ゆうゆうかんかん 悠悠閑閑
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今回UPの二次小説、ちょっと長いです・・・。
妄想から書き上げてみると、ページ数11Pになってました。大分削ったんですけどねー。
こんな小説を前後編にするのは忍びないのですが・・・何しろ長い。
読みづらさを考慮して、分けさせてもらいました。
もしかしたら、UP後も修正入るかも知れませんが大目に見てやってください。(土下座
あ。読むたびに違って、面白いかもですよ!ね?(殴っ!!
今回前半はパーティ全員出てきます。
(あ。トラはいないんだ。・・・ま、いっか。)←え。
舞台はパステルたちの家です。後半はトラパスです。
では『つづきはこちら』からどうぞー。
今回の二次小説は、前回の『朝日と夕日と』のトラップバージョンです。
前回も、かなりの勢いだけで一気に書いたのですが、今回もそれに近いです
トラップの口調、合ってるかな???
興味ある方は下の『続きはこちら』からどうぞ!
前回も、かなりの勢いだけで一気に書いたのですが、今回もそれに近いです
トラップの口調、合ってるかな???
興味ある方は下の『続きはこちら』からどうぞ!
まだ町も人も動物達さえ起きてくる前、今だけは私だけの朝の光。
新しい朝日を浴びると、どうしてこんなにも気持ち良いんだろう?
沈んでいた胸の悩みなんか、あっという間に流れて去ってくれそうな気がする。
私はこの時間がすき。
「・・・はあぁぁぁ。」
「あにやってんだよ、こんな時間に。」
「あら?もう帰ってきたの?おかえりなさい。朝帰りさん。」
「うっせぇ。お前こそどこの年寄りだよ!いくらなんでも、早起きしすぎだろ。」
「ふぅーん。あなたは帰りが随分と遅いんじゃない?早く寝ないと今日、辛いわよー。」
「ふああぁぁ・・・。口うるさいばばあには、つきあってらんねぇー。」
「はいはい。おやすみ!トラップ。」
「ん。・・・おやすみ。」
バッタン!
扉の向こうにトラップを見送ると、さっきの私とは違う気がした。
「・・・っよし!もう一踏ん張り、書き上げるぞー!!」
うん!なんだか書けそうな気がしてきた!あと少し。頑張っろっと!
沈んでいた悩みは、いつの間にか私のちからにかわっていたみたい。
やっぱり私はこの時間がすきなんだ。
新しい朝日を浴びると、どうしてこんなにも気持ち良いんだろう?
沈んでいた胸の悩みなんか、あっという間に流れて去ってくれそうな気がする。
私はこの時間がすき。
「・・・はあぁぁぁ。」
「あにやってんだよ、こんな時間に。」
「あら?もう帰ってきたの?おかえりなさい。朝帰りさん。」
「うっせぇ。お前こそどこの年寄りだよ!いくらなんでも、早起きしすぎだろ。」
「ふぅーん。あなたは帰りが随分と遅いんじゃない?早く寝ないと今日、辛いわよー。」
「ふああぁぁ・・・。口うるさいばばあには、つきあってらんねぇー。」
「はいはい。おやすみ!トラップ。」
「ん。・・・おやすみ。」
バッタン!
扉の向こうにトラップを見送ると、さっきの私とは違う気がした。
「・・・っよし!もう一踏ん張り、書き上げるぞー!!」
うん!なんだか書けそうな気がしてきた!あと少し。頑張っろっと!
沈んでいた悩みは、いつの間にか私のちからにかわっていたみたい。
やっぱり私はこの時間がすきなんだ。
《朝日と夕日と》
まだ町も人も動物達さえ起きてくる前、今だけは私だけの朝の光。
新しい朝日を浴びると、どうしてこんなにも気持ち良いんだろう?
沈んでいた胸の悩みなんか、あっという間に流れて去ってくれそうな気がする。
私はこの時間がすき。
「・・・はあぁぁぁ。」
「あにやってんだよ、こんな時間に。」
「あら?もう帰ってきたの?おかえりなさい。朝帰りさん。」
「うっせぇ。お前こそどこの年寄りだよ!いくらなんでも、早起きしすぎだろ。」
「ふぅーん。あなたは帰りが随分と遅いんじゃない?早く寝ないと今日、辛いわよー。」
「ふああぁぁ・・・。口うるさいばばあには、つきあってらんねぇー。」
「はいはい。おやすみ!トラップ。」
「ん。・・・おやすみ。」
バッタン!
扉の向こうにトラップを見送ると、さっきの私とは違う気がした。
「・・・っよし!もう一踏ん張り、書き上げるぞー!!」
うん!なんだか書けそうな気がしてきた!
あと少し。頑張っろっと!
沈んでいた悩みは、いつの間にか私のちからにかわっていたみたい。
やっぱり私はこの時間がすきなんだ。
END
二次小説部屋に戻る
まだ町も人も動物達さえ起きてくる前、今だけは私だけの朝の光。
新しい朝日を浴びると、どうしてこんなにも気持ち良いんだろう?
沈んでいた胸の悩みなんか、あっという間に流れて去ってくれそうな気がする。
私はこの時間がすき。
「・・・はあぁぁぁ。」
「あにやってんだよ、こんな時間に。」
「あら?もう帰ってきたの?おかえりなさい。朝帰りさん。」
「うっせぇ。お前こそどこの年寄りだよ!いくらなんでも、早起きしすぎだろ。」
「ふぅーん。あなたは帰りが随分と遅いんじゃない?早く寝ないと今日、辛いわよー。」
「ふああぁぁ・・・。口うるさいばばあには、つきあってらんねぇー。」
「はいはい。おやすみ!トラップ。」
「ん。・・・おやすみ。」
バッタン!
扉の向こうにトラップを見送ると、さっきの私とは違う気がした。
「・・・っよし!もう一踏ん張り、書き上げるぞー!!」
うん!なんだか書けそうな気がしてきた!
あと少し。頑張っろっと!
沈んでいた悩みは、いつの間にか私のちからにかわっていたみたい。
やっぱり私はこの時間がすきなんだ。
END
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《朝に太陽と》
昼間はたくさんの人が行き交う、この村の大通りも、今歩いているのは俺様一人。
音と空気がどこまでも透明な朝。
まあ、そりゃそうだなと心の中でつぶやきながら、無遠慮な大きなあくびをひとつする。
ちょうど朝日が昇る時間。こんな時間に起きてるやつがいない事を、長年の経験から俺は知っている。
・・・きっと・・・あいつも今頃、幸せそうなバカ顔で寝てるはず・・・。
ちょっと、逢いたい。
そんな考えが浮かんで、一気に顔が熱くなる。
大通りから反れ、家への坂を登りきると、意外な光景が目に飛び込んできて、思わず声が漏れてしまった。
「あ?」
逢いたいと思っていた人物に、予期せず逢えた嬉しさを感じつつも、一抹の疑問が頭をよぎる。
(何やってんだよ、あいつ。こんな時間に。)
家のドアの前には普段着のままのパステルが、ぼーっと空を見上げて突っ立っていた。
(あいつ寝てないのか?・・・そういえば夕べ、続きがどうのとかって言ってたな。)
「あにやってんだよ、こんな時間に。」
「あら?もう帰ってきたの?おかえりなさい。朝帰りさん。」
「うっせぇ。お前こそどこの年寄りだよ!いくらなんでも、早起きしすぎだろ。」
「ふぅーん。あなたは帰りが随分と遅いんじゃない?早く寝ないと今日、辛いわよー。」
「ふああぁぁ・・・。口うるさいばばあには、つきあってらんねぇー。」
(あんま無理すんな。)
心の中でつぶやく俺にパステルは、ふんわり優しい笑顔で、
「はいはい。おやすみ!トラップ。」と笑った。
あぁ。俺はいつもこの笑顔に癒されるんだ。この笑顔が欲しいと思った。
思わずゆるんだ口もとを引き締め、ドアに手をかける。
「ん。・・・おやすみ。」
あえて、そっけなく返事をすると、俺はドアの向こうに隠れた。
ドキドキ騒ぐ心臓を沈めながら考える。
・・・あいつは誰かに癒されるんだろうか。・・・その『誰か』に、いつかなれたらどんなに幸せだろう。
ドアの向こうでパステルの声がする。
「・・・っよし!もう一踏ん張り、書き上げるぞー!!」
いつも前向きなパステルは、まるで、すべてを動かす太陽だと、俺は思う・・・
けど。口が裂けてもあいつには、ぜってー言わねーけどなっ!!
おしまい。
パステルver.→朝日と夕日と
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昼間はたくさんの人が行き交う、この村の大通りも、今歩いているのは俺様一人。
音と空気がどこまでも透明な朝。
まあ、そりゃそうだなと心の中でつぶやきながら、無遠慮な大きなあくびをひとつする。
ちょうど朝日が昇る時間。こんな時間に起きてるやつがいない事を、長年の経験から俺は知っている。
・・・きっと・・・あいつも今頃、幸せそうなバカ顔で寝てるはず・・・。
ちょっと、逢いたい。
そんな考えが浮かんで、一気に顔が熱くなる。
大通りから反れ、家への坂を登りきると、意外な光景が目に飛び込んできて、思わず声が漏れてしまった。
「あ?」
逢いたいと思っていた人物に、予期せず逢えた嬉しさを感じつつも、一抹の疑問が頭をよぎる。
(何やってんだよ、あいつ。こんな時間に。)
家のドアの前には普段着のままのパステルが、ぼーっと空を見上げて突っ立っていた。
(あいつ寝てないのか?・・・そういえば夕べ、続きがどうのとかって言ってたな。)
「あにやってんだよ、こんな時間に。」
「あら?もう帰ってきたの?おかえりなさい。朝帰りさん。」
「うっせぇ。お前こそどこの年寄りだよ!いくらなんでも、早起きしすぎだろ。」
「ふぅーん。あなたは帰りが随分と遅いんじゃない?早く寝ないと今日、辛いわよー。」
「ふああぁぁ・・・。口うるさいばばあには、つきあってらんねぇー。」
(あんま無理すんな。)
心の中でつぶやく俺にパステルは、ふんわり優しい笑顔で、
「はいはい。おやすみ!トラップ。」と笑った。
あぁ。俺はいつもこの笑顔に癒されるんだ。この笑顔が欲しいと思った。
思わずゆるんだ口もとを引き締め、ドアに手をかける。
「ん。・・・おやすみ。」
あえて、そっけなく返事をすると、俺はドアの向こうに隠れた。
ドキドキ騒ぐ心臓を沈めながら考える。
・・・あいつは誰かに癒されるんだろうか。・・・その『誰か』に、いつかなれたらどんなに幸せだろう。
ドアの向こうでパステルの声がする。
「・・・っよし!もう一踏ん張り、書き上げるぞー!!」
いつも前向きなパステルは、まるで、すべてを動かす太陽だと、俺は思う・・・
けど。口が裂けてもあいつには、ぜってー言わねーけどなっ!!
