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ゆうゆうかんかん 悠悠閑閑

悠悠閑閑へようこそ! 当ブログはフォーチュンクエストトラパス中心サイトです。 二次小説や日記などがメインの ブログ名のまま、のんびり運営です。 よろしければどうぞ!

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お待たせいたしました!
クリスマスの日に急遽思いついたキリリク!!
3001を踏んでくださった、まるりさんのリクエストで
『トラップの数々のアタックをみごとにスルーするパステルを、キットン目線で』
愛溢れる素敵なリクエストをありがとうございました!笑
淡々と話が進むキットン目線。
書いていて結構新鮮でした。ww
まるりさん。どうぞ、お持ち帰りくださいませ!


《トラップよ大志を抱け!》


私は、ノイ・キットンと申します。
あ。ご存知でしたか。
いやぁー、私も有名になったものですねぇ!ぎゃはっはっはっは!
しかし今回は誠に残念ながら、私の話ではありません。
我がパーティの盗賊で、トラブルメーカーでもある彼の話なのです。

彼は同じパーティの詩人兼マッパーの彼女にベタ惚れなのですが、なかなか想いを伝える事が出来ずにいます。
そんな彼の一日を追ってみました。


彼はいつも、暇を見つけては彼女の元へと足繁く通っているのです。
少しでも構って欲しいのでしょうけど、彼女にしたら邪魔以外の何ものでもありません。
ほら、今日も・・・。


ノックも無しに入ってきたトラップにチラリと視線を送ったものの、パステルは視線をさっきから読んでいる『冒険時代』へと戻してしまいました。

「昼寝なら自分の部屋でしてよね。」

これは彼女の決まり文句です。
もちろん。
彼は本当に昼寝をする為だけにこの部屋を訪れている訳ではないのですが・・・。
鈍感な彼女には分かってもらえません。
「・・・昼寝じゃねぇよ。あのよー。」
「・・・・・んー?なあに?」
おやおや、パステルは顔も上げません。
きっと大した事じゃないと思っているのでしょうね。

「おめぇが一番だ!」

「へ・・・・?」
さすがのパステルも、彼からのいきなりの大胆告白に頭を上げました。
はしばみ色の大きな目をぱちくりしながら、トラップの言わんとしていることを必死に考えています。
すると突然。
ポッ。とパステルの両頬に赤みが・・・。
おや!珍しい事もあるものです。
彼の想いはちゃんと通じたみたいですよ。
頬を赤らめたまま、恥ずかしそうにでも嬉しそうな笑顔でパステルは
「・・・トラップから言って貰えるなんて思ってなかったから・・・すっごく嬉しいよ!!
ありがとう!私、これからも頑張って小説、書いていくから応援してね!」
ニコニコと本当に嬉しそうに笑うパステルの手にはさっきも言いました様に、『冒険時代』が。

違いますよ!パステル!!
小説のことじゃありません!

・・・・まぁ。物陰に隠れている私が叫んでも仕方ないのですが。
「ちげぇよ!だぁっー。もっと分かりやすくしてやるよ!」
ふむ。トラップは諦めないみたいですね。
当然でしょう。
なんせ、彼女にベタ惚れですからね!

今度はゆっくりとパステルの後ろに回り、彼女の体をぎゅっと抱きしめました。
「・・・・パステル。」
「ト、トラップ・・・?」
2人きりの部屋が一気に緊張感で包まれます。
いやー。トラップ!やりますね!
おっと。私が覗いている事はトラップには内密でお願いします。
私の個人的な趣味ですので。

パステルの顔が、さっきよりも一段と赤色に染まっていきます。
そんなパステルの体をさっきよりもぎゅっと強く抱きしめたまま、ついにトラップが口を開いて・・・
「パステル。あいし」
「ぱあぁるうぅ!!!たいへんらおうっ!!」
「て・・・・ルーミィ?」
「ルーミィ!!どうしたの!?」
・・・・バタバタと階段を降りていくパステルと、ポツンと置いてかれた一人のシーフ。
あーあ。
さっきまで彼女を抱きしめていた腕が、所在無く宙に浮かんでいます。
「くそぉー!!ルーミィのヤツ!いっつも邪魔しやがってっ!!」
いえ。ルーミィの邪魔はワザとじゃ無いと思うので、ルーミィは悪くないと思いますよ。
多分・・・・ね。


「なぁ!パステル。2人で出掛けねぇか?」
あの後も懲りずにパステルを追いかけて、ルーミィから引き剥がすと次はパステルをデートに誘っています。
きっと、誰にも邪魔されない所でゆっくり告白するつもりなのでしょうが・・・・・。
果たして、そんなに上手くいくのでしょうか?
「えっ?トラップと2人で?」
「おう!買い物でもしながらブラブラしようぜ。」
「わぁーい!!じゃあ荷物持ち、お願いね!」
「いや、そうじゃなくって・・・。」
「ありがと!トラップ。今日は重たい物を買うつもりだったからすっごく助かるよ!」
「や、だから・・・。」
「よし!じゃあ行こっか。トラップ!」
「・・・・・わぁーったよっ!」
これは完全に尻に敷かれていますね。
きっと、これから先もこの関係が崩れる事は無さそうですね。
惚れた弱みです。
トラップ、諦めてください。


おっと、2人が出掛けたみたいです。
では、気付かれないように私も後を追いたいと思います。


2人はブラブラとシルバーリーブの商店街を歩いているのですが、傍から見ればデートそのものです。
雰囲気もとてもいい感じです。
おや。パステルが足を止めて何かを見ています。
露店のアクセサリーショップで気になるものを見つけたみたいですね。
「あに見てんだよ。」
「あ、トラップ!見てこのネックレス。きれーい。」
パステルも一応、年頃の女の子ですからね。
こう言った物にも興味があるのでしょう。
それにしても、本当に2人が『デート中のカップル』にしか見えなくなってきました。
露店のお兄さんも同じだった様で、
「彼女、彼氏に買って貰ったら?すんごく似合ってるし。」
トラップを指差してパステルに笑顔で勧めています。
「ほら、彼氏も!彼女似合ってるよねー?可愛いじゃん!」
そんな店員のセールストークにパステルは
「あはははっ!全然違いますよー。彼氏なんかじゃないですから。むしろ、手のかかる弟って感じです!」
ケラケラと笑って答えています・・・・・。
ああー・・・パステル。
貴女の言っている事は正しい。
全くもって正しいのですが、そこまではっきりキッパリ言い切らなくても良いのでは無いでしょうか・・・。
彼の精神的ダメージは計り知れません。


露店の冷やかしも過ぎ、少し歩き疲れたのでしょうか猪鹿亭にお茶をしに入ったみたいです。
私も神経を使う尾行に少し疲れました。
リタに美味しいお茶の一杯でも出していただきましょう。
「いらっしゃいませー!あら、キットン!パステル達はあっちの席にいるわよ?」
「いえ。私はここの席で十分です。」
「なに?まさか・・・また尾行中なの?キットン、あなたも物好きねぇ。」
「ふふふ!今日のトラップはか・な・り・頑張ってますよ!トラパス応援団長代理としては見逃す訳にはいけません!」
「ふーん。何、それ。トラパス応援団?しかも代理?」
「はい。団長はゼンぱあさんなので、私が代理人として2人を見守っています。
専ら、トラップの恋愛を陰ながら応援しています。リタも如何ですか?」
「・・・・・遠慮しとくわ。私はパステルの応援ならするけどね。じゃあキットン、ゆっくりして行って。」
「ありがとうございます。」
残念です。リタの勧誘には失敗してしまいました。
おっと、大事な事を忘れる所でした。
あの2人は・・・・・リタに出されたお菓子をつまみながらお茶をしているみたいですね。


「あまーい!このお菓子。程よい甘さで疲れが取れるんだよねー。いつ食べても美味しいー!」
「好きだ。」
おお!
なんと話の流れを無視したいきなりの告白でしょうか。
しかし今回は全くひねりの無い、分かりやすい言葉です。
これはいくら鈍感なパステルでも伝わるでしょう!
「私も好きだよー。」
・・・・キタ!
来ました!
遂にトラップにも春が!!
「ほ、本当か?」
思わず聞き返すトラップの声も震えています。
ええ!ええ!
それはそうでしょう。
思えば長い道のりでしたから。


「うん!このお菓子、本当に美味しいもん!私大好きなんだー。」

・・・・・は?お菓子?
私とした事が・・・・・
大切な事を忘れていました。
彼女はただの鈍感ではありません。
『超ウルトラスーパーミラクル鈍感クイーン☆』だった事を。
一体どこまで彼を空回りさせれば気が済むのでしょうか。
彼の両目から血の涙が流れているのは気のせいではない気がします・・・。
「リタ、美味しかったよ。ごちそう様ー!ほらトラップ。残りの買い物して帰るよー。」
「う、ううん。パステル、また来てね。トラップも。」
亡霊のようにパステルの後ろに佇むトラップの耳元に
「今度、サービスしてあげるからさ・・・元気出しなよ?」
そう、励ますリタの声が聞こえてきました。
トラップはリタの気遣いに弱弱しい笑顔を残して店を後にしました。
「キットン・・・・トラップの奴、大丈夫なの?」
さすがのリタも心配なのでしょう。
「大丈夫ですよ。あれくらい、どうって事ありません。いつもの事ですから。」
「そう・・・そうなんだ。いつもの事・・・・。」
「トラパス応援団、入団されますか?」
「・・・・考えとくわ。」
「・・・・わかりました。では、私も失礼します。」
リタが入団するのも時間の問題ですね。


私が店の外に出ると、トラップが真剣な面持ちでパステルの手を握っていました。
めげません!
へこたれてません!!
そうですよ!
それでこそ、男の中の男です!!
超ウルトラスーパーミラクル鈍感クイーン☆相手に、へこたれてる暇などないのです!!
パステルの手をぎゅっと握り、
「パステル、そのう・・・何か感じねぇか。」
ほほう。
次の作戦はパステル自体に想いを自覚させる作戦のようですね。
「あ・・・・・・。その・・・・う。実は、トラップと手を繋ぐたびに想っていた事があるんだけど・・・・」
「な、なんだ?」
だからトラップ。
声がうわずってますよ。

「私・・・・・ね・・・」
お・・・や?
「お、おう!」
パステルの態度が今までと違いますよ?
「トラップの事・・・・・。」
ま、まさかの・・・!!
「・・・・!!!(ゴクンッ)」
わ、私まで緊張して来ましたー!!

「心が冷たい人なんだと思ってたんだ。・・・エヘ。」
「「・・・・はい?」」
おっと!
思わず声を出してしまいました。
トラップにはばれてないといいのですが。
「ほら!手が冷たい人は心が暖かいってよく言うでしょ?トラップと手を繋ぐと、いつもトラップの手あったかいからさ、心の冷たい人なんだなぁ・・・・って思ってたの。
でもこの間、キットンに医学的根拠はありませんって言われちゃった。
勝手に勘違いしててごめんね?」
パステル。
トラップの手がいつも暖かいのは決して心が冷たいわけではなく、貴女と手を繋ぐからですよ!!!
お願いですから、それぐらい分かってあげてください!!
・・・・というのは無茶な話なのでしょうか。

おや。
トラップと目が合ってしまいました。
ばれてしまったみたいですね。
ここで今日のお話は御終いです。
でもこれからも、超天然ウルトラスーパーミラクル鈍感クイーン☆との戦いはまだまだ続くのです。


おしまい。

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遅くなりましたが、新年トラ年ssです。
ついでに拍手イラストも変更しました。
よろしければどうぞ☆



《虎トラブルトラップ!!》


新しい年を迎えて3日目の朝、事件は起きた。




「ぎ、ぎぼぢわるぃ・・・・み、みず・・・。」

この世のものとは思えないような声を絞り出してリビングに現れた人物。
顔は土気色だし、口元を常に手のひらで抑えている・・・『抑えてないと、何か出る。』そんな雰囲気。
それにいつもの身軽さはどこへやら。
足取りは重くフラフラだし・・・・これは明らかに二日酔い。

いや。
彼の場合、二日酔い処ではない。
大晦日から飲み続けてるから・・・・四日酔いかな?

