ゆうゆうかんかん 悠悠閑閑
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買い物帰りの私はルーミィと手を繋いで、楽しい会話をしながら家路についていた。
すると突然、ズールの森の方から、ドドドドドッ!!!と地響きが聞こえてきた。
何事かと思ってルーミィと振り向くと、そこには目の色を変えたモンスターたちが大量に押し寄せていた。
シルバーリーブの村は大パニックに陥っていて、逃げ惑う人々と襲い掛かるモンスターで村はめちゃくちゃだった。
あらゆる物をかじりながら進むネズミ型のモンスター・・・・チャグデスだ。
一気に胃の底が冷える。
う・・そ・・・・・・・そんな・・・。
「ぱーあるぅ!こあいよー!!」
私の手をぎゅっと握り締め、可愛い顔を恐怖に歪めたルーミィを見て我に帰る。
「ルーミィ!逃げるよ!!!」
他のパーティのメンバーは家にいるはずだった。
とにかく家まで無事に帰りつかなきゃ!!
チャグデスの行進はすぐ後ろに迫っている。
このままじゃ飲み込まれてしまう!
ルーミィだけでも絶対、助けなきゃ!!
そう決心して、ルーミィを抱きかかえようとした時だった。
「ぱぁーるぅうぅぅぅぅっ!!!」
ルーミィの悲鳴が聞こえて、しまった!と思ったときにはすでにルーミィの小さな手は、私から離れていた。
私とルーミィの間を、チャグデスが土煙を上げながら進んでいく。
あっという間にルーミィの頭は見えなくなってしまった・・・。
「ルーミィ
私の馬鹿!!何で手を離したの!?
必死にルーミィを探す私にも容赦なく襲い掛かるチャグデス。
でもそんな事はどうでもいい。
私は、小さな小さなルーミィの手を離してしまった。
何よりも一番に守ろうと心に決めていたあの手を!
「ルーミィー!!」
何度も呼び続ける。
ルーミィ!!お願いだから無事でいてっ!!!
「・・・お・・・い!」
「パ・・テ・・・!」
「起きろ!パステル!!」
バチンと耳元で音がして飛び起きる。
「・・・・へ?な・・・に・・?」
目の焦点が合わない。
でもそんな事よりも、ルーミィを助けなきゃ!!
「ルーミィ!!」
そう叫んだ私の肩は、がしっと捕まえられて動けなかった。
「パステル!落ち着けって!」
この声はトラップだ。助けにきてくれたの!?
一気にピントがあって、目の前にトラップの顔が映る。
「トラップ!!ルーミィが・・・あれ?」
頭の視界もハッキリした私は異変に気づく。
「ここどこ?」
トラップに聞くと
「どこって、おめぇの部屋だろ?」
と呆れ顔で答えられた。
本当だ。私の部屋だった。
どういうことなの?首を傾げてる私にトラップは腰を下ろして説明してくれた。
つまり、私は夢を見てたんだよね。
トラップは私の部屋から叫び声が聞こえて、様子を見に来てくれたらしい。
泣きながらうなされている私を起してくれた・・・という訳。
なんだぁ、全部夢かぁ。良かったぁ。
安堵のため息を吐く。
「トラップ起してくれて、ありがとう。」
お礼を言うと
「ふん。変な時間に寝ると夢見が悪いって言うからな。そのせいだろ。」
と彼なりの優しさをみせてくれた。
彼も解ってるんだ。
私にとってこの秋の風を感じる季節、どうしても忘れられない事があることを。
ぽろぽろぽろ。
トラップの優しさに涙がこぼれた。
「ひっく・・・ひっく・・・」
泣き出した私の背中をトラップが優しく撫でてくれる。
それだけで安心した私は、心に仕舞って置くはずだったさっきの夢の恐怖を吐露していく。
「む、村にチャグデスが来て、ひっく。・・・その行進に飲み込まれて私、ルーミィの手を離しちゃった・・。ひっく。
必死に探したけどルーミィは見つからなくて・・・守れなくて・・・あんな思い、二度としたくない!!うわぁあぁぁああ!!」
小さな子供のように泣きじゃくる私に、
「そんな時は俺も一緒に探してやるから。パステル1人で抱え切れなかったら、俺がちゃんと助けてやる。だからもう心配すんな。わかったか?」
優しいトラップの言葉に、ただただ、うんうん。と頷く。
そうだ、私が困ってる時いつも助けてくれるんだよね、トラップは。
安心したのと、泣いて疲れたのでトラップの腕の中で再び、眠りに落ちてしまった私。
次はきっと楽しい夢を見れるだろう。
おしまい。
戻る
私がリア・ボンドの店番アルバイトから帰ってくると部屋にはトラップとルーミィがいた。
ルーミィは居たって言うよりも、寝ているといった方が正しいけどね。
「トラップ、ただいまー。」
「・・・おー。」
帰ってきた私を見もしないで、なにやら手元でカチャカチャさせている。
「それ、なにしてるの?」
「んー?」
トラップの手元を覗き込むと、へんてこな金属の塊をあっちにしたり、こっちにしたり動かしていた。
あ!なんか見たことある!
「それって知恵の輪ってやつ!?」
「そ。」
昔、近所のお兄ちゃんがやっていたのを見たことがあったけど、トラップが今やっているのは・・・凄く難しそう。
こんな知恵の輪は見たことないや。
「ねぇ、そんなの出来るの?」
純粋な疑問を口したら、
「ほい、出来た。」
見事にバラバラになった『元・知恵の輪』を見せてくれた。
「っすごーい!トラップて凄いんだね!!私も昔、もっと簡単なのをやった事があるけど一週間くらい掛かったよ!?」
一週間ずーっとガチャガチャさせたら、いきなりポロッて取れたんだよね。
結局、どうすれば取れるのかはわからないままで・・・。
なーんて話をトラップにしたら、大爆笑された。
「んじゃ、おめーにはこの知恵の輪、一生かかってもとけねーよ!」
そう言ってさっきまで解いていた知恵の輪を投げてよこした。
「・・・っ!!い、いつの間に元にもどしたのー!?」
私の手にすっぽりと収まった知恵の輪は、元の金属の塊に戻っていた・・・。
トラップは驚いている私に、ニヤッと笑って
「おめーにやるよ。ま、99パーセント解けねぇと思うけどよ。」
く、くやしーいー!
「言ったわね!?99パーセント駄目でも、あと1パーセントあるもん!絶対に解いて見せるんだから!!」
そう意気込んだ私をびっくりした顔でしばらく見ていたトラップは、急に噴き出した。
「ぶはっ!!おまっ!どんだけ前向きなんだよ。だははははっ!本当におもしれーヤツだな。お前は。」
いつまでも笑ってるトラップをほっといて、さっそく知恵の輪に取り掛かってみる。
・・・・・・さすがに一生は掛からないよね?私・・・・。
おしまい。
戻る
昼食が終わって、パーティみんなでコーヒーを飲みながらまったりした時間を過ごしていた。
「しおちゃん、しおちゃん」
「なんデシか?ルーミィしゃん。」
なんてことは無い、いつものほのぼのとしたやり取りが聞こえてきた。
ふふふ。2人の会話って平和そのものって感じだよね。
「あのねるーみぃ、しおちゃんとけっこんしたいんだお!」
「「「「「ぶはっあっ!!!!」」」」」
みんな一斉に吹き出す。
な、なにを言い出すのこの子は!!??