おしまい。
パステルver.→朝日と夕日と
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《トラップの厄日 前編》
朝日がキラキラと輝くダイニングで、私はルーミィと朝ごはんの用意の真っ最中。
焼きあがったパンがとってもいいにおい!
「おっけー。ルーミィ、じゃあ最後にこのお皿を並べてくれる?」
お願いすると、ルーミィはお皿を並べ始めてくれた。
ふふ。ルーミィは最近、よくお手伝いしてくれるの。
「ぱぁーるー。こえでいいんかぁ?」
「うん。完璧よ、ルーミィ。お手伝いありがとう。」
ルーミィの頭をよしよしと撫でてあげると、ルーミィは嬉しそうに、
「るーみぃ、おてつらいくらいできるよお!ね、しおちゃん!」
「はいデシ。ルーミィしゃんとってもえらいデシ!」
シロちゃんからも褒められて、ルーミィは腰に手を当てて「えっへん。」と言った。
うん!もうっ。かわいいなぁ。
私がもう一度頭を撫でていると、ダイニングのドアが開いて
「パステル、ルーミィ、シロ、おはよう。」と暖かい声がした。
「おはよう、クレイ。」
「おはようだおう!くれぇー!」
「おはようさんデシ。クレイしゃん。」
にっこり笑顔であいさつすると、クレイは目をつぶりながら、
「んー。おいしそうなにおい!パステルのパンは美味しいもんなー。俺、ルーミィじゃないけど、おなかぺっこぺこだよ。」
と笑った。
「あはは。ありがとう。実はね今日のパン、かなりの自信作なんだ!いっぱい作ったから、たっくさん食べてね!」
クレイは席に着きながら、さらに嬉しい事をいってくれた。
「パステルは料理も上手いし、お裁縫も出来るし、面倒見もいいから絶対にいいお嫁さんになれるよ。うん。もし俺結婚するなら、パステルみたいな人がいいな。」
な んて嬉しい事を言ってくれるんだろう!!
だって、クレイといえば町を歩けば女性みんなが振り返るほどの男前で、人望も厚くって性格もハナマル!な男性でしょ?
そんな人から「もし結婚するなら、パステルみたいな人がいい。」なんて言われたら、女冥利に尽きるわ!
うっふふー。
なんて一人でニマニマしていると、開きっぱなしのドアから声がした。
「おやおやクレイ。朝からパステルにプロポーズですか?」
ぎゃはぎゃは笑いながらキットンが入ってきた。後ろからノルも一緒だ。
「えー!?んもうっ。何寝ぼけた事いってんのよキットンは。ノル、おはよう。」
ノルはニコニコしながら「おはよう、パステル。」と返事してくれた。
「寝ぼけてるのはあなたでしょ?パステル。今のはどこをどう聞いても、プロポーズにしか聞こえませんでしたよ。ねえノル。」
食い下がってくるキットンにいきなり話を振られたノルは
「俺もパステルは、いいお嫁さんになると思うよ。」
と笑顔で言った。
なんだか褒められすぎると、背中がむずむずしてくるよね。
ゆるみっぱなしの顔が恥ずかしくって、なんでもないですよーって顔に気合をいれるんだけど・・・だめだ!口の端がピクピクしてきちゃうっ!
あーあ。だからトラップにポーカーフェイスが出来てねぇ!なんて言われるんだよねー。
と私はここまで考えて、思い当たった事を口にした。
「トラップはまだ寝てるの?」
私がトリップしている間に、私とトラップ以外全員着席していた。
ちなみにルーミィはすでにパンにかぶりついてたけどね!
「あー。あいつ昨日も遅かったみたいだしな。」
クレイはマグカップに熱々のコーヒーを注ぎながら、大方予想の付いていた答えをくれた。
「はあああぁぁ。」
んもう。またあいつを起こさないといけないのか・・・。何も予定が無い日はそのままほっといて、先に朝ごはんを食べちゃうんだけど、今日はエベリンまでピポちゃんでお出掛けするから、そうも言ってられない。
するとキットンが、
「ぎゃははっ!トラップは甘えたですね。将来、トラップと結婚した人は大変ですね。」
ねぇ。パステル。と言ってきた。
「たしかに、トラップのお嫁さんはぜ ったい大変だよね!一生あの寝起きの悪さに付き合うなんて考えられない!はげちゃうよ!!」
私が言うと、
「とりゃーがはげたらへーんなの!ね。しおちゃん。」
「そうデシね。トラップあんちゃん、はげちゃうデシ?」
我がパーティのアイドル一人と一匹が、そんな事言うもんだから、みんな想像しちゃった。
ぶぶぶっ!私もしっかり想像して。
誰かが、
「っぷ。」
と噴出したのがみんな我慢の限界。お腹を抱えて笑い転げだした。
ひ 。お、可笑しすぎるぅ!
可笑しくって涙まで出てくるよ。でもそれもみんな同じだったみたいで。
「あはははっ!ち、違うのよ、ルーミィ。はげるのはトラップじゃなくって、トラップのお嫁さんになった人よ。」
「ぎゃははははっ!パステル、それではルーミィが誤解してしまいますよ。」
キットンは短い人差し指を、チッチッチ。と動かしながら言った。
「たしかになぁ。それじゃあ、トラップのお嫁さんがはげてるって言ってるみたいだよ!パステル!」
目の端に涙を浮かべながらクレイも、ひーひー笑ってる。
「あはは。そっか、確かにそうだよね。ーんとね、トラップのお嫁さんは毎日トラップを起こさないといけないから、大変だねー。って事なのよ、わかった?」
ルーミィとシロちゃんはキョトンとしたまま、首を傾げてしまった。そりゃわかんないか!
「あーあ。面白かったぁ。」
気が済むまで笑った私に
「じゃあパステル頼むよ。」
クレイが両手を合わせて頼んでくる。
「えぇっ!?私なのー?」
「パステルが起こすのが一番被害者が少なくて済みますしね。」
キットンが聞き捨てなら無いことを、さらっと言ってのけた。
「ちょっと、キットン!私は被害に遭っても良いって言うの!?」
ぐいぐいとキットンの首をしめる。トラップもそうだけど、キットンもいつも一言いや。三言くらい多いんだもん!
私が一人憤慨してると、
「キットンはきっと、トラップを起こすのはパステルが一番上手だって言ってるんだよ。」
首をしめられたままのキットンは「まぁ。大体あってます。」なーんてほざいてたけど、ノルにそう言われたら引くしかないじゃない?
「しょーがないなー。頑張ってくるかな。」
かなり投げやりな私の決意に、四人と一匹からあたたかいエールが送られた。
続編
朝日がキラキラと輝くダイニングで、私はルーミィと朝ごはんの用意の真っ最中。
焼きあがったパンがとってもいいにおい!
「おっけー。ルーミィ、じゃあ最後にこのお皿を並べてくれる?」
お願いすると、ルーミィはお皿を並べ始めてくれた。
ふふ。ルーミィは最近、よくお手伝いしてくれるの。
「ぱぁーるー。こえでいいんかぁ?」
「うん。完璧よ、ルーミィ。お手伝いありがとう。」
ルーミィの頭をよしよしと撫でてあげると、ルーミィは嬉しそうに、
「るーみぃ、おてつらいくらいできるよお!ね、しおちゃん!」
「はいデシ。ルーミィしゃんとってもえらいデシ!」
シロちゃんからも褒められて、ルーミィは腰に手を当てて「えっへん。」と言った。
うん!もうっ。かわいいなぁ。
私がもう一度頭を撫でていると、ダイニングのドアが開いて
「パステル、ルーミィ、シロ、おはよう。」と暖かい声がした。
「おはよう、クレイ。」
「おはようだおう!くれぇー!」
「おはようさんデシ。クレイしゃん。」
にっこり笑顔であいさつすると、クレイは目をつぶりながら、
「んー。おいしそうなにおい!パステルのパンは美味しいもんなー。俺、ルーミィじゃないけど、おなかぺっこぺこだよ。」
と笑った。
「あはは。ありがとう。実はね今日のパン、かなりの自信作なんだ!いっぱい作ったから、たっくさん食べてね!」
クレイは席に着きながら、さらに嬉しい事をいってくれた。
「パステルは料理も上手いし、お裁縫も出来るし、面倒見もいいから絶対にいいお嫁さんになれるよ。うん。もし俺結婚するなら、パステルみたいな人がいいな。」
な
だって、クレイといえば町を歩けば女性みんなが振り返るほどの男前で、人望も厚くって性格もハナマル!な男性でしょ?
そんな人から「もし結婚するなら、パステルみたいな人がいい。」なんて言われたら、女冥利に尽きるわ!
うっふふー。
なんて一人でニマニマしていると、開きっぱなしのドアから声がした。
「おやおやクレイ。朝からパステルにプロポーズですか?」
ぎゃはぎゃは笑いながらキットンが入ってきた。後ろからノルも一緒だ。
「えー!?んもうっ。何寝ぼけた事いってんのよキットンは。ノル、おはよう。」
ノルはニコニコしながら「おはよう、パステル。」と返事してくれた。
「寝ぼけてるのはあなたでしょ?パステル。今のはどこをどう聞いても、プロポーズにしか聞こえませんでしたよ。ねえノル。」
食い下がってくるキットンにいきなり話を振られたノルは
「俺もパステルは、いいお嫁さんになると思うよ。」
と笑顔で言った。
なんだか褒められすぎると、背中がむずむずしてくるよね。
ゆるみっぱなしの顔が恥ずかしくって、なんでもないですよーって顔に気合をいれるんだけど・・・だめだ!口の端がピクピクしてきちゃうっ!