今にも倒れそうな彼の心からの願いを聞き入れるべく、コップに冷たーい水を入れて差し出す。
ま。実際さっきまで倒れてたんだけどね。彼は。
「ほら、お水。トラップ大丈夫?」
やっとの思いでソファーに腰を落としたトラップは、虚ろな目線を泳がして水を捉えるとのろのろと手を伸ばしてきた。
あぁーあ。
今回の二日酔いは相当ヒドイ。
「トラップ、キットンにお薬貰ってきた?」
キットンの薬はよく利くみたいで、時々トラップがお世話になっているのを私は知っている。
「・・・・まだ・・・・水・・・おがわり・・・。」
うぇっ。と口を押さえながら差し出されたコップを受け取りながら、
「ちょっと。吐くならトイレに行ってよ!?」
そう注意しても、力無く帰ってきた返事は
「む・・・むり・・・水・・・」
だった。

もう。仕方ないなぁ。
トラップに水のおかわりを渡すと、私は階段へと向かう。
キットンに薬を貰う為に。
「トラップ。キットンにお薬貰ってくるから、そこで待っててよ?」
トラップの後ろ姿にそう声を掛けると、
「ぐぇ・・・。」
はぁああ。
なんとも情けない返事・・・・。




「キットン入るよー?」
コンコンとドアをノックして覗くと、机に向かってブツブツ言っているキットンがいた。
「ねぇ。トラップが二日酔いの薬が欲しいんだけど・・・キットン?」
さっきから話しかけているのに返事が無い。
キットンはずーっと、ブツブツ言って何かの薬を調合中みたい。
「ちょっと!キットン!聞いてるの!?」
肩をゆさゆさ揺らしてやる。
「わっ!?いきなり何するんですか!調合が・・・!!」
キットンの文句は続いてるけど、トラップの容態も一刻を争うんだから!!
(ただの二日酔いだけどね。)
「トラップが二日酔いでしんどいから、いつもの薬が欲しいんだって。ある?」
「なんですか!?そんな事で私の大切な実験を邪魔しないでください!
・・・まったく。そろそろ取りに来る頃だと思ってちゃんと用意してありますよ。
そこにある黒い丸薬がいつものです。トラップに渡してください。」
そう言って、机の隅に置かれた黒光りした丸薬を指差した。

「わかった!ありがと、キットン。」
薬を受け取ってドアに向かうとキットンに呼び止められた。
「パステル!酔いがひどい様ならトラップに、10粒くらい飲むように言ってください。」
「・・・・わかった。」
こんな不味そうな薬を10粒も?
私は絶対ごめんだけどね・・・・。




「トラップ、薬貰ってきたよ?」
リビングに戻ると、ソファーで相変わらずぐったりとトラップが倒れていた。
「・・・・トラップ?生きてる??」
コップに水を汲んでトラップの顔を覗き込むと、うっすらと目が開いた。
恨めしそうな視線で見上げてくる。
でもそんな目をしても、自業自得だもんね。
飲みすぎたあんたが悪いんでしょうーが。
「はい。キットンからお薬貰ってきたよ?10粒飲んでだってさ。」
薬と水を差し出すと、一気にトラップの目が見開かれた。
「じゅうっ!?・・・・・・おぇっ・・・」
気持ちはわかるけど、彼の行動に同情の余地は無い。
「そ。ほら!飲んだらすぐに楽になるんでしょ?一瞬の我慢なんだから頑張って飲んで!」
そう励ますと、渋々と体を起こして私から薬を受け取って口へ放り込む。
次の瞬間、私から水を奪い取ると一気に流し込んだ。


ゴクゴクゴク・・・。


「うえぇっ!クソまずっ!!うげぇぇぇ!」
流石キットンの薬は即効性があるのか、顔色が一瞬で良くなったのがわかる。
薬であの二日酔いが治るんだもん。
美味しくない事くらい、仕方ないんじゃないかぁ。
『良薬口に苦し』って言うもんね。
そんなトラップの様子を見守っていた私は、ある異変に気がついた。
「トラップ・・・?頭に何付けてるの?」
そう。
トラップの頭から黄色い丸いフワフワした物が現れて、ピクピクと動いている。
「あ??頭ー?」
そう言って自分の頭を触ったトラップの顔が固まる。
たぶん・・・・トラップの頭から耳が生えている。
信じられないけど。
あまりの出来事に時間が止まったんじゃないかと思うくらいの静けさが訪れた。


「ぱぁーるぅ!たらいまだおぅ!!」
元気一杯のルーミィの声で2人とも我に返る。
次の瞬間、みるみるとトラップの体が縮んでいった。
な!?何が起きてるのー!?
「ぱーるぅ?いないんかぁ?」
ひょっこりとドアから顔を覗かせたルーミィを呆然と見つめる。
「どーしたんら?ぱーるぅ。」
「パステルおねぇしゃん、どうしたデシか?」
2人の後ろからクレイとノルも「ただいまー。」と顔を出した。
その間もどんどん縮んでいくトラップ。
今や大きさはルーミィくらいになっていて・・・・しかも、全身からふわふわした黄色毛が・・・・
「パステル?そんな顔して何かあるのか?」
わらわらとみんながリビングに入って来てソファーに集まった頃には、トラップの大きさはシロちゃんよりも小さくなっていた。

「パステル!?なんなんだこれは?モンスターか?」
「かわいー!ぱーるぅ!!この子、なんて言うんだぁ?」
「・・・かわいいな。」
 
全身黄色い毛に覆われて黒い縞模様。
ふわふわの可愛い耳を付けて、うしろからは虎模様のしっぽも・・・・。
頭の髪の毛の部分だけは、彼のトレードマークでもある赤毛のままなんだけど。
そう!
まさに虎!!
・・・・大きさはかなり小さいけど。モルモットくらいの大きさかな。

「ト、トラップ!?どうしたの一体!!??」
そう叫んだ私の言葉に、クレイとノルの目がぎょっ!と見開かれる。
「トラップだって!?コレが!?何が起きたんだ?」
「トラップ・・・かわいいな。」
「とりゃー?ぬいぐるみみたいだおう!」
「トラップあんしゃんの匂いがするデシよ!」
鼻をくんくんと『虎トラップ』に向けてシロちゃんは嬉しそうにしっぽを振っている。
ルーミィが嬉しそうに近づいていく。
「ばかっ!ルーミィ!くるんじゃねぇーよ!」
虎トラップから焦った叫び声が聞こえる。
その声もかなり小さくて聞き取りづらい。
しかも、虎トラップは危うくルーミィに踏まれそうになっていて・・・・。
わわわ!
本当に危ないよ!
必死にちょろちょろと逃げ回っているから私達の足元を走るたびに、私達のバランスも崩れてしまいそうでトラップを踏んでしまいそうになる。
ノルに踏まれたら、ぺっちゃんこになっちゃうよ!

「トラップ!危ないから!!踏まれる前にこっちにおいで!」
そう手を差し伸べると、虎トラップは一目散に私の腕を駆け上って左肩に止まった。
いつもトラップがシロちゃんを肩に乗せているのと同じ場所。
「はぁっ!はぁっ!」
私の耳元で虎トラップの荒い息が聞こえてくる。
そんな虎トラップに恐る恐る声を掛け来たクレイ。
「本当に・・・トラップなのか?また、魔女に呪いをかけられたのか!?」
クレイの言葉に『フーッ!』と全身の毛を逆立てて
「ちげぇーよ!!犯人はあいつだ!キットンの薬のせいだっ!!」
「はい?私がどうかしましたか?おや。トラップの様子を見に来たのですが出かけたのでしょうか?でも変ですねぇ。さっきのはトラップの声だとおもったのですが?」


その声に全員が一斉に振り返る。
((((コイツガハンニンカ・・・))))
あまりの反応にキットンも驚いたらしく、
「はい?どうかされましたか?それにしてもトラップも懲りませんねぇ。酔いが治ったらまた出かけたのですか?」

「ふざけんじゃねぇー!!!」

トラップの叫び声が響き渡った。
「おや?トラップはどこですか?声はしますけど姿がありませんね。しかも、声もいつもより迫力に欠けてますし。」
「おまえ!!いい加減にしろよっ!?変な実験ばかりしやがって!懲りてねぇのはそっちだろーがっ!!」
「パステル。貴方の方から声がするのですが、トラップは一体どこに居てるのですか?」
「・・・・・・ここ。」
ちょん。と私の指差した先を見たキットン。

わなわなと震えていたかと思うといきなり、
「素晴らしいぃぃぃ!!」
と叫びながら私に飛びついてきた。
「きゃー!?ちょっと!キットン!くっつかないでよ!」
「うわっ!?パステル!!動くな!」
慌てて避けようと動いたものだから、肩に乗ったままの虎トラップの焦った声。
トラップを落とさないように手のひらで受け止める。
「「あ、あぶなかったぁー。」」
ほおぉー。とトラップと安堵のため息をついた横から、
「パステル!そのトラップを私に渡してください!!これは素晴らしいです!!しっかりデーターを取らなければ!!さあ!私の実験室に!!」
キットンの馬鹿でかい声が響く。
「う、うっせぇー!!!俺の耳にはおめえらの声はでか過ぎるんだよ!!耳がいてぇっ!」
両手・・・いや前足?で耳を塞いで、本当に辛そう。
「ほほう!やはり、動物ですからね!耳が人間の時よりも良いのでしょう!他はどうですか!?視力などは上がってますか!?」
まだデーターを取ろうとするキットンに、ついにクレイがキレた。
「キットン!!そんなことよりも解毒剤を作って来い!!さっさとトラップを元に戻すんだ!」
そう言ってクレイはキットンをリビングから放り出した。
「・・・・ったく!」

手をパンパントと叩きながらクレイは、少し小さめの声で虎トラップに話しかけた。
「トラップ、とりあえず元に戻る方法が分かるまで何かと大変だろうから、俺が面倒見てやるよ。」
そう言って私がしていたみたいに、自分の肩に虎トラップを乗せるとトラップが悲鳴を上げた。
「たっけぇー!クレイ!お前でか過ぎる!地面が遠くて怖い!!」
「ええぇー!?そんな事言われても身長は仕方ないだろ?」
「あほか!俺が落ちたらどうすんだよ!?パステルの方がいい!降ろしてくれ!」
必死にクレイの肩に爪を立てて捕まっているのか、クレイの顔が痛そうに歪む。
「はあぁ。・・・・パステル、こいつの面倒頼んでもいいか?」
「へ?あぁ。いいけど、私でいいの?トラップは。」
そっと、クレイから虎トラップを受け取りながら小さな声で聞く。
「おめぇが一番いいの!ノルやクレイはデカイし、キットンには何されっかわかんねぇし、チビ達にはおもちゃにされるのが目に見えてる!だからお前が一番安全なわけ。ま、そんな訳で頼むわ!」
こんなサイズのトラップならいつでも大歓迎だけどね。
「うん。了解!よろしくね。」
ふふふ。
本当に可愛い!
憎まれ口は変わらないけど、容姿が可愛いから迫力が無いんだよね。
可愛いって言ったらトラップは怒るだろうから言わないけど、ユラユラ揺れるしっぽやピクピク動く耳が堪らなく可愛い!!

しばらく一緒にいれるみたいだし、猫じゃらしでも探してこようかな?
「そう言えば二日酔いは?大丈夫なの?」
「・・・・・大丈夫みてぇだな。」
「「・・・・・・・・。」」
あの薬は一体、なんの薬だったんだろう。






******


「へ?あの時の薬ですか?あれはですねー。きっとあの時開発中だった『今年の主役になれる薬』と『二日酔い』の薬が混ざったみたいですねー。今年は寅年ですから。ま、彼自身そんなに悪い薬でもなかったんじゃないですか。結構楽しんでたみたいですから。でもあの薬は失敗作ですね。来年こそは成功させたい思います!」



おしまい。


トラップ年、スタートですよー!!

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大好きな皆さんへv

素敵なクリスマスを送れますように・・・・。

みいからssのプレゼントですv

どうぞ☆


《Merry Christmas!》


今日は12月25日、クリスマス!


さむーい体育館でのながーい終業式も終わって、教室に戻るとトラップが声を掛けてきた。
「なぁ。おめぇ、今日はクラブ行くのか?」
「うん!行くよー。トラップも行くでしょ?」
私とトラップは2人とも、弓道部に所属してたりする。
この高校に入学した時、本当はクラブなんてするつもり無かったんだよね。実は。
放課後は全部、バイトに充てるつもりだったから。
でも、新入生クラブ説明会ではじめて見た弓道の袴姿とか、弓を引いている姿にすごく興味を持ってつい、弓道場を覗いてしまったのが最後。
気がついた時には入部していた。
そうそう。
ちょうど、この時にマリーナと友達になったんだっけ。

この時の詳しい話は機会があれば。と言う事で・・・。


「おう。じゃあ一緒に昼飯食うか。」
「そーだね!食堂行く?」
「だな。今日は絶対空いてっから食堂の方がいいだろ。」
今日は終業式だから、いつも混み合ってる食堂もガラガラだと思う。
「うん。お腹すいたー。私さ、終業式の最中もお腹グーグーなっちゃって、どうしようかと思ったもん。」
あはははー。と笑いながらトラップに暴露すると、
「色気のねぇー奴だな!」
と、頭を小突かれた。
もう!
「色気が無くって悪かったわね!それより、ご飯食べに行こう。本当にお腹すいちゃった。」
鞄を持って廊下に出ると、後ろからトラップも私に付いて教室を出て来た。
「・・・本気で色気ゼロ。」
・・・コイツはまだ言うか!!
失礼な事言う奴はほっといて、先にご飯食べに行っちゃうからね!?
「はいはい。置いてくよー。」
こんなのはいつもの事。
そう、トラップの言葉を無視して廊下をズンズン進んで行くと、後ろから必死に笑いをかみ殺したトラップの声が。

「・・・・・・食堂、逆だけど?」


!!!!!!


