ゆうゆうかんかん 悠悠閑閑
悠悠閑閑へようこそ! 当ブログはフォーチュンクエストトラパス中心サイトです。 二次小説や日記などがメインの ブログ名のまま、のんびり運営です。 よろしければどうぞ!
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
《虎トラブルトラップ!!》
新しい年を迎えて3日目の朝、事件は起きた。
「ぎ、ぎぼぢわるぃ・・・・み、みず・・・。」
この世のものとは思えないような声を絞り出してリビングに現れた人物。
顔は土気色だし、口元を常に手のひらで抑えている・・・『抑えてないと、何か出る。』そんな雰囲気。
それにいつもの身軽さはどこへやら。
足取りは重くフラフラだし・・・・これは明らかに二日酔い。
いや。
彼の場合、二日酔い処ではない。
大晦日から飲み続けてるから・・・・四日酔いかな?
今にも倒れそうな彼の心からの願いを聞き入れるべく、コップに冷たーい水を入れて差し出す。
ま。実際さっきまで倒れてたんだけどね。彼は。
「ほら、お水。トラップ大丈夫?」
やっとの思いでソファーに腰を落としたトラップは、虚ろな目線を泳がして水を捉えるとのろのろと手を伸ばしてきた。
あぁーあ。
今回の二日酔いは相当ヒドイ。
「トラップ、キットンにお薬貰ってきた?」
キットンの薬はよく利くみたいで、時々トラップがお世話になっているのを私は知っている。
「・・・・まだ・・・・水・・・おがわり・・・。」
うぇっ。と口を押さえながら差し出されたコップを受け取りながら、
「ちょっと。吐くならトイレに行ってよ!?」
そう注意しても、力無く帰ってきた返事は
「む・・・むり・・・水・・・」
だった。
もう。仕方ないなぁ。
トラップに水のおかわりを渡すと、私は階段へと向かう。
キットンに薬を貰う為に。
「トラップ。キットンにお薬貰ってくるから、そこで待っててよ?」
トラップの後ろ姿にそう声を掛けると、
「ぐぇ・・・。」
はぁああ。
なんとも情けない返事・・・・。
「キットン入るよー?」
コンコンとドアをノックして覗くと、机に向かってブツブツ言っているキットンがいた。
「ねぇ。トラップが二日酔いの薬が欲しいんだけど・・・キットン?」
さっきから話しかけているのに返事が無い。
キットンはずーっと、ブツブツ言って何かの薬を調合中みたい。
「ちょっと!キットン!聞いてるの!?」
肩をゆさゆさ揺らしてやる。
「わっ!?いきなり何するんですか!調合が・・・!!」
キットンの文句は続いてるけど、トラップの容態も一刻を争うんだから!!
(ただの二日酔いだけどね。)
「トラップが二日酔いでしんどいから、いつもの薬が欲しいんだって。ある?」
「なんですか!?そんな事で私の大切な実験を邪魔しないでください!
・・・まったく。そろそろ取りに来る頃だと思ってちゃんと用意してありますよ。
そこにある黒い丸薬がいつものです。トラップに渡してください。」
そう言って、机の隅に置かれた黒光りした丸薬を指差した。
「わかった!ありがと、キットン。」
薬を受け取ってドアに向かうとキットンに呼び止められた。
「パステル!酔いがひどい様ならトラップに、10粒くらい飲むように言ってください。」
「・・・・わかった。」
こんな不味そうな薬を10粒も?