あーあ。だからトラップにポーカーフェイスが出来てねぇ!なんて言われるんだよねー。
と私はここまで考えて、思い当たった事を口にした。
「トラップはまだ寝てるの?」
私がトリップしている間に、私とトラップ以外全員着席していた。
ちなみにルーミィはすでにパンにかぶりついてたけどね!
「あー。あいつ昨日も遅かったみたいだしな。」
クレイはマグカップに熱々のコーヒーを注ぎながら、大方予想の付いていた答えをくれた。
「はあああぁぁ。」
んもう。またあいつを起こさないといけないのか・・・。何も予定が無い日はそのままほっといて、先に朝ごはんを食べちゃうんだけど、今日はエベリンまでピポちゃんでお出掛けするから、そうも言ってられない。
するとキットンが、
「ぎゃははっ!トラップは甘えたですね。将来、トラップと結婚した人は大変ですね。」
ねぇ。パステル。と言ってきた。
「たしかに、トラップのお嫁さんはぜ
私が言うと、
「とりゃーがはげたらへーんなの!ね。しおちゃん。」
「そうデシね。トラップあんちゃん、はげちゃうデシ?」
我がパーティのアイドル一人と一匹が、そんな事言うもんだから、みんな想像しちゃった。
ぶぶぶっ!私もしっかり想像して。
誰かが、
「っぷ。」
と噴出したのがみんな我慢の限界。お腹を抱えて笑い転げだした。
ひ
可笑しくって涙まで出てくるよ。でもそれもみんな同じだったみたいで。
「あはははっ!ち、違うのよ、ルーミィ。はげるのはトラップじゃなくって、トラップのお嫁さんになった人よ。」
「ぎゃははははっ!パステル、それではルーミィが誤解してしまいますよ。」
キットンは短い人差し指を、チッチッチ。と動かしながら言った。
「たしかになぁ。それじゃあ、トラップのお嫁さんがはげてるって言ってるみたいだよ!パステル!」
目の端に涙を浮かべながらクレイも、ひーひー笑ってる。
「あはは。そっか、確かにそうだよね。ーんとね、トラップのお嫁さんは毎日トラップを起こさないといけないから、大変だねー。って事なのよ、わかった?」
ルーミィとシロちゃんはキョトンとしたまま、首を傾げてしまった。そりゃわかんないか!
「あーあ。面白かったぁ。」
気が済むまで笑った私に
「じゃあパステル頼むよ。」
クレイが両手を合わせて頼んでくる。
「えぇっ!?私なのー?」
「パステルが起こすのが一番被害者が少なくて済みますしね。」
キットンが聞き捨てなら無いことを、さらっと言ってのけた。
「ちょっと、キットン!私は被害に遭っても良いって言うの!?」
ぐいぐいとキットンの首をしめる。トラップもそうだけど、キットンもいつも一言いや。三言くらい多いんだもん!
私が一人憤慨してると、
「キットンはきっと、トラップを起こすのはパステルが一番上手だって言ってるんだよ。」
首をしめられたままのキットンは「まぁ。大体あってます。」なーんてほざいてたけど、ノルにそう言われたら引くしかないじゃない?
「しょーがないなー。頑張ってくるかな。」
かなり投げやりな私の決意に、四人と一匹からあたたかいエールが送られた。
続編
《トラップの厄日 後編》
トントン。
ノックはしてみたけど、案の定返事は無かった。
「トラップー?入るよー。」
必要ないだろうけど、一応断ってクレイとトラップの部屋に入ると、ベットの上には大きなイモ虫が一匹・・・。
「トラップ!朝よ!起きなさーい!!」
イモ虫をゆさゆさ揺らしながら、トラップのお母さんの真似をしてみたけど、まったく起きる気配ゼロ。
仕方ない。トラップは怒るけど、この起こし方が一番手っ取り早いんだよね。
すう。と息を吸い込んでイモ虫の耳元で、思いっきり叫んだ。
「あ っ!!こんなところに、宝箱がっ!!」
「なにぃ っ!!」
ガバッと飛び起きて、あたりを見渡したトラップと、ばちっと目が合う。
とたんに輝いていた瞳は半目になり、怒りの色が浮かんでいた。
「おはよ。トラップ、朝だよ。」
出来る限り笑顔を作ってみるけど、そんなものに騙されるトラップじゃない。
「おーまーえーなー!」
いまや、完全に目がすわっている。
うわわっ。やっぱり怒っちゃた。
でも、すぐに起きないトラップが悪いんだからね!
「ほらぁ、朝だよ?今日はエベリンに行くんだから、早く朝ごはん、食べちゃってよね。」
「うっせー!俺はまだ寝みーんだよっ!しかも、その起こし方やめろって言ったよな!?人の弱みに付け込みやがって、ひきょうだぞ!くそっ。絶対起きちまうだよ・・・。」
ぶつぶつ文句を言いながら、悔しがってるトラップを見ていたら、さっきのノルの言葉を思い出した。
『トラップを起こすのは、パステルが一番上手だ。』
あれ?あの言葉はノルのお世辞だと思ってたんだけど・・・違うの?
いやいや、トラップを起こすのがいくら上手でも、なんの自慢にもならないんだけど、なんとなく嬉しかった。
「ねぇ。私って天才かも!ふふっ。トラップのお嫁さんに教えてあげなきゃ!」
「うおっ!?」
ベットからおりかけていたトラップが、いきなり後ろにひっくり返った。
「えっ!?大丈夫?トラップ?」
ベットに転がったトラップを助け起こすと、穴が開きそうなほど私を凝視したまま言った。
「・・・おめぇ、何の話してんだ?何?俺の・・・よめぇ?」
ああ、そうだよね。トラップにしたら何の話かと思うよね。
私はトラップが寝ている間の事を説明した。
・・・もちろん、はげ・・・の話は内緒だ。だって絶対っ怒るもん。
「ふーん。そういう事。」
それだけ言うと、ぷいっとあっちを向いてしまった。そんなに怒ることかなぁ?
まあ、勝手にあれこれ言っちゃったのは悪かったかも。はげの罪悪感もあって、私は早めに謝ってみた。
・・・んだけど、ちらっと一瞥しただけで、何も言わない。
フォローしようにも、どんどんドツボにはまりそうで、いい言葉も思いつかないし、どうしようか考えていると、ムスッとした声がした。
「・・・じゃあ、おめぇが一生起こせばいいんじゃね?おめぇ、俺を起こすの、上手いんだろ?」
「でえぇえぇ!?私が?一生?トラップを起こすの?なんでぇ???」
わ、私、はげたくないよぉ!
「しかもトラップのお嫁さんって事はブーツ盗賊団のおかみさんになるって事なんだよ?そんじょそこらの人には無理だと思うだけど?」
私の言い分を黙って聞いてたトラップは、
「そんじょそこらの奴には務まらねぇって、じゃあ誰だったらいいんだよ?」
あごをくいっと、上げた。続けろって事だろう。
「うーん。誰?って言われてもねー。トラップのお母さんみたいな、あんなパワフルな人みたことないもん。私、トラップのお母さんの事、本当にすごいと思うんだよね。心から尊敬してるもん。」
マリーナの話を、リールから詳しく聞いたときも、本当に素敵なお母さんだなって思った。
「だってね、あの大家族の炊事洗濯掃除や、小さい子供や動物達の世話もしてるでしょう?あと財務管理とかも大変だと思うんだ。」
ベラベラと一気に話す私の話を、ニヤニヤしながら聞いてた(怒って無いじゃん!)トラップは
「ふーん。おめぇはあのクソババァの事、そんな風に思ってたんだ?」
ク、クソババァ!?
「ま、たしかにパステルの言う通りだと俺も思うぜ?そんじょそこらの女には、まず無理だな。つーかありえねぇけど。」
きっぱり断言したトラップを見て、ちょっと驚いた。
でも考えてみれば当然なのかも。
超現実主義者な彼のことだ、自分の将来の事もちゃんと考えてるよね。
「トラップ、応援してるから、いい人見つけるんだよ!」
「はあぁっ?おめえに応援なんか絶対頼まねぇよ。大きなお世話。」
ちょっと!人の温かいエールを、秒殺踏みにじらないでよー。確かに役に立てる事なんか、無いかもしれないけどさ。
「ひどーい!」
ほっぺたを膨らまして文句を言うと、びしっと指を指された。
「つーか、おまえ、自分で自分が俺の嫁にぴったりだって言ってるの、解ってんのか?」
「はあ?」
なに寝ぼけた事言ってんの。この人は。
「誰も私が条件満たしてるなんて言って無いじゃん。」
「まぁまぁ。落ち着けって。取り合えず思い出してみそ?お前が言う、理想の条件を。」
「条件?えーだから、大人数の炊事洗濯掃除と子供や動物たちの世話が出来て、あとは財務管理だっけ?」
「だな。」
合ってる、とうなずくと
「じゃあ、質問。」
「質問?」
「そ。好きか嫌いか、でいいからな。」
なんじゃその質問・・・とか思ったけど、考える前に矢継ぎ早に質問されていく。
「料理は?」
「え?えーと、好きだよ。」
「ん。じゃあ洗濯」
「好きかな?」
「はい、掃除。」
「好き。」
「子供や動物の世話。」
「好きだよ。」
「じゃあ最後。財務管理は、ま、聞くまでもねーよな。」
「えぇ?たしかにパーティのお財布係として、任せられてるけど好きってわけじゃないよ?」
「でも出来てるじゃん。俺にはできねぇ。な?俺の言ったとおりだろ?しかも、起こすのも上手いときたら、お前条件満たした上で自分を嫁にしろって言ったも同然だろ。」
一気に体中の血液が上がってくる。
え っ!!私、も、もしかして・・・コレって!