くるん!
と私は180°綺麗にターンをして、スタスタと急ぎ足で再びトラップの前を通り過ぎる。
自分のほっぺが真っ赤になるのが分かる。
「ぶっっははははっは!!!おめぇ、相変わらずだな!どこ行くつもりだったんだよ!?」
く、くそぉ     !!
今や、トラップの笑い声は廊下に響き渡っていた。
どこ行くつもりって・・・!!
「食堂っ!!!」
そう叫び返した私を今度はトラップがスタスタと簡単に追い抜いていった。
「あっそ。一人で行けるんだな?じゃ、先に行っとくわー。」
「ちょっ!!待ってよ、トラップー!」



********



「・・・・ひどい。本当に先に行くなんて・・・・。」
「・・・・まだ言ってんのか。」
お昼ごはんも終わって弓道場で、トラップに弓に弦を張るのを手伝ってもらいながらぼやく。
あの後、トラップに置いていかれて私は見事に迷子になってしまったのだ。
方向音痴の自分が情けなくって嫌になってしまう。
結局トラップに見つけてもらうまで、一人、校舎をさまよう事になってしまった・・・・・。
「はあああぁ。何か今日良い事無いかなぁ。」
思わずそう呟いた私の言葉に、トラップはピッと眉をあげると、
「今日、おめぇもパーティ来るんだろ?」
と、素敵な事を思い出させてくれた。
「ああっ!そうだった!!」
思わず大きな声で叫んでしまって、「しまった!」と口を押さえるけど時すでに遅し。
弓道場で大声を出すなんて・・・・!!
トラップにも『かけ』(弓を引く時にする硬い手袋)を付けた右手で頭を叩かれてしまった。
ゴツっと鈍い音がする。
「いっ!いたーい。」
痛さを我慢して、小声で呟くと
「うっせぇ。」
と、再びゴツッ!
コ、コイツはー!!人の頭を一日に何度も叩きおって!!
大声を出した私が悪いけど、叩かなくってもいいでしょーが!
キッ!と睨んでやる。

「おめぇ、昨日あんなに楽しみだー!って言ってたくせに、もう忘れてんのか!?」
「うう・・・。そうだけど・・・。」
って、あれ?
昨日リタと話してた時、トラップ寝てたよね?
何で知ってるんだろう?
・・・・・リタに聞いたのかなぁ。
まぁいいや。
バイトに行くまであんまり時間も無いし、時間が勿体無い。
今は弓道に集中しよっと。



2時間ほどクラブに参加して、袴から制服に着替えるとバイトの時間が差し迫っていた。
や、やばい!!
昨日と同じパターンだよ!
バイト先までダッシュで行かなきゃ!!
急いで弓道場に荷物を取りに戻ると、トラップが袴姿のまま私の荷物を持って立っていた。
ええぇっ!!??
何?珍しい。
槍でも降ってくんじゃないの???
でも一刻を争う今、トラップの行動は私にとって、凄くありがたいものだった。
「ありがとう!!トラップ!助かったよ!!じゃあね!」
トラップにお礼を言って早々に荷物を受け取ると、走り出した私にトラップが待ったをかけた。

ええぇーっ!?
時間ないんですけど・・・!
「な、何?」
そう言いながらも、私の足は校門に向かってる。
「お前、今日バイト何時に終わるんだ!?」
トラップが叫んでる。
ああ。
そっか。パーティの事か。
でも、足は止まらない。って言うか止めれない。
じ、時間が!!
一生懸命私も叫び返す。
「9時ぃ     !!」
「じゃあ!今日バイト終わったら・・・・・・!!!」
もう無理!
トラップが何か叫んでたけど時間が限界だった。
「ごめーん!!!バイト終わったら連絡するからー!!あとでねー!!」
それだけ、トラップに向かって必死に叫ぶと私は、返事も聞かずに走り出した。
ごめん!
トラップ!!
続きはパーティの時にでもちゃんと聞くから!!
そう、心の中でトラップに謝りながら。



*********



し、信じられない・・・・。
何でこんな日に限って・・・・。

9時あがりだったはずなのに、忙しくって今や10時・・・・。
もしかしてもう、パーティは終わってしまってるかもしれない・・・・・。
連絡も出来なくってみんな、心配してるかなぁ。


「はあああぁあ・・・。」
やっと仕事も終わって制服に着替えて外に出ると、冷たい風が一気に吹き付けてきた。
「さっ!さぶいっ!!」
なんて寒さなの!?
こんなとこで突っ立ってても風引くだけだよ。
実は・・・・携帯の充電が切れてしまってて、連絡すら出来ない。
誰か迎えに来てくれてるかも・・・なんて甘い考えも浮かんだけど・・・・。
賑やかな街を行き交う人は沢山いるけれど、見知った顔はその中に無かった。
どうしよう・・・。
こんな重ね重ねトラブルが続くなんて・・・・・


「はあああああぁ・・・・。」


何度目かのため息が出る。
みんなの携帯番号は覚えてないし、マリーナの家はどこにあるのか知らないし、リタの店はここから遠いし・・・。
パーティ、行きたかったな。

「はあああああぁ。」
街中は綺麗なイルミネーションに飾られて、カップルや家族の幸せそうな笑い声で溢れている。
なのに、私だけ一人だった。
どうしようもないよね・・・・。
家に帰れば充電器があるし、それから謝りの電話をしよう。
そう決めてキラキラと光り輝く街をひとり、ポツリポツリと家路に向かう。


「さむい・・・。」


吐く息はどこまでも白い。
・・・・こんな事なら、クリスマスパーティに行くなんて約束しなければ良かった。
マリーナ達の笑顔が浮かんでは消えていく。
楽しみにしていた分、行けなくなった落胆も大きいし・・・・。
みんなと過ごすクリスマスはきっと、楽しかったに違いないのに。
本当なら今頃、マリーナの家で笑顔な自分がいたんだろうな。

「はああああぁ・・。」
せっかく誘ってくれたのに・・・・。
今年もひとりぼっちのクリスマスか・・・・・。


つーんと鼻の奥が痛くなった。
(パステル!泣いたら余計に悲しいよ!我慢だよ!!)
必死に自分に言い聞かせる。
泣いても仕方ないって解ってる。
どうしようもない事、誰も悪くないんだ。
でも・・・・・ただクリスマスをみんなと一緒に過ごしたかった。
それだけで良かったのに・・・・。

静かにひとつ、涙が頬を伝って落ちた。





人ごみの中、一人立ち止まって俯いたまま唇をかみ締める。
なんて私は、この街に似合わないんだろう。
みんな幸せそうに笑ってるのに、どうして私は泣いてるんだろう。
どうして私だけ一人ぼっちなんだろう。

ふいに、タッタッタッタ!と大きな足音が聞こえて思わず顔を上げた。
その足音が自分に向かってきてる気がしたから・・・・。


「おとーさーん!!待ってよー!!」


タッタッタッタ!
背の高い男の人が顔を上げた私の横を軽やかに走り去って行った。
そのすぐ後ろから、小さな女の子が笑顔で走ってくる。
「お父さん!待ってってばー!」
女の子のお父さんは私の少し後ろで、笑顔で女の子を待っていた。
「ここまでおいで!」
そう、差し出された手に飛び込んでいく小さな女の子。
お父さんの大きな腕に抱き上げられ、弾けんばかりの笑顔で、幸せそうに笑い合う親子。


女の子の笑顔がずっと昔の記憶の中の自分と重なった。



「お父さん・・・・。お母さん・・・・・。」


我慢できずに声に出して呟く。 
愛しい人を呼んでしまったら、もう・・・・
涙は止まらずにあふれ出し、目の前は一気に霞んでよく見えなくなってしまった。



瞼の裏のお父さんとお母さんの笑顔さえも霞んでいく。






「うっ・・・・。ううっ。いやだよぉ・・・・。」





寂しい。
寂しすぎて、潰れてしまいそう。



もう。
涙を止める気力も、ここから歩き出す元気もない。
ただ、立ち尽くして泣く事だけ。
きっと、すれ違う人たちは物珍しい物でも見るように通り過ぎて行くのだろう。
そうなんだ・・・・。
みんな私を通り過ぎて行ってしまうんだ・・・・・。
私の為に立ち止まってくれる人はもう、この世にはいない。




「ひっく・・・・。ううぅ・・・・やだあぁあ・・・・。」





小さな子供のように大きな声で泣き叫びたくなった。
止めどなく溢れる涙。







「パステルッ!!!」







はっと顔を上げて息を呑む。

「・・・・っ!!」

涙で霞む瞳で必死にその姿を捕らえる。



「トラッ・・・プ?」


私が泣いているのがわったんだろう。
息を切らして走ってきたトラップの顔が険しくなる。

「なんかあったのか!?」

涙を拭いながら
「ううん・・・・。何も無い。だいじょ・・・ぶ。」
そう言って笑おうと思ったけど・・・・・上手に笑えなかった。
代わりに言いながら泣いてしまった。
「・・・・・どうした?」
ぽろぽろと泣き続ける私を心配そうに覗き込むトラップ。
そんなトラップの顔を見ていると、トラップになら素直に話せそうだと思った。


「あのね・・・・」

泣きながらトラップに説明する。
バイトの終わりが遅くなった事や携帯の充電が切れてしまった事。
すごくクリスマスパーティを楽しみにしてたのに、行けなくなってしまった。
そのせいで両親の事を思い出して心細かった事。
トラップは泣きながら話す私の話を辛抱強く聞いてくれた。


「トラップ・・・・私、寂しいよぉ・・・。私、いつも頑張って生きようと思ってここまで来たけど、やっぱり、一人は寂しいんだ。寂しすぎて時々、お父さん達に逢いに行きたくなる・・・・。」


そう言うとトラップは何も言わずに抱きしめてくれた。



ギュッと強く。
まるで、「行くな。」と言うように。


また、ぽろぽろと涙がこぼれる。
痛いほどに抱きしめてくれたトラップの力が、『一人じゃない』と教えてくれる。


「うぅう・・・。とらっぷぅ・・・・・。
でもね・・・・でもやっぱりいつも最後には、この世界で生きてたいと思うんだ。
一人はやっぱり寂しいけどトラップ達と居たら私、心から笑ってられるんだもん。」


きゅっとトラップの体にしがみつくと、更にぎゅっうと抱きしめてくれて。
不意に背中を『ポンポン』と優しく叩いたかと思うと、反対の手で、頭を優しくなでてくれた。

その手はまるでお父さんのように大きくて、力強くて・・・・。


もう一度、涙が溢れ出た・・・・。
トラップがいてくれる。
それだけで私は、小さな子供の様に声を出して泣く事が出来た。






気が済むまで泣き続けた私の頭をポンポンと叩いて、泣き止んだ私の顔を覗くと、
「今からパーティすっから、行くぞ!」
トラップは元気にそう言うと、ぐいっと私の手をつないでくれた。
ニヤッといつもの笑顔のトラップに連れられて人ごみの中をぐいぐい進んでいく・・・。
さっきまで一人じゃ歩けなかったのに、トラップがいるだけでこんなにも心強い。
誰かが傍にいるってスゴイ事・・・・!!!

って・・・・。
「ええぇー!?今から!?もしかしてみんな、待っててくれてるの???」
「みんなで一緒にパーティするっつっただろ?しかも、パーティするって言うだけであんなに嬉しそうな顔して喜んでる奴をほっといてケーキが食えるかっつーの!」
「ケーキも・・・?」
私の返事に不思議そうな顔のトラップ。
「クリスマスにケーキ食わねぇで、どうすんだよ?」
そのあまりに絶対厳守!!的な反応に自然と口元が緩む。
「あははは!何?その自信は?」
トラップとケーキってあんまり似合わないや。
「サンタの乗っかったケーキを食べてこそ、クリスマスだろーが。」
「あはは!サンタって!!それは別に威張る事じゃないでしょう?それに・・・・・・」
「それに、何だよ?」
「私、何年もケーキって食べてないや。クリスマスも、誕生日も。」
「・・・・・・・・・。」


両親が無くなった年のクリスマスからケーキは一度も食べてない。
「ケーキを貰った事はあったけど、・・・・どうしても食べられなかった。」
「・・・・・・・・・。」
「ケーキはね、きっと一人で食べても美味しくないんだと思う。・・・・・みんなで食べるから美味しいんだよね。」
「・・・・・・・・・。」

今は真っ直ぐ前を見て言える。
視線を感じて隣を見ればトラップと視線が合った。
「えへへ。」
そう笑うと、つないでない方の手からデコピンが飛んできた。
「いったぁーい!!」
「ばぁーか!ケーキくらい、いつでも食べれるだろーが。」
「へ!?」
「だあら!ケーキぐらい俺が付き合ってやるってんの!」
「トラップが!?」
信じらんない!
トラップがこんな優しい事言うなんて・・・・。
あまりの驚きに、口をあんぐり開けてトラップを見ていると一気にトラップの表情が険しくなった。
「ふん!もういい。今日の超有名パティシエ特性クリスマスケーキ、おめぇの分は無いからな!今更後悔しても遅いぜ!?」
「うわわわっ!!ごめん!トラップ。違うの!嬉しすぎて固まっちゃったの!!だからクリスマスケーキ、食べさせてください!!」
慌てて謝った私を訝しげに睨んでるトラップ。
そんな視線に負けじと笑顔で言う。
「ありがとね!トラップ、今度一緒にケーキ食べに行こうよ!ね?約束!!」
「けっ。げんきんな奴。」
今度は私がトラップの手を引っ張って走って行く。
「ほらほら!きっと、マリーナ達が待ってるよ!急ご!!」
「なんだよ!?泣いたり笑ったり忙しい奴だな。・・・・ってバカ!俺んちはそっちじゃねぇよ!」
ぐいっとトラップに引っ張られて、勢いよくトラップに激突してしまった。
「いたっあぁ・・・。」
激突したのはトラップの胸で。



ぎゅっ。



へ!?


気がついたら再びトラップの腕の中に捕らわれていた。
あれ?
さっきもこうして・・・・。


ぼっ!!!!


