ゆうゆうかんかん 悠悠閑閑
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《トラップのラブレター》
朝日が昇り始めた白闇の夜明け。
ルーミィもシロちゃんもまだ夢の中、きっと他のみんなもぐっすり眠っているはずの時間。
そして、いつもと何も変わらない同じ日常が始まるはずの朝。
私は一人、目を覚ました。
だれかが私のそばにいて私に触れている、そんな気配を感じたから。
まどろみの中でそれはとても、幸せな体験だった。
私はその優しく大きな手をよく知っている。
「・・・・・トラップ?」
確かにさっきまでトラップがいた気配はあったのに、目を覚ました私の目には誰も映らなかった。
あれ・・・?
誰もいない?
隣ではルーミィとシロちゃんが幸せそうに眠っている。
起こさないようにとそっと静かにベットから下りて辺りを見渡す。
でもやっぱり誰もいなかった。
夢・・・だった?
うんん!
違う。夢なんかじゃない。
なんだろう・・・胸騒ぎがする・・・・。
窓から外の様子を見ようと、窓に近づきかけた私の目に見慣れないものが見えた。
私の机の上に、ポツンと寂しく置かれたひとつの封筒。
宛名には『パステル様』と書かれていた。
トラップの字だ!
やっぱりさっきまでここに居たんだよね?トラップ。
何?トラップからの手紙だなんて、今まで一度も貰った事はない・・・。
必死に胸騒ぎを抑えて封を切り、トラップから貰った初めての手紙を読む。
ぽたっ。
ぽたぽたっ・・・。
私の頬を大粒の涙がこぼれていく。
「・・・っトラップ!!」
漏れ出てくる嗚咽を私は必死に噛み殺す。
後ろではルーミィ達が寝てるもん。起こすわけにはいかない。
馬鹿っ!
なんで・・・なんでこんな大事な事を手紙で伝えるの!?
いつもみたいに遠慮なくズケズケ言えばいいじゃない!!
「ふっ・・・うぅっ・・・・・・」
必死に自分で口を押さえて、嗚咽となって溢れくる感情をせき止めるようとしてみる。
馬鹿馬鹿っ!
私がこんな手紙一つで納得できる訳が無いじゃない!?
私の想いはどうなるのよ!
ずるいよ、トラップ!!
・・・さっきまでここに居たってことはまだ間に合うかもしれない!
そう思った時にはすでに、上着を羽織って乗合馬車の停留所に向かって私は走っていた。
トラップ・・・!!
お願い!!間に合って!
村の外れの停留所まで一気に走る。
走って走ってやっと停留所の屋根が見えてきた時だった。
丁度、乗合馬車が到着したのが見えた。
朝一番のエベリン行きの馬車だ。
トラップ、あれに乗るんだ!!
そう思ったのと同時に、停留所の中から見慣れた姿が出てきた。
いたっ・・・・!!
ずっと走ってきたせいで、呼吸もままならなかったけど思いっきり深呼吸をして声の限り叫ぶ。
「トラップ !!!!」
金縛りにあったかの様に、トラップの体が固る。
すっかり荷造りをしたトラップの姿に涙が滲む。
・・・・・こんな姿を見るのは、もっと先だと思ってたのに・・・・!!
しかもこんな形で見ることになるなんて・・・。
嫌だよ、トラップ!
トラップは馬車の前で止まったままだ。
背中が迷ってる風に見えるのは気のせいじゃないよね!?
よしっ!そうやってずっと止まっててよ!
顔を見たら、一番になんて言ってやろう?
パステル様なんて柄じゃないって笑って、なんでみんなに黙って行くの!?って怒って、手紙なんて卑怯だってなじってやるんだから!
ずっと走ってきてしんどいし、迷わずここまで来れたんだから褒めて貰いたいし。
なによりも・・・伝えたい想いがあるから。
ずっと振り返りもしないトラップ、御者の「まもなく発車します。」の言葉に歩を進め始めた。
うそっ!?
「なっ!?ちょっと待ってよ!トラップー!!」
やっと追いついて、トラップの腕を掴む。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・。トラップ?」
息を整えて呼びかけても、返事すら無い。
なんで!?どうして何も言ってくれないの?