顔を真っ赤にさせて、口をパクパクしてる私にトラップはニヤリと、
「俺、プロポーズされ・・・もが」
「うわぁああわぁあぁあ!!!!!」
恥ずかしさのあまり、両手でトラップの口を塞ぐ。
「ちょっちょっと待って!そ、それ以上言わないでっ!!!」
頭の中がグルグルして、目もグルグルしてきた。心臓はずっとパクパクしっぱなし。
グルグル、バクバク、パクパクしてる私の手を、自分の口からはずして、私にこう言った。
「俺の事嫌いか?」
絵:んこれな様
あまりにもまっすぐな瞳に脈がはねる。そんなの・・・決まってる。
「嫌いじゃない・・・よ?」
トラップの顔が近づいてくる。
うわわわっ。なに?なんなの?
「それって、俺の事・・・す・・・」
「ばっ・・・!!!ノル!押すなっ!!」
「うわぁあああ!!!」
ばったぁ ん!!
びっくりして振り返ると、そこには見慣れた顔の人垣が出来ていた。
「んなっ!?な、なにしてんのみんな!?」
でへへと笑いながらキットンが嬉しそうに、
「いやぁ、あんまりパステルが遅いもんですから、様子を見に来ただけですよ?」
と、悪びれることなく言った。
「全員で!?」
「ぐふふふ。それが、楽しそうな会話でしたから、声をかけるのが忍びなくてですね、つい。」
つい・・・。
もう、開いた口は塞がらない。開きっぱなしだ。
「き、聞いてたの !?」
「はい。おめでとうございます。」
どっかぁ ん!!
私・・・きっと壊れたんだと思う。だって全身真っ赤で瞳は涙目だし、口はずっとパクパク・・・心臓もずっとうるさい。
「パステル。」
どきんっ!
首をギギギギギギ・・・と、軋ませて振り返る。
「返事は?俺の事、好きか?」
両目から涙が溢れてきて、私の感情と共に流れ落ちていった。
「だ・・・だっ・・・だい・・・」
「「「「「「だい?」」」」」」
「っ!!!!!大嫌いに決まってるでしょ っ!!??」
脱兎の如くとはこの事だ。気が付いたら庭にいた。
溢れ出てくる涙を必死にぬぐっても、止まらない。
もう!この涙はトラップのせいだ!バカバカバカ、バカトラップ!!
大きく息を吸い込んで、思いっきり空に叫ぶ。
「絶対、大っ嫌いっ!!」
おしまい。
二次小説部屋に戻る
トントン。
ノックはしてみたけど、案の定返事は無かった。
「トラップー?入るよー。」
必要ないだろうけど、一応断ってクレイとトラップの部屋に入ると、ベットの上には大きなイモ虫が一匹・・・。
「トラップ!朝よ!起きなさーい!!」
イモ虫をゆさゆさ揺らしながら、トラップのお母さんの真似をしてみたけど、まったく起きる気配ゼロ。
仕方ない。トラップは怒るけど、この起こし方が一番手っ取り早いんだよね。
すう。と息を吸い込んでイモ虫の耳元で、思いっきり叫んだ。
「あ
「なにぃ
ガバッと飛び起きて、あたりを見渡したトラップと、ばちっと目が合う。
とたんに輝いていた瞳は半目になり、怒りの色が浮かんでいた。
「おはよ。トラップ、朝だよ。」
出来る限り笑顔を作ってみるけど、そんなものに騙されるトラップじゃない。
「おーまーえーなー!」
いまや、完全に目がすわっている。
うわわっ。やっぱり怒っちゃた。
でも、すぐに起きないトラップが悪いんだからね!
「ほらぁ、朝だよ?今日はエベリンに行くんだから、早く朝ごはん、食べちゃってよね。」
「うっせー!俺はまだ寝みーんだよっ!しかも、その起こし方やめろって言ったよな!?人の弱みに付け込みやがって、ひきょうだぞ!くそっ。絶対起きちまうだよ・・・。」
ぶつぶつ文句を言いながら、悔しがってるトラップを見ていたら、さっきのノルの言葉を思い出した。
『トラップを起こすのは、パステルが一番上手だ。』
あれ?あの言葉はノルのお世辞だと思ってたんだけど・・・違うの?
いやいや、トラップを起こすのがいくら上手でも、なんの自慢にもならないんだけど、なんとなく嬉しかった。
「ねぇ。私って天才かも!ふふっ。トラップのお嫁さんに教えてあげなきゃ!」
「うおっ!?」
ベットからおりかけていたトラップが、いきなり後ろにひっくり返った。
「えっ!?大丈夫?トラップ?」
ベットに転がったトラップを助け起こすと、穴が開きそうなほど私を凝視したまま言った。
「・・・おめぇ、何の話してんだ?何?俺の・・・よめぇ?」
ああ、そうだよね。トラップにしたら何の話かと思うよね。
私はトラップが寝ている間の事を説明した。
・・・もちろん、はげ・・・の話は内緒だ。だって絶対っ怒るもん。
「ふーん。そういう事。」
それだけ言うと、ぷいっとあっちを向いてしまった。そんなに怒ることかなぁ?
まあ、勝手にあれこれ言っちゃったのは悪かったかも。はげの罪悪感もあって、私は早めに謝ってみた。
・・・んだけど、ちらっと一瞥しただけで、何も言わない。
フォローしようにも、どんどんドツボにはまりそうで、いい言葉も思いつかないし、どうしようか考えていると、ムスッとした声がした。
「・・・じゃあ、おめぇが一生起こせばいいんじゃね?おめぇ、俺を起こすの、上手いんだろ?」
「でえぇえぇ!?私が?一生?トラップを起こすの?なんでぇ???」
わ、私、はげたくないよぉ!
「しかもトラップのお嫁さんって事はブーツ盗賊団のおかみさんになるって事なんだよ?そんじょそこらの人には無理だと思うだけど?」
私の言い分を黙って聞いてたトラップは、
「そんじょそこらの奴には務まらねぇって、じゃあ誰だったらいいんだよ?」
あごをくいっと、上げた。続けろって事だろう。
「うーん。誰?って言われてもねー。トラップのお母さんみたいな、あんなパワフルな人みたことないもん。私、トラップのお母さんの事、本当にすごいと思うんだよね。心から尊敬してるもん。」
マリーナの話を、リールから詳しく聞いたときも、本当に素敵なお母さんだなって思った。
「だってね、あの大家族の炊事洗濯掃除や、小さい子供や動物達の世話もしてるでしょう?あと財務管理とかも大変だと思うんだ。」
ベラベラと一気に話す私の話を、ニヤニヤしながら聞いてた(怒って無いじゃん!)トラップは
「ふーん。おめぇはあのクソババァの事、そんな風に思ってたんだ?」
ク、クソババァ!?
「ま、たしかにパステルの言う通りだと俺も思うぜ?そんじょそこらの女には、まず無理だな。つーかありえねぇけど。」
きっぱり断言したトラップを見て、ちょっと驚いた。
でも考えてみれば当然なのかも。
超現実主義者な彼のことだ、自分の将来の事もちゃんと考えてるよね。
「トラップ、応援してるから、いい人見つけるんだよ!」
「はあぁっ?おめえに応援なんか絶対頼まねぇよ。大きなお世話。」
ちょっと!人の温かいエールを、秒殺踏みにじらないでよー。確かに役に立てる事なんか、無いかもしれないけどさ。
「ひどーい!」
ほっぺたを膨らまして文句を言うと、びしっと指を指された。
「つーか、おまえ、自分で自分が俺の嫁にぴったりだって言ってるの、解ってんのか?」
「はあ?」
なに寝ぼけた事言ってんの。この人は。
「誰も私が条件満たしてるなんて言って無いじゃん。」
「まぁまぁ。落ち着けって。取り合えず思い出してみそ?お前が言う、理想の条件を。」
「条件?えーだから、大人数の炊事洗濯掃除と子供や動物たちの世話が出来て、あとは財務管理だっけ?」
「だな。」
合ってる、とうなずくと
「じゃあ、質問。」
「質問?」
「そ。好きか嫌いか、でいいからな。」
なんじゃその質問・・・とか思ったけど、考える前に矢継ぎ早に質問されていく。
「料理は?」
「え?えーと、好きだよ。」
「ん。じゃあ洗濯」
「好きかな?」
「はい、掃除。」
「好き。」
「子供や動物の世話。」
「好きだよ。」
「じゃあ最後。財務管理は、ま、聞くまでもねーよな。」
「えぇ?たしかにパーティのお財布係として、任せられてるけど好きってわけじゃないよ?」
「でも出来てるじゃん。俺にはできねぇ。な?俺の言ったとおりだろ?しかも、起こすのも上手いときたら、お前条件満たした上で自分を嫁にしろって言ったも同然だろ。」
一気に体中の血液が上がってくる。
え
顔を真っ赤にさせて、口をパクパクしてる私にトラップはニヤリと、
「俺、プロポーズされ・・・もが」
「うわぁああわぁあぁあ!!!!!」
恥ずかしさのあまり、両手でトラップの口を塞ぐ。
「ちょっちょっと待って!そ、それ以上言わないでっ!!!」
頭の中がグルグルして、目もグルグルしてきた。心臓はずっとパクパクしっぱなし。
グルグル、バクバク、パクパクしてる私の手を、自分の口からはずして、私にこう言った。
「俺の事嫌いか?」
絵:んこれな様
あまりにもまっすぐな瞳に脈がはねる。そんなの・・・決まってる。
「嫌いじゃない・・・よ?」
トラップの顔が近づいてくる。
うわわわっ。なに?なんなの?