わ、私、さっきもトラップに抱きしめられてた・・・・よね・・・!?
いや!さっきのはきっと私が泣いてたからで・・・・・。
じゃあ、今は・・・?
「ト、トラップー?」
ドキドキして少し裏返った私の声。


「・・・・・約束。」
絞り出した様なトラップの声。
「え・・・?」
「約束。」
「約束?」
「ああ。・・・・今日からおめぇがもういいって言う日まで、誕生日もクリスマスもいつでも一緒にケーキ食べてやるから。約束する。」
「トラップ・・・・・。」
気にしててくれたのだろうか。
抱きしめられたトラップの体温といっしょに優しさで暖かくなる。
「うん・・・。約束。・・・ありがとう。トラップ。」
トラップの上着をきゅっと握る。
さっきよりは少し遠慮がちに・・・・ね。
だって意識しちゃったら急に恥ずかしくなったから。



「んで・・・俺からのクリスマスプレゼント。」
「プレゼント・・・??」
「そ!一回しか言わねぇからよく聞けよ!
「ええっ!!??」
「いいか!?」
「う、うんっ!」


「・・・・・おめぇは一人じゃねぇよ。だから俯くな。ちゃんと前を見て歩いていけ。
たまには振り返ってもいいから、立ち止まってもいいから。必ずその後は自分の足で歩いていけ。
・・・・・・・解ったか?」

「ひっく・・・・うぅうーわかったぁぁ・・・。」
せっかく涙は止まってたのに、トラップの言葉に再度流れ出す。

「んで。泣き虫パステル。泣きたくなったら俺んとこに来い。一人で泣くな。
以上!トラップ様からのありがたーいクリスマスプレゼント!・・・・受け取ったか?」
「うん!・・・ぅひっく。うん!うん!ありがとぅ・・・トラップ!」
泣きながらお礼を言うと、トラップの腕から開放されて、そのままトラップの手が私の頬をはさんだ。 
涙でベショベショの顔を上げられて、トラップと目が合う。
泣き顔の私をにやりと笑うと、

「じゃ、おめぇからのプレゼント貰うわ。」

突然そんな事を言われて、頭が一気に真っ白になった。
・・・・だって私、クリスマスプレゼント用意してない事に気がついたんだもん!!
どうしよう!?
「ト、トラップ!!ごめん!私、プレゼント用意してないよ!!??」
相変わらず、トラップの両手に挟まれたままオタオタし始めた私を更に嬉しそうに見つめて


「大丈夫、ここにあるから。」


そう言ったかと思うと、さらににやりと笑って、
次の瞬間トラップの唇がゆっくりと近づいてくる。




「パステル、生まれてきてくれてありがとう。」




そう耳元で囁いたかと思うと、今まで見たこともない優しい笑顔のトラップがいて・・・・。




また涙が溢れ来る。




それじゃあ、また私が貰っちゃった事になるよ?



そう言って笑うと、



「やっと笑った。」



2人の笑顔が重なる聖なる夜。

きらめく夜空に祈りは降る。

静かにそっと・・・・・。

2人の上に。





Merrry Christmas!


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じれったいですが、ssの本編はクリスマス当日に公開ということで・・・・。
すみません;;



《クリスマス・イブ☆》


「ねぇパステル!明日の放課後って空いてる?」
「え?明日?」
今日は12月24日、クリスマス・イブ。
今年最後の授業が終わってみんなが帰り支度を始めてる時、突然声を掛けれらた。
声を掛けてきたのは親友のリタだった。
リタとは高校入学して以来仲良しで、1年生2年生とずっとクラスメイトなんだよね。
そして、私の大切な親友の一人でもある。

「そ。明日終業式が終わってからさ、みんなでクリスマスパーティしようかって話になったんだけど、どう?」
「うーん。明日は少しクラブに顔出してからバイトなんだよねー。」
私は両親が数年前に事故で他界して以来、学校の近くに一人暮らし中。
両親が残してくれたお金もあるんだけど、甘えてたらすぐ無くなっちゃうもんね。
だから、学校が終わってからの平日や土日もほとんどバイト三昧な毎日を送ってたりする。
・・・・もちろん。クリスマスも。
いやっ。
もしも彼氏とか居たら、また違ったクリスマスを送ってるかもしれないけどさ?
いないんだもん。
バイトが恋人みたいな感じかなぁ・・・。
今は。
うーん。寂しいぞ私!


「そっかぁ。やっぱりバイト入ってるよねぇ・・・。もっと早く決めてれば良かったね。」
リタも私の生活状況をよく理解してくれてるから「休んじゃえば?」なんて軽い事は絶対言わない。
しかも、彼女の家が自営業だからなおさらだよね。
「うん・・・。ごめんね?でもリタはお店の方、大丈夫なの?」
通学鞄に学校に置きっぱなしだった教科書を詰めながら聞く。
明日は終業式だけだからね、どうせ荷物も多いだろうし今日中に教科書は持って帰らなくっちゃ。
「あー。私はね、店が落ち着いてから参加するから・・・。ってそうだよ!!」
いきなりリタに肩をバシンと叩かれて、びっくり!
しかも・・・
「リタ!痛いって!」
「あはははっ!ごめんごめん!すっかり忘れてたけど、私も店が落ち着いてから行くんだから、パステルもバイトが終わってから参加すればいいじゃない!!ね?」
リタがニコニコしながら「そうだよ!それなら問題ないよね!」と、私が『行く』とか言う前に参加が決定しそうな勢いだ。
「えぇ!?バイト終わってからって9時過ぎるよ!?そんなに遅くにどこでするの?っていうか、誰が来るの?そのパーティには。」
いくらクリスマスとは言え、私達の身分は高校生な訳で・・・・そんな時間に遊べる所なんてあるのかなぁ?

「あぁ!あのね場所はマリーナの家だって!今日から両親が急に海外に行く事になったから急遽決まったの。
メンバーもいつもと一緒。パステル、私、マリーナ、クレイにトラップ!」
なるほど!
マリーナは1年生の時同じクラスで仲良くなって以来、今も友達。
私のもう一人の親友でもあるしね。
トラップは2年生になって初めて同じクラスになったから、今現在クラスメイト。
男の子にしたら仲はいいと思うよ?
同じクラブだし、委員も同じだからね。
普段トラップとは、口ケンカばっかりしてるけど。あはははっ。
でもって、マリーナのお兄ちゃんでもある。
この2人は双子じゃなくって年子なんだって。
同学年の年子。
傍から見てても仲の良い兄妹で、とっても羨ましい。
私は一人っ子だったからね。
そしてクレイは実は、先輩だったりする。
一コ年上なんだけど、マリーナとトラップの幼馴染で3人は本当に凄く仲良しなんだよね!
しかも現生徒会長で、女の子からの人気NO.1!
クレイと話してるだけで、羨望のまなざしでみられてしまうくらいに。

この3人と私とリタ。
何も無くっても自然と集まる5人組で、私の学校生活はこの4人と過ごすことがほとんど。
気兼ねしなくてすむ、心地良い私の居場所になっている。
こんなメンバーでクリスマスを過ごすなんて、すっごく楽しみ!

・・・なによりひとりで過ごすクリスマスは、過去に楽しい思い出がある分、いつも寂しさで一杯になる。

「そっか。じゃあ私も参加させて!バイトが終わったら駆けつけるから!」
「うん!マリーナ達にもそう伝えとくね!で、今日はクラブは行くの?」
「ううん。今日はこのままバイトに行ってくる。・・・・って!もうこんな時間!?ヤバイ!ごめんリタ、トラップに今日はクラブ休むって伝えといてくれる?」
コートを羽織って鞄を握り締め、教室のドアに向かいながらリタに頼むと、
「おっけー!あそこで寝てるバカに伝えとけばいいのね?」
くいっとリタが指差した先には、授業はとっくの昔に終わってるのに寝続けてるトラップの姿が・・・。
ちらっと横目でその姿を捉えて、すぐに視線をリタに戻す。
私は苦笑いをしながら
「うん!悪いけどよろしくね!マリーナに明日、楽しみにしてるからって伝えといてー!」
そう、教室のドアから叫ぶと
「わかったから!早く行かないと遅刻するよー!」
リタが分かったから!と笑って叫び返してくれた。
「わわわっ!本当だ!じゃ、行ってくるねー!」
「うん!気を付けてね!がんばれー!」
「はーい!!」
もう最後の返事は廊下を走りながらだったけど、きっとリタには届いたと思う。
そして、私の頬が勝手ににやけてくる。


クリスマスパーティ!

わあぁぁっ・・・!!
楽しみで、楽しみで仕方がない。
クリスマスがこんなに待ち遠しくなるのは何年ぶりだろう!?
すっごく、わくわくする!!
みんなで過ごすクリスマスは間違いなく、楽しいはずだもんね!
よーし!
明日は楽しいクリスマスだもん!
今日のバイトも頑張ろっと!!
楽しみな事があるだけで、周りの景色もいつもと違って見える。

走り抜けていく12月の冷たい風も、今の私にはまったく寒くなかった。


うん!

明日がすっごく、楽しみ!!!


つづく。


続きは明日のクリスマスに・・・・・。
では!楽しいクリスマスを☆

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とりさんに描いて頂いたスケブイラストからの勝手にssです。
無断ですみません。
無断じゃなくなりました☆ww
快く了承してくださり、ありがとうございます!!(強気発言)ニコv

ssは、素敵なイラストをプレゼントしてくださったとりさんに捧げます!!
設定としては、結婚後のトラパスです。


《青と緑の似合う人》


「わぁ!すっごく安ーい!!」
一人で買い物途中、思わず目を引く安さに私は、一軒の店へと吸い寄せられて行った。
体って正直なもので、気が付いた時には商品を手に握りしめていた。

あははははー!
私、こう言うところは昔から成長してないよね。
貧乏パーティの頃に染み付いた感覚は、簡単には無くならないみたい。
今はパーティも解散し、トラップと結婚した私はドーマで二人暮らし中。
昔みたいなジリ貧生活じゃないのに・・・・・相変わらず安いものに弱いんだよね。
トホホホ・・・・。


「おやおや!トラップ坊ん所の若奥さんじゃないか。どうだいそれ!安いだろ?
いやぁー。間違って大量発注しちゃってねぇ、返品は聞かないっていうからさぁ。
仕方なく、特別セール実施中なんだよ!」
なるほど。それでこんなに安いのかぁ。
私がさっきから何を握りしめているかというと、実は『毛糸だま』なんだな。
なんと1玉、5Gだって!!
破格の値段だよね!!
これは買わなきゃ勿体無いよ!!


「買います!ください!!」
お店のおばさんは「ありがとね!」と紙袋に詰めてくれた。
私がこの毛糸を気に入ったのは安さだけじゃなく、色がとっても綺麗だったからなんだ。
空の青と草の緑が綺麗に合わさった、澄んだ青緑色。

うん!
きっと、トラップに似合うと思う。
ドーマの冬は厳しいから、あったかいマフラーを編んであげよっと。
今トラップは冒険に出ていて留守で、最低でも後一週間は帰ってこないんだよね。
だから、トラップが帰ってくるまでには仕上がるはずだもん。
丁度小説の方も一段落しているし、なにより・・・・・トラップのいない寂しさを紛らわす、良い方法かもしれない。

自分も冒険に出ている時は気付かなかったんだけど、ただ待つのって結構辛いんだよね。
家で一人ポツンと居てると会話も無いし、何をしていても一人で実は寂しい。
小説を書いたりもしているけど、気が付くといつもトラップの事を考えてる。

今何してるかな?

何処にいてるのかな?

トラブル起こしてないかな?

怪我してないかな?


・・・・・・トラップも私の事、思い出したりしてくれているのかな・・・・・。


そしていつも必ず最後に願う。


『無事に帰ってきますように・・・・・。』

と。



トラップが元気に帰ってきてくれるんだったら、私、寂しいの我慢してちゃんと待ってるからね。
いつもそんな風に思うんだ。
最近、リタが言ってた言葉をよく思い出す。
『パステルたちが無事に帰ってきてくれるとすっごく嬉しいよ!私は待つことしか出来ないけど、私は必ずここに居るからさ。ちゃんと待ってるから、いつでも帰っておいでよ!』
そう言って、冒険から帰ってきて猪鹿亭に行くとリタは、嬉しそうな泣きそうな顔で笑ってくれていた。


私を待ってくれている人がいる。
帰る場所がある。
それはとても心強い事実・・・・・・。
彼にとっても、そうであって欲しいと思う。


黙々と編み続ける事、5日目。
ついにマフラーは完成した。
したんだけど・・・・・問題がひとつ。
私、本当にただ黙々と編んでたのね。
何も考えずに。
そしたらなんと、すっごく長いロングマフラーが出来上がってしまった!!
どうしよう!?
あの時、毛糸玉を私は20玉買ったのね。
それだけ買っても、たった100Gだったんだもん!
あああぁ・・・・・。
それにしても失敗したぁ。
20玉全部使っちゃうなんて・・・・・。
こんなに長いマフラー、トラップは使ってくれないかもしれない。
試しに自分の首に巻いてみると、マフラーの端が床に着く。
歩くとズルズルと引きずっちゃう。
トラップの身長なら引きずる事は無いにしても・・・・・これは実用性に欠け過ぎるよね。
がっくりと肩を落としていると、急に表が騒がしくなった。


