさんに預けると戻ってきた。
「メイドさん、あんなもの渡されて驚いてるよ?」
「いーんだよ。あんなかゆいもん、被ってられねー!」
・・・今まで被ってたのに。なに言ってんだか。
でも、カツラを脱いでいつもの赤毛に戻ったトラップを見て改めて思う。
トラップて、どんな服でも簡単に着こなしちゃうんだよね。
今着ているのは黒いスーツっていても、中にきちんとベストも着てすごく立派なスーツだ。
肩には黒いマントが金の止め具で止まっている。
すごくかっこいい!
ニコニコしながらトラップを見ていると
「なんだよ!?じろじろ見んじゃねーよ!」
と叱られた。っていうよりも照れてるのかな?
「衣装よく似合ってるよ。トラップが選んだの?」
「いや、ミモザ女王の目立てだって着せられた。」
「トラップも!?」
あら?もしかしてミモザ女王、私達全員の分を選んでくれたのかなぁ?
そんな事考えていると、トラップは仮面を付けながらニヤッと笑って。
「おめぇも、意外と似合ってるぜ?」
「!!!意外とってなによぉー!」
くそー!やっぱり笑われた!!
「おらおら、せっかくそんな格好してんのに、んな顔すんじゃねーよ。」
そう言うと私の手を取って、
「んじゃ、踊りますか!」
「うんっ!!」

私とトラップはダンスの輪の中へと入っていった。



******



踊り終わった後で、パーティのみんなと無事合流した私達。

・・・なんだけど、みんなボケーっと口をあけて私とトラップを見ている。
「???どーしたの?みんな。」
私達の衣装が変なのかな?
そんな心配をしているとクレイが説明してくれた。
「なんて言うか・・・、トラップとパステルはお互いパートナーですっ!て感じ・・・」
「はあぁあ?」
クレイが何を言いたいのかさっぱり解んない。
「お互いその衣装を選んだのは偶然ですか?」
キットンが聞いてくる。
「衣装?私とトラップの衣装はミモザ女王が見立ててくれて・・・ってみんなもそうじゃないの?」
みんな一斉に違う。と首を振る。
あれぇ?私とトラップの分だけってこと??
なんでだろう。
「鏡、見たら解ると思う。」
ノルが会場の壁に掛かった鏡を指差しながら言う。
恐る恐る、トラップを連れて鏡の前に二人で立ってみると。

ひゃー!!!なんだか二人並ぶと凄い迫力があった。
そう言えば、黒いドレスを着てる人って居なかった。黒いスーツの人は何人かいたと思うけどね。
みんな仮面舞踏会だからか、一段と華やかな色のドレスを着ている人が多い。
他のパーティメンバーも同じ。
つまり、私とトラップはミモザ女王に、対になっているドレスとスーツを着せられていたわけで・・・。
「やられた・・・・。」
トラップが隣で手を顔に当て呟く。
私はやられたっていうよりも、なんで私達にだけ?って感じなんだけど。

そんな二人を、生暖かい目で遠巻きに見てる他のメンバー。
「ま、あの二人で並んで立っていたら、邪魔者は絶対寄ってきませんね。」
とキットンが笑っていた。



おしまい。


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拍手[13回]

《守り抜くもの》



買い物帰りの私はルーミィと手を繋いで、楽しい会話をしながら家路についていた。
すると突然、ズールの森の方から、ドドドドドッ!!!と地響きが聞こえてきた。
何事かと思ってルーミィと振り向くと、そこには目の色を変えたモンスターたちが大量に押し寄せていた。
シルバーリーブの村は大パニックに陥っていて、逃げ惑う人々と襲い掛かるモンスターで村はめちゃくちゃだった。
あらゆる物をかじりながら進むネズミ型のモンスター・・・・チャグデスだ。
一気に胃の底が冷える。
う・・そ・・・・・・・そんな・・・。



「ぱーあるぅ!こあいよー!!」
私の手をぎゅっと握り締め、可愛い顔を恐怖に歪めたルーミィを見て我に帰る。
「ルーミィ!逃げるよ!!!」
他のパーティのメンバーは家にいるはずだった。
とにかく家まで無事に帰りつかなきゃ!!
チャグデスの行進はすぐ後ろに迫っている。
このままじゃ飲み込まれてしまう!
ルーミィだけでも絶対、助けなきゃ!!
そう決心して、ルーミィを抱きかかえようとした時だった。
8c7d9fbd.jpg




















「ぱぁーるぅうぅぅぅぅっ!!!」
ルーミィの悲鳴が聞こえて、しまった!と思ったときにはすでにルーミィの小さな手は、私から離れていた。
私とルーミィの間を、チャグデスが土煙を上げながら進んでいく。
あっという間にルーミィの頭は見えなくなってしまった・・・。
「ルーミィ        !!!!」
私の馬鹿!!何で手を離したの!?
必死にルーミィを探す私にも容赦なく襲い掛かるチャグデス。
でもそんな事はどうでもいい。
私は、小さな小さなルーミィの手を離してしまった。
何よりも一番に守ろうと心に決めていたあの手を!
「ルーミィー!!」
何度も呼び続ける。
ルーミィ!!お願いだから無事でいてっ!!!