トラップの前に回りこむ。
「っ!・・・・・トラップ・・・・・・」
私と視線すら合わせようとせずに顔を背けてたままのトラップは、今にも泣きそうな顔だった。
私、こんなトラップ初めて見た・・・。
ねぇ・・・そんな辛そうな顔しないでよ・・・何も・・・言えなくなるじゃない・・・。
そんな私たちに御者のおじさんが遠慮がちに聞いてきた。
「あのー、出発するけど乗るのかい?」
なおも乗ろうとするトラップを押し留めて
「いいです。乗りませんから出発してください。」
一気にそう言いきった私とトラップを交互に見ていたけど、おじさんはトラップが何も言わないのを乗車の意思無しととったみたいだった。
乗合馬車はそのまま出発した。
「はあああぁ。」
大きくため息をついて、トラップがはじめて口を開いてくれた。
馬車に乗る事が無理になった今、何も言わずにここを去る計画は諦めるしかないだろう。
スタスタとトラップは歩き始めた。
「ちょっ!トラップ、どこに行くのよ?」
あわてて追いかけると
「・・・・んなとこに突っ立ててもしゃーねぇだろ。」
いつもと変わらないトラップの口調に少しほっとする。
よかった。もうしゃべってくれないのかと思ってたところだったから・・・。
「うん。」
2人で停留所の外のベンチに腰をかけた。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
2人とも沈黙。
どうしよう。
たくさんトラップに言いたことがあったはずなのに、トラップのあの辛そうな表情を見てから何を言っていいのか解らないや。
「・・・手紙、読んだんだろ?」
「・・・うん。読んだよ。」
トラップの声を聞いて、隣にトラップがいてる事実を改めて思い出したら、急に涙がこぼれた。
「うううぅ。よかったぁー。間に合って良かったよぉー!!!」
もしも私が間に合わなかったら・・・、あのままトラップに一生逢えなかったかもしれないんだと思うと涙が止まらない。
安心して急に泣き出した私に
「・・・ごめん。」
と小さく呟く声が聞こえた。
「バカッ!トラップの想いはこんな手紙一枚で事足りるような事じゃないでしょう!?
しかも私の気持ちを聞かずに行くつもりなの?それでトラップの想いは満足するの?
私は嫌だよ!こんな別れ方!」
顔をキッ!上げてトラップを泣きながら睨んでやると、トラップも泣いていた。
「っ・・・・ごめん・・・」
「・・・・・トラップ・・・・・・」
手で自分の顔を覆いながらも、その手の隙間からは私と同じように大粒の涙が滴り落ちている。
そんなトラップの涙からたくさんの想いと覚悟が読み取れてしまうほど、私はずっとトラップの近くにいたんだ。
そうだよね、私たちずっと一緒にいたよね。
一緒に冒険して笑って怒って喧嘩して、いつも楽しかった。
私の唯一の居場所だったんだ。
みんながいて、トラップがいて・・・・。
ここに居ていいよって、応援してるから頑張れって、いつもそばにいてくれた。
ずっとこの生活が続きそうな錯覚さえ感じるほどに。
トラップもそうだよね?
でも、一生一緒にいられるとは流石の私も思って無かったよ・・・でも、こんな最後なんてあんまりだと思う。
・・・・トラップもきっと、沢山悩んで出した答えがこの手紙だったんだろう。
うん。いい加減な理由じゃない事くらい私にも解るよ。
そんなトラップの気持ちが痛いほど解るから・・・・
「どうしても行かなきゃダメなの?」
たくさんの想いに蓋をして優しくトラップに確認する。
「・・・ああ。」
覚悟を決めた顔だった。
いつの間かに大人になってたんだね・・・。
ううん。私が気づいてなかっただけで、彼は少しずつ大人の男の人になってたんだ。
「そっか。・・・・私、付いていってもいい?」
勇気を出して言ってみた。
トラップのそばを離れるなんて嫌だったから。
でも、驚いた顔をしたトラップだけど、首を縦には振らなかった。
「わりぃけど、連れて行けねぇ。」
はは・・・。・・・はっきり断られて涙も出ないよ。もう。
「クレイ達には?」
「あいつらには昨日の夜ちゃんと話した。」
「ええぇっ!!??じゃあ、なんで私には何も言わずに出て行こうとするのよ!?」
私1人だけ仲間はずれで、手紙一枚だなんて・・・・!