私は絶対ごめんだけどね・・・・。
「トラップ、薬貰ってきたよ?」
リビングに戻ると、ソファーで相変わらずぐったりとトラップが倒れていた。
「・・・・トラップ?生きてる??」
コップに水を汲んでトラップの顔を覗き込むと、うっすらと目が開いた。
恨めしそうな視線で見上げてくる。
でもそんな目をしても、自業自得だもんね。
飲みすぎたあんたが悪いんでしょうーが。
「はい。キットンからお薬貰ってきたよ?10粒飲んでだってさ。」
薬と水を差し出すと、一気にトラップの目が見開かれた。
「じゅうっ!?・・・・・・おぇっ・・・」
気持ちはわかるけど、彼の行動に同情の余地は無い。
「そ。ほら!飲んだらすぐに楽になるんでしょ?一瞬の我慢なんだから頑張って飲んで!」
そう励ますと、渋々と体を起こして私から薬を受け取って口へ放り込む。
次の瞬間、私から水を奪い取ると一気に流し込んだ。
ゴクゴクゴク・・・。
「うえぇっ!クソまずっ!!うげぇぇぇ!」
流石キットンの薬は即効性があるのか、顔色が一瞬で良くなったのがわかる。
薬であの二日酔いが治るんだもん。
美味しくない事くらい、仕方ないんじゃないかぁ。
『良薬口に苦し』って言うもんね。
そんなトラップの様子を見守っていた私は、ある異変に気がついた。
「トラップ・・・?頭に何付けてるの?」
そう。
トラップの頭から黄色い丸いフワフワした物が現れて、ピクピクと動いている。
「あ??頭ー?」
そう言って自分の頭を触ったトラップの顔が固まる。
たぶん・・・・トラップの頭から耳が生えている。
信じられないけど。
あまりの出来事に時間が止まったんじゃないかと思うくらいの静けさが訪れた。
「ぱぁーるぅ!たらいまだおぅ!!」
元気一杯のルーミィの声で2人とも我に返る。
次の瞬間、みるみるとトラップの体が縮んでいった。
な!?何が起きてるのー!?
「ぱーるぅ?いないんかぁ?」
ひょっこりとドアから顔を覗かせたルーミィを呆然と見つめる。
「どーしたんら?ぱーるぅ。」
「パステルおねぇしゃん、どうしたデシか?」
2人の後ろからクレイとノルも「ただいまー。」と顔を出した。
その間もどんどん縮んでいくトラップ。
今や大きさはルーミィくらいになっていて・・・・しかも、全身からふわふわした黄色毛が・・・・
「パステル?そんな顔して何かあるのか?」
わらわらとみんながリビングに入って来てソファーに集まった頃には、トラップの大きさはシロちゃんよりも小さくなっていた。
「パステル!?なんなんだこれは?モンスターか?」
「かわいー!ぱーるぅ!!この子、なんて言うんだぁ?」
「・・・かわいいな。」
全身黄色い毛に覆われて黒い縞模様。
ふわふわの可愛い耳を付けて、うしろからは虎模様のしっぽも・・・・。
頭の髪の毛の部分だけは、彼のトレードマークでもある赤毛のままなんだけど。
そう!
まさに虎!!
・・・・大きさはかなり小さいけど。モルモットくらいの大きさかな。
「ト、トラップ!?どうしたの一体!!??」
そう叫んだ私の言葉に、クレイとノルの目がぎょっ!と見開かれる。
「トラップだって!?コレが!?何が起きたんだ?」
「トラップ・・・かわいいな。」
「とりゃー?ぬいぐるみみたいだおう!」
「トラップあんしゃんの匂いがするデシよ!」
鼻をくんくんと『虎トラップ』に向けてシロちゃんは嬉しそうにしっぽを振っている。
ルーミィが嬉しそうに近づいていく。
「ばかっ!ルーミィ!くるんじゃねぇーよ!」
虎トラップから焦った叫び声が聞こえる。
その声もかなり小さくて聞き取りづらい。
しかも、虎トラップは危うくルーミィに踏まれそうになっていて・・・・。
わわわ!
本当に危ないよ!
必死にちょろちょろと逃げ回っているから私達の足元を走るたびに、私達のバランスも崩れてしまいそうでトラップを踏んでしまいそうになる。
ノルに踏まれたら、ぺっちゃんこになっちゃうよ!
