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ゆうゆうかんかん 悠悠閑閑

悠悠閑閑へようこそ! 当ブログはフォーチュンクエストトラパス中心サイトです。 二次小説や日記などがメインの ブログ名のまま、のんびり運営です。 よろしければどうぞ!

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《特等席》



「・・・・たでぇま。」
リビングで鼻歌まじりに編み物をしていると、玄関から息子が帰ってきた。
・・・けど、声がなんかおかしい。
いつものワンパク坊主の元気が無い。
何かあったかな?
編み物をテーブルに置いて出迎えに玄関まで行ってみる。
「おかえり!」
いつも誰かを出迎える時は笑顔で玄関に立つのが私の癖になっているんだよね。
トラップが無事に冒険から帰ってきたらやっぱり安心するじゃない?
だからトラップに限らず、誰かを笑顔で出迎えられる事が嬉しくって私は必ず笑顔で出迎えてる。
帰ってきたほうも、笑顔で『おかえり!』って言われる方が良いに決まってるもんね!
でも、笑顔の私に対して5歳になるうちの息子はむっすっとした顔。
しかもそれだけじゃない。
あちこち傷だらけで、服もドロドロ。よくみれば所々破けてたりもする。口の中が切れているのか、口の端には血もにじんでいる。
・・・これはケンカしてきたのかなぁ?
外見は私にそっくりなんだけど・・・誰かさんに似て血の気が多いって言うか、短気な息子。
あははは、口も悪いしねー。
悪い見本が家にいるから、怒っても説得力ゼロ。
いやー、あれでも昔に比べたら落ち着いたと思うんだけどね、私としては。
おっと、息子の事を忘れところだった・・・。
相変わらずむっすとした顔のままリビングのソファーにドカッと飛び込んだ。
「どうしたの?」
私が優しく聞いても返事は無かった。
うーん。こりゃ相当怒ってるかな?
「お母さん、隣に座ってもいい?」
そう聞くとチラッとこっちを見て、コクンと頷いた。
「ありがと。」
そう言って隣に座ると、ズズッと鼻をすする音が聞こえる。
もしかして泣いてた?
でも馬鹿正直に聞いても彼は絶対『うん。』とは言わない。
あははっ!
ね?誰かさんに似てるでしょ?
「何があったのか、おかあさん聞いてもいい?」
私がもう一度優しくこう聞くと、今度は瞳に涙を浮かべながら、うんと言ってくれた。
よっぽど辛い事でもあったのかなぁ。
なんとなくそう感じて、ポンポンと自分の膝を叩いて
「こっちにおいで。」
そう誘ってみると素直に、私の膝の上にチョコンと座ってぎゅうっとしがみついてきた。
やさしく頭を撫でてあげながら、彼の話を聞くことにした。

「今日、外で遊んでたらいきなりでかい奴らが来て、『お前んち、泥棒なんだろ!』って言って来やがったんだ。
俺んちは盗賊だから違うっって言ってんのに、あいつら『泥棒は捕まえなきゃな!』って『お仕置きだ。』っつって殴りかかってきたんだ!だから逆に俺が始末してやったんだ!」
そう言いながらも、かなり悔しくって彼の心が傷ついているのが手に取るように解ってしまった。
とりあえず、彼がどんなお仕置きをしてきたのかは気になるところだったけど、今大事なのはそこじゃない。
「そっか。辛かったんだね。」
そう言って、よしよしと頭を撫でてあげる。
「ひっく・・・」
「ちゃんと違うって言えたんだね。偉かったね。」
「うううぅっく・・・・」
ぎゅううっと小さな体を優しく抱きしめてあげた。
トラップもきっとこんな風に傷ついてたんだろうな。
そう言えば昔、『盗賊と泥棒の違いがわからない奴がいるんだ。ほんとにメーワクな話だぜ。』って言ってた事があった。
冒険中もそう言うことが時々あったもんね。
その度に憤慨してる私達に対してトラップはいつも、『別にいつもの事だし、言われ慣れてるから大丈夫。』そう、平気そうな顔してたけど・・・
そんな事言われて、平気なわけ無いよね。
言われ慣れているからって、傷ついてないわけじゃないもんね。
トラップは一々そんな事言わないけどきっと、今も傷ついてるんじゃないかと思う。
そして膝の上の小さな意地っ張りさんも。
「ねぇ?世界中にはいろんな人がいて、盗賊と泥棒の違いを知らない人も沢山いるのね?だからさ、お母さんカッコイイ盗賊のお話書いてみようかな。そしたらそれを読んだ人が盗賊って素敵な職業なんだって思ってもらえるかもしれないもんね。」
「・・・それってトラップの事か?」
「こら、呼び捨てにしないの。お父さんね。んー。どうしようかなぁ?どこかにカッコイイ盗賊はいないかしら?」
私がそう言うと
「はいはいはいはーい!!俺!俺の事書いてよ!!いいだろ!?」
一気に元気になったちっちゃい盗賊。
ふふ。かわいいなぁーもう。
「じゃあ、お母さんがかっこよく書ける様に、頑張ってかっこいい一人前の盗賊になってね!」
「おう!まかしとけっ!トラップの事なんか、チョチョイのチョイッと追い越してやるからな!」
そう自信たっぷりなかわいい息子の頭に、いきなり拳骨が降ってきた。
ごつっ!!
「いってってえぇええ!!あにすんだよ親父!」
「ふん!誰がチョチョイのチョイだってぇ?百年はやいっつーの!!」
「うっせぇー!!パステルが俺をモデルにするっつったから悔しいんだろ!?」
「あほか!!くだんねぇ事言ってねーで罠外しでもしてこいっ!!」
「べぇー。言われなくってもやりますよーだ!」
この2人、一度ぶつかったらどっちも引かないから大変だ。
ほんとに、似たもの親子だよ・・・。
息子と同時に嵐も去ったような静けさが戻ってきた。
「もう!トラップ大人気ないよ。」
「けっ。」
悪態をつきながら私の隣に腰を下ろしたトラップを見ていると、なぜだかさっきの息子とダブって見えた。
『言われ慣れてるからって、平気なわけじゃない。』
私が知らないだけでトラップもきっと、今までたくさん傷ついてきたんだろうな。
そう考えると一気にいとおしく見えた。
「トラップ・・・・。」
「ん?」
こっちを向いたトラップの頭を、息子にしてあげたのと同じように優しく撫でてあげた。
「よしよし、エライね。トラップ。」
そう私が褒めてあげるとトラップはニヤッと笑って、
「そんなんじゃ足らねぇ・・・。もっと慰めて?」
私の耳元でそう言ったかと思うと、そのまま私に体重を預けてきた。
「バカッ!見てたの?」
「見てた。」
「もう。・・・・今日だけだからね?ここは子供達の席なんだから。」
「・・・・ちげぇーよ。俺の特等席なのここは。」
「まったく、すぐ張り合うんだから・・・。」
そう文句を言いながらも、優しくトラップの頭を撫で続けているといつの間にか、穏やかな寝息が聞こえてきた。
ねぇトラップ、私幸せだよ?
そして私はトラップに見つからないように優しく静かにキスを落とす。



おしまい。

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