「俺もちゃんと、おめぇにも話すつもりだったんだ。でも・・・おめぇの寝顔を見てたらダメだった・・・。俺も手紙一枚なんて、すっげぇ卑怯だと思ったよ。パステル絶対怒るだろうなって。」
「当たり前でしょう!?第一、トラップらしくないよ!」
「俺らしくない?」
「うん。いつも私に言ってるじゃない。思ったことは口に出してはっきり言えって。」
そう私が言うと、トラップの顔がふっと一気に和らいだ。
「・・・・だな。でも、おめぇに何か伝えられるのがこれで最後になるかもしれねぇって思ったら・・・・、あんな手紙になっちまった。
あーあ!俺、一生言わねーつもりだったのによー!」
頭をがしがし掻きながら照れてるトラップに、私はあえて聞いた。
だって、本人がちゃんと目の前にいるんだもん。
ちゃんとトラップの口から聞きたいって思ってしまったから、・・・仕方ないよね?
「何を言わないつもりだったの?」
「・・・・・おめぇ、解ってて言ってるだろう。」
ジト目のトラップ。
「ん?何が?」
あくまでもとぼける私にトラップは観念したみたい。
「確かに手紙なんて一方的に書くもんじゃねぇよな。返事が欲しくなる。・・・・なぁ、パステル。」
まっすぐ見つめるトラップの視線を私もまっすぐ受け止める。
「はい。」
「俺はおめぇの事が好きだ。一生好きでいると言い切る自信があるくらいにな。・・・でもパステル、おめぇの気持ちは嬉しいけど連れては行かねぇ。はっきり言って帰ってこれるか俺自身もわからねぇから・・・。だから返事は聞きたくない。お前の気持ちを聞いたらいろんな覚悟が消えちまいそうだから。・・・俺は待ってろなんて言わない。ただ・・・なにも伝えないままで別れるのだけは絶対嫌だったんだ。わりぃな。あの手紙は俺の最後のわがままだ。許してくれなくてもいい。そして、パステルがいつまでも俺の大好きな笑顔で幸せに笑ってくれてたら、俺はどんな時も幸せだ・・・・」
「・・・だからパステル。幸せになれよ?」
こんな優しい顔のトラップを見るのは初めてだ。
そんな彼の表情が見れた嬉しさと切なさとでまた、涙が溢れくる。
そして止まらないトラップへの想い。
「私もトラップが好き。大好き。」
「おまっ!返事はいらねぇって言っただろ!?」
「嫌だ!私の最後のわがままだもん!言わせて・・・。」
そう言うとトラップは、覚悟を決めたように黙った。
今言わなきゃ、伝えたい人が目の前にいるのに、一生言えないままかもしれないなんて!!
どんなに叫んで願っても、届かない相手を想う思いがどんなに辛いものか、私はよく知ってる。
「トラップ、トラップの幸せが私の笑顔ならそれは、トラップがいつも私の隣にいてくれたからなんだよ?ねぇ。私の幸せはトラップがそばにいてくれること。・・・今まで隣にいて当たり前だと思ってたけど、これってすっごく幸せな事なんだよね?だからさ・・・」
ここまで言って鼻の頭がツーンとなる。
泣くな私!・・・笑えっ!!
「いってらっしゃい、トラップ。」
「え・・・?」
にっこり笑った私を食い入るように見つめるトラップ・・・。
「トラップ、大好きだよ。だから気をつけて行って来て。・・・そして・・・いつの日か私を幸せにしてね?」
泣かずに笑顔で言い切った私を待っていたのは、トラップの大きな腕だった。
ぎゅううううぅ。っと力を込めて私の想いまで抱きしめてくれた。
「・・・わかった。約束する。」
「絶対だよ?」
トラップの背中に腕を回して、ぎゅっと抱きしめる。
すると、さらに強い力で抱きしめられた。
「ああ。絶対幸せにしてやる。」
いつかきっと、トラップの隣で幸せな笑顔の私がいることだろう・・・・。
いつの日か・・・きっとね。
おしまい。
戻る
朝日が昇り始めた白闇の夜明け。
ルーミィもシロちゃんもまだ夢の中、きっと他のみんなもぐっすり眠っているはずの時間。
そして、いつもと何も変わらない同じ日常が始まるはずの朝。
私は一人、目を覚ました。
だれかが私のそばにいて私に触れている、そんな気配を感じたから。
まどろみの中でそれはとても、幸せな体験だった。
私はその優しく大きな手をよく知っている。
「・・・・・トラップ?」
確かにさっきまでトラップがいた気配はあったのに、目を覚ました私の目には誰も映らなかった。
あれ・・・?