「トラップ!危ないから!!踏まれる前にこっちにおいで!」
そう手を差し伸べると、虎トラップは一目散に私の腕を駆け上って左肩に止まった。
いつもトラップがシロちゃんを肩に乗せているのと同じ場所。
「はぁっ!はぁっ!」
私の耳元で虎トラップの荒い息が聞こえてくる。
そんな虎トラップに恐る恐る声を掛け来たクレイ。
「本当に・・・トラップなのか?また、魔女に呪いをかけられたのか!?」
クレイの言葉に『フーッ!』と全身の毛を逆立てて
「ちげぇーよ!!犯人はあいつだ!キットンの薬のせいだっ!!」
「はい?私がどうかしましたか?おや。トラップの様子を見に来たのですが出かけたのでしょうか?でも変ですねぇ。さっきのはトラップの声だとおもったのですが?」
その声に全員が一斉に振り返る。
((((コイツガハンニンカ・・・))))
あまりの反応にキットンも驚いたらしく、
「はい?どうかされましたか?それにしてもトラップも懲りませんねぇ。酔いが治ったらまた出かけたのですか?」
「ふざけんじゃねぇー!!!」
トラップの叫び声が響き渡った。
「おや?トラップはどこですか?声はしますけど姿がありませんね。しかも、声もいつもより迫力に欠けてますし。」
「おまえ!!いい加減にしろよっ!?変な実験ばかりしやがって!懲りてねぇのはそっちだろーがっ!!」
「パステル。貴方の方から声がするのですが、トラップは一体どこに居てるのですか?」
「・・・・・・ここ。」
ちょん。と私の指差した先を見たキットン。
わなわなと震えていたかと思うといきなり、
「素晴らしいぃぃぃ!!」
と叫びながら私に飛びついてきた。
「きゃー!?ちょっと!キットン!くっつかないでよ!」
「うわっ!?パステル!!動くな!」
慌てて避けようと動いたものだから、肩に乗ったままの虎トラップの焦った声。
トラップを落とさないように手のひらで受け止める。
「「あ、あぶなかったぁー。」」
ほおぉー。とトラップと安堵のため息をついた横から、
「パステル!そのトラップを私に渡してください!!これは素晴らしいです!!しっかりデーターを取らなければ!!さあ!私の実験室に!!」
キットンの馬鹿でかい声が響く。
「う、うっせぇー!!!俺の耳にはおめえらの声はでか過ぎるんだよ!!耳がいてぇっ!」
両手・・・いや前足?で耳を塞いで、本当に辛そう。
「ほほう!やはり、動物ですからね!耳が人間の時よりも良いのでしょう!他はどうですか!?視力などは上がってますか!?」
まだデーターを取ろうとするキットンに、ついにクレイがキレた。
「キットン!!そんなことよりも解毒剤を作って来い!!さっさとトラップを元に戻すんだ!」
そう言ってクレイはキットンをリビングから放り出した。
「・・・・ったく!」
手をパンパントと叩きながらクレイは、少し小さめの声で虎トラップに話しかけた。
「トラップ、とりあえず元に戻る方法が分かるまで何かと大変だろうから、俺が面倒見てやるよ。」
そう言って私がしていたみたいに、自分の肩に虎トラップを乗せるとトラップが悲鳴を上げた。
「たっけぇー!クレイ!お前でか過ぎる!地面が遠くて怖い!!」
「ええぇー!?そんな事言われても身長は仕方ないだろ?」
「あほか!俺が落ちたらどうすんだよ!?パステルの方がいい!降ろしてくれ!」
必死にクレイの肩に爪を立てて捕まっているのか、クレイの顔が痛そうに歪む。
「はあぁ。・・・・パステル、こいつの面倒頼んでもいいか?」
「へ?あぁ。いいけど、私でいいの?トラップは。」
そっと、クレイから虎トラップを受け取りながら小さな声で聞く。
「おめぇが一番いいの!ノルやクレイはデカイし、キットンには何されっかわかんねぇし、チビ達にはおもちゃにされるのが目に見えてる!だからお前が一番安全なわけ。ま、そんな訳で頼むわ!」
こんなサイズのトラップならいつでも大歓迎だけどね。
「うん。了解!よろしくね。」
ふふふ。
本当に可愛い!