「それって、俺の事・・・す・・・」
「ばっ・・・!!!ノル!押すなっ!!」
「うわぁあああ!!!」
ばったぁ
びっくりして振り返ると、そこには見慣れた顔の人垣が出来ていた。
「んなっ!?な、なにしてんのみんな!?」
でへへと笑いながらキットンが嬉しそうに、
「いやぁ、あんまりパステルが遅いもんですから、様子を見に来ただけですよ?」
と、悪びれることなく言った。
「全員で!?」
「ぐふふふ。それが、楽しそうな会話でしたから、声をかけるのが忍びなくてですね、つい。」
つい・・・。
もう、開いた口は塞がらない。開きっぱなしだ。
「き、聞いてたの
「はい。おめでとうございます。」
どっかぁ
私・・・きっと壊れたんだと思う。だって全身真っ赤で瞳は涙目だし、口はずっとパクパク・・・心臓もずっとうるさい。
「パステル。」
どきんっ!
首をギギギギギギ・・・と、軋ませて振り返る。
「返事は?俺の事、好きか?」
両目から涙が溢れてきて、私の感情と共に流れ落ちていった。
「だ・・・だっ・・・だい・・・」
「「「「「「だい?」」」」」」
「っ!!!!!大嫌いに決まってるでしょ
脱兎の如くとはこの事だ。気が付いたら庭にいた。
溢れ出てくる涙を必死にぬぐっても、止まらない。
もう!この涙はトラップのせいだ!バカバカバカ、バカトラップ!!
大きく息を吸い込んで、思いっきり空に叫ぶ。
「絶対、大っ嫌いっ!!」
おしまい。
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《冒険者カード クレイ編》
「ねぇ、クレイ。冒険者カード見せてくれない?」
「え?別にいいけど?・・・はい。」
「ありがとー!」
「でも今さら冒険者カードなんか見て、どうするんだ?」
「ほら『冒険時代』の特集コーナーで、私の小説の登場人物を一人ずつ詳しく紹介するって言ってたでしょ?まずはリーダーのクレイからになったの。」
実は、なんと私が書いている小説が、かなり人気らしいのだ!
えへへへー。嬉しいよね。私もついに、作家らしくなってきたのかなぁ。
だってね、最近ファンレターの数が以前より、グンと増えていた。
その中には読者からの質問でよく、クレイの誕生日はいつですか?とか、トラップの身長は何センチですか?なんてよく聞かれるんだよね。
そんな話を印刷屋のご主人にすると、じゃあいっその事、全員の紹介を載せてみましょう!読者もきっと喜びますよ!と、話はとんとん拍子にすすんでいった。
でも私の小説ってほぼ、ノンフィクションでしょ?主人公は私、パステルだし他のメンバーもほとんどありのまま書いている。
だから夕べみんながそろった時に、雑誌に誕生日やイラスト(私が書くから似てないかも・・・)を載せても大丈夫かって事と、身長とかを測るのに協力してほしい、簡単なインタビューもさせてね。という話をしたんだけど・・・。
「・・・クレイ、もしかして忘れてた?」
おそるおそる私が聞くと、
「あはははは。そういえば、そんなこと言ってたよな。すっかり忘れてたよ。」
ごめん、ごめん。と笑いながらクレイは、頭をポリポリと掻いた。
するとソファで一人、ゴロンと横になっていたトラップが口を挟んできた。
「けっけっけっ。クレイちゃん、もうボケちゃったんじゃねぇーの?」
「ぼけてない!」
すばやいクレイの突っ込みとこぶしが飛んだけど、トラップはもちろん、ヒョイと避けてしまった。
「んもう。トラップはちょっと黙っててよね。」
私がクレイの冒険者カードを書き写しながら、ぴしゃりと言うと、クレイの横から「けっ!」と悪態をつく声が聞こえた。
「えーっと、体力が70で、カルマが・・・うわぁ!クレイのカルマ35だって!すごーい。さすがだねー。」
私が素直に褒めると、
「そうかなぁ?特に何もしてないんだけどなぁ?」
と首をかしげた。
あはは。クレイらしいよね!こういう所がカルマ35の所以だと思うんだ。
「ふむふむ・・・で、レベルがなな、と。本当にクレイ、ここ最近一気にレベルが上がったよね。」
ほんと私たちって冒険はいろいろしているのに、なかなかレベルは上がらないんだよね・・・。
とほほほほ・・・。
「ほっほー。クレイはレベル7ですか。さすがファイターですねぇ。」
キットンが鉛筆で頭をポリポリ掻きながら、こっちを見ていった。
うわあぁ・・・、汚いなあ。もう。
「でもよー、ルーミィ以外全員レベル5なのに、なんでファイターがレベル7な訳?一番率先して戦ってんのに、おかしくね?」
フテ寝していたはずのトラップが、体を起こしてこっちを向く。
「ふむ。確かに。トラップの言う通りです。なぜでしょうか?」
キットンもトラップの意見には賛成できるけど、納得が出来ないらしく、腕を組んでウーンと唸った。
「?????」
私には意味がわからない。
「なんで不思議なの?クレイ最近、すっごく強くなったと思うよ?あ。いや、前から強かったけどね。」
「ええ。クレイが強いのはみんな知ってますよ。でもそうじゃないんです。」
「だよな。なんでだ?」
トラップとキットンの言っている意味すらわからない私に、さらに意味不明な答えを返してきた。
強いけどそうじゃない?んん?どういう事なのー!?
私の頭が軽く、パニックになっていると、クレイがため息をついて
「それはきっと、昔の俺がモンスターを倒すのを躊躇ったり、逃げてばかりだったからだよ・・・。」
どよーん。と、明らかに落ち込んでしまった。
「ク、クレイ・・・。」
うっ。落ち込んじゃったじゃないー。
なんて声をかけるべきか、私が悩んでいると、
「ぎゃははははっ!クレイそれは間違ってます。」
キットンの馬鹿笑いに頭に響く。
「私とトラップが言ってるのは、そういう事じゃ無いんですよ。クレイが不甲斐無いだめだめファイターなら、我々他のパーティーのレベルが上がるわけ無いでしょう?」
そうでしょう?と念を押されて、私もクレイもノルもあいまいにうなずいた。『だめだめファイター』ってのが気になるけど・・・。
た、確かにそうかも。だってファイターが一番に逃げたりしたら、盗賊や詩人、ましてや農夫なんてクワ放りだして逃げ出しちゃうよね・・・。
納得した風の私たちを見て、キットンは続けた。
「クレイ、あなたのレベルが低い理由はひとつ!」
びしっ!と、クレイを指差す。おぉ!どこかの探偵みたいだよ、キットン!
「それはクレイ!あなたのクエスト不在率の高さですよ!!ぎゃはははははは!!!」
「・・・・・あ。」
「ぶふうっっ!!!」
「あああっ!!なるほど!」
「うっひゃっひゃっひゃっひゃ!!」
見ると、クレイは口をポカーンと開けたまま、固まっている。
ノルは噴出し、私は思いっきり納得!トラップは案の定馬鹿ウケ。
「考えてみりゃ、解ることだよなー。うっひゃっひゃっひゃ!あー、腹いってぇ!」
「そうだよ!キットンの言うとおりだよ。ヒールニントの時はリズーにやられてお留守番だったし、JBのダンジョンではオウムだったよね!」
「ありましたねー。オウム!!」
「あぁ!あったなぁ、オウム!ひゃー。なつかしー!」
「誰のせいだ!誰の!!」
「くれー、とりさんだったおう!」
「そうデシ。オウムさんだったデシ。」
「・・・・・・・。」
「そういえば、俺の肩で寝てた・・・。」
「・・・・・・・。」
「あっはははは!クレイ、そんな顔しないでよ?ね?」
「だぁ !はらいて !」
「パーティ唯一のファイター不在で、ホワイトドラゴンとブラックドラゴンに会いに行くとか聞いた事ありませんよ!」
「そういえば、最近サラさんの奇跡の花を取りに行った時も、クレイ牢屋に捕まってて行けなかったもんね。」
「そうです!そうです!グリーンドラゴンに会った時も、クレイ不在でした!」
「うひょー!クレイちゃん不幸すぎて、俺、腹割れそーだ!」
「くれー、ふきょーすぎだおう!」
「本当デシ。クレイしゃん、かわいそうデシ。」
「・・・・・・・。」
「クレイ、囚人服の似合ってたから・・・。」
「ノル。もうこれ以上、何も言わないでくれ・・・。」
「いやー。クレイの不幸っぷりは、素晴らしいですね!ファイターのレベルは7ですが、不幸レベル30は行ってますよ。」
「レベル30って、ジュン・ケイさん並って事!?」
「レベル30!!最強じゃねーか!クレイ!!すっげぇー。」
「えー!?不幸レベル30のファイターって、強いのか弱いのかわかんないよね。あはははっ!」
もうみんな言いたい放題。
「その点我々は、ファイター抜きで3頭のドラゴンに会って無事なんですから、なんて幸運なんでしょう!!」
「「「おおおぉっ!!!」」」
「本当だー。すごいね、私達。」
「おいおい。不幸レベル30のお方を目の前にして、私達は幸運なんて言ってやるなよな。ぶっぷっぷぅ!だっせー。」
もうみんな、笑いのスイッチが入っちゃって、止まらなくなっていた。
ガタンッ!!
急に大きな音がして顔を上げると、クレイが無言で部屋を出て行ってしまった。
あーあ。怒っちゃったよね、クレイ。さすがに謝りに行かなきゃ。
そう思って椅子から立ち上がろうとすると、トラップに止められた。
「いいーって。しばらくほっといてやれよ。大丈夫、大丈夫。」
根拠ゼロの大丈夫なんですけど・・・。全然大丈夫そうじゃなかったよ?