誰もいない?
隣ではルーミィとシロちゃんが幸せそうに眠っている。
起こさないようにとそっと静かにベットから下りて辺りを見渡す。
でもやっぱり誰もいなかった。
夢・・・だった?
うんん!
違う。夢なんかじゃない。
なんだろう・・・胸騒ぎがする・・・・。
窓から外の様子を見ようと、窓に近づきかけた私の目に見慣れないものが見えた。
私の机の上に、ポツンと寂しく置かれたひとつの封筒。
宛名には『パステル様』と書かれていた。
トラップの字だ!
やっぱりさっきまでここに居たんだよね?トラップ。
何?トラップからの手紙だなんて、今まで一度も貰った事はない・・・。
必死に胸騒ぎを抑えて封を切り、トラップから貰った初めての手紙を読む。
ぽたっ。
ぽたぽたっ・・・。
私の頬を大粒の涙がこぼれていく。
「・・・っトラップ!!」
漏れ出てくる嗚咽を私は必死に噛み殺す。
後ろではルーミィ達が寝てるもん。起こすわけにはいかない。
馬鹿っ!
なんで・・・なんでこんな大事な事を手紙で伝えるの!?
いつもみたいに遠慮なくズケズケ言えばいいじゃない!!
「ふっ・・・うぅっ・・・・・・」
必死に自分で口を押さえて、嗚咽となって溢れくる感情をせき止めるようとしてみる。
馬鹿馬鹿っ!
私がこんな手紙一つで納得できる訳が無いじゃない!?
私の想いはどうなるのよ!
ずるいよ、トラップ!!
・・・さっきまでここに居たってことはまだ間に合うかもしれない!
そう思った時にはすでに、上着を羽織って乗合馬車の停留所に向かって私は走っていた。
トラップ・・・!!
お願い!!間に合って!
村の外れの停留所まで一気に走る。
走って走ってやっと停留所の屋根が見えてきた時だった。
丁度、乗合馬車が到着したのが見えた。
朝一番のエベリン行きの馬車だ。
トラップ、あれに乗るんだ!!
そう思ったのと同時に、停留所の中から見慣れた姿が出てきた。
いたっ・・・・!!
ずっと走ってきたせいで、呼吸もままならなかったけど思いっきり深呼吸をして声の限り叫ぶ。
「トラップ
金縛りにあったかの様に、トラップの体が固る。
すっかり荷造りをしたトラップの姿に涙が滲む。
・・・・・こんな姿を見るのは、もっと先だと思ってたのに・・・・!!
しかもこんな形で見ることになるなんて・・・。
嫌だよ、トラップ!
トラップは馬車の前で止まったままだ。
背中が迷ってる風に見えるのは気のせいじゃないよね!?
よしっ!そうやってずっと止まっててよ!
顔を見たら、一番になんて言ってやろう?
パステル様なんて柄じゃないって笑って、なんでみんなに黙って行くの!?って怒って、手紙なんて卑怯だってなじってやるんだから!
ずっと走ってきてしんどいし、迷わずここまで来れたんだから褒めて貰いたいし。
なによりも・・・伝えたい想いがあるから。
ずっと振り返りもしないトラップ、御者の「まもなく発車します。」の言葉に歩を進め始めた。
うそっ!?
「なっ!?ちょっと待ってよ!トラップー!!」
やっと追いついて、トラップの腕を掴む。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・。トラップ?」
息を整えて呼びかけても、返事すら無い。
なんで!?どうして何も言ってくれないの?