憎まれ口は変わらないけど、容姿が可愛いから迫力が無いんだよね。
可愛いって言ったらトラップは怒るだろうから言わないけど、ユラユラ揺れるしっぽやピクピク動く耳が堪らなく可愛い!!
しばらく一緒にいれるみたいだし、猫じゃらしでも探してこようかな?
「そう言えば二日酔いは?大丈夫なの?」
「・・・・・大丈夫みてぇだな。」
「「・・・・・・・・。」」
あの薬は一体、なんの薬だったんだろう。
******
「へ?あの時の薬ですか?あれはですねー。きっとあの時開発中だった『今年の主役になれる薬』と『二日酔い』の薬が混ざったみたいですねー。今年は寅年ですから。ま、彼自身そんなに悪い薬でもなかったんじゃないですか。結構楽しんでたみたいですから。でもあの薬は失敗作ですね。来年こそは成功させたい思います!」
おしまい。
戻る
PR
《トラップよ大志を抱け!》
私は、ノイ・キットンと申します。
あ。ご存知でしたか。
いやぁー、私も有名になったものですねぇ!ぎゃはっはっはっは!
しかし今回は誠に残念ながら、私の話ではありません。
我がパーティの盗賊で、トラブルメーカーでもある彼の話なのです。
彼は同じパーティの詩人兼マッパーの彼女にベタ惚れなのですが、なかなか想いを伝える事が出来ずにいます。
そんな彼の一日を追ってみました。
彼はいつも、暇を見つけては彼女の元へと足繁く通っているのです。
少しでも構って欲しいのでしょうけど、彼女にしたら邪魔以外の何ものでもありません。
ほら、今日も・・・。
ノックも無しに入ってきたトラップにチラリと視線を送ったものの、パステルは視線をさっきから読んでいる『冒険時代』へと戻してしまいました。
「昼寝なら自分の部屋でしてよね。」
これは彼女の決まり文句です。
もちろん。
彼は本当に昼寝をする為だけにこの部屋を訪れている訳ではないのですが・・・。
鈍感な彼女には分かってもらえません。
「・・・昼寝じゃねぇよ。あのよー。」
「・・・・・んー?なあに?」
おやおや、パステルは顔も上げません。
きっと大した事じゃないと思っているのでしょうね。
「おめぇが一番だ!」
「へ・・・・?」
さすがのパステルも、彼からのいきなりの大胆告白に頭を上げました。
はしばみ色の大きな目をぱちくりしながら、トラップの言わんとしていることを必死に考えています。
すると突然。
ポッ。とパステルの両頬に赤みが・・・。
おや!珍しい事もあるものです。
彼の想いはちゃんと通じたみたいですよ。
頬を赤らめたまま、恥ずかしそうにでも嬉しそうな笑顔でパステルは
「・・・トラップから言って貰えるなんて思ってなかったから・・・すっごく嬉しいよ!!
ありがとう!私、これからも頑張って小説、書いていくから応援してね!」
ニコニコと本当に嬉しそうに笑うパステルの手にはさっきも言いました様に、『冒険時代』が。
違いますよ!パステル!!
小説のことじゃありません!
・・・・まぁ。物陰に隠れている私が叫んでも仕方ないのですが。
「ちげぇよ!だぁっー。もっと分かりやすくしてやるよ!」
ふむ。トラップは諦めないみたいですね。
当然でしょう。
なんせ、彼女にベタ惚れですからね!
今度はゆっくりとパステルの後ろに回り、彼女の体をぎゅっと抱きしめました。
「・・・・パステル。」
「ト、トラップ・・・?」
2人きりの部屋が一気に緊張感で包まれます。
いやー。トラップ!やりますね!