「・・・お・・・い!」

「パ・・テ・・・!」

「起きろ!パステル!!」

バチンと耳元で音がして飛び起きる。
「・・・・へ?な・・・に・・?」
目の焦点が合わない。
でもそんな事よりも、ルーミィを助けなきゃ!!
「ルーミィ!!」
そう叫んだ私の肩は、がしっと捕まえられて動けなかった。
「パステル!落ち着けって!」
この声はトラップだ。助けにきてくれたの!?
一気にピントがあって、目の前にトラップの顔が映る。
「トラップ!!ルーミィが・・・あれ?」
頭の視界もハッキリした私は異変に気づく。
「ここどこ?」
トラップに聞くと
「どこって、おめぇの部屋だろ?」
と呆れ顔で答えられた。
本当だ。私の部屋だった。
どういうことなの?首を傾げてる私にトラップは腰を下ろして説明してくれた。

つまり、私は夢を見てたんだよね。
トラップは私の部屋から叫び声が聞こえて、様子を見に来てくれたらしい。
泣きながらうなされている私を起してくれた・・・という訳。
なんだぁ、全部夢かぁ。良かったぁ。
安堵のため息を吐く。
「トラップ起してくれて、ありがとう。」
お礼を言うと
「ふん。変な時間に寝ると夢見が悪いって言うからな。そのせいだろ。」
と彼なりの優しさをみせてくれた。
彼も解ってるんだ。
私にとってこの秋の風を感じる季節、どうしても忘れられない事があることを。

ぽろぽろぽろ。
トラップの優しさに涙がこぼれた。
「ひっく・・・ひっく・・・」
泣き出した私の背中をトラップが優しく撫でてくれる。
それだけで安心した私は、心に仕舞って置くはずだったさっきの夢の恐怖を吐露していく。
「む、村にチャグデスが来て、ひっく。・・・その行進に飲み込まれて私、ルーミィの手を離しちゃった・・。ひっく。
必死に探したけどルーミィは見つからなくて・・・守れなくて・・・あんな思い、二度としたくない!!うわぁあぁぁああ!!」
小さな子供のように泣きじゃくる私に、
「そんな時は俺も一緒に探してやるから。パステル1人で抱え切れなかったら、俺がちゃんと助けてやる。だからもう心配すんな。わかったか?」
優しいトラップの言葉に、ただただ、うんうん。と頷く。
そうだ、私が困ってる時いつも助けてくれるんだよね、トラップは。
安心したのと、泣いて疲れたのでトラップの腕の中で再び、眠りに落ちてしまった私。
次はきっと楽しい夢を見れるだろう。



おしまい。

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《99パーセント》



私がリア・ボンドの店番アルバイトから帰ってくると部屋にはトラップとルーミィがいた。
ルーミィは居たって言うよりも、寝ているといった方が正しいけどね。
「トラップ、ただいまー。」
「・・・おー。」
帰ってきた私を見もしないで、なにやら手元でカチャカチャさせている。
「それ、なにしてるの?」
「んー?」
トラップの手元を覗き込むと、へんてこな金属の塊をあっちにしたり、こっちにしたり動かしていた。
あ!なんか見たことある!
「それって知恵の輪ってやつ!?」
「そ。」
昔、近所のお兄ちゃんがやっていたのを見たことがあったけど、トラップが今やっているのは・・・凄く難しそう。
こんな知恵の輪は見たことないや。
「ねぇ、そんなの出来るの?」
純粋な疑問を口したら、
「ほい、出来た。」
見事にバラバラになった『元・知恵の輪』を見せてくれた。
「っすごーい!トラップて凄いんだね!!私も昔、もっと簡単なのをやった事があるけど一週間くらい掛かったよ!?」
一週間ずーっとガチャガチャさせたら、いきなりポロッて取れたんだよね。
結局、どうすれば取れるのかはわからないままで・・・。
なーんて話をトラップにしたら、大爆笑された。
「んじゃ、おめーにはこの知恵の輪、一生かかってもとけねーよ!」
そう言ってさっきまで解いていた知恵の輪を投げてよこした。