トラップの前に回りこむ。
「っ!・・・・・トラップ・・・・・・」
私と視線すら合わせようとせずに顔を背けてたままのトラップは、今にも泣きそうな顔だった。
私、こんなトラップ初めて見た・・・。
ねぇ・・・そんな辛そうな顔しないでよ・・・何も・・・言えなくなるじゃない・・・。
そんな私たちに御者のおじさんが遠慮がちに聞いてきた。
「あのー、出発するけど乗るのかい?」
なおも乗ろうとするトラップを押し留めて
「いいです。乗りませんから出発してください。」
一気にそう言いきった私とトラップを交互に見ていたけど、おじさんはトラップが何も言わないのを乗車の意思無しととったみたいだった。
乗合馬車はそのまま出発した。
「はあああぁ。」
大きくため息をついて、トラップがはじめて口を開いてくれた。
馬車に乗る事が無理になった今、何も言わずにここを去る計画は諦めるしかないだろう。
スタスタとトラップは歩き始めた。
「ちょっ!トラップ、どこに行くのよ?」
あわてて追いかけると
「・・・・んなとこに突っ立ててもしゃーねぇだろ。」
いつもと変わらないトラップの口調に少しほっとする。
よかった。もうしゃべってくれないのかと思ってたところだったから・・・。
「うん。」
2人で停留所の外のベンチに腰をかけた。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
2人とも沈黙。
どうしよう。
たくさんトラップに言いたことがあったはずなのに、トラップのあの辛そうな表情を見てから何を言っていいのか解らないや。
「・・・手紙、読んだんだろ?」
「・・・うん。読んだよ。」
トラップの声を聞いて、隣にトラップがいてる事実を改めて思い出したら、急に涙がこぼれた。
「うううぅ。よかったぁー。間に合って良かったよぉー!!!」
もしも私が間に合わなかったら・・・、あのままトラップに一生逢えなかったかもしれないんだと思うと涙が止まらない。
安心して急に泣き出した私に
「・・・ごめん。」
と小さく呟く声が聞こえた。
「バカッ!トラップの想いはこんな手紙一枚で事足りるような事じゃないでしょう!?
しかも私の気持ちを聞かずに行くつもりなの?それでトラップの想いは満足するの?
私は嫌だよ!こんな別れ方!」
顔をキッ!上げてトラップを泣きながら睨んでやると、トラップも泣いていた。
「っ・・・・ごめん・・・」
「・・・・・トラップ・・・・・・」
手で自分の顔を覆いながらも、その手の隙間からは私と同じように大粒の涙が滴り落ちている。
そんなトラップの涙からたくさんの想いと覚悟が読み取れてしまうほど、私はずっとトラップの近くにいたんだ。
そうだよね、私たちずっと一緒にいたよね。
一緒に冒険して笑って怒って喧嘩して、いつも楽しかった。
私の唯一の居場所だったんだ。
みんながいて、トラップがいて・・・・。
ここに居ていいよって、応援してるから頑張れって、いつもそばにいてくれた。
ずっとこの生活が続きそうな錯覚さえ感じるほどに。
トラップもそうだよね?
でも、一生一緒にいられるとは流石の私も思って無かったよ・・・でも、こんな最後なんてあんまりだと思う。
・・・・トラップもきっと、沢山悩んで出した答えがこの手紙だったんだろう。
うん。いい加減な理由じゃない事くらい私にも解るよ。
そんなトラップの気持ちが痛いほど解るから・・・・
「どうしても行かなきゃダメなの?」
たくさんの想いに蓋をして優しくトラップに確認する。
「・・・ああ。」
覚悟を決めた顔だった。
いつの間かに大人になってたんだね・・・。
ううん。私が気づいてなかっただけで、彼は少しずつ大人の男の人になってたんだ。
「そっか。・・・・私、付いていってもいい?」
勇気を出して言ってみた。
トラップのそばを離れるなんて嫌だったから。
でも、驚いた顔をしたトラップだけど、首を縦には振らなかった。
「わりぃけど、連れて行けねぇ。」
はは・・・。・・・はっきり断られて涙も出ないよ。もう。
「クレイ達には?」
「あいつらには昨日の夜ちゃんと話した。」
「ええぇっ!!??じゃあ、なんで私には何も言わずに出て行こうとするのよ!?」
私1人だけ仲間はずれで、手紙一枚だなんて・・・・!