おっと。私が覗いている事はトラップには内密でお願いします。
私の個人的な趣味ですので。
パステルの顔が、さっきよりも一段と赤色に染まっていきます。
そんなパステルの体をさっきよりもぎゅっと強く抱きしめたまま、ついにトラップが口を開いて・・・
「パステル。あいし」
「ぱあぁるうぅ!!!たいへんらおうっ!!」
「て・・・・ルーミィ?」
「ルーミィ!!どうしたの!?」
・・・・バタバタと階段を降りていくパステルと、ポツンと置いてかれた一人のシーフ。
あーあ。
さっきまで彼女を抱きしめていた腕が、所在無く宙に浮かんでいます。
「くそぉー!!ルーミィのヤツ!いっつも邪魔しやがってっ!!」
いえ。ルーミィの邪魔はワザとじゃ無いと思うので、ルーミィは悪くないと思いますよ。
多分・・・・ね。
「なぁ!パステル。2人で出掛けねぇか?」
あの後も懲りずにパステルを追いかけて、ルーミィから引き剥がすと次はパステルをデートに誘っています。
きっと、誰にも邪魔されない所でゆっくり告白するつもりなのでしょうが・・・・・。
果たして、そんなに上手くいくのでしょうか?
「えっ?トラップと2人で?」
「おう!買い物でもしながらブラブラしようぜ。」
「わぁーい!!じゃあ荷物持ち、お願いね!」
「いや、そうじゃなくって・・・。」
「ありがと!トラップ。今日は重たい物を買うつもりだったからすっごく助かるよ!」
「や、だから・・・。」
「よし!じゃあ行こっか。トラップ!」
「・・・・・わぁーったよっ!」
これは完全に尻に敷かれていますね。
きっと、これから先もこの関係が崩れる事は無さそうですね。
惚れた弱みです。
トラップ、諦めてください。
おっと、2人が出掛けたみたいです。
では、気付かれないように私も後を追いたいと思います。
2人はブラブラとシルバーリーブの商店街を歩いているのですが、傍から見ればデートそのものです。
雰囲気もとてもいい感じです。
おや。パステルが足を止めて何かを見ています。
露店のアクセサリーショップで気になるものを見つけたみたいですね。
「あに見てんだよ。」
「あ、トラップ!見てこのネックレス。きれーい。」
パステルも一応、年頃の女の子ですからね。
こう言った物にも興味があるのでしょう。
それにしても、本当に2人が『デート中のカップル』にしか見えなくなってきました。
露店のお兄さんも同じだった様で、
「彼女、彼氏に買って貰ったら?すんごく似合ってるし。」
トラップを指差してパステルに笑顔で勧めています。
「ほら、彼氏も!彼女似合ってるよねー?可愛いじゃん!」
そんな店員のセールストークにパステルは
「あはははっ!全然違いますよー。彼氏なんかじゃないですから。むしろ、手のかかる弟って感じです!」
ケラケラと笑って答えています・・・・・。
ああー・・・パステル。
貴女の言っている事は正しい。
全くもって正しいのですが、そこまではっきりキッパリ言い切らなくても良いのでは無いでしょうか・・・。
彼の精神的ダメージは計り知れません。
露店の冷やかしも過ぎ、少し歩き疲れたのでしょうか猪鹿亭にお茶をしに入ったみたいです。
私も神経を使う尾行に少し疲れました。
リタに美味しいお茶の一杯でも出していただきましょう。
「いらっしゃいませー!あら、キットン!パステル達はあっちの席にいるわよ?」
「いえ。私はここの席で十分です。」
「なに?まさか・・・また尾行中なの?キットン、あなたも物好きねぇ。」
「ふふふ!今日のトラップはか・な・り・頑張ってますよ!トラパス応援団長代理としては見逃す訳にはいけません!」
「ふーん。何、それ。トラパス応援団?しかも代理?」
「はい。団長はゼンぱあさんなので、私が代理人として2人を見守っています。
専ら、トラップの恋愛を陰ながら応援しています。リタも如何ですか?」
「・・・・・遠慮しとくわ。私はパステルの応援ならするけどね。じゃあキットン、ゆっくりして行って。」
「ありがとうございます。」
残念です。リタの勧誘には失敗してしまいました。
おっと、大事な事を忘れる所でした。
あの2人は・・・・・リタに出されたお菓子をつまみながらお茶をしているみたいですね。
「あまーい!このお菓子。程よい甘さで疲れが取れるんだよねー。いつ食べても美味しいー!」
「好きだ。」
おお!