「?けっこん・・・デシか??」
「うん!」
にっこにこの笑顔なルーミィと首を傾げてるシロちゃん。
「けっこんって、なんデシか?ルーミィしゃん。」
「あのね、だいしゅきなひとと、ずーっといっしょにいられることなんだおう!」
うーん・・・。一応合ってると思うけど・・・。
シロちゃんはルーミィの話をふむふむと一生懸命聞いているし、他のメンバーもなんだか、見守り体制だ。
まあとにかく、2人のあどけない可愛らしい会話に邪魔する人は居なかった。
あのトラップでさえ、黙って聞いてるもんね。
「けっこんしたら、大好きな人とずっと一緒にいれるデシか?」
「そうだおう!だからるーみぃ、しおちゃんだいすきだあら、けっこんしたいんだぁ。」
「わかったデシ!ぼくもルーミィしゃん大好きデシ!だからけっこんするデシ!!」
「やったぁー!!あいがと、しおちゃん!」
(シロもルーミィもかわいい。)
(つか、こいつら意味わかってねーだろ。)
(ま。2人がお互い良いって言いてるんだし、いいんじゃないか?)
(エルフ族とドラゴン族の結婚ですか!?)
(あらー。シロちゃんそんな約束していいの?)
みんな目でそんな会話をしていたら、
「ぱーるぅもくりぇーもとりゃーもきっとんものりゅも、みーんなけっこんするんだおう!!!」
「ぼくもみなしゃんと、けっこんしたいデシ!みんな大好きデシ!ずーっと、一緒にいたいデシ!!」
「ねー。しおちゃん。」
「はいデシ!」
みんな、ルーミィとシロちゃんにプロポーズされてしまった。
ルーミィとシロちゃんの言葉に、みんなの心が暖かくなる。
うん。その思いはきっとみんな同じだよ。
みんな2人の事が大好きだし、いつまでも一緒にいたいと思ってるよ。
幼い2人が現実を知るその時まで、『みんなで結婚』しよーね!
「私もルーミィもシロちゃんも大好きだから結婚するー!」
「よし!俺も結婚するぞ。」
「これからもよろしく。ルーミィ、シロ。」
「スグリに怒られない様に、気をつけませんとね。」
「だあら、こいつら結婚の意味わかってねぇって!」
「「「「トラップ
おしまい。
戻る
「ねぇパステル。トラップに今,好きな子がいるか聞いて来て欲しいんだけど。」
シルバーリーブに居てると、こんなお願いはしょっちゅうだ。
いつもの私なら、うんざりしながらこう言う。
「悪いけど、本人に直接確認してちょうだい。」
ってね。
昔は頼まれる度に律儀に聞いてあげてたんだけど・・・・いつからかトラップがね、答えてくれないようになった。
答えてくれないばかりか、私を睨んでくるし機嫌も一気に悪くなるんだよね。
私は聞かれた事を伝えてるだけなのによ!?
だから最近は、私もこの手の質問には関わらないようにしているんだ。
・・・けどね、今回は違った。
「えっ!?今、トラップの好きな人って言った・・・よね?」
「うん、そう。トラップの好きな人。気になってるくらいでもいいんだけど、そう言う相手がいるのか、聞いてきてくれない?」
改めて私に『お願い』をしている人に確認する。
「パステルにしか頼めなくって・・・。」
そう言って照れた様に笑ってる人物・・・。
(いや!パステル!世の中にはいろんな人がいるんだから、偏見の目で見ちゃダメよ!)
(でもトラップにそんな趣味は無いと思うし・・・。)
(ううん。他人が口出すことじゃないよね!ここはトラップに任せよう!)
そう自分に言い聞かせて
「もしも、力になれなかったらごめんね。」
と相手に謝った。
でも相手の人はニッコリ笑って、
「ううん。それはそれでもいいから、パステルからトラップに聞いてくれる事に意味があるからね。あ。もしも教えてくれなかったら名前だしてくれてもいいから。」
「あなたの名前、トラップに言ってもいいの?」
「うん。大丈夫!で、もしも『好きな人はいない』って返事だったら、告白するつもりだからってトラップに伝えて。」
じゃあ、よろしく。と言って帰っていった。
う
私は、なんてトラップに伝えたらいいんだろう。
今まで通り「好きな子いてる?」なんて聞いてもきっと教えてくれないだろうし、きちんと事情を話すべき・・・?
本人も名前出していいよって言ってたもんね。
私なら、告白する前に「私、あなたが好きですよ!」なんて、とてもじゃないけど言えないけどさ。
あの人・・・よっぽど自信があるのかなあ?
私がウンウン悩んでいると、誰かが私の肩をポンポンと叩いた。
「ト、トラップー!!??」
振り返ると、悩みの張本人がいきなり立っていたからびっくり。
「んな、驚くこたぁねぇだろーが。・・・・・それより、あいつと何話してたんだ?」
ムッとした顔のトラップ。
「あいつって?」
「さっきまで、ここでしゃべってたじゃねーか。」
ああ。私の頭を悩ませてる、あの会話ね・・・。
私があれこれ悩んでも仕方ないよね、「実はね・・・」と話を切り出す事にした。
「さっきの人に、トラップに好きな人がいるか聞いて欲しいって頼まれたの。」
「はあぁ!?お前じゃなくて、俺の好きな人?あいつが?なんで?」
そんな矢継ぎ早に質問されても、私だってわかんないよー!
こっちが聞きたいくらいなのに。
「私も確認したんだよ?トラップだよね?って。でも本人はそうだって言い切るし、人の恋愛感に口出しするのも悪いかなって思って・・・引き受けちゃった。」
トラップは眉間にしわを寄せて、頭が痛いって顔をしてる。私も頭痛いよ・・・。
状況に付いていけないもん。気持ちがね。
「どうする?トラップ、なんて返事しておけばいい?」
トラップはチラッと私を見て、
「・・・他にあいつ、何も言ってなかったのか?」
ため息をつきながら、険しい顔で聞いてくる。
体中から『なんで俺なんだ?』って空気をかもし出しているし。
うんうん。解るよ、トラップの気持ち!
「えーっとね、・・・言いにくいんだけど・・・」
「・・・なんだよ。」
次の言葉を神妙な面持ちで、待ってるトラップだけど・・・相手の気持ちを伝えたら、傷つくんじゃないだろうか?
「いいから言えよ!」
気の短いトラップに急かされる。
えーい!なるようになれっ!