「俺もちゃんと、おめぇにも話すつもりだったんだ。でも・・・おめぇの寝顔を見てたらダメだった・・・。俺も手紙一枚なんて、すっげぇ卑怯だと思ったよ。パステル絶対怒るだろうなって。」
「当たり前でしょう!?第一、トラップらしくないよ!」
「俺らしくない?」
「うん。いつも私に言ってるじゃない。思ったことは口に出してはっきり言えって。」
そう私が言うと、トラップの顔がふっと一気に和らいだ。
「・・・・だな。でも、おめぇに何か伝えられるのがこれで最後になるかもしれねぇって思ったら・・・・、あんな手紙になっちまった。
あーあ!俺、一生言わねーつもりだったのによー!」
頭をがしがし掻きながら照れてるトラップに、私はあえて聞いた。
だって、本人がちゃんと目の前にいるんだもん。
ちゃんとトラップの口から聞きたいって思ってしまったから、・・・仕方ないよね?
「何を言わないつもりだったの?」
「・・・・・おめぇ、解ってて言ってるだろう。」
ジト目のトラップ。
「ん?何が?」
あくまでもとぼける私にトラップは観念したみたい。
「確かに手紙なんて一方的に書くもんじゃねぇよな。返事が欲しくなる。・・・・なぁ、パステル。」
まっすぐ見つめるトラップの視線を私もまっすぐ受け止める。
「はい。」
「俺はおめぇの事が好きだ。一生好きでいると言い切る自信があるくらいにな。・・・でもパステル、おめぇの気持ちは嬉しいけど連れては行かねぇ。はっきり言って帰ってこれるか俺自身もわからねぇから・・・。だから返事は聞きたくない。お前の気持ちを聞いたらいろんな覚悟が消えちまいそうだから。・・・俺は待ってろなんて言わない。ただ・・・なにも伝えないままで別れるのだけは絶対嫌だったんだ。わりぃな。あの手紙は俺の最後のわがままだ。許してくれなくてもいい。そして、パステルがいつまでも俺の大好きな笑顔で幸せに笑ってくれてたら、俺はどんな時も幸せだ・・・・」
「・・・だからパステル。幸せになれよ?」
こんな優しい顔のトラップを見るのは初めてだ。
そんな彼の表情が見れた嬉しさと切なさとでまた、涙が溢れくる。
そして止まらないトラップへの想い。
「私もトラップが好き。大好き。」
「おまっ!返事はいらねぇって言っただろ!?」
「嫌だ!私の最後のわがままだもん!言わせて・・・。」
そう言うとトラップは、覚悟を決めたように黙った。
今言わなきゃ、伝えたい人が目の前にいるのに、一生言えないままかもしれないなんて!!
どんなに叫んで願っても、届かない相手を想う思いがどんなに辛いものか、私はよく知ってる。
「トラップ、トラップの幸せが私の笑顔ならそれは、トラップがいつも私の隣にいてくれたからなんだよ?ねぇ。私の幸せはトラップがそばにいてくれること。・・・今まで隣にいて当たり前だと思ってたけど、これってすっごく幸せな事なんだよね?だからさ・・・」
ここまで言って鼻の頭がツーンとなる。
泣くな私!・・・笑えっ!!
「いってらっしゃい、トラップ。」
「え・・・?」
にっこり笑った私を食い入るように見つめるトラップ・・・。
「トラップ、大好きだよ。だから気をつけて行って来て。・・・そして・・・いつの日か私を幸せにしてね?」
泣かずに笑顔で言い切った私を待っていたのは、トラップの大きな腕だった。
ぎゅううううぅ。っと力を込めて私の想いまで抱きしめてくれた。
「・・・わかった。約束する。」
「絶対だよ?」
トラップの背中に腕を回して、ぎゅっと抱きしめる。
すると、さらに強い力で抱きしめられた。
「ああ。絶対幸せにしてやる。」
いつかきっと、トラップの隣で幸せな笑顔の私がいることだろう・・・・。
いつの日か・・・きっとね。
おしまい。
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