クレイの心配よりも、新しいいたずらを思いついた顔で、トラップの顔は輝いている。
「それよりさー。パステル、雑誌に載せる時不幸レベル30って書いとけよ!」
「な!?バカ!書くわけ無いでしょ?何考えてんのよ!」
おバカな事を言うトラップにあわてて反論すると、
「いいじゃないですか。あくまでも小説の登場人物なんですから、多少のフィクションは許されると思いますよ?」
キットンに続いて、ノルまで言い出した。
「うん。まるまるその通りにしなくても、いいんじゃないかな。」
「れべうさんじゅ-う!れべうさんじゅ-う!」
「クレイしゃん、レベル30デシか?すごいデシ!」
よく解ってない1人と一匹。
「ほら、ノルもルーミィもシロも言ってるじゃねーか。作家には、ちょっとした遊び心も必要だってな。」
「何?それ。」
トラップの言い分はよくわかんないけど、たしかに多少のフィクションは面白いかも。うん。
「よし。じゃあ、書いちゃえ!」
メモ用紙に、不幸レベル30と書こうとすると、
「やめてくれ !!」
バッターン!と扉が開いて、クレイが真っ赤な顔で入ってきた。
あら。どっか行った訳じゃなかったのね。扉の向こうできいてたみたい。
「パステル!頼む!一生のお願いだから、書かないでくれっ!!」
両目に涙を浮かべながら、必死に懇願するクレイの横から、可愛い声がふたつ。
「ぱーるぅ。書かないんかぁ?」
「どうするデシ?」
「うーん、どうしようかなぁ。」
「頼む!この通りだ!パステル !!」
床に頭を擦り付け、土下座までして頼むクレイと、周りでニヤニヤ笑っているパーティ。
ぐるりと見渡して、私は決めた。
「面白いから、書いてみようかな。」
その瞬間、床に突っ伏したクレイを見て、トラップは得意げに、
「お。クレイの不幸レベルが1上がったぞ。」
「おお!それはめでたいですね。レベル31ですか。レベルアップおめでとうの歌でも歌いましょう。さあ、クレイもご一緒に。」
そう言って、キットンとトラップとルーミィとシロちゃんは、輪になって歌いだした。
「レベルアップーおめでとうー!
レベルアップーおめでとうー!
レベルアップーおめでとうぉー!
レベルアップーおめでとうー!」
1人打ちひしがれているクレイの肩をノルがポンポンと優しくたたくと、感動した様子で瞳を潤ませてクレイは、
「ノル・・・!ノルだけだ。俺の味方は!!」
ノルの手をしっかと握り返して、泣き出してしまった。そんなクレイに、ノルはいつもの優しい瞳のまま言った。
「クレイ。レベルアップ、おめでとう。」
その後クレイは一週間、パーティの誰とも口をきくことは無かった・・・。
おしまい。
戻る
「ねぇ、クレイ。冒険者カード見せてくれない?」
「え?別にいいけど?・・・はい。」
「ありがとー!」
「でも今さら冒険者カードなんか見て、どうするんだ?」
「ほら『冒険時代』の特集コーナーで、私の小説の登場人物を一人ずつ詳しく紹介するって言ってたでしょ?まずはリーダーのクレイからになったの。」
実は、なんと私が書いている小説が、かなり人気らしいのだ!
えへへへー。嬉しいよね。私もついに、作家らしくなってきたのかなぁ。
だってね、最近ファンレターの数が以前より、グンと増えていた。
その中には読者からの質問でよく、クレイの誕生日はいつですか?とか、トラップの身長は何センチですか?なんてよく聞かれるんだよね。
そんな話を印刷屋のご主人にすると、じゃあいっその事、全員の紹介を載せてみましょう!読者もきっと喜びますよ!と、話はとんとん拍子にすすんでいった。
でも私の小説ってほぼ、ノンフィクションでしょ?主人公は私、パステルだし他のメンバーもほとんどありのまま書いている。
だから夕べみんながそろった時に、雑誌に誕生日やイラスト(私が書くから似てないかも・・・)を載せても大丈夫かって事と、身長とかを測るのに協力してほしい、簡単なインタビューもさせてね。という話をしたんだけど・・・。
「・・・クレイ、もしかして忘れてた?」
おそるおそる私が聞くと、
「あはははは。そういえば、そんなこと言ってたよな。すっかり忘れてたよ。」
ごめん、ごめん。と笑いながらクレイは、頭をポリポリと掻いた。
するとソファで一人、ゴロンと横になっていたトラップが口を挟んできた。
「けっけっけっ。クレイちゃん、もうボケちゃったんじゃねぇーの?」
「ぼけてない!」
すばやいクレイの突っ込みとこぶしが飛んだけど、トラップはもちろん、ヒョイと避けてしまった。
「んもう。トラップはちょっと黙っててよね。」
私がクレイの冒険者カードを書き写しながら、ぴしゃりと言うと、クレイの横から「けっ!」と悪態をつく声が聞こえた。
「えーっと、体力が70で、カルマが・・・うわぁ!クレイのカルマ35だって!すごーい。さすがだねー。」
私が素直に褒めると、
「そうかなぁ?特に何もしてないんだけどなぁ?」
と首をかしげた。
あはは。クレイらしいよね!こういう所がカルマ35の所以だと思うんだ。
「ふむふむ・・・で、レベルがなな、と。本当にクレイ、ここ最近一気にレベルが上がったよね。」
ほんと私たちって冒険はいろいろしているのに、なかなかレベルは上がらないんだよね・・・。
とほほほほ・・・。
「ほっほー。クレイはレベル7ですか。さすがファイターですねぇ。」
キットンが鉛筆で頭をポリポリ掻きながら、こっちを見ていった。
うわあぁ・・・、汚いなあ。もう。
「でもよー、ルーミィ以外全員レベル5なのに、なんでファイターがレベル7な訳?一番率先して戦ってんのに、おかしくね?」
フテ寝していたはずのトラップが、体を起こしてこっちを向く。
「ふむ。確かに。トラップの言う通りです。なぜでしょうか?」
キットンもトラップの意見には賛成できるけど、納得が出来ないらしく、腕を組んでウーンと唸った。
「?????」
私には意味がわからない。
「なんで不思議なの?クレイ最近、すっごく強くなったと思うよ?あ。いや、前から強かったけどね。」
「ええ。クレイが強いのはみんな知ってますよ。でもそうじゃないんです。」
「だよな。なんでだ?」
トラップとキットンの言っている意味すらわからない私に、さらに意味不明な答えを返してきた。
強いけどそうじゃない?んん?どういう事なのー!?
私の頭が軽く、パニックになっていると、クレイがため息をついて
「それはきっと、昔の俺がモンスターを倒すのを躊躇ったり、逃げてばかりだったからだよ・・・。」
どよーん。と、明らかに落ち込んでしまった。
「ク、クレイ・・・。」
うっ。落ち込んじゃったじゃないー。
なんて声をかけるべきか、私が悩んでいると、
「ぎゃははははっ!クレイそれは間違ってます。」
キットンの馬鹿笑いに頭に響く。
「私とトラップが言ってるのは、そういう事じゃ無いんですよ。クレイが不甲斐無いだめだめファイターなら、我々他のパーティーのレベルが上がるわけ無いでしょう?」
そうでしょう?と念を押されて、私もクレイもノルもあいまいにうなずいた。『だめだめファイター』ってのが気になるけど・・・。
た、確かにそうかも。だってファイターが一番に逃げたりしたら、盗賊や詩人、ましてや農夫なんてクワ放りだして逃げ出しちゃうよね・・・。
納得した風の私たちを見て、キットンは続けた。
「クレイ、あなたのレベルが低い理由はひとつ!」
びしっ!と、クレイを指差す。おぉ!どこかの探偵みたいだよ、キットン!
「それはクレイ!あなたのクエスト不在率の高さですよ!!ぎゃはははははは!!!」
「・・・・・あ。」
「ぶふうっっ!!!」
「あああっ!!なるほど!」
「うっひゃっひゃっひゃっひゃ!!」
見ると、クレイは口をポカーンと開けたまま、固まっている。
ノルは噴出し、私は思いっきり納得!トラップは案の定馬鹿ウケ。
「考えてみりゃ、解ることだよなー。うっひゃっひゃっひゃ!あー、腹いってぇ!」
「そうだよ!キットンの言うとおりだよ。ヒールニントの時はリズーにやられてお留守番だったし、JBのダンジョンではオウムだったよね!」
「ありましたねー。オウム!!」
「あぁ!あったなぁ、オウム!ひゃー。なつかしー!」
「誰のせいだ!誰の!!」
「くれー、とりさんだったおう!」
「そうデシ。オウムさんだったデシ。」
「・・・・・・・。」
「そういえば、俺の肩で寝てた・・・。」
「・・・・・・・。」
「あっはははは!クレイ、そんな顔しないでよ?ね?」
「だぁ
「パーティ唯一のファイター不在で、ホワイトドラゴンとブラックドラゴンに会いに行くとか聞いた事ありませんよ!」
「そういえば、最近サラさんの奇跡の花を取りに行った時も、クレイ牢屋に捕まってて行けなかったもんね。」
「そうです!そうです!グリーンドラゴンに会った時も、クレイ不在でした!」
「うひょー!クレイちゃん不幸すぎて、俺、腹割れそーだ!」
「くれー、ふきょーすぎだおう!」
「本当デシ。クレイしゃん、かわいそうデシ。」
「・・・・・・・。」
「クレイ、囚人服の似合ってたから・・・。」
「ノル。もうこれ以上、何も言わないでくれ・・・。」
「いやー。クレイの不幸っぷりは、素晴らしいですね!ファイターのレベルは7ですが、不幸レベル30は行ってますよ。」
「レベル30って、ジュン・ケイさん並って事!?」
「レベル30!!最強じゃねーか!クレイ!!すっげぇー。」
「えー!?不幸レベル30のファイターって、強いのか弱いのかわかんないよね。あはははっ!」
もうみんな言いたい放題。
「その点我々は、ファイター抜きで3頭のドラゴンに会って無事なんですから、なんて幸運なんでしょう!!」
「「「おおおぉっ!!!」」」
「本当だー。すごいね、私達。」
「おいおい。不幸レベル30のお方を目の前にして、私達は幸運なんて言ってやるなよな。ぶっぷっぷぅ!だっせー。」
もうみんな、笑いのスイッチが入っちゃって、止まらなくなっていた。
ガタンッ!!
急に大きな音がして顔を上げると、クレイが無言で部屋を出て行ってしまった。
あーあ。怒っちゃったよね、クレイ。さすがに謝りに行かなきゃ。
そう思って椅子から立ち上がろうとすると、トラップに止められた。
「いいーって。しばらくほっといてやれよ。大丈夫、大丈夫。」
根拠ゼロの大丈夫なんですけど・・・。全然大丈夫そうじゃなかったよ?