「実は、トラップに好きな人がいないなら、告白するって言ってたんだ。」
トラップの体がピシッ!と固まった。
そりゃそうだよね。固まるよねふつう。
「大丈夫?トラップ・・・。」
「告白って、俺に告白するって言ってたのか?あいつ。」
「えっと・・・」
あれ?どうだったっけ?告白するとは言ってたけど、『トラップに』とは言ってなかったかもしれない。
そう伝えると、いきなりトラップの表情が変わった。
さっきまでは難しい顔をしていたのに、憮然とした顔に変わっている。
「おまっ!誤解させんじゃねーよ!男に告白されたのかと思って、びびっただろーが。」
「えぇ!?なんで?彼、トラップの事が好きなんでしょ?」
そう。私に頼んできた相手は男の人で、私がよく行く図書館で司書をしてる人なんだよね。
すごく好青年って感じで、話もよく弾む相手だったから、「トラップの好きな人を・・」って言われた時の私の驚きは半端じゃなかった。
・・・んだけど、あれ?違うの?
「お前、どこまで鈍いんだよ。告白されるのは俺じゃなくって、十中八九お前だろーが。」
「えええぇえ!!??わたしー!?」
予想だにしてなかった答えに目をひん剥く。
「んじゃ、あいつに俺には好きなやつはいねぇって伝えておいてくれ。頑張れよ、パステル。」
ニヤッと笑って、意地悪な笑顔のまま私を置いて去っていくトラップ・・・。
うそでしょー!?なんで、こんな展開になるのー!?
いやだー!気が重ーい!!
1人途方に暮れていると、トラップが走って戻ってきた。
「言い忘れてた。あいつに俺が『ぶっ殺す!』って言ってたって伝えとけ。絶対伝えろよ!・・・んな悲壮な顔すんじゃねぇーよ。大丈夫だって。じゃあな。」
・・・・・・・って、全然大丈夫じゃなーい!!!
1人残された私の頭はまだ、痛いままだった・・・。
おしまい。
戻る
丁度、ルーミィとシロちゃんを寝かしつけて私が1階に降りてきたところで、風呂上りのトラップと鉢合わせた。
「髪、ちゃんと拭かないと風邪引くよー?」
髪からポタポタと水を滴らせながら歩くトラップの後ろに付いてキッチンに向かった。
最近夜はすごく冷え込むようになってきたもんね、塗れたままじゃ絶対風邪引くだろうな。
そんな私の親切心に返してきた答えはこれだった。
「へーへー。」
私の注意を聞き入れるつもりは彼には無いみたい。
相変わらずトラップの髪から水が滴っている。
「んもう。拭いてあげるからタオル貸して。」
見かねた私の言葉に、ぎょっとした顔のトラップ。
・・・・・なに、そんなに嫌がらなくてもいいじゃない!?
まったく。
「私に拭かれるのが嫌なら、ちゃんと自分で拭きなさいよね。」
「・・・へーへー。」
そう言って、がしがしと無造作に髪を拭き始めた。
・・・・トラップの髪ってなんで、あんなにサラサラなんだろ。
とくに手入れしてるって訳でも無いみたいだし、いつもこうやってがしがし拭いてるだけだもんね。
本当に羨ましい・・・・。
私の熱い視線を感じたのか、トラップは気味の悪そうな顔で振り返った。
「さっきから何見てんだよ。」
「あ。ごめんごめん。あのね、トラップの髪っていいなぁって思ってさ。」
「俺の髪ぃ?」
「うん。いつもタオルでさっさと拭くだけで乾くし、さらさらなストレートでいいなぁっと思って見てたの。」
「・・・・ふーん。」
あんまり興味なさそうな返事だった。
そうだよね。男の子ってあんまり髪に執着してなさそうだもんね。
そう思いながらも、飽きずにトラップの赤毛を見つめていたら、
「・・・・・まだ、なんかあんの?」
軽く睨まれてしまった。
「んー。トラップの赤毛ってさ、お母さん譲りだよね?」
「はぁ?・・・・そーだけど?」
トラップのお父さんはクレイみたいな黒髪だったもんね。
「じゃあさ。トラップのおじい様も赤毛なの?」
「ああ、そーだな。今じゃ白髪だらけのじじぃだけどな。」
にやりと笑って意地悪そうな顔のトラップ。
「おばあ様は、どうだったの?」
「ばーちゃんは・・・確か、茶髪だったな。」
「あのランドって曾おじい様も、赤毛だったよね。」
そう聞くと、ちょっと考えた顔してから、
「だな。昔の文献にそう書いてあった。赤毛の腰まである長髪だったてな。」
トラップは手を腰まで降ろした。
これくらいの長さってことだろう。
「すごいっ!!」
「ああ、すげーな。俺はそんなに伸ばせねーだろうしな。」
「ううん!長さもすごいけど、ブーツ一家の赤毛の遺伝がすごいって事!」
「はあぁ?」
何言ってのコイツって顔。
「だってね。違う髪色同士の夫婦から、絶対に赤毛の子供が生まれるんだよ?何代も。それってブーツ家の遺伝が強いって事でしょ?だから将来トラップの子供もきっと、赤毛の子が産まれてくるよね!」
うわぁ!!ちょっと見てみたい!!
ミニトラップだよきっと。
口が悪くって、ギャンブル好きで寝起きも悪いけど、きっと盗賊としての才能はバッチリな子供なんだろうな。
そうトラップに言うと、至上最高のいたずら笑顔で私に言った。
「試してみる?」
おしまい。
戻る
朝日が昇り始めた白闇の夜明け。
ルーミィもシロちゃんもまだ夢の中、きっと他のみんなもぐっすり眠っているはずの時間。
そして、いつもと何も変わらない同じ日常が始まるはずの朝。
私は一人、目を覚ました。
だれかが私のそばにいて私に触れている、そんな気配を感じたから。
まどろみの中でそれはとても、幸せな体験だった。
私はその優しく大きな手をよく知っている。
「・・・・・トラップ?」
確かにさっきまでトラップがいた気配はあったのに、目を覚ました私の目には誰も映らなかった。
あれ・・・?
誰もいない?
隣ではルーミィとシロちゃんが幸せそうに眠っている。
起こさないようにとそっと静かにベットから下りて辺りを見渡す。
でもやっぱり誰もいなかった。
夢・・・だった?
うんん!
違う。夢なんかじゃない。
なんだろう・・・胸騒ぎがする・・・・。
窓から外の様子を見ようと、窓に近づきかけた私の目に見慣れないものが見えた。
私の机の上に、ポツンと寂しく置かれたひとつの封筒。
宛名には『パステル様』と書かれていた。
トラップの字だ!
やっぱりさっきまでここに居たんだよね?トラップ。
何?トラップからの手紙だなんて、今まで一度も貰った事はない・・・。
必死に胸騒ぎを抑えて封を切り、トラップから貰った初めての手紙を読む。
ぽたっ。
ぽたぽたっ・・・。
私の頬を大粒の涙がこぼれていく。
「・・・っトラップ!!」
漏れ出てくる嗚咽を私は必死に噛み殺す。
後ろではルーミィ達が寝てるもん。起こすわけにはいかない。
馬鹿っ!
なんで・・・なんでこんな大事な事を手紙で伝えるの!?
いつもみたいに遠慮なくズケズケ言えばいいじゃない!!
「ふっ・・・うぅっ・・・・・・」
必死に自分で口を押さえて、嗚咽となって溢れくる感情をせき止めるようとしてみる。
馬鹿馬鹿っ!
私がこんな手紙一つで納得できる訳が無いじゃない!?
私の想いはどうなるのよ!