ん・・・・!?この声は・・・。
も、もしかして!!
慌てて窓から外の様子を覗くと、見慣れた盗賊団の姿を確認できた。
そして、逢いたいと思っていた彼の姿も。

予定より早い帰還に嬉しくなって、マフラーを握りしめたまま外へと飛び出す。
「トラップ!!お帰り!!」
「おぉっ!?よくわかったな。」
勢いよく玄関の扉を開くと、そこには驚いた表情のトラップが立っていた。
「怪我は無い?」
無事に帰ってきてくれたことに安堵しながらも、トラップの体を観察する。
あちこちボロボロになった服が冒険の過酷さを物語っていた。
「あぁ。服はあちこちボロボロになっちまったが、怪我はしてねぇよ。」
「そっか!良かった。おかえり、トラップ!」
トラップの言葉に安心して、やっと心から嬉しい笑顔になれる。
「おぅ!ただいま。・・・・それにしても、おめぇさっきから何持ってんだソレ。」
トラップが言ってるのは、もちろんあの無駄に長いマフラーの事。
「あはは・・・!コレねー。トラップにマフラーを編んでたんだけど、失敗しちゃった!」
えへへー。と笑う。
一人の時は自分の失敗に情けない気持ちで一杯だったけど、なんだかトラップの顔を見たら大した事じゃない気がしてきた。
それはきっと、トラップが無事に帰ってきてくれた嬉しい気持ちのほうが強いからかな。


「ぶっ!おまっ!それがマフラー??だーっははっはっは!!!どんだけ長いんだよ!?」
昔と変わらないトラップの無邪気な笑い声に嬉しくなりつつも、あえて頬を膨らます。
「だから、失敗しちゃったの!」
もう!トラップ笑いすぎー!!
「だっはははははっ!おめぇが編み物で失敗なんて珍しいなー。ぷぷっ!」
「だって、いろいろ考え事しながら編んでたら気付かなくって・・・・。トラップ笑いすぎだってば。」
私の言葉に片眉をピッと上げたかと思うと、にやりとイタズラそうに笑う。
「何?俺が居なくって寂しかったから?」
「ち、違うもん!!小説の事で・・・・」
「ふーん?俺はずっとおめぇに逢いたかったけど?」
反則的な言葉をこぼしながら、トラップは私の手からスルスルとマフラーを手繰り寄せていく。
「うっ。・・・・・・私もトラップに逢いたかった・・・よ?」
トラップはズルイ。
この長いマフラーの様に、私はトラップの思うがままに操られてしまう。


するん・・・!
長いマフラーの最後の端っこが私の手をすり抜けて、全てトラップの手の中に収まった。
「しかしほんっとーに、長いなぁコレ!」
そう言って自分の首に巻き始めた。
えぇっ!?トラップ、使ってくれるのー!!??
「トラップ!いいよ!やっぱり長すぎるもん。私、編み直すからさ!」
トラップの身長を持ってしても、やはり長すぎるマフラー。
ダランと垂れたマフラーが、不器用すぎる自分と重なる。
「確かに長すぎだな。こりゃ。」
くっくっく。と笑いながら「じゃあさ。」と言って、余ったマフラーを持ち上げる。

ぽふっ。
くるん!
「え・・・・・!?」
突然トラップに後ろ向きにされた私は、自分の首を見下ろして確認する。
そこには、トラップの首に巻かれた綺麗な青緑色のマフラーと同じものが巻かれていて・・・・。
「おおー!ぴったり!!」
後ろからトラップに抱きしめられて、ひとつのマフラーで繋がれた体。
背中にトラップの体温を感じて、ドキドキする。
「ト、トラップ・・・?」
「このマフラー、一人で使うには長すぎっけど、2人で使うならぴったりの長さだぜ?」
ちらっと肩越しに後ろを振り返ると、トラップの首から伸びた澄んだ青緑色はそのまま私を繋ぎとめていた。
「本当だ・・・・。」
2人で巻いても窮屈に感じない、心地良い距離を感じるそんな絶妙な長さ。
後ろからまわされたままのトラップの手を、きゅっと握る。
マフラーの力だけじゃなくって、自分の力でトラップを繋ぎ止めようと。
4105069b.jpg

















「いい色のマフラーだな。」
後ろから嬉しそうな声がして、前を向いたまま私も笑う。
「うん!絶対トラップに似合うと思ったんだ!綺麗な青緑色でしょ?」
「ん?俺はおめぇに似合うなぁって思ったけど?」
「ええっ!?そう???」
驚いて改めてマフラーを見つめる。
そうかな?私にも似合うのかな・・・・?


空の青と草の緑。
私の大好きな色。
だって、大好きな人を思い出させてくれる色だから。
うん!
やっぱりトラップに似合うと思う。
綺麗な赤毛によく映える青緑。


・・・・本当に私、トラップに逢いたくて仕方なかったんだ。
今日は素直に甘えてみようかな。
トラップの嬉しそうな勝ち誇ったような顔がチラついて、ちょっと釈然としないけど。
そこで私は小さなイタズラを思いついた。
「ふふふっ!」
「・・・・なんだよ?いきなり。」
突然笑い出した私を、訝しげに覗き込むトラップ。
「あのね!このマフラーがブーツ家代々の、ありがたーいマフラーだったら面白いなぁと思って!」
ふふふっと笑うと、耳元で不機嫌そうな声がする。
「・・・・・その話はもう忘れろっ!!!」


小さな悪戯。
いつもトラップの思うがままにされてしまうから、ささやかな反抗。
ごめんね?
もう意地を張らずに、素直になるから許してね?
ゆっくりと振り向くと、拗ねたトラップの顔が見えて頬が緩む。
2人を繋ぎとめてくれているマフラーを、くいっ!と手繰り寄せるとそのままトラップの顔が近づいてくる。

ちゅっ。

軽く唇に触れるだけのキス。
トラップの瞳を見つめながら、にっこり笑う。


「私も、すっごく逢いたかったよ。トラップ!」



おしまい。



とりさん!
本当に素敵なイラスト、ありがとうござました!!!
オフ会帰りの電車の中から考え出したssです。
幸せそうな2人、ご馳走様でした☆

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続き、書き上げてしまいましたvvv
薬飲んだので、痒いのは大丈夫です!!
ではどうぞー☆
(前半を読んでない方はこちらを先にどうぞ!→癒えぬ傷跡


《癒えぬ傷跡・続》


お、俺は馬鹿か・・・・。

ついさっきの出来事と自分の行動に、ドッと後悔の念が押し寄せる。
情けねぇにも程がある。
あそこまでしといて逃げ出すなんて・・・・・。
馬鹿だ俺は・・・・・。


俺は家の前に立っている木にもたれながら、空を仰いだ。
吐く息は白く、夜風に連れ去られた。


はぁあああああ・・・・。
ったく。


調子狂う。
本当はあんな風に本気のプロポーズをするつもりなんか、さらさらに無かったんだ。
ただ、いつものようにパステルに嫌味を言って、怒った顔にちょっかいを出すつもりだったのに・・・・・。
気付いたら、

「俺が護ってやる」

そんな本音が零れてて・・・・・。
だああぁああっ!!
あんな台詞、俺のガラじゃねぇーっつーの!!!
しかも、しかも!!
いつもなら神業的な天然さで、『なんで?トラップが??』とか言って返してくるのに、今日は・・・・



『なんだか、プロポーズみたいだよ?』



・・・・・ちゃんと伝わってんじゃねぇーかっ!!
何でこんな時に限って伝わってんだよ!!??
だあああぁっっくっそー!!!
本気で調子狂うっちまう。
馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だ・・・・・・!!
俺は馬鹿だぁあっ!!

うがあぁあぁぁー!

「情けねぇ・・・・・・・。」
ポツリと呟いた俺の懺悔も同じように、闇へと吸い込まれていった。


俺はなんであんなに弱気になってたんだ?

あの時・・・・・


風呂から上がって部屋に入るとクレイは居なくて、代わりに終わりの無い暗闇が俺を待っていた。
今から考えるとただ、カーテンも閉まっていて外の景色が一切入ってこなかった事と、今日が新月だったって事。
ただそれだけの理由。
でも、俺の心を揺さぶるには簡単な罠。
俺は少しでも明かりが欲しくてカーテンを引いて月を探した。
別に満月じゃなくっても良かったんだ。
今にも消えてしまいそうな細い細い三日月でも・・・・。
俺の目に映ってくれさえすれば、そこに居てさえくれたら。

しかし、そこには闇があるだけだった。
ただただ、深い闇が・・・・・・・。


ドクンッ


変な焦燥感が体を駆け巡った。
いつもそこにあると思っていたものが、ある日忽然と姿を消したような虚無感。
大切なもの達が、いとも簡単にこの手をすり抜けて落ちていくような・・・・・・・。
そんな漠然とした不安が、俺の中の闇を浮かび上がらせたんだ。
今、冷静になれば馬鹿らしいにも程がある。
闇にビビッてたんだからな。
冒険者が聞いて呆れるぜ。


あーあ!
本当にいろいろ情けねぇーなー、俺。

でも、あそこで飛び出しといて正解と言えば正解だったのかも知れねぇ。
なぜなら、あの現場をクレイに目撃されてた可能性もあったんだ。
そこまで考えて、背筋に嫌な汗が流れる。

っあっぶねぇー!!

それこそ冗談じゃねぇー!
ってか、冗談にならねぇ。


パステル、怒ってんだろーな。
ふと、パステルの石鹸の香りがしてさっきの出来事を思い出す。
空耳ならぬ空匂い?
・・・・・相当来てんのか?俺は。
そんな自分に呆れていると、今度はちゃんと鼻が匂いを拾ってきた。
「パステル!?」
あわてて振り返るとそこには、パステルとは似ても似つかないずんぐりむっくりした男。
「・・・・・なんだよ。キットン。」
こいつから石鹸の匂いがするなんて想像つかねぇけど、明らかにキットンから匂ってくる。
・・・いや。
キットンから匂ってきても、俺の理性はちっとも揺らがねぇけどよ?
揺らいだらそれこそ、相当ヤバイだろ俺。


「ぐふっふっふっふ!トラップ、ダメじゃないですかー逃げたりしちゃぁ。」
キットンから出た言葉に背筋が凍る。
こ、こいつ・・・・まさか・・・・。
「な、何の事だよキットン?」
「壁に耳あり。扉に目あり。ですよ?」
一切悪びれない態度にイラッとくる。
「聞いてたってか?」
「いやぁー。あのままトラップが頑張る様でしたらクレイを引き止めるべく、私が一肌脱ごうと思っていたんですがねぇ。ぎゃっはっはっはっは!」
「うっせぇーよ!大きなお世話だっ!!」
「ぎゃっはっはっはっは!!!しかも、パステルの匂いがしただけで振り向くなんて、ベタ惚れですね、ベタ惚れ!!」
「だから、うっせぇーつうの!なんだよ!おめぇはスグリの匂いで振り向かねぇのかよっ!!」
だぁあっ!イライラするっ!!
「もちろん、振り向きますよ?当然でしょ?」
「・・・・・・・・。」
そんな堂々と・・・・・恥じらいとかねぇのかよ。
お前には。
「・・・・・あっそ。」
なんだか、こいつに付き合うのもめんどくせぇ。
だんだん体も冷えてきたし、そろそろ家に戻ろ・・・・。

「ん・・・・・!?」

玄関に向かって歩いてキットンとすれ違った時に、俺は変な違和感を感じた。
・・・・キットンから石鹸の匂いがしねぇ。
いや。でもさっき確かにこいつから匂いがしてきたのに?
「・・・・キットン、風呂入ったんじゃねぇの?」
「はい?もちろん入ってませんよ?」
「威張んじゃねぇーよ!ったく。じゃあさっきの匂いは・・・・?」
もしかして、あいつも外にいるのか?
ぐるりと見渡すが、パステルの姿は何処にもない。
「ふふふっ!さっきのは、私の素晴らしいプンスー魔法です!!」
「・・・・・しょーもねぇ。」
一気に脱力。
「たかがそんな匂いのために魔法を使ってんじゃねぇーよ!」
ゴツンと拳骨を落とすと、文句を言いながらも負けじと言い返してきた。
「何を言ってるんですか!?愛しい人の匂いと言うものは精神安定剤になるんですよ!?
まるで此処にいてるかのように、目には見えなくても触れられなくっても絶対的な安心が得られる、存在を感じられる大切なものなんです!
現にあなたも石鹸の匂いだけでパステルを連想したではありませんか!!」
「ぅぐっ、そうだけどよぉ・・・。なんか、変態臭いぞおめぇ・・・・。」
「私の事は良いんです!それよりもトラップ。
ちゃんとパステルにフォロー入れないと後々、面倒な事になりますよ?」
「それこそ、おめぇには関係ねぇだろっ!!」
くそぉー。
こいつは痛いとこ突いてくんじゃねぇよ!
「・・・・トラップは何を躊躇っているのですか?いつまでも悪戯に誤魔化してなんかいないで、パステルに正直に話してみてはどうですか?不安で仕方ないって。」
「ばっ!!んな事言えるか!笑われるのがオチだろ!?」
「パステルは笑ったりしません。そう言う子でしょ?」
「・・・・・・・・・。」
「ありのままの貴方もちゃんと受け止めてくれる。パステルはそう言う子です。きっと貴方一人で抱えている方がパステルも辛いと思いますよ?トラップ、貴方の今の気持ちを正直に打ち明けてみてはどうですか?」
「・・・・・・・・・。」
「パステルはまだ起きてると思いますよ。さっきリビングに居てましたから。私は先に休みます。」


そう言って俺に背を向けて玄関に向かう背中に口を開く。
「・・・・・さんきゅ。キットン。」
キットンは少し振り返りながらいつもの笑顔で
「おやすみなさい。」
そう言うと玄関の中へと消えた。