なんと話の流れを無視したいきなりの告白でしょうか。
しかし今回は全くひねりの無い、分かりやすい言葉です。
これはいくら鈍感なパステルでも伝わるでしょう!
「私も好きだよー。」
・・・・キタ!
来ました!
遂にトラップにも春が!!
「ほ、本当か?」
思わず聞き返すトラップの声も震えています。
ええ!ええ!
それはそうでしょう。
思えば長い道のりでしたから。
「うん!このお菓子、本当に美味しいもん!私大好きなんだー。」
・・・・・は?お菓子?
私とした事が・・・・・
大切な事を忘れていました。
彼女はただの鈍感ではありません。
『超ウルトラスーパーミラクル鈍感クイーン☆』だった事を。
一体どこまで彼を空回りさせれば気が済むのでしょうか。
彼の両目から血の涙が流れているのは気のせいではない気がします・・・。
「リタ、美味しかったよ。ごちそう様ー!ほらトラップ。残りの買い物して帰るよー。」
「う、ううん。パステル、また来てね。トラップも。」
亡霊のようにパステルの後ろに佇むトラップの耳元に
「今度、サービスしてあげるからさ・・・元気出しなよ?」
そう、励ますリタの声が聞こえてきました。
トラップはリタの気遣いに弱弱しい笑顔を残して店を後にしました。
「キットン・・・・トラップの奴、大丈夫なの?」
さすがのリタも心配なのでしょう。
「大丈夫ですよ。あれくらい、どうって事ありません。いつもの事ですから。」
「そう・・・そうなんだ。いつもの事・・・・。」
「トラパス応援団、入団されますか?」
「・・・・考えとくわ。」
「・・・・わかりました。では、私も失礼します。」
リタが入団するのも時間の問題ですね。
私が店の外に出ると、トラップが真剣な面持ちでパステルの手を握っていました。
めげません!
へこたれてません!!
そうですよ!
それでこそ、男の中の男です!!
超ウルトラスーパーミラクル鈍感クイーン☆相手に、へこたれてる暇などないのです!!
パステルの手をぎゅっと握り、
「パステル、そのう・・・何か感じねぇか。」
ほほう。
次の作戦はパステル自体に想いを自覚させる作戦のようですね。
「あ・・・・・・。その・・・・う。実は、トラップと手を繋ぐたびに想っていた事があるんだけど・・・・」
「な、なんだ?」
だからトラップ。
声がうわずってますよ。
「私・・・・・ね・・・」
お・・・や?
「お、おう!」
パステルの態度が今までと違いますよ?
「トラップの事・・・・・。」
ま、まさかの・・・!!
「・・・・!!!(ゴクンッ)」
わ、私まで緊張して来ましたー!!
「心が冷たい人なんだと思ってたんだ。・・・エヘ。」
「「・・・・はい?」」
おっと!
思わず声を出してしまいました。
トラップにはばれてないといいのですが。
「ほら!手が冷たい人は心が暖かいってよく言うでしょ?トラップと手を繋ぐと、いつもトラップの手あったかいからさ、心の冷たい人なんだなぁ・・・・って思ってたの。
でもこの間、キットンに医学的根拠はありませんって言われちゃった。
勝手に勘違いしててごめんね?」
パステル。
トラップの手がいつも暖かいのは決して心が冷たいわけではなく、貴女と手を繋ぐからですよ!!!