ずるいよ、トラップ!!
・・・さっきまでここに居たってことはまだ間に合うかもしれない!
そう思った時にはすでに、上着を羽織って乗合馬車の停留所に向かって私は走っていた。
トラップ・・・!!
お願い!!間に合って!
村の外れの停留所まで一気に走る。
走って走ってやっと停留所の屋根が見えてきた時だった。
丁度、乗合馬車が到着したのが見えた。
朝一番のエベリン行きの馬車だ。
トラップ、あれに乗るんだ!!
そう思ったのと同時に、停留所の中から見慣れた姿が出てきた。
いたっ・・・・!!
ずっと走ってきたせいで、呼吸もままならなかったけど思いっきり深呼吸をして声の限り叫ぶ。
「トラップ
金縛りにあったかの様に、トラップの体が固る。
すっかり荷造りをしたトラップの姿に涙が滲む。
・・・・・こんな姿を見るのは、もっと先だと思ってたのに・・・・!!
しかもこんな形で見ることになるなんて・・・。
嫌だよ、トラップ!
トラップは馬車の前で止まったままだ。
背中が迷ってる風に見えるのは気のせいじゃないよね!?
よしっ!そうやってずっと止まっててよ!
顔を見たら、一番になんて言ってやろう?
パステル様なんて柄じゃないって笑って、なんでみんなに黙って行くの!?って怒って、手紙なんて卑怯だってなじってやるんだから!
ずっと走ってきてしんどいし、迷わずここまで来れたんだから褒めて貰いたいし。
なによりも・・・伝えたい想いがあるから。
ずっと振り返りもしないトラップ、御者の「まもなく発車します。」の言葉に歩を進め始めた。
うそっ!?
「なっ!?ちょっと待ってよ!トラップー!!」
やっと追いついて、トラップの腕を掴む。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・。トラップ?」
息を整えて呼びかけても、返事すら無い。
なんで!?どうして何も言ってくれないの?
トラップの前に回りこむ。
「っ!・・・・・トラップ・・・・・・」
私と視線すら合わせようとせずに顔を背けてたままのトラップは、今にも泣きそうな顔だった。
私、こんなトラップ初めて見た・・・。
ねぇ・・・そんな辛そうな顔しないでよ・・・何も・・・言えなくなるじゃない・・・。
そんな私たちに御者のおじさんが遠慮がちに聞いてきた。
「あのー、出発するけど乗るのかい?」
なおも乗ろうとするトラップを押し留めて
「いいです。乗りませんから出発してください。」
一気にそう言いきった私とトラップを交互に見ていたけど、おじさんはトラップが何も言わないのを乗車の意思無しととったみたいだった。
乗合馬車はそのまま出発した。
「はあああぁ。」
大きくため息をついて、トラップがはじめて口を開いてくれた。
馬車に乗る事が無理になった今、何も言わずにここを去る計画は諦めるしかないだろう。
スタスタとトラップは歩き始めた。
「ちょっ!トラップ、どこに行くのよ?」
あわてて追いかけると
「・・・・んなとこに突っ立ててもしゃーねぇだろ。」
いつもと変わらないトラップの口調に少しほっとする。
よかった。もうしゃべってくれないのかと思ってたところだったから・・・。
「うん。」
2人で停留所の外のベンチに腰をかけた。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
2人とも沈黙。
どうしよう。
たくさんトラップに言いたことがあったはずなのに、トラップのあの辛そうな表情を見てから何を言っていいのか解らないや。
「・・・手紙、読んだんだろ?」
「・・・うん。読んだよ。」
トラップの声を聞いて、隣にトラップがいてる事実を改めて思い出したら、急に涙がこぼれた。
「うううぅ。よかったぁー。間に合って良かったよぉー!!!」
もしも私が間に合わなかったら・・・、あのままトラップに一生逢えなかったかもしれないんだと思うと涙が止まらない。
安心して急に泣き出した私に
「・・・ごめん。」
と小さく呟く声が聞こえた。
「バカッ!トラップの想いはこんな手紙一枚で事足りるような事じゃないでしょう!?
しかも私の気持ちを聞かずに行くつもりなの?それでトラップの想いは満足するの?
私は嫌だよ!こんな別れ方!」
顔をキッ!上げてトラップを泣きながら睨んでやると、トラップも泣いていた。
「っ・・・・ごめん・・・」
「・・・・・トラップ・・・・・・」
手で自分の顔を覆いながらも、その手の隙間からは私と同じように大粒の涙が滴り落ちている。
そんなトラップの涙からたくさんの想いと覚悟が読み取れてしまうほど、私はずっとトラップの近くにいたんだ。
そうだよね、私たちずっと一緒にいたよね。
一緒に冒険して笑って怒って喧嘩して、いつも楽しかった。
私の唯一の居場所だったんだ。
みんながいて、トラップがいて・・・・。
ここに居ていいよって、応援してるから頑張れって、いつもそばにいてくれた。
ずっとこの生活が続きそうな錯覚さえ感じるほどに。
トラップもそうだよね?
でも、一生一緒にいられるとは流石の私も思って無かったよ・・・でも、こんな最後なんてあんまりだと思う。
・・・・トラップもきっと、沢山悩んで出した答えがこの手紙だったんだろう。
うん。いい加減な理由じゃない事くらい私にも解るよ。
そんなトラップの気持ちが痛いほど解るから・・・・
「どうしても行かなきゃダメなの?」
たくさんの想いに蓋をして優しくトラップに確認する。
「・・・ああ。」
覚悟を決めた顔だった。
いつの間かに大人になってたんだね・・・。
ううん。私が気づいてなかっただけで、彼は少しずつ大人の男の人になってたんだ。
「そっか。・・・・私、付いていってもいい?」
勇気を出して言ってみた。
トラップのそばを離れるなんて嫌だったから。
でも、驚いた顔をしたトラップだけど、首を縦には振らなかった。
「わりぃけど、連れて行けねぇ。」
はは・・・。・・・はっきり断られて涙も出ないよ。もう。
「クレイ達には?」
「あいつらには昨日の夜ちゃんと話した。」
「ええぇっ!!??じゃあ、なんで私には何も言わずに出て行こうとするのよ!?」
私1人だけ仲間はずれで、手紙一枚だなんて・・・・!
「俺もちゃんと、おめぇにも話すつもりだったんだ。でも・・・おめぇの寝顔を見てたらダメだった・・・。俺も手紙一枚なんて、すっげぇ卑怯だと思ったよ。パステル絶対怒るだろうなって。」
「当たり前でしょう!?第一、トラップらしくないよ!」
「俺らしくない?」
「うん。いつも私に言ってるじゃない。思ったことは口に出してはっきり言えって。」
そう私が言うと、トラップの顔がふっと一気に和らいだ。
「・・・・だな。でも、おめぇに何か伝えられるのがこれで最後になるかもしれねぇって思ったら・・・・、あんな手紙になっちまった。
あーあ!俺、一生言わねーつもりだったのによー!」
頭をがしがし掻きながら照れてるトラップに、私はあえて聞いた。
だって、本人がちゃんと目の前にいるんだもん。
ちゃんとトラップの口から聞きたいって思ってしまったから、・・・仕方ないよね?