あいつにちゃんと話そう。

そして、もうしばらくプロポーズは先送りにしよう。

別に逃げるわけじゃねぇ。
 
ただ今は、俺の正直な話を聞いて欲しいだけだ。

癒えぬ傷跡の先にある未来は真っ暗闇だけじゃねぇ。

それを教えてくれたあいつに。

パステルに出会えた幸せをかみ締めながら俺は玄関をくぐった。




癒えぬ傷跡と共に歩いていくお前が好きだと。




おしまい。


お、終わりましたー!!
なんとか丸く収まったのでしょうか・・・・・??ドキドキ
いつもキットンはいいヤツです。(トラパシストにとって。笑wwww

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お待たせしましたー!!
2000HITOVERお礼です!!
どうぞー☆


《癒えぬ傷跡》


俺らは冒険者なんだ。
冒険中、怪我する事だって時には命を落としちまう事もある。
そう言う世界で生きてんだから怪我の一つや二つ、一々気にしてなんかいられねぇ。
冒険者っつー仕事している以上覚悟の上だろ?
怪我しちまっても、いつかは治る。



・・・・・・けど・・・・・・



傷跡は残るんだ。


あいつの傷は癒えて今は痛みも感じねぇんだろうが、俺の心はずっと痛いまま。
あの時の事を思い出すたび、あいつの傷跡が視界に入るたびに俺の胸の奥が癒えない古い傷のようにツキンと痛む。

あの時、俺はただ見ているしか出来なかった。
目の前の壁を叩き壊す力も。
傍であいつと共に戦う事も。
俺が出来た事・・・・。
それは、ただひたすら馬鹿みてぇにあいつの名前を叫ぶ事だけだった。

もしも・・・・・あの時クレイが居なかったら?
もし、シドの剣がなかったら・・・・?
考え出したらキリのねぇ不安が胸をよぎってく。
あの時パステルを攻撃したのはモルモ村のデュムリュムだが、真犯人は間違いなくあいつ。

『闇の行商人』

無意識にギリッと奥歯をかみ締めて、新月の暗闇と見えない敵を睨み付ける。
あいつだけは、この手で倒さなきゃ気がすまねぇ!!
でも倒す為には、今のままじゃ到底勝てやしないだろう。
俺が戦闘向きじゃねぇことは自分が一番分かってる。
今更俺が剣の特訓をした所で、付け焼刃くらいにしかならない。
それなら、俺が持ってるスキルを強化するのが妥当だろう。
盗賊としてのスキル、飛び道具の命中の良さ、そして僅かにある魔力。
自分の手のひらをしばらくじっと見つめた後、ギュッと握る。
この決意を放す事の無い様に、と。




俺は・・・・・




大切なものをちゃんと守れる様にもっと強くならなきゃいけねぇっ!
次は、『もしも・・・』なんてあめぇ世界じゃないかも知れねぇから。





もっと強く!!





ただ見ているだけなんて、もう真っ平ゴメンだ!




「トン!トン!」



いきなり物音がして我に返った。
自分の手を見ると爪がめり込んで外は真っ白、中は真っ赤になっていた。
「トラップー?起きてるんでしょ?」
俺の心とは正反対な、平和で呑気そう・・・いや実際呑気な声が聞こえて、握り締めた拳を少し緩める。
「・・・・なんだよ。」
ガチャっと音がして扉が開くと、ひょこりとパステルの呑気な顔が覗いた。
が、すぐにその顔が怪訝そうに歪む。
「明かりも付けないでどうしたの?」
パステルは急な暗闇に目が慣れてないのか、キョロキョロと視界を動かして俺を探している。
ふと、窓に浮かんだ影を見つけたんだろう。
暗闇の中でパステルと目が合った。

「・・・・出窓に座ってるの?トラップ、どうかしたの?」
心配そうな声が届く。
「別に?なんでもねぇよ。」
敢えて明るめに返事を返したが、俺の言葉を信じるつもりがねぇのか足元を確かめながら、ゆっくりと近づいてきた。
「こんな真っ暗に一人で、なんでもねぇは無いでしょう?」
ため息を一つ落として俺の正面に立ったパステルの顔は心配そうだった。
「明かり、付けなくっていい?」
無遠慮に明かりを付けるんじゃなくって、俺の意を汲んでくれたパステルの気持ちが嬉しかった。
「・・・・ああ。」
「そっか。」
それだけ言うと、俺の横にちょこんと腰を下ろした。
そのままパステルが部屋を出て行くと思っていた俺は少し驚いた。
「何か用か?」
俺がそう聞くとパステルは、ポン!と手を叩いて
「あ!そうだった!あのねさっきお風呂に入ったらさ、コレ、洗面所に忘れてたからさ。」
と、ずいっ!と右手をグーにして俺の前に突き出した。
「???」
条件反射でパステルの握り締めた右手の下に、自分の手をパーに開く。

ポトン。

俺の手のひらに落ちてきたのは、カイラニの町で買ったドラゴンのレリーフの付いたあの、ネックレスだった。
「あー、忘れてたのか。サンキュー。」
お礼を言って顔上げると、暗闇にパステルの手の甲が浮かんでいて・・・・。

ツキン!

(あっ・・・・)

声には出さなかったが、思わず唇が言葉を形作っていた。
「どうしたの?」
パステルは自分の手の甲に何かあるの?と覗きこむ。
「何?何か付いてた??」
不思議そうに眺めているパステル。
「・・・・わりぃ。」
突然謝った俺を、さらに不思議そうに見つめていて。
「・・・・何?突然どうしたの?トラップ変だよ、さっきから。」
「傷、残っちまったな。」
ポツリと漏らした俺の言葉を聞いて、パステルは「何の事?」と首を傾げてる。
改めて自分の手の甲を見つめて、やっと分かったらしい。

「あぁ!もしかして、この火傷の痕の事?」
ツキン・・・!
「ああ。」
俺の心は相変わらず痛むが、パステルの表情は晴れやかだった。
「大丈夫だよ!トラップ。」
にっこりと、一点の曇りも無い笑顔で続ける。
「そりゃあ傷跡は一生残るかもしれないけど、今はちっとも痛まないし・・・・・何より、私が冒険者として生きてた証みたいじゃない?」
そう言って自分の台詞に照れたのか、『えへへー』と締まりのない顔で笑う。


こいつは・・・・・。
何処までも平和と言うか、呑気と言うか・・・・




前向きな奴なんだ。




今まで凍えて硬くなっていた俺の心は、その一言に溶かされていく。
それと同時に、強張った表情も握り締めたままだった俺の手のひらにも、いつもの温かさが戻ってきた。
こいつの温もりが伝染ったみたいに。

「クレイやノルたちに比べたらこんな傷、どうって事無いよ?それにあの時トラップ、一番に私の所に駆けつけてくれたじゃない?ちゃんとお礼言ってなかったよね。
嬉しかったよトラップ!ありがとう!!」

そう、ずっとニコニコしたまま俺の手を優しく、でも心強くしっかりと握り締めたパステルの瞳は真っ直ぐだった。





強い心だと思った。





それは俺には絶対真似の出来ねぇ、しなやかな強さだった。

俺が惚れた瞳。

笑顔。

想い。

パステル・G・キングのすべて。



ははっ!敵わねぇ。
思わず、
「くっくっく!」
と、笑いが零れる。
突然笑い出した俺をキョトンと見つめるパステルの顔を見てると、いつもの悪戯心に火がついた。


握り締められてた手で、反対にパステルの華奢な手を握り締めてやる。
「な・・・何?」
パステルの第六感が何かを感じたのか、後ずさりをするパステル。
でも。


逃がすつもりねぇ。


放さねぇよこの手は、一生な。


「パステル・・・・今後冒険で大きな傷を負うことがあるかも知れねぇよな?」
神妙な顔をした俺を見て、
「う、うん・・・?」
目の前のパステルも神妙な面持ちで頷く。
握り締めたままのパステルの手の甲に、俺の唇を落とす。
チュッ。
そんな効果音がして、パステルの顔が一気に真っ赤になっていく。

このキスは俺をまた惚れさせてくれたお礼のつもり。

「でも、俺がそんなことさせねぇよ。」
「へ・・・・?どういう・・・・?」
パステルの大きなはしばみの瞳が、さらに大きく見開かれる。
「一生、俺がパステルの事を護るって事だ。」
「なんだか、それって・・・プロポーズみたいだよ?トラップ?」

おぉ!?珍しく分かってんじゃん。
そのままパステルをぐいっと自分の方へ引っ張って、抱きしめる。
すると、パステルの風呂上りの石鹸の香りに、俺の何かがグラリと揺れた。


やべっ!!!!!


そういや、こいつ風呂入る時に洗面所でネックレスを見つけたんだった!!
今更後悔してもおせぇ・・・・。
悪戯を仕掛ける所か、俺の方がこいつの甘い罠にはまりそうで・・・・。
頭の中でもう一人の俺が警告を鳴らしてる。

「ト、トラップー!!??」
俺の腕の中でジタバタもがくパステルの香りに更に酔ってしまったのか、俺の思考回路はショート寸前だ。

やべぇ・・・


本気でやばい!!


ぐいっ!とパステルを引き離すと、上気したいつもは白い頬と上目遣いに潤んだ瞳が飛び込んできた。


ばっ!!!


だから、やべぇって言ってんだろーがっ!!!


いろいろ限界に陥った俺は、パステルを置いて部屋を飛び出した。
部屋の前でクレイとぶつかったが、そんなの気にしてる暇はない。


冷静になれ!!
そう心の中で叫びながら家も飛び出して・・・・。


「なんだぁ?トラップの奴顔真っ赤だったけど、何があったんだ?」
そう言って自分の部屋を開けたクレイは、更に不可思議な光景を目にした。
「え・・・・?パステル??こんなくらい部屋で何してるんだ?」
クレイの疑問はもっともで・・・パステルは返事に困ってしまった。
「え・・・っとー。な、何でもないよー?」
あはっ。あははー。と乾いた不自然な笑いを残してパステルは部屋を出て行った。
「???なんなんだぁ?一体・・・?」
そうぼやいた彼の背後から声がした。


「いやいやー。トラップもまだまだですねー。ぎゃっはっはっはっは!!!」


おしまい。

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和稀さんの『解散の日』の二次小説を打ち込んでいるうちに頭をよぎったSSです。
いきなり書いてしまったので、支離滅裂かもしれないですが一応、『解散の日』の最終話の直後のお話です。
つまり、トラップの家に着くまでの話。
短いSSですが、よろしければどうぞ☆

《手のひらの魔法》


春にはまだまだ早い真っ赤な冬の夕焼けを背にして、トラップと2人手をつないで歩いていく。

・・・今までも何度も触れた事も、迷子にならないようにと連れられながら繋いだこともあるトラップの大きな手。

でも今繋いでいるトラップの手は、過去のそれらとはまったく違うと思う。
そう感じていたのは私だけじゃないみたいで・・・・。
時折ぎゅっと力を込めて握り締められる手のひらは、2人の想いでとても暖かかった。


今までも何度となく繋いだトラップの手。
いつもトラップと手を繋いで歩く時の私は、彼の背中ばかりを見ていた気がする。
行き先の分からない私を、どこまでも引っ張って行く背中。
初めて私と手を繋いだ時、トラップはどんな風に想ったんだろう?
ふと気になった。
彼にしたら何気ない行動だったのかな?
でも、トラップが常日頃から女の子と手を繋ぐ事に慣れていたとは思えないし・・・・・。
迷子の子をわざわざ手を繋いで案内している彼の姿は、私以外記憶にも無い。
私の事を女の子として意識した事が無かったのかなぁ。
それはそれで、ちょっと悲しい。

「おめぇ、すぐ迷子になるだろ!?」

そう言われて何度もトラップと手を繋いで歩いたけど、年頃の男女が手を繋いで歩いていたら他人から見ればそれはもう、恋人同士にしか見えない訳で・・・・・。
その事をあの時のトラップが気づいてなかったなんて・・・・・無いよね、絶対。
いつもどんな想いで私と手を繋いでいてくれたのか・・・・・今の私みたいにドキドキして意識する事があったのかな?
あの頃も、時折トラップからぎゅっと握り締めてくる事があった。
私から握り返した事は無かったけど・・・・・・。


あぁっ!!!!
そっかっ・・・・!!
あの時のトラップの「ぎゅっ。」は、トラップの想いだったんだ!!
今の私達がそうしてる様に。
口には出さなかったトラップの想い。
今更気付いて、私の胸がギュッとなる。


今、私の前には見慣れた背中は見えずに、拓けた景色が見える。
隣に彼がいる。
私はこれからトラップと同じ世界を見て歩いていけるんだと思うと、胸の奥から今まで感じたことの無いほどの幸福感が、私の体を支配していくのがわかった。

あぁ・・・・・。
愛する人がいて、こんなにも愛してくれる人がいる。
幸せすぎるよね、私。

・・・大好き・・・

ぎゅっと握り締められたままの手をぎゅっと握り返すと、2人で視線を合わせて笑いあう。
丘を下る間に何度となく繰り返してきた儀式。
あの頃のトラップには気付いてあげる事も、返事を返してあげる事も出来なかった小さな合図。

背中の夕日に負けないくらい真っ赤なトラップの顔を見ていると、喜びが沸々と沸いてきた。 
心で想っているだけじゃすでに、私の心は満足できないでいる。
そして言葉で伝えるだけでも物足りない私も・・・・・。
私が想いを口にするたびに優しく降ってくる唇も、この想いで染まればいいのに・・・・。

唇からすべてが伝わる魔法を唱えよう。
すべてが始った手のひらの魔法のように。
永遠にとける事の無い、この世界で一番素敵な魔法。

「トラップ、大好きだよ。」


おしまい。


即興ですみません;
みい、実はずっと考えてるんです。
いつもトラップはどんな気持ちでパステルの手をにぎるのかな?と。
だって、年頃の男の子が迷子の女の子の手をにぎるんですよ!?
普通だったらしません。
好きじゃなかったら握りません。
ありえないよね。
ましてやクレイじゃなくトラップが。

初めてパステルの手を握った時、トラップはどんな風に思ったのかなぁ・・・・。
やわらかいく小さな女の子の手。
トラップに聞いてみたいなぁ。
絶対答えてくれないけどね☆笑

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お待たせしましたー!!!!
1000HITお礼です!!
1000HITお礼とお待たせしてすみませんのss二本立てでお送りしますv
今回はこの間のオフ会で、語り合ったトラパスの子供ネタです。
もしも、そこまでの設定はちょっと・・・と思われる方は申し訳ないですが、ご遠慮くださいませ☆
大丈夫な方はそのままどうぞ!!!