「・・・っ!!い、いつの間に元にもどしたのー!?」
私の手にすっぽりと収まった知恵の輪は、元の金属の塊に戻っていた・・・。
トラップは驚いている私に、ニヤッと笑って
「おめーにやるよ。ま、99パーセント解けねぇと思うけどよ。」
く、くやしーいー!
「言ったわね!?99パーセント駄目でも、あと1パーセントあるもん!絶対に解いて見せるんだから!!」
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そう意気込んだ私をびっくりした顔でしばらく見ていたトラップは、急に噴き出した。
「ぶはっ!!おまっ!どんだけ前向きなんだよ。だははははっ!本当におもしれーヤツだな。お前は。」
いつまでも笑ってるトラップをほっといて、さっそく知恵の輪に取り掛かってみる。

・・・・・・さすがに一生は掛からないよね?私・・・・。



おしまい。


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《結婚しようよ!》



昼食が終わって、パーティみんなでコーヒーを飲みながらまったりした時間を過ごしていた。

「しおちゃん、しおちゃん」
「なんデシか?ルーミィしゃん。」
なんてことは無い、いつものほのぼのとしたやり取りが聞こえてきた。
ふふふ。2人の会話って平和そのものって感じだよね。
「あのねるーみぃ、しおちゃんとけっこんしたいんだお!」

「「「「「ぶはっあっ!!!!」」」」」

みんな一斉に吹き出す。
な、なにを言い出すのこの子は!!??
「?けっこん・・・デシか??」
「うん!」
にっこにこの笑顔なルーミィと首を傾げてるシロちゃん。
「けっこんって、なんデシか?ルーミィしゃん。」
「あのね、だいしゅきなひとと、ずーっといっしょにいられることなんだおう!」
うーん・・・。一応合ってると思うけど・・・。
シロちゃんはルーミィの話をふむふむと一生懸命聞いているし、他のメンバーもなんだか、見守り体制だ。
まあとにかく、2人のあどけない可愛らしい会話に邪魔する人は居なかった。
あのトラップでさえ、黙って聞いてるもんね。

「けっこんしたら、大好きな人とずっと一緒にいれるデシか?」
「そうだおう!だからるーみぃ、しおちゃんだいすきだあら、けっこんしたいんだぁ。」
「わかったデシ!ぼくもルーミィしゃん大好きデシ!だからけっこんするデシ!!」
「やったぁー!!あいがと、しおちゃん!」
(シロもルーミィもかわいい。)
(つか、こいつら意味わかってねーだろ。)
(ま。2人がお互い良いって言いてるんだし、いいんじゃないか?)
(エルフ族とドラゴン族の結婚ですか!?)
(あらー。シロちゃんそんな約束していいの?)
みんな目でそんな会話をしていたら、
「ぱーるぅもくりぇーもとりゃーもきっとんものりゅも、みーんなけっこんするんだおう!!!」
「ぼくもみなしゃんと、けっこんしたいデシ!みんな大好きデシ!ずーっと、一緒にいたいデシ!!」
「ねー。しおちゃん。」
「はいデシ!」

みんな、ルーミィとシロちゃんにプロポーズされてしまった。
ルーミィとシロちゃんの言葉に、みんなの心が暖かくなる。
うん。その思いはきっとみんな同じだよ。
みんな2人の事が大好きだし、いつまでも一緒にいたいと思ってるよ。
幼い2人が現実を知るその時まで、『みんなで結婚』しよーね!


「私もルーミィもシロちゃんも大好きだから結婚するー!」
「よし!俺も結婚するぞ。」
「これからもよろしく。ルーミィ、シロ。」
「スグリに怒られない様に、気をつけませんとね。」
「だあら、こいつら結婚の意味わかってねぇって!」

「「「「トラップ    !!!」」」」



おしまい。

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《トラップの好きな人》



「ねぇパステル。トラップに今,好きな子がいるか聞いて来て欲しいんだけど。」

シルバーリーブに居てると、こんなお願いはしょっちゅうだ。
いつもの私なら、うんざりしながらこう言う。
「悪いけど、本人に直接確認してちょうだい。」
ってね。
昔は頼まれる度に律儀に聞いてあげてたんだけど・・・・いつからかトラップがね、答えてくれないようになった。

答えてくれないばかりか、私を睨んでくるし機嫌も一気に悪くなるんだよね。
私は聞かれた事を伝えてるだけなのによ!?
だから最近は、私もこの手の質問には関わらないようにしているんだ。
・・・けどね、今回は違った。
「えっ!?今、トラップの好きな人って言った・・・よね?」
「うん、そう。トラップの好きな人。気になってるくらいでもいいんだけど、そう言う相手がいるのか、聞いてきてくれない?」
改めて私に『お願い』をしている人に確認する。
「パステルにしか頼めなくって・・・。」
そう言って照れた様に笑ってる人物・・・。