「何を言わないつもりだったの?」
「・・・・・おめぇ、解ってて言ってるだろう。」
ジト目のトラップ。
「ん?何が?」
あくまでもとぼける私にトラップは観念したみたい。
「確かに手紙なんて一方的に書くもんじゃねぇよな。返事が欲しくなる。・・・・なぁ、パステル。」
まっすぐ見つめるトラップの視線を私もまっすぐ受け止める。
「はい。」
「俺はおめぇの事が好きだ。一生好きでいると言い切る自信があるくらいにな。・・・でもパステル、おめぇの気持ちは嬉しいけど連れては行かねぇ。はっきり言って帰ってこれるか俺自身もわからねぇから・・・。だから返事は聞きたくない。お前の気持ちを聞いたらいろんな覚悟が消えちまいそうだから。・・・俺は待ってろなんて言わない。ただ・・・なにも伝えないままで別れるのだけは絶対嫌だったんだ。わりぃな。あの手紙は俺の最後のわがままだ。許してくれなくてもいい。そして、パステルがいつまでも俺の大好きな笑顔で幸せに笑ってくれてたら、俺はどんな時も幸せだ・・・・」
「・・・だからパステル。幸せになれよ?」
こんな優しい顔のトラップを見るのは初めてだ。
そんな彼の表情が見れた嬉しさと切なさとでまた、涙が溢れくる。
そして止まらないトラップへの想い。
「私もトラップが好き。大好き。」
「おまっ!返事はいらねぇって言っただろ!?」
「嫌だ!私の最後のわがままだもん!言わせて・・・。」
そう言うとトラップは、覚悟を決めたように黙った。
今言わなきゃ、伝えたい人が目の前にいるのに、一生言えないままかもしれないなんて!!
どんなに叫んで願っても、届かない相手を想う思いがどんなに辛いものか、私はよく知ってる。
「トラップ、トラップの幸せが私の笑顔ならそれは、トラップがいつも私の隣にいてくれたからなんだよ?ねぇ。私の幸せはトラップがそばにいてくれること。・・・今まで隣にいて当たり前だと思ってたけど、これってすっごく幸せな事なんだよね?だからさ・・・」
ここまで言って鼻の頭がツーンとなる。
泣くな私!・・・笑えっ!!
「いってらっしゃい、トラップ。」
「え・・・?」
にっこり笑った私を食い入るように見つめるトラップ・・・。
「トラップ、大好きだよ。だから気をつけて行って来て。・・・そして・・・いつの日か私を幸せにしてね?」
泣かずに笑顔で言い切った私を待っていたのは、トラップの大きな腕だった。
ぎゅううううぅ。っと力を込めて私の想いまで抱きしめてくれた。
「・・・わかった。約束する。」
「絶対だよ?」
トラップの背中に腕を回して、ぎゅっと抱きしめる。
すると、さらに強い力で抱きしめられた。
「ああ。絶対幸せにしてやる。」
いつかきっと、トラップの隣で幸せな笑顔の私がいることだろう・・・・。
いつの日か・・・きっとね。
おしまい。
戻る
トントン。
夫婦の寝室のベットの上でいつもの通り道具の手入れをしていると、遠慮がちにそのドアをノックする音が聞こえた。
「んー?」
ま、手入れもひと段落した所だし、相手してやるか。
そう思いながら、固まった背中をほぐしながら足を伸ばしていると、ゆっくり開いたドアから赤毛が覗く。
「おとーさん。あのね、今・・・ちょっといい?」
・・・なんだぁ?こいつ、元気ねぇな・・・。
いつもはもっと、『しっかりしたお姉ちゃん』でパステルにも弟にもビシビシ厳しい長女なんだが、・・・・今日の様子はいつもと違った。
日ごろしっかりしている奴がそうじゃないと、なんてゆーか、親としても心配だ。
「なんだよ?どーかしたのか?」
あえて明るく聞きながらポンポンとベットを叩いて、『ここに座れ』と誘ってやると、素直に隣にチョコンと座った。
んだが・・・・・
「・・・・・・・・・・・。」
・・・なんだよ。だんまりかよ。
本当にこいつらしくねーな。
「聞いて欲しい事があんだろ?言わなきゃわかんねーぞ。」
そう俺が言ったとたん、ポロポロと涙をこぼし始めたから驚いた。
・・・・こいつが泣くの、久しぶりに見たな・・・・・。
こいつが泣くって事はよっぽどの話なんだろう。
優しく頭をぽんぽんと叩いてやって、大丈夫だからと言うとやっと決心が付いたみてぇでポツリ、ポツリと話し始めた。
「あのね、私盗賊になるの諦めようと思って。」
盗賊の俺から見ても、持って産まれた盗賊としての才能に恵まれた我が子。
本人も自ら日々の盗賊修行にやる気を持って頑張っているのを一番近くで見ていた俺が良く知ってる。
なのに、いきなりどーしたんだ?
もちろん俺はこいつにブーツ一家を継いで貰おうなんて気はさらさらにねぇし、本人がやりたいって言うならやればいいと俺はずっと思ってる、無理強いをする気は一切無い。
だから盗賊になる、ならないは本人の意思を尊重している。
・・・でもこいつは、俺みたいな盗賊になりたいと、人一倍毎日辛い修行にも耐えてきてたじゃねぇーか。
・・・・聞いてみなきゃわかんねーな。
「ふーん?で?」
「私、どんなに頑張っても、この鍵の解除が出来なくって・・・。」
そう言って傷だらけの手に握り締めたものを見せてくれた。
それは俺が一ヶ月も前に渡した鍵開け練習用の鍵だった。
「・・・・おまえ、一ヶ月間ずーっとこれを解こうとしてたのか?」
「うん・・・・。でも、どんなに頑張っても解けないの。私盗賊に向いて無いのかなぁ・・・。」
・・・なーる。そう言う訳か。
ま、盗賊の修行してる奴なら何度と無く陥るスランプみたいなもんだ。
コイツの技術があれば、あとはコツさえ気付けばクリア出来んだけどなー。
でもこればっかりは自分で気づかなきゃ意味がねぇ。
本人も解き方を教えて欲しいと言ってこねぇって事は、そこら辺を心得ているからだと思う。
にしてもやっぱり根性あるな、こいつ。
俺は昔、3日で投げ出したけどなこの鍵・・・。
こういうところはパステルに似てるよなー。
「そっか。お前の気持ちはよく解った。じゃ、この鍵はもういらねーよな。返してもらうぞ。」
俺が冷たくそう言って、傷だらけの手から鍵を奪おうとすると
「・・・ダメッ!!」
一気に俺の手から鍵は奪い返された・・・・。
心の中でニヤリと勝ち誇った顔の俺。
でもあえて表情を変えずに追い討ちをかけてやる。
「いらねぇんだろ?それ。」
「・・・・・いる!」
「盗賊にならねぇ奴にはそんもん、必要ねぇだろ。返せよ。」
「やだ!・・・・やだやだやだっ!!私、盗賊になりたいんだもんっ!!」
両目に涙をいっぱい浮かべながら、必死に鍵を取られまいとしているわが弟子。
「じゃあ、本気で盗賊になりたいなら今日中にその鍵、クリアしてみろ。それが出来ねぇんだったらきっぱりあきらめろ。お前には向いてねぇよ。」
どこまでも突き放した言い方の俺の言葉に盗賊見習いは、はっと息を呑んで
「・・・わかった。出来たら持ってくる。」
『絶対、解いてやる!』そう決意に満ちた表情で部屋を出て行った。
・・・やっぱり根性あるよなあいつ。
外見は俺に瓜二つだけど、あーゆう根性あるところはパステルに似てる。
いい盗賊になれるから、頑張れ。
そんな風に心の中でエールを送っていると、またドアが開いた。
「・・・なんだよ。」
「ふふふ。ちゃんと助言してくれたんだね。トラップ。」
次に顔を覗かせたのはパステルだった。
「俺は助言なんかしてねーよ。あいつが勝手にやるって言って出てったんだよ。」
そう、俺は否定してるのにパステルは相変わらず、ニコニコしている。
「ううん。トラップなら上手にあの子を立直らせてくれると思ってたもん。」
あの子、私に似てるからさ。
そう言ってパステルは部屋を出て行った。
・・・・何、俺あいつに上手い事使われたってことか・・・?