お願いですから、それぐらい分かってあげてください!!
・・・・というのは無茶な話なのでしょうか。
おや。
トラップと目が合ってしまいました。
ばれてしまったみたいですね。
ここで今日のお話は御終いです。
でもこれからも、超天然ウルトラスーパーミラクル鈍感クイーン☆との戦いはまだまだ続くのです。
おしまい。
戻る
☆パステルを祝う会 PART1☆
《迷子姫》
「寒いなぁー。」
思わずそう呟くと、吐き出された白い息はそのまま空へと消えていった。
寒くて当たり前。
だってここは2月のドーマなんだから。
外に出れば一面の雪景色で、街中いたるところで雪かき作業を見る事が出来た。
いつもの如く、今回もトラップの実家にお世話になってるんだけどね。
お世話になってる身としてはなにかお手伝いしたいじゃない?
少しでもトラップのお母さんの助けになりたいから。
そう言って一人でお使いをかって出たんだけど・・・・・。
なんてことは無い。
現在進行形で迷子。
きっとトラップが起きてたら間違いなく止められたと思うけど、幸か不幸か彼はまだ布団の中だった。
「おっかしいなぁ・・・。ちゃんと地図見てたのに・・・。」
トラップのお母さんに書いてもらった地図をもう一度見つめてみる。
ううん。
もう何度も見直してるもん。
そろそろ穴が空いてもおかしくないと思う。
「間違ってないと思うんだけど・・・。ここはどこなんだろう・・・。」
買い物も済んで家に帰るだけなんだけど、地図の通りに行ってもトラップの家は見えてこない。
むしろ周りの景色もさっきと違ってきて、広い広い雪原が広がっている。
どこを見ても真っ白なんだもん。
ここらへんは雪かきもされてないみたいで、今歩いている場所が道なのかさえ解らない。
雪かきがされてないって事はもちろん、人通りも無い。
「パステル?」
「え・・・・!?」
いきなり声を掛けられて驚いて振り返る。
「やっぱりパステルじゃないか!こんな所でどうしたんだ?
・・・・ってまさか、また迷子だったりする?」
一瞬トラップかと思って振り返るとそこには、クレイのお兄さんのえーと・・・確か・・・。
アルテアさんが一人で歩いてきた。
「あっ・・・!こ、こんにちは!!」
ペコリ!と頭をさげて挨拶するとかっこいい笑顔で少し意地悪そうに
「クレイのヤツから聞いてたけど、本当によく迷子になるね。」
と、くっくっく。と笑いながら私の顔を覗き込んできた。
うっひゃー!!
そんなに近づいてきたら余計に緊張するじゃないのー!
「す・・・・すみません。」
「どうして謝るの?」
「・・・迷うつもりは無いんですけど、気がついたらいつも迷子になっちゃうんです・・・。」
いつもトラップ達には迷惑かけてるもんね・・・。
迷子?って聞かれると謝るのが私の癖になってるのかも。
「ふーん?俺はパステルが迷子になってくれて嬉しいけど?」
「・・・へ?う、嬉しいんですか?」
男前の考える事はよく解らない・・・・。
ポカーンとアルテアさんの顔を眺めていると、
「うん。嬉しいよ?こうしてパステルと2人っきりになれたからね。」
そう言ってパチンとウインクを飛ばしてきた。
うきゃーぁ!かっこいいー!!
そんな事言われたら、世の中の女の子みんな迷子になっちゃうよ!!
「あはははー。ありがとうございます。そう言ってもらえると気が楽になります。」
きっと気を利かせてそう言ってくれたんだろう。
そう思ってお礼を言うと
「え?そこ笑う所なの?もしかして冗談だと思ってる?」
不思議そうに私の顔を覗き込んでくる。
だから近すぎですってばぁ!
「ええぇぇぇっ!?冗談じゃないんですか?」
「ぶっ!あはっはっはっ!!本当に可愛いなぁパステルは!」
「いやっいやっ!全然可愛くないですから!」