クレイの心配よりも、新しいいたずらを思いついた顔で、トラップの顔は輝いている。
「それよりさー。パステル、雑誌に載せる時不幸レベル30って書いとけよ!」
「な!?バカ!書くわけ無いでしょ?何考えてんのよ!」
おバカな事を言うトラップにあわてて反論すると、
「いいじゃないですか。あくまでも小説の登場人物なんですから、多少のフィクションは許されると思いますよ?」
キットンに続いて、ノルまで言い出した。
「うん。まるまるその通りにしなくても、いいんじゃないかな。」
「れべうさんじゅ-う!れべうさんじゅ-う!」
「クレイしゃん、レベル30デシか?すごいデシ!」
よく解ってない1人と一匹。
「ほら、ノルもルーミィもシロも言ってるじゃねーか。作家には、ちょっとした遊び心も必要だってな。」
「何?それ。」
トラップの言い分はよくわかんないけど、たしかに多少のフィクションは面白いかも。うん。
「よし。じゃあ、書いちゃえ!」
メモ用紙に、不幸レベル30と書こうとすると、
「やめてくれ
バッターン!と扉が開いて、クレイが真っ赤な顔で入ってきた。
あら。どっか行った訳じゃなかったのね。扉の向こうできいてたみたい。
「パステル!頼む!一生のお願いだから、書かないでくれっ!!」
両目に涙を浮かべながら、必死に懇願するクレイの横から、可愛い声がふたつ。
「ぱーるぅ。書かないんかぁ?」
「どうするデシ?」
「うーん、どうしようかなぁ。」
「頼む!この通りだ!パステル
床に頭を擦り付け、土下座までして頼むクレイと、周りでニヤニヤ笑っているパーティ。
ぐるりと見渡して、私は決めた。
「面白いから、書いてみようかな。」
その瞬間、床に突っ伏したクレイを見て、トラップは得意げに、
「お。クレイの不幸レベルが1上がったぞ。」
「おお!それはめでたいですね。レベル31ですか。レベルアップおめでとうの歌でも歌いましょう。さあ、クレイもご一緒に。」
そう言って、キットンとトラップとルーミィとシロちゃんは、輪になって歌いだした。
「レベルアップーおめでとうー!
レベルアップーおめでとうー!
レベルアップーおめでとうぉー!
レベルアップーおめでとうー!」
1人打ちひしがれているクレイの肩をノルがポンポンと優しくたたくと、感動した様子で瞳を潤ませてクレイは、
「ノル・・・!ノルだけだ。俺の味方は!!」
ノルの手をしっかと握り返して、泣き出してしまった。そんなクレイに、ノルはいつもの優しい瞳のまま言った。
「クレイ。レベルアップ、おめでとう。」
その後クレイは一週間、パーティの誰とも口をきくことは無かった・・・。
おしまい。
戻る
《冒険者カード トラップ編》
あれー?
トラップってば、どこに行っちゃったんだろう。
昨日あれだけ「今日は家にいてね。」って、念を押したのにまさか、出掛けたんじゃないでしょうね!?
おっと、こんにちは。パステルです。
実は今日は、この間のクレイに引き続き、トラップの取材をさせてもらう予定なのね。
絶対、部屋で寝てるんだと思って覗いたのに、部屋はもぬけの殻。
家の中も静かだし、もしかして誰もいないのかなぁ。
下に降りてみると、話し声が聞こえてきた。
この声はキットンだ。トラップの声もする。なーんだ、ダイニングにいたのね。
ダイニングを覗くと、二人で朝ごはんを食べていたらしい。
「トラップ、ごはん食べ終わった?」
「んあ?今終わったとこ。」
コーヒーを一口飲んで、「ごっそさん。」と席を立とうとしているから慌てる。
「ちょっと待って、このままでいいから取材させてくれない?」
慌ててトラップを引き止めると、ニヤリと笑って、「1000G!」と手のひらをヒラヒラさせた。
こ、こいつはー。出された手のひらをバチンッと叩いて、
「はい。私の感謝の気持ちよ。受け取って!」
というと、
「ぎゃははは。それは受け取っとかないと後悔しますね。1000G以上の価値がありますよ。トラップには。」
キットンは笑いながら「感謝は余計ですけどねー。」と言った。
どう言う事?感謝の気持ちがいらないって事?私1人が首をかしげていると、
「・・・ふん。で、するならちゃっちゃとインタビューしろよ。しねえなら、俺は寝るぞ。」
なんてトラップが言うもんだから、また慌てる。
「します。やりますとも!」
改めて3人席に着く。何でキットンも座ってるのか解らないけど・・・ま、邪魔しないならいいや。
「じゃあ早速、冒険者カード見せてくれる?」
私がお願いすると、首にさげていた冒険者カードを投げてよこした。
「えーっと、職業は盗賊・・・」
「おまっ!ばっかじゃねぇーの?そんなの見なくってもわかんだろーが!」
あったま悪いんじゃねぇ?なんて言いながら、人差し指を頭の横でくるくる回してパアにした。
カチン!こいつはバカにしよって!
「あのねー。一応確認してるの!もしかしたらあんたの事だから、盗賊兼ギャンブラーとかになってるかもしれないでしょ!?」
もちろん冗談のつもりだけど、トラップならありえるかもしれない。
「ぶっはははは!パステル、それより盗賊兼トラブルメーカーなんてどうですか?」
「いい!いいね、それ!ぴったりだよ!」
私とキットンが二人で盛り上がっていると、
「お前と一緒にすんじゃねぇー!」と、ポカリと叩かれた。
「いったーい。もう。叩かなくてもいいでしょー?でもさぁ、もしもあと一つ職業が選べるんだったら、トラップは何がいい?」
思わず興味が沸いてトラップに聞くと、きっぱりと言われた。
「ない。」
あまりの即答に思わず聞き返す。
「え?ないの?何にも?」
「ああ。ないな。」
何度聞いても、無いと答えるトラップに私はびっくりした。
私だったらやりたい職業いっぱいあるのになぁ。
魔法使いとかレンジャーなんかもカッコイイよね。ま、あくまでも『出来るなら』が大前提だけどね。
でもトラップは盗賊以外になりたいものは無いという。
それって、凄いことなんじゃ・・・。
「ねぇ、本当にないの?例えば魔法使いとかさ。」
しつこく確認すると案の定、しつこいぞと言う顔をされた。
「ないったらない。俺の職業は今までもこれからも盗賊だけだ。一人前の盗賊になる為なら、どんな辛い修行にも耐えてやる。この仕事では誰にも負けたくねぇからな。俺はこの仕事が好きで、誇りを持ってやってる。だから他のものに手ぇ出す余裕なんかねぇよ。おめぇも知ってるだろ?」
「「・・・・・・・・。」」
私もキットンも、トラップの言葉に感動していた。
「・・・すごいっ!トラップかっこいいよ!私感動しちゃった!」
「私もです。トラップの言葉なんかに、鳥肌が立ってしまいました。」
「トラップの言葉なんかにってどう言う事だよ!?」
次はキットンがボカッと殴られる番だった。でもあれ、きっと照れ隠しだよね。ふふ。
でもね、私は本当に感動した反面、自分のことが凄く恥ずかしくなって、下を向いてしまった・・・。
なんとなく、トラップに合わせる顔が無い気がして。
だって自分の仕事もちゃんと出来て無いのに、あれやりたい、これやりたいとか思ってたわけでしょ?私は。
トラップみたいな真剣さが私には、全然足りてない証拠だ。
詩人もマッパーもクロスボウだって、もっと努力するべき所が沢山あるのに目移りばかりしてるなんて、とても今の仕事を一生懸命頑張ってます!なんて口が裂けてもトラップには言えないよね・・・・。
まずは自分のするべき事をきちんとしてからだ。ってトラップに言われた気がする。
やっぱり凄いなトラップは。
私もいつかトラップの様に「私の職業は詩人兼マッパーです!」って言えるようになりたいと思った。
うん。今から頑張っても遅くないよね。最近、マッピングの勉強もおろそかだったし、またトラップに付き合ってもらおう。文句は言われるかもしれないけどね。
そう心に決めて顔を上げると、トラップと目が合った。
一瞬、驚いた顔をしたトラップだけど、次の瞬間には、ニッ。と笑っていた。
なんだろ・・・。私の思考が完全に読まれてる気がするんですけど・・・?
なんかくやしいなぁ。あの笑顔、「お前、単純だな。」って言われてる気がする。
くそー。どうせ単純ですよーだ!
いーだ!私がそんな顔をしていると、
「ぶっ。お前魔法使いになりたいのかよ。」
と笑われた。
きぃ !くーやーしーいー!
顔を真っ赤にさせて
「いいじゃん、別に夢見るくらい!トラップも魔法使えたらいいな、とか思うでしょ?」
必死に反論すると、
「俺、魔力あるから興味ねぇし。」
ガ ン。そうだった、魔力あるんだよねトラップには。
この間もマジックアイテム使ってたしいいなぁ。
くそう、羨ましいぞ!
「じゃあ、もし職業が『盗賊兼マッパー探し』だったらどうします?それでも盗賊のみだって言い切れますか?」
今まで静かだったキットンの質問に、私もトラップも思考が止まる。
ナンデスカ、ソノ職業ハ・・・。
はっと我に帰る。
「ちょっとキットン。何のなのよその職業は!?っていうか、職業じゃないでしょそれ!」
「そうでしょうか?パステル、あなたはいつも誰に助けて貰っているのですか?しかも1度や2度じゃありませんよ。これはもう、立派にトラップの仕事です。違いますか?」
ぐっ・・・!!反論できない。キットンの言ってる事は正しい。正しい・・・けど!
「ちょっと、トラップも黙ってないで何か言ってよ!そんな職業いやでしょう?」
トラップの体をゆっさゆっさ揺らすと、いきなり
「ぶっ!ぶわっはははは!!なるほどなー。キットンの言う通りだ。いいぜ俺の職業、盗賊兼マッパー探しで。」
なんて言い出すではないか!