ま、取りあえずは俺の一番弟子の報告待ちだな。
大丈夫、もうすぐしたらあいつは絶対笑顔でこのドアをノックする。
けっ、次はもっと難しいのを用意しといてやるから覚悟しとけよ。
おしまい。
戻る
「・・・・たでぇま。」
リビングで鼻歌まじりに編み物をしていると、玄関から息子が帰ってきた。
・・・けど、声がなんかおかしい。
いつものワンパク坊主の元気が無い。
何かあったかな?
編み物をテーブルに置いて出迎えに玄関まで行ってみる。
「おかえり!」
いつも誰かを出迎える時は笑顔で玄関に立つのが私の癖になっているんだよね。
トラップが無事に冒険から帰ってきたらやっぱり安心するじゃない?
だからトラップに限らず、誰かを笑顔で出迎えられる事が嬉しくって私は必ず笑顔で出迎えてる。
帰ってきたほうも、笑顔で『おかえり!』って言われる方が良いに決まってるもんね!
でも、笑顔の私に対して5歳になるうちの息子はむっすっとした顔。
しかもそれだけじゃない。
あちこち傷だらけで、服もドロドロ。よくみれば所々破けてたりもする。口の中が切れているのか、口の端には血もにじんでいる。
・・・これはケンカしてきたのかなぁ?
外見は私にそっくりなんだけど・・・誰かさんに似て血の気が多いって言うか、短気な息子。
あははは、口も悪いしねー。
悪い見本が家にいるから、怒っても説得力ゼロ。
いやー、あれでも昔に比べたら落ち着いたと思うんだけどね、私としては。
おっと、息子の事を忘れところだった・・・。
相変わらずむっすとした顔のままリビングのソファーにドカッと飛び込んだ。
「どうしたの?」
私が優しく聞いても返事は無かった。
うーん。こりゃ相当怒ってるかな?
「お母さん、隣に座ってもいい?」
そう聞くとチラッとこっちを見て、コクンと頷いた。
「ありがと。」
そう言って隣に座ると、ズズッと鼻をすする音が聞こえる。
もしかして泣いてた?
でも馬鹿正直に聞いても彼は絶対『うん。』とは言わない。
あははっ!
ね?誰かさんに似てるでしょ?
「何があったのか、おかあさん聞いてもいい?」
私がもう一度優しくこう聞くと、今度は瞳に涙を浮かべながら、うんと言ってくれた。
よっぽど辛い事でもあったのかなぁ。
なんとなくそう感じて、ポンポンと自分の膝を叩いて
「こっちにおいで。」
そう誘ってみると素直に、私の膝の上にチョコンと座ってぎゅうっとしがみついてきた。
やさしく頭を撫でてあげながら、彼の話を聞くことにした。
「今日、外で遊んでたらいきなりでかい奴らが来て、『お前んち、泥棒なんだろ!』って言って来やがったんだ。
俺んちは盗賊だから違うっって言ってんのに、あいつら『泥棒は捕まえなきゃな!』って『お仕置きだ。』っつって殴りかかってきたんだ!だから逆に俺が始末してやったんだ!」
そう言いながらも、かなり悔しくって彼の心が傷ついているのが手に取るように解ってしまった。
とりあえず、彼がどんなお仕置きをしてきたのかは気になるところだったけど、今大事なのはそこじゃない。
「そっか。辛かったんだね。」
そう言って、よしよしと頭を撫でてあげる。
「ひっく・・・」
「ちゃんと違うって言えたんだね。偉かったね。」
「うううぅっく・・・・」
ぎゅううっと小さな体を優しく抱きしめてあげた。
トラップもきっとこんな風に傷ついてたんだろうな。
そう言えば昔、『盗賊と泥棒の違いがわからない奴がいるんだ。ほんとにメーワクな話だぜ。』って言ってた事があった。
冒険中もそう言うことが時々あったもんね。
その度に憤慨してる私達に対してトラップはいつも、『別にいつもの事だし、言われ慣れてるから大丈夫。』そう、平気そうな顔してたけど・・・
そんな事言われて、平気なわけ無いよね。
言われ慣れているからって、傷ついてないわけじゃないもんね。
トラップは一々そんな事言わないけどきっと、今も傷ついてるんじゃないかと思う。
そして膝の上の小さな意地っ張りさんも。
「ねぇ?世界中にはいろんな人がいて、盗賊と泥棒の違いを知らない人も沢山いるのね?だからさ、お母さんカッコイイ盗賊のお話書いてみようかな。そしたらそれを読んだ人が盗賊って素敵な職業なんだって思ってもらえるかもしれないもんね。」
「・・・それってトラップの事か?」
「こら、呼び捨てにしないの。お父さんね。んー。どうしようかなぁ?どこかにカッコイイ盗賊はいないかしら?」
私がそう言うと
「はいはいはいはーい!!俺!俺の事書いてよ!!いいだろ!?」
一気に元気になったちっちゃい盗賊。
ふふ。かわいいなぁーもう。
「じゃあ、お母さんがかっこよく書ける様に、頑張ってかっこいい一人前の盗賊になってね!」
「おう!まかしとけっ!トラップの事なんか、チョチョイのチョイッと追い越してやるからな!」
そう自信たっぷりなかわいい息子の頭に、いきなり拳骨が降ってきた。
ごつっ!!