今回の設定としては、トラ子8歳くらいパス太5歳くらいかな?
名前はメッチャ適当ですみません;
外見トラ似のトラ子と、外見パステル似のパス太。笑
性格は真逆だったら面白いのになぁーと思いながら書いたイラストです。
ssはそんな2人とその両親のお話です。
みいのイメージはこんな感じかな?↓


65362035.jpg


 


























《おとーさんと弟子》

トントン。

夫婦の寝室のベットの上でいつもの通り道具の手入れをしていると、遠慮がちにそのドアをノックする音が聞こえた。
「んー?」
ま、手入れもひと段落した所だし、相手してやるか。
そう思いながら、固まった背中をほぐしながら足を伸ばしていると、ゆっくり開いたドアから赤毛が覗く。
「おとーさん。あのね、今・・・ちょっといい?」
・・・なんだぁ?こいつ、元気ねぇな・・・。
いつもはもっと、『しっかりしたお姉ちゃん』でパステルにも弟にもビシビシ厳しい長女なんだが、・・・・今日の様子はいつもと違った。
日ごろしっかりしている奴がそうじゃないと、なんてゆーか、親としても心配だ。
「なんだよ?どーかしたのか?」
あえて明るく聞きながらポンポンとベットを叩いて、『ここに座れ』と誘ってやると、素直に隣にチョコンと座った。
んだが・・・・・
「・・・・・・・・・・・。」
・・・なんだよ。だんまりかよ。
本当にこいつらしくねーな。
「聞いて欲しい事があんだろ?言わなきゃわかんねーぞ。」
そう俺が言ったとたん、ポロポロと涙をこぼし始めたから驚いた。
・・・・こいつが泣くの、久しぶりに見たな・・・・・。
こいつが泣くって事はよっぽどの話なんだろう。
優しく頭をぽんぽんと叩いてやって、大丈夫だからと言うとやっと決心が付いたみてぇでポツリ、ポツリと話し始めた。

「あのね、私盗賊になるの諦めようと思って。」

盗賊の俺から見ても、持って産まれた盗賊としての才能に恵まれた我が子。
本人も自ら日々の盗賊修行にやる気を持って頑張っているのを一番近くで見ていた俺が良く知ってる。
なのに、いきなりどーしたんだ?
もちろん俺はこいつにブーツ一家を継いで貰おうなんて気はさらさらにねぇし、本人がやりたいって言うならやればいいと俺はずっと思ってる、無理強いをする気は一切無い。
だから盗賊になる、ならないは本人の意思を尊重している。
・・・でもこいつは、俺みたいな盗賊になりたいと、人一倍毎日辛い修行にも耐えてきてたじゃねぇーか。
・・・・聞いてみなきゃわかんねーな。
「ふーん?で?」
「私、どんなに頑張っても、この鍵の解除が出来なくって・・・。」
そう言って傷だらけの手に握り締めたものを見せてくれた。
それは俺が一ヶ月も前に渡した鍵開け練習用の鍵だった。
「・・・・おまえ、一ヶ月間ずーっとこれを解こうとしてたのか?」
「うん・・・・。でも、どんなに頑張っても解けないの。私盗賊に向いて無いのかなぁ・・・。」
・・・なーる。そう言う訳か。
ま、盗賊の修行してる奴なら何度と無く陥るスランプみたいなもんだ。
コイツの技術があれば、あとはコツさえ気付けばクリア出来んだけどなー。
でもこればっかりは自分で気づかなきゃ意味がねぇ。
本人も解き方を教えて欲しいと言ってこねぇって事は、そこら辺を心得ているからだと思う。
にしてもやっぱり根性あるな、こいつ。
俺は昔、3日で投げ出したけどなこの鍵・・・。
こういうところはパステルに似てるよなー。
「そっか。お前の気持ちはよく解った。じゃ、この鍵はもういらねーよな。返してもらうぞ。」
俺が冷たくそう言って、傷だらけの手から鍵を奪おうとすると
「・・・ダメッ!!」
一気に俺の手から鍵は奪い返された・・・・。
心の中でニヤリと勝ち誇った顔の俺。
でもあえて表情を変えずに追い討ちをかけてやる。
「いらねぇんだろ?それ。」
「・・・・・いる!」
「盗賊にならねぇ奴にはそんもん、必要ねぇだろ。返せよ。」
「やだ!・・・・やだやだやだっ!!私、盗賊になりたいんだもんっ!!」
両目に涙をいっぱい浮かべながら、必死に鍵を取られまいとしているわが弟子。
「じゃあ、本気で盗賊になりたいなら今日中にその鍵、クリアしてみろ。それが出来ねぇんだったらきっぱりあきらめろ。お前には向いてねぇよ。」
どこまでも突き放した言い方の俺の言葉に盗賊見習いは、はっと息を呑んで
「・・・わかった。出来たら持ってくる。」
『絶対、解いてやる!』そう決意に満ちた表情で部屋を出て行った。

・・・やっぱり根性あるよなあいつ。
外見は俺に瓜二つだけど、あーゆう根性あるところはパステルに似てる。
いい盗賊になれるから、頑張れ。
そんな風に心の中でエールを送っていると、またドアが開いた。
「・・・なんだよ。」
「ふふふ。ちゃんと助言してくれたんだね。トラップ。」
次に顔を覗かせたのはパステルだった。
「俺は助言なんかしてねーよ。あいつが勝手にやるって言って出てったんだよ。」
そう、俺は否定してるのにパステルは相変わらず、ニコニコしている。
「ううん。トラップなら上手にあの子を立直らせてくれると思ってたもん。」
あの子、私に似てるからさ。
そう言ってパステルは部屋を出て行った。

・・・・何、俺あいつに上手い事使われたってことか・・・?
ま、取りあえずは俺の一番弟子の報告待ちだな。
大丈夫、もうすぐしたらあいつは絶対笑顔でこのドアをノックする。
けっ、次はもっと難しいのを用意しといてやるから覚悟しとけよ。



おしまい。



《特等席》


「・・・・たでぇま。」
リビングで鼻歌まじりに編み物をしていると、玄関から息子が帰ってきた。
・・・けど、声がなんかおかしい。
いつものワンパク坊主の元気が無い。
何かあったかな?
編み物をテーブルに置いて出迎えに玄関まで行ってみる。
「おかえり!」
いつも誰かを出迎える時は笑顔で玄関に立つのが私の癖になっているんだよね。
トラップが無事に冒険から帰ってきたらやっぱり安心するじゃない?
だからトラップに限らず、誰かを笑顔で出迎えられる事が嬉しくって私は必ず笑顔で出迎えてる。
帰ってきたほうも、笑顔で『おかえり!』って言われる方が良いに決まってるもんね!
でも、笑顔の私に対して5歳になるうちの息子はむっすっとした顔。
しかもそれだけじゃない。
あちこち傷だらけで、服もドロドロ。よくみれば所々破けてたりもする。口の中が切れているのか、口の端には血もにじんでいる。
・・・これはケンカしてきたのかなぁ?
外見は私にそっくりなんだけど・・・誰かさんに似て血の気が多いって言うか、短気な息子。
あははは、口も悪いしねー。
悪い見本が家にいるから、怒っても説得力ゼロ。
いやー、あれでも昔に比べたら落ち着いたと思うんだけどね、私としては。
おっと、息子の事を忘れちゃうところだった・・・。
相変わらずむっすとした顔のままリビングのソファーにドカッと飛び込んだ。
「どうしたの?」
私が優しく聞いても返事は無かった。
うーん。こりゃ相当怒ってるかな?
「お母さん、隣に座ってもいい?」
そう聞くとチラッとこっちを見て、コクンと頷いた。
「ありがと。」
そう言って隣に座ると、ズズッと鼻をすする音が聞こえる。
もしかして泣いてた?
でも馬鹿正直に聞いても彼は絶対『うん。』とは言わない。
あははっ!
ね?誰かさんに似てるでしょ?
「何があったのか、おかあさん聞いてもいい?」
私がもう一度優しくこう聞くと、今度は瞳に涙を浮かべながら、うんと言ってくれた。
よっぽど辛い事でもあったのかなぁ。
なんとなくそう感じて、ポンポンと自分の膝を叩いて
「こっちにおいで。」
そう誘ってみると素直に、私の膝の上にチョコンと座ってぎゅうっとしがみついてきた。
やさしく頭を撫でてあげながら、彼の話を聞くことにした。

「今日、外で遊んでたらいきなりでかい奴らが来て、『お前んち、泥棒なんだろ!』って言って来やがったんだ。
俺んちは盗賊だから違うっって言ってんのに、あいつら『泥棒は捕まえなきゃな!』って『お仕置きだ。』っつって殴りかかってきたんだ!だから逆に俺が始末してやったんだ!」
そう言いながらも、かなり悔しくって彼の心が傷ついているのが手に取るように解ってしまった。
とりあえず、彼がどんなお仕置きをしてきたのかは気になるところだったけど、今大事なのはそこじゃない。
「そっか。辛かったんだね。」
そう言って、よしよしと頭を撫でてあげる。
「ひっく・・・」
「ちゃんと違うって言えたんだね。偉かったね。」
「うううぅっく・・・・」
ぎゅううっと小さな体を優しく抱きしめてあげた。
トラップもきっとこんな風に傷ついてたんだろうな。
そう言えば昔、『盗賊と泥棒の違いがわからない奴がいるんだ。ほんとにメーワクな話だぜ。』って言ってた事があった。
冒険中もそう言うことが時々あったもんね。
その度に憤慨してる私達に対してトラップはいつも、『別にいつもの事だし、言われ慣れてるから大丈夫。』そう、平気そうな顔してたけど・・・
そんな事言われて、平気なわけ無いよね。
言われ慣れているからって、傷ついてないわけじゃないもんね。
トラップは一々そんな事言わないけどきっと、今も傷ついてるんじゃないかと思う。
そして膝の上の小さな意地っ張りさんも。
「ねぇ?世界中にはいろんな人がいて、盗賊と泥棒の違いを知らない人も沢山いるのね?だからさ、お母さんカッコイイ盗賊のお話書いてみようかな。そしたらそれを読んだ人が盗賊って素敵な職業なんだって思ってもらえるかもしれないもんね。」
「・・・それってトラップの事か?」
「こら、呼び捨てにしないの。お父さんね。んー。どうしようかなぁ?どこかにカッコイイ盗賊はいないかしら?」
私がそう言うと
「はいはいはいはーい!!俺!俺の事書いてよ!!いいだろ!?」
一気に元気になったちっちゃい盗賊。
ふふ。かわいいなぁーもう。
「じゃあ、お母さんがかっこよく書ける様に、頑張ってかっこいい一人前の盗賊になってね!」
「おう!まかしとけっ!トラップの事なんか、チョチョイのチョイッと追い越してやるからな!」
そう自信たっぷりなかわいい息子の頭に、いきなり拳骨が降ってきた。
ごつっ!!
「いってってえぇええ!!あにすんだよ親父!」
「ふん!誰がチョチョイのチョイだってぇ?百年はやいっつーの!!」
「うっせぇー!!パステルが俺をモデルにするっつったから悔しいんだろ!?」
「あほか!!くだんねぇ事言ってねーで罠外しでもしてこいっ!!」
「べぇー。言われなくってもやりますよーだ!」
この2人、一度ぶつかったらどっちも引かないから大変だ。
ほんとに、似たもの親子だよ・・・。
息子と同時に嵐も去ったような静けさが戻ってきた。
「もう!トラップ大人気ないよ。」
「けっ。」
悪態をつきながら私の隣に腰を下ろしたトラップを見ていると、なぜだかさっきの息子とダブって見えた。
『言われ慣れてるからって、平気なわけじゃない。』
私が知らないだけでトラップもきっと、今までたくさん傷ついてきたんだろうな。
そう考えると一気にいとおしく見えた。
「トラップ・・・・。」
「ん?」
こっちを向いたトラップの頭を、息子にしてあげたのと同じように優しく撫でてあげた。
「よしよし、エライね。トラップ。」
そう私が褒めてあげるとトラップはニヤッと笑って、
「そんなんじゃ足らねぇ・・・。もっと慰めて?」
私の耳元でそう言ったかと思うと、そのまま私に体重を預けてきた。
「バカッ!見てたの?」
「見てた。」
「もう。・・・・今日だけだからね?ここは子供達の席なんだから。」
「・・・・ちげぇーよ。俺の特等席なのここは。」
「まったく、すぐ張り合うんだから・・・。」
そう文句を言いながらも、優しくトラップの頭を撫で続けているといつの間にか、穏やかな寝息が聞こえてきた。
ねぇトラップ、私幸せだよ?
そして私はトラップに見つからないように優しく静かにキスを落とす。


おしまい。





拍手[1回]