「やだやだやだ!私かっこ悪すぎるじゃん!!」
私どれだけ迷子になってるのよ。・・・いや実際そうなんだけど、でもいやだ!
トラップもトラップだ。盗賊の仕事に誇りを持ってやってる!他には手を出さない。なんてかっこいい事言ったばかりなんだから、頑張って貫き通してよね!
しかもこの世界のどこに、好きで『マッパー探し』なんて仕事をするやつがいるのよー!?
「ではパステル、雑誌掲載時には盗賊兼マッパー探しでお願いしますよ。」
「そうだな、クレイが不幸レベル31なら、俺もそのくらいのフィクションは許してやるぜ?」
キットンもトラップもニヤニヤしながらこっちを見てる。
もうっ!せっかくトラップの事、見直したのに、前言撤回!
「あ。そうそう、大事な事を忘れるところでした。パステル、あなたの職業欄には必ず、詩人兼マッパー兼迷子と記載してくださいね。じゃないと、トラップが職にあぶれてしまいますから。」
キットンが、いかにも重大事項のように落ち着き払って言った。
トラップもウンウン、うなずいている。私はやけくそで叫んでやった。
「私の迷子は仕事じゃないもん!特技だもん!!」
このあと二人には散々バカにされたけど、なんでだろう。
トラップの職業『盗賊兼マッパー探し』が、妙に当てはまると言うか、しっくりくる気がするのは、私の気のせいなのかなぁ・・・?
おしまい。
戻る
あれー?
トラップってば、どこに行っちゃったんだろう。
昨日あれだけ「今日は家にいてね。」って、念を押したのにまさか、出掛けたんじゃないでしょうね!?
おっと、こんにちは。パステルです。
実は今日は、この間のクレイに引き続き、トラップの取材をさせてもらう予定なのね。
絶対、部屋で寝てるんだと思って覗いたのに、部屋はもぬけの殻。
家の中も静かだし、もしかして誰もいないのかなぁ。
下に降りてみると、話し声が聞こえてきた。
この声はキットンだ。トラップの声もする。なーんだ、ダイニングにいたのね。
ダイニングを覗くと、二人で朝ごはんを食べていたらしい。
「トラップ、ごはん食べ終わった?」
「んあ?今終わったとこ。」
コーヒーを一口飲んで、「ごっそさん。」と席を立とうとしているから慌てる。
「ちょっと待って、このままでいいから取材させてくれない?」
慌ててトラップを引き止めると、ニヤリと笑って、「1000G!」と手のひらをヒラヒラさせた。
こ、こいつはー。出された手のひらをバチンッと叩いて、
「はい。私の感謝の気持ちよ。受け取って!」
というと、
「ぎゃははは。それは受け取っとかないと後悔しますね。1000G以上の価値がありますよ。トラップには。」
キットンは笑いながら「感謝は余計ですけどねー。」と言った。
どう言う事?感謝の気持ちがいらないって事?私1人が首をかしげていると、
「・・・ふん。で、するならちゃっちゃとインタビューしろよ。しねえなら、俺は寝るぞ。」
なんてトラップが言うもんだから、また慌てる。
「します。やりますとも!」
改めて3人席に着く。何でキットンも座ってるのか解らないけど・・・ま、邪魔しないならいいや。
「じゃあ早速、冒険者カード見せてくれる?」
私がお願いすると、首にさげていた冒険者カードを投げてよこした。
「えーっと、職業は盗賊・・・」
「おまっ!ばっかじゃねぇーの?そんなの見なくってもわかんだろーが!」
あったま悪いんじゃねぇ?なんて言いながら、人差し指を頭の横でくるくる回してパアにした。
カチン!こいつはバカにしよって!
「あのねー。一応確認してるの!もしかしたらあんたの事だから、盗賊兼ギャンブラーとかになってるかもしれないでしょ!?」
もちろん冗談のつもりだけど、トラップならありえるかもしれない。
「ぶっはははは!パステル、それより盗賊兼トラブルメーカーなんてどうですか?」
「いい!いいね、それ!ぴったりだよ!」
私とキットンが二人で盛り上がっていると、
「お前と一緒にすんじゃねぇー!」と、ポカリと叩かれた。
「いったーい。もう。叩かなくてもいいでしょー?でもさぁ、もしもあと一つ職業が選べるんだったら、トラップは何がいい?」
思わず興味が沸いてトラップに聞くと、きっぱりと言われた。
「ない。」
あまりの即答に思わず聞き返す。
「え?ないの?何にも?」
「ああ。ないな。」
何度聞いても、無いと答えるトラップに私はびっくりした。
私だったらやりたい職業いっぱいあるのになぁ。
魔法使いとかレンジャーなんかもカッコイイよね。ま、あくまでも『出来るなら』が大前提だけどね。
でもトラップは盗賊以外になりたいものは無いという。
それって、凄いことなんじゃ・・・。
「ねぇ、本当にないの?例えば魔法使いとかさ。」
しつこく確認すると案の定、しつこいぞと言う顔をされた。
「ないったらない。俺の職業は今までもこれからも盗賊だけだ。一人前の盗賊になる為なら、どんな辛い修行にも耐えてやる。この仕事では誰にも負けたくねぇからな。俺はこの仕事が好きで、誇りを持ってやってる。だから他のものに手ぇ出す余裕なんかねぇよ。おめぇも知ってるだろ?」
「「・・・・・・・・。」」
私もキットンも、トラップの言葉に感動していた。
「・・・すごいっ!トラップかっこいいよ!私感動しちゃった!」
「私もです。トラップの言葉なんかに、鳥肌が立ってしまいました。」
「トラップの言葉なんかにってどう言う事だよ!?」
次はキットンがボカッと殴られる番だった。でもあれ、きっと照れ隠しだよね。ふふ。
でもね、私は本当に感動した反面、自分のことが凄く恥ずかしくなって、下を向いてしまった・・・。
なんとなく、トラップに合わせる顔が無い気がして。
だって自分の仕事もちゃんと出来て無いのに、あれやりたい、これやりたいとか思ってたわけでしょ?私は。
トラップみたいな真剣さが私には、全然足りてない証拠だ。
詩人もマッパーもクロスボウだって、もっと努力するべき所が沢山あるのに目移りばかりしてるなんて、とても今の仕事を一生懸命頑張ってます!なんて口が裂けてもトラップには言えないよね・・・・。
まずは自分のするべき事をきちんとしてからだ。ってトラップに言われた気がする。
やっぱり凄いなトラップは。
私もいつかトラップの様に「私の職業は詩人兼マッパーです!」って言えるようになりたいと思った。
うん。今から頑張っても遅くないよね。最近、マッピングの勉強もおろそかだったし、またトラップに付き合ってもらおう。文句は言われるかもしれないけどね。
そう心に決めて顔を上げると、トラップと目が合った。
一瞬、驚いた顔をしたトラップだけど、次の瞬間には、ニッ。と笑っていた。
なんだろ・・・。私の思考が完全に読まれてる気がするんですけど・・・?
なんかくやしいなぁ。あの笑顔、「お前、単純だな。」って言われてる気がする。
くそー。どうせ単純ですよーだ!
いーだ!私がそんな顔をしていると、
「ぶっ。お前魔法使いになりたいのかよ。」
と笑われた。
きぃ
顔を真っ赤にさせて
「いいじゃん、別に夢見るくらい!トラップも魔法使えたらいいな、とか思うでしょ?」
必死に反論すると、
「俺、魔力あるから興味ねぇし。」
ガ
この間もマジックアイテム使ってたしいいなぁ。
くそう、羨ましいぞ!
「じゃあ、もし職業が『盗賊兼マッパー探し』だったらどうします?それでも盗賊のみだって言い切れますか?」
今まで静かだったキットンの質問に、私もトラップも思考が止まる。
ナンデスカ、ソノ職業ハ・・・。
はっと我に帰る。
「ちょっとキットン。何のなのよその職業は!?っていうか、職業じゃないでしょそれ!」
「そうでしょうか?パステル、あなたはいつも誰に助けて貰っているのですか?しかも1度や2度じゃありませんよ。これはもう、立派にトラップの仕事です。違いますか?」
ぐっ・・・!!反論できない。キットンの言ってる事は正しい。正しい・・・けど!
「ちょっと、トラップも黙ってないで何か言ってよ!そんな職業いやでしょう?」
トラップの体をゆっさゆっさ揺らすと、いきなり
「ぶっ!ぶわっはははは!!なるほどなー。キットンの言う通りだ。いいぜ俺の職業、盗賊兼マッパー探しで。」
なんて言い出すではないか!
「やだやだやだ!私かっこ悪すぎるじゃん!!」
私どれだけ迷子になってるのよ。・・・いや実際そうなんだけど、でもいやだ!
トラップもトラップだ。盗賊の仕事に誇りを持ってやってる!他には手を出さない。なんてかっこいい事言ったばかりなんだから、頑張って貫き通してよね!
しかもこの世界のどこに、好きで『マッパー探し』なんて仕事をするやつがいるのよー!?
「ではパステル、雑誌掲載時には盗賊兼マッパー探しでお願いしますよ。」
「そうだな、クレイが不幸レベル31なら、俺もそのくらいのフィクションは許してやるぜ?」
キットンもトラップもニヤニヤしながらこっちを見てる。
もうっ!せっかくトラップの事、見直したのに、前言撤回!
「あ。そうそう、大事な事を忘れるところでした。パステル、あなたの職業欄には必ず、詩人兼マッパー兼迷子と記載してくださいね。じゃないと、トラップが職にあぶれてしまいますから。」
キットンが、いかにも重大事項のように落ち着き払って言った。
トラップもウンウン、うなずいている。私はやけくそで叫んでやった。
「私の迷子は仕事じゃないもん!特技だもん!!」
このあと二人には散々バカにされたけど、なんでだろう。
トラップの職業『盗賊兼マッパー探し』が、妙に当てはまると言うか、しっくりくる気がするのは、私の気のせいなのかなぁ・・・?
おしまい。
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