「いってってえぇええ!!あにすんだよ親父!」
「ふん!誰がチョチョイのチョイだってぇ?百年はやいっつーの!!」
「うっせぇー!!パステルが俺をモデルにするっつったから悔しいんだろ!?」
「あほか!!くだんねぇ事言ってねーで罠外しでもしてこいっ!!」
「べぇー。言われなくってもやりますよーだ!」
この2人、一度ぶつかったらどっちも引かないから大変だ。
ほんとに、似たもの親子だよ・・・。
息子と同時に嵐も去ったような静けさが戻ってきた。
「もう!トラップ大人気ないよ。」
「けっ。」
悪態をつきながら私の隣に腰を下ろしたトラップを見ていると、なぜだかさっきの息子とダブって見えた。
『言われ慣れてるからって、平気なわけじゃない。』
私が知らないだけでトラップもきっと、今までたくさん傷ついてきたんだろうな。
そう考えると一気にいとおしく見えた。
「トラップ・・・・。」
「ん?」
こっちを向いたトラップの頭を、息子にしてあげたのと同じように優しく撫でてあげた。
「よしよし、エライね。トラップ。」
そう私が褒めてあげるとトラップはニヤッと笑って、
「そんなんじゃ足らねぇ・・・。もっと慰めて?」
私の耳元でそう言ったかと思うと、そのまま私に体重を預けてきた。
「バカッ!見てたの?」
「見てた。」
「もう。・・・・今日だけだからね?ここは子供達の席なんだから。」
「・・・・ちげぇーよ。俺の特等席なのここは。」
「まったく、すぐ張り合うんだから・・・。」
そう文句を言いながらも、優しくトラップの頭を撫で続けているといつの間にか、穏やかな寝息が聞こえてきた。
ねぇトラップ、私幸せだよ?
そして私はトラップに見つからないように優しく静かにキスを落とす。
おしまい。
戻る
和稀さんの『解散の日』の二次小説を打ち込んでいるうちに頭をよぎったSSです。
いきなり書いてしまったので、支離滅裂かもしれないですが一応、『解散の日』の最終話の直後のお話です。
つまり、トラップの家に着くまでの話。
短いSSですが、よろしければどうぞ☆
《手のひらの魔法》
春にはまだまだ早い真っ赤な冬の夕焼けを背にして、トラップと2人手をつないで歩いていく。
・・・今までも何度も触れた事も、迷子にならないようにと連れられながら繋いだこともあるトラップの大きな手。
でも今繋いでいるトラップの手は、過去のそれらとはまったく違うと思う。
そう感じていたのは私だけじゃないみたいで・・・・。
時折ぎゅっと力を込めて握り締められる手のひらは、2人の想いでとても暖かかった。
今までも何度となく繋いだトラップの手。
いつもトラップと手を繋いで歩く時の私は、彼の背中ばかりを見ていた気がする。
行き先の分からない私を、どこまでも引っ張って行く背中。
初めて私と手を繋いだ時、トラップはどんな風に想ったんだろう?
ふと気になった。
彼にしたら何気ない行動だったのかな?
でも、トラップが常日頃から女の子と手を繋ぐ事に慣れていたとは思えないし・・・・・。
迷子の子をわざわざ手を繋いで案内している彼の姿は、私以外記憶にも無い。
私の事を女の子として意識した事が無かったのかなぁ。
それはそれで、ちょっと悲しい。
「おめぇ、すぐ迷子になるだろ!?」
そう言われて何度もトラップと手を繋いで歩いたけど、年頃の男女が手を繋いで歩いていたら他人から見ればそれはもう、恋人同士にしか見えない訳で・・・・・。
その事をあの時のトラップが気づいてなかったなんて・・・・・無いよね、絶対。
いつもどんな想いで私と手を繋いでいてくれたのか・・・・・今の私みたいにドキドキして意識する事があったのかな?
あの頃も、時折トラップからぎゅっと握り締めてくる事があった。
私から握り返した事は無かったけど・・・・・・。
あぁっ!!!!
そっかっ・・・・!!
あの時のトラップの「ぎゅっ。」は、トラップの想いだったんだ!!
今の私達がそうしてる様に。
口には出さなかったトラップの想い。
今更気付いて、私の胸がギュッとなる。
今、私の前には見慣れた背中は見えずに、拓けた景色が見える。
隣に彼がいる。
私はこれからトラップと同じ世界を見て歩いていけるんだと思うと、胸の奥から今まで感じたことの無いほどの幸福感が、私の体を支配していくのがわかった。
あぁ・・・・・。
愛する人がいて、こんなにも愛してくれる人がいる。
幸せすぎるよね、私。
・・・大好き・・・
ぎゅっと握り締められたままの手をぎゅっと握り返すと、2人で視線を合わせて笑いあう。
丘を下る間に何度となく繰り返してきた儀式。
あの頃のトラップには気付いてあげる事も、返事を返してあげる事も出来なかった小さな合図。
背中の夕日に負けないくらい真っ赤なトラップの顔を見ていると、喜びが沸々と沸いてきた。
心で想っているだけじゃすでに、私の心は満足できないでいる。
そして言葉で伝えるだけでも物足りない私も・・・・・。
私が想いを口にするたびに優しく降ってくる唇も、この想いで染まればいいのに・・・・。
唇からすべてが伝わる魔法を唱えよう。
すべてが始った手のひらの魔法のように。
永遠にとける事の無い、この世界で一番素敵な魔法。
「トラップ、大好きだよ。」
おしまい。
戻る
俺らは冒険者なんだ。
冒険中、怪我する事だって時には命を落としちまう事もある。
そう言う世界で生きてんだから怪我の一つや二つ、一々気にしてなんかいられねぇ。
冒険者っつー仕事している以上覚悟の上だろ?
怪我しちまっても、いつかは治る。
・・・・・・けど・・・・・・
傷跡は残るんだ。
あいつの傷は癒えて今は痛みも感じねぇんだろうが、俺の心はずっと痛いまま。
あの時の事を思い出すたび、あいつの傷跡が視界に入るたびに俺の胸の奥が癒えない古い傷のようにツキンと痛む。
あの時、俺はただ見ているしか出来なかった。
目の前の壁を叩き壊す力も。
傍であいつと共に戦う事も。
俺が出来た事・・・・。
それは、ただひたすら馬鹿みてぇにあいつの名前を叫ぶ事だけだった。
もしも・・・・・あの時クレイが居なかったら?
もし、シドの剣がなかったら・・・・?
考え出したらキリのねぇ不安が胸をよぎってく。
あの時パステルを攻撃したのはモルモ村のデュムリュムだが、真犯人は間違いなくあいつ。
『闇の行商人』
無意識にギリッと奥歯をかみ締めて、新月の暗闇と見えない敵を睨み付ける。
あいつだけは、この手で倒さなきゃ気がすまねぇ!!
でも倒す為には、今のままじゃ到底勝てやしないだろう。
俺が戦闘向きじゃねぇことは自分が一番分かってる。
今更俺が剣の特訓をした所で、付け焼刃くらいにしかならない。
それなら、俺が持ってるスキルを強化するのが妥当だろう。
盗賊としてのスキル、飛び道具の命中の良さ、そして僅かにある魔力。
自分の手のひらをしばらくじっと見つめた後、ギュッと握る。
この決意を放す事の無い様に、と。
俺は・・・・・
大切なものをちゃんと守れる様にもっと強くならなきゃいけねぇっ!
次は、『もしも・・・』なんてあめぇ世界じゃないかも知れねぇから。
もっと強く!!
ただ見ているだけなんて、もう真っ平ゴメンだ!