バトン回答が遅れた罰ゲームです。
罰ゲームは、真菜さんのトラップラブレター2に対するお返事です。
未読の方は先に『トラップからのラブレター』読んでからどうぞ→虹の宝箱
うーん。いろいろ妄想が広がったのですが、今回はオチ&ギャグは無しで、真面目に書きます。
んで、返事というよりは、その後の小説にしてしまいました。
いいでしょうか???
ってか、長くなりすぎました・・・;
覚悟して読んでくださーい。


《トラップのラブレター》


朝日が昇り始めた白闇の夜明け。
ルーミィもシロちゃんもまだ夢の中、きっと他のみんなもぐっすり眠っているはずの時間。
そして、いつもと何も変わらない同じ日常が始まるはずの朝。
私は一人、目を覚ました。
だれかが私のそばにいて私に触れている、そんな気配を感じたから。
まどろみの中でそれはとても、幸せな体験だった。
私はその優しく大きな手をよく知っている。
「・・・・・トラップ?」
確かにさっきまでトラップがいた気配はあったのに、目を覚ました私の目には誰も映らなかった。
あれ・・・?
誰もいない?
隣ではルーミィとシロちゃんが幸せそうに眠っている。
起こさないようにとそっと静かにベットから下りて辺りを見渡す。
でもやっぱり誰もいなかった。
夢・・・だった?
うんん!
違う。夢なんかじゃない。
なんだろう・・・胸騒ぎがする・・・・。

窓から外の様子を見ようと、窓に近づきかけた私の目に見慣れないものが見えた。
私の机の上に、ポツンと寂しく置かれたひとつの封筒。
宛名には『パステル様』と書かれていた。
トラップの字だ!
やっぱりさっきまでここに居たんだよね?トラップ。
何?トラップからの手紙だなんて、今まで一度も貰った事はない・・・。
必死に胸騒ぎを抑えて封を切り、トラップから貰った初めての手紙を読む。



ぽたっ。



ぽたぽたっ・・・。



私の頬を大粒の涙がこぼれていく。
「・・・っトラップ!!」



漏れ出てくる嗚咽を私は必死に噛み殺す。
後ろではルーミィ達が寝てるもん。起こすわけにはいかない。
馬鹿っ!
なんで・・・なんでこんな大事な事を手紙で伝えるの!?
いつもみたいに遠慮なくズケズケ言えばいいじゃない!!
「ふっ・・・うぅっ・・・・・・」
必死に自分で口を押さえて、嗚咽となって溢れくる感情をせき止めるようとしてみる。
馬鹿馬鹿っ!
私がこんな手紙一つで納得できる訳が無いじゃない!?
私の想いはどうなるのよ!
ずるいよ、トラップ!!
・・・さっきまでここに居たってことはまだ間に合うかもしれない!
そう思った時にはすでに、上着を羽織って乗合馬車の停留所に向かって私は走っていた。
トラップ・・・!!
お願い!!間に合って!


村の外れの停留所まで一気に走る。
走って走ってやっと停留所の屋根が見えてきた時だった。
丁度、乗合馬車が到着したのが見えた。
朝一番のエベリン行きの馬車だ。
トラップ、あれに乗るんだ!!
そう思ったのと同時に、停留所の中から見慣れた姿が出てきた。
いたっ・・・・!!

ずっと走ってきたせいで、呼吸もままならなかったけど思いっきり深呼吸をして声の限り叫ぶ。
「トラップ          !!!!」
金縛りにあったかの様に、トラップの体が固る。
すっかり荷造りをしたトラップの姿に涙が滲む。
・・・・・こんな姿を見るのは、もっと先だと思ってたのに・・・・!!
しかもこんな形で見ることになるなんて・・・。
嫌だよ、トラップ!
トラップは馬車の前で止まったままだ。
背中が迷ってる風に見えるのは気のせいじゃないよね!?
よしっ!そうやってずっと止まっててよ!
顔を見たら、一番になんて言ってやろう?
パステル様なんて柄じゃないって笑って、なんでみんなに黙って行くの!?って怒って、手紙なんて卑怯だってなじってやるんだから!
ずっと走ってきてしんどいし、迷わずここまで来れたんだから褒めて貰いたいし。
なによりも・・・伝えたい想いがあるから。 

ずっと振り返りもしないトラップ、御者の「まもなく発車します。」の言葉に歩を進め始めた。
うそっ!?
「なっ!?ちょっと待ってよ!トラップー!!」
やっと追いついて、トラップの腕を掴む。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・。トラップ?」
息を整えて呼びかけても、返事すら無い。
なんで!?どうして何も言ってくれないの?
トラップの前に回りこむ。
「っ!・・・・・トラップ・・・・・・」
私と視線すら合わせようとせずに顔を背けてたままのトラップは、今にも泣きそうな顔だった。

私、こんなトラップ初めて見た・・・。
ねぇ・・・そんな辛そうな顔しないでよ・・・何も・・・言えなくなるじゃない・・・。

そんな私たちに御者のおじさんが遠慮がちに聞いてきた。
「あのー、出発するけど乗るのかい?」
なおも乗ろうとするトラップを押し留めて
「いいです。乗りませんから出発してください。」
一気にそう言いきった私とトラップを交互に見ていたけど、おじさんはトラップが何も言わないのを乗車の意思無しととったみたいだった。
乗合馬車はそのまま出発した。

「はあああぁ。」
大きくため息をついて、トラップがはじめて口を開いてくれた。
馬車に乗る事が無理になった今、何も言わずにここを去る計画は諦めるしかないだろう。
スタスタとトラップは歩き始めた。
「ちょっ!トラップ、どこに行くのよ?」
あわてて追いかけると
「・・・・んなとこに突っ立ててもしゃーねぇだろ。」
いつもと変わらないトラップの口調に少しほっとする。
よかった。もうしゃべってくれないのかと思ってたところだったから・・・。
「うん。」
2人で停留所の外のベンチに腰をかけた。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
2人とも沈黙。
どうしよう。
たくさんトラップに言いたことがあったはずなのに、トラップのあの辛そうな表情を見てから何を言っていいのか解らないや。
「・・・手紙、読んだんだろ?」
「・・・うん。読んだよ。」
トラップの声を聞いて、隣にトラップがいてる事実を改めて思い出したら、急に涙がこぼれた。
「うううぅ。よかったぁー。間に合って良かったよぉー!!!」
もしも私が間に合わなかったら・・・、あのままトラップに一生逢えなかったかもしれないんだと思うと涙が止まらない。
安心して急に泣き出した私に
「・・・ごめん。」
と小さく呟く声が聞こえた。
「バカッ!トラップの想いはこんな手紙一枚で事足りるような事じゃないでしょう!?
 しかも私の気持ちを聞かずに行くつもりなの?それでトラップの想いは満足するの?
 私は嫌だよ!こんな別れ方!」
顔をキッ!上げてトラップを泣きながら睨んでやると、トラップも泣いていた。
「っ・・・・ごめん・・・」
「・・・・・トラップ・・・・・・」
手で自分の顔を覆いながらも、その手の隙間からは私と同じように大粒の涙が滴り落ちている。
そんなトラップの涙からたくさんの想いと覚悟が読み取れてしまうほど、私はずっとトラップの近くにいたんだ。
そうだよね、私たちずっと一緒にいたよね。
一緒に冒険して笑って怒って喧嘩して、いつも楽しかった。
私の唯一の居場所だったんだ。
みんながいて、トラップがいて・・・・。
ここに居ていいよって、応援してるから頑張れって、いつもそばにいてくれた。
ずっとこの生活が続きそうな錯覚さえ感じるほどに。
トラップもそうだよね?
でも、一生一緒にいられるとは流石の私も思って無かったよ・・・でも、こんな最後なんてあんまりだと思う。


・・・・トラップもきっと、沢山悩んで出した答えがこの手紙だったんだろう。
うん。いい加減な理由じゃない事くらい私にも解るよ。
そんなトラップの気持ちが痛いほど解るから・・・・
「どうしても行かなきゃダメなの?」
たくさんの想いに蓋をして優しくトラップに確認する。
「・・・ああ。」
覚悟を決めた顔だった。
いつの間かに大人になってたんだね・・・。
ううん。私が気づいてなかっただけで、彼は少しずつ大人の男の人になってたんだ。
「そっか。・・・・私、付いていってもいい?」
勇気を出して言ってみた。
トラップのそばを離れるなんて嫌だったから。
でも、驚いた顔をしたトラップだけど、首を縦には振らなかった。
「わりぃけど、連れて行けねぇ。」
はは・・・。・・・はっきり断られて涙も出ないよ。もう。
「クレイ達には?」
「あいつらには昨日の夜ちゃんと話した。」
「ええぇっ!!??じゃあ、なんで私には何も言わずに出て行こうとするのよ!?」
私1人だけ仲間はずれで、手紙一枚だなんて・・・・!
「俺もちゃんと、おめぇにも話すつもりだったんだ。でも・・・おめぇの寝顔を見てたらダメだった・・・。俺も手紙一枚なんて、すっげぇ卑怯だと思ったよ。パステル絶対怒るだろうなって。」
「当たり前でしょう!?第一、トラップらしくないよ!」
「俺らしくない?」
「うん。いつも私に言ってるじゃない。思ったことは口に出してはっきり言えって。」
そう私が言うと、トラップの顔がふっと一気に和らいだ。
「・・・・だな。でも、おめぇに何か伝えられるのがこれで最後になるかもしれねぇって思ったら・・・・、あんな手紙になっちまった。
あーあ!俺、一生言わねーつもりだったのによー!」
頭をがしがし掻きながら照れてるトラップに、私はあえて聞いた。
だって、本人がちゃんと目の前にいるんだもん。
ちゃんとトラップの口から聞きたいって思ってしまったから、・・・仕方ないよね?

「何を言わないつもりだったの?」
「・・・・・おめぇ、解ってて言ってるだろう。」
ジト目のトラップ。
「ん?何が?」
あくまでもとぼける私にトラップは観念したみたい。
「確かに手紙なんて一方的に書くもんじゃねぇよな。返事が欲しくなる。・・・・なぁ、パステル。」
まっすぐ見つめるトラップの視線を私もまっすぐ受け止める。
「はい。」
「俺はおめぇの事が好きだ。一生好きでいると言い切る自信があるくらいにな。・・・でもパステル、おめぇの気持ちは嬉しいけど連れては行かねぇ。はっきり言って帰ってこれるか俺自身もわからねぇから・・・。だから返事は聞きたくない。お前の気持ちを聞いたらいろんな覚悟が消えちまいそうだから。・・・俺は待ってろなんて言わない。ただ・・・なにも伝えないままで別れるのだけは絶対嫌だったんだ。わりぃな。あの手紙は俺の最後のわがままだ。許してくれなくてもいい。そして、パステルがいつまでも俺の大好きな笑顔で幸せに笑ってくれてたら、俺はどんな時も幸せだ・・・・」
「・・・だからパステル。幸せになれよ?」
こんな優しい顔のトラップを見るのは初めてだ。
そんな彼の表情が見れた嬉しさと切なさとでまた、涙が溢れくる。
そして止まらないトラップへの想い。
「私もトラップが好き。大好き。」
「おまっ!返事はいらねぇって言っただろ!?」
「嫌だ!私の最後のわがままだもん!言わせて・・・。」
そう言うとトラップは、覚悟を決めたように黙った。
今言わなきゃ、伝えたい人が目の前にいるのに、一生言えないままかもしれないなんて!!
どんなに叫んで願っても、届かない相手を想う思いがどんなに辛いものか、私はよく知ってる。
「トラップ、トラップの幸せが私の笑顔ならそれは、トラップがいつも私の隣にいてくれたからなんだよ?ねぇ。私の幸せはトラップがそばにいてくれること。・・・今まで隣にいて当たり前だと思ってたけど、これってすっごく幸せな事なんだよね?だからさ・・・」

ここまで言って鼻の頭がツーンとなる。
泣くな私!・・・笑えっ!!

「いってらっしゃい、トラップ。」
「え・・・?」
にっこり笑った私を食い入るように見つめるトラップ・・・。
「トラップ、大好きだよ。だから気をつけて行って来て。・・・そして・・・いつの日か私を幸せにしてね?」
泣かずに笑顔で言い切った私を待っていたのは、トラップの大きな腕だった。
ぎゅううううぅ。っと力を込めて私の想いまで抱きしめてくれた。
「・・・わかった。約束する。」
「絶対だよ?」
トラップの背中に腕を回して、ぎゅっと抱きしめる。
すると、さらに強い力で抱きしめられた。
「ああ。絶対幸せにしてやる。」


いつかきっと、トラップの隣で幸せな笑顔の私がいることだろう・・・・。
いつの日か・・・きっとね。




おしまい。



ここまで読んでくださり、ありがとうございますvvv

実はみいの中でトラパスの悲恋話は悲しすぎて無理なんです・・・。
(胸がギューってなっちゃう。)
他の方が書かれた悲恋話を読むのも辛いので、ほとんど読んでません。
トラップとパステルは幸せになって欲しいんです!絶対!!
だから、トラップがパステルの元を去る話を、自分で想像して書くことなんて一生無いと思ってました。
だから真菜さんのラブレターを読んで必死に考えました。
2人が悲しまなくていい結末を。
そして、みいが泣かずに書ける小説である事を・・・;
(ヘタレですみません;)
無事に書ききれて良かったです☆
真菜さん、素敵なラブレターをありがとうございました!!
とっても楽しく書けましたよーv
(・・・・あれ?これって罰ゲームだったっけ?笑)
 

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