(いや!パステル!世の中にはいろんな人がいるんだから、偏見の目で見ちゃダメよ!)
(でもトラップにそんな趣味は無いと思うし・・・。)
(ううん。他人が口出すことじゃないよね!ここはトラップに任せよう!)
そう自分に言い聞かせて
「もしも、力になれなかったらごめんね。」
と相手に謝った。
でも相手の人はニッコリ笑って、
「ううん。それはそれでもいいから、パステルからトラップに聞いてくれる事に意味があるからね。あ。もしも教えてくれなかったら名前だしてくれてもいいから。」
「あなたの名前、トラップに言ってもいいの?」
「うん。大丈夫!で、もしも『好きな人はいない』って返事だったら、告白するつもりだからってトラップに伝えて。」
じゃあ、よろしく。と言って帰っていった。


        ん。
私は、なんてトラップに伝えたらいいんだろう。
今まで通り「好きな子いてる?」なんて聞いてもきっと教えてくれないだろうし、きちんと事情を話すべき・・・?
本人も名前出していいよって言ってたもんね。
私なら、告白する前に「私、あなたが好きですよ!」なんて、とてもじゃないけど言えないけどさ。
あの人・・・よっぽど自信があるのかなあ?

私がウンウン悩んでいると、誰かが私の肩をポンポンと叩いた。

「ト、トラップー!!??」

振り返ると、悩みの張本人がいきなり立っていたからびっくり。

「んな、驚くこたぁねぇだろーが。・・・・・それより、あいつと何話してたんだ?」

ムッとした顔のトラップ。

「あいつって?」

「さっきまで、ここでしゃべってたじゃねーか。」

ああ。私の頭を悩ませてる、あの会話ね・・・。

私があれこれ悩んでも仕方ないよね、「実はね・・・」と話を切り出す事にした。

「さっきの人に、トラップに好きな人がいるか聞いて欲しいって頼まれたの。」

「はあぁ!?お前じゃなくて、俺の好きな人?あいつが?なんで?」

そんな矢継ぎ早に質問されても、私だってわかんないよー!

こっちが聞きたいくらいなのに。

「私も確認したんだよ?トラップだよね?って。でも本人はそうだって言い切るし、人の恋愛感に口出しするのも悪いかなって思って・・・引き受けちゃった。」

トラップは眉間にしわを寄せて、頭が痛いって顔をしてる。私も頭痛いよ・・・。

状況に付いていけないもん。気持ちがね。

「どうする?トラップ、なんて返事しておけばいい?」

トラップはチラッと私を見て、

「・・・他にあいつ、何も言ってなかったのか?」

ため息をつきながら、険しい顔で聞いてくる。

体中から『なんで俺なんだ?』って空気をかもし出しているし。

うんうん。解るよ、トラップの気持ち!

「えーっとね、・・・言いにくいんだけど・・・」

「・・・なんだよ。」

次の言葉を神妙な面持ちで、待ってるトラップだけど・・・相手の気持ちを伝えたら、傷つくんじゃないだろうか?

「いいから言えよ!」

気の短いトラップに急かされる。

えーい!なるようになれっ!

「実は、トラップに好きな人がいないなら、告白するって言ってたんだ。」

トラップの体がピシッ!と固まった。

そりゃそうだよね。固まるよねふつう。

「大丈夫?トラップ・・・。」

「告白って、俺に告白するって言ってたのか?あいつ。」

「えっと・・・」

あれ?どうだったっけ?告白するとは言ってたけど、『トラップに』とは言ってなかったかもしれない。

そう伝えると、いきなりトラップの表情が変わった。

さっきまでは難しい顔をしていたのに、憮然とした顔に変わっている。

「おまっ!誤解させんじゃねーよ!男に告白されたのかと思って、びびっただろーが。」

「えぇ!?なんで?彼、トラップの事が好きなんでしょ?」

そう。私に頼んできた相手は男の人で、私がよく行く図書館で司書をしてる人なんだよね。

すごく好青年って感じで、話もよく弾む相手だったから、「トラップの好きな人を・・」って言われた時の私の驚きは半端じゃなかった。

・・・んだけど、あれ?違うの?

「お前、どこまで鈍いんだよ。告白されるのは俺じゃなくって、十中八九お前だろーが。」

「えええぇえ!!??わたしー!?」

予想だにしてなかった答えに目をひん剥く。

「んじゃ、あいつに俺には好きなやつはいねぇって伝えておいてくれ。頑張れよ、パステル。」

ニヤッと笑って、意地悪な笑顔のまま私を置いて去っていくトラップ・・・。

うそでしょー!?なんで、こんな展開になるのー!?

いやだー!気が重ーい!!

1人途方に暮れていると、トラップが走って戻ってきた。
「言い忘れてた。あいつに俺が『ぶっ殺す!』って言ってたって伝えとけ。絶対伝えろよ!・・・んな悲壮な顔すんじゃねぇーよ。大丈夫だって。じゃあな。」
・・・・・・・って、全然大丈夫じゃなーい!!!
1人残された私の頭はまだ、痛いままだった・・・。



おしまい。


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