「トン!トン!」
いきなり物音がして我に返った。
自分の手を見ると爪がめり込んで外は真っ白、中は真っ赤になっていた。
「トラップー?起きてるんでしょ?」
俺の心とは正反対な、平和で呑気そう・・・いや実際呑気な声が聞こえて、握り締めた拳を少し緩める。
「・・・・なんだよ。」
ガチャっと音がして扉が開くと、ひょこりとパステルの呑気な顔が覗いた。
が、すぐにその顔が怪訝そうに歪む。
「明かりも付けないでどうしたの?」
パステルは急な暗闇に目が慣れてないのか、キョロキョロと視界を動かして俺を探している。
ふと、窓に浮かんだ影を見つけたんだろう。
暗闇の中でパステルと目が合った。
「・・・・出窓に座ってるの?トラップ、どうかしたの?」
心配そうな声が届く。
「別に?なんでもねぇよ。」
敢えて明るめに返事を返したが、俺の言葉を信じるつもりがねぇのか足元を確かめながら、ゆっくりと近づいてきた。
「こんな真っ暗に一人で、なんでもねぇは無いでしょう?」
ため息を一つ落として俺の正面に立ったパステルの顔は心配そうだった。
「明かり、付けなくっていい?」
無遠慮に明かりを付けるんじゃなくって、俺の意を汲んでくれたパステルの気持ちが嬉しかった。
「・・・・ああ。」
「そっか。」
それだけ言うと、俺の横にちょこんと腰を下ろした。
そのままパステルが部屋を出て行くと思っていた俺は少し驚いた。
「何か用か?」
俺がそう聞くとパステルは、ポン!と手を叩いて
「あ!そうだった!あのねさっきお風呂に入ったらさ、コレ、洗面所に忘れてたからさ。」
と、ずいっ!と右手をグーにして俺の前に突き出した。
「???」
条件反射でパステルの握り締めた右手の下に、自分の手をパーに開く。
ポトン。
俺の手のひらに落ちてきたのは、カイラニの町で買ったドラゴンのレリーフの付いたあの、ネックレスだった。
「あー、忘れてたのか。サンキュー。」
お礼を言って顔上げると、暗闇にパステルの手の甲が浮かんでいて・・・・。
ツキン!
(あっ・・・・)
声には出さなかったが、思わず唇が言葉を形作っていた。
「どうしたの?」
パステルは自分の手の甲に何かあるの?と覗きこむ。
「何?何か付いてた??」
不思議そうに眺めているパステル。
「・・・・わりぃ。」
突然謝った俺を、さらに不思議そうに見つめていて。
「・・・・何?突然どうしたの?トラップ変だよ、さっきから。」
「傷、残っちまったな。」
ポツリと漏らした俺の言葉を聞いて、パステルは「何の事?」と首を傾げてる。
改めて自分の手の甲を見つめて、やっと分かったらしい。
「あぁ!もしかして、この火傷の痕の事?」
ツキン・・・!
「ああ。」
俺の心は相変わらず痛むが、パステルの表情は晴れやかだった。
「大丈夫だよ!トラップ。」
にっこりと、一点の曇りも無い笑顔で続ける。
「そりゃあ傷跡は一生残るかもしれないけど、今はちっとも痛まないし・・・・・何より、私が冒険者として生きてた証みたいじゃない?」
そう言って自分の台詞に照れたのか、『えへへー』と締まりのない顔で笑う。
こいつは・・・・・。
何処までも平和と言うか、呑気と言うか・・・・
前向きな奴なんだ。
今まで凍えて硬くなっていた俺の心は、その一言に溶かされていく。
それと同時に、強張った表情も握り締めたままだった俺の手のひらにも、いつもの温かさが戻ってきた。
こいつの温もりが伝染ったみたいに。
「クレイやノルたちに比べたらこんな傷、どうって事無いよ?それにあの時トラップ、一番に私の所に駆けつけてくれたじゃない?ちゃんとお礼言ってなかったよね。
嬉しかったよトラップ!ありがとう!!」
そう、ずっとニコニコしたまま俺の手を優しく、でも心強くしっかりと握り締めたパステルの瞳は真っ直ぐだった。
強い心だと思った。
それは俺には絶対真似の出来ねぇ、しなやかな強さだった。
俺が惚れた瞳。
笑顔。
想い。
パステル・G・キングのすべて。
ははっ!敵わねぇ。
思わず、
「くっくっく!」
と、笑いが零れる。
突然笑い出した俺をキョトンと見つめるパステルの顔を見てると、いつもの悪戯心に火がついた。
握り締められてた手で、反対にパステルの華奢な手を握り締めてやる。
「な・・・何?」
パステルの第六感が何かを感じたのか、後ずさりをするパステル。
でも。
逃がすつもりねぇ。
放さねぇよこの手は、一生な。
「パステル・・・・今後冒険で大きな傷を負うことがあるかも知れねぇよな?」
神妙な顔をした俺を見て、
「う、うん・・・?」
目の前のパステルも神妙な面持ちで頷く。
握り締めたままのパステルの手の甲に、俺の唇を落とす。
チュッ。
そんな効果音がして、パステルの顔が一気に真っ赤になっていく。
このキスは俺をまた惚れさせてくれたお礼のつもり。
「でも、俺がそんなことさせねぇよ。」
「へ・・・・?どういう・・・・?」
パステルの大きなはしばみの瞳が、さらに大きく見開かれる。
「一生、俺がパステルの事を護るって事だ。」
「なんだか、それって・・・プロポーズみたいだよ?トラップ?」
おぉ!?珍しく分かってんじゃん。
そのままパステルをぐいっと自分の方へ引っ張って、抱きしめる。
すると、パステルの風呂上りの石鹸の香りに、俺の何かがグラリと揺れた。
やべっ!!!!!
そういや、こいつ風呂入る時に洗面所でネックレスを見つけたんだった!!
今更後悔してもおせぇ・・・・。
悪戯を仕掛ける所か、俺の方がこいつの甘い罠にはまりそうで・・・・。
頭の中でもう一人の俺が警告を鳴らしてる。
「ト、トラップー!!??」
俺の腕の中でジタバタもがくパステルの香りに更に酔ってしまったのか、俺の思考回路はショート寸前だ。
やべぇ・・・
本気でやばい!!
ぐいっ!とパステルを引き離すと、上気したいつもは白い頬と上目遣いに潤んだ瞳が飛び込んできた。
ばっ!!!
だから、やべぇって言ってんだろーがっ!!!
いろいろ限界に陥った俺は、パステルを置いて部屋を飛び出した。
部屋の前でクレイとぶつかったが、そんなの気にしてる暇はない。
冷静になれ!!
そう心の中で叫びながら家も飛び出して・・・・。
「なんだぁ?トラップの奴顔真っ赤だったけど、何があったんだ?」
そう言って自分の部屋を開けたクレイは、更に不可思議な光景を目にした。
「え・・・・?パステル??こんなくらい部屋で何してるんだ?」
クレイの疑問はもっともで・・・パステルは返事に困ってしまった。
「え・・・っとー。な、何でもないよー?」
あはっ。あははー。と乾いた不自然な笑いを残してパステルは部屋を出て行った。
「???なんなんだぁ?一体・・・?」
そうぼやいた彼の背後から声がした。
「いやいやー。トラップもまだまだですねー。ぎゃっはっはっはっは!!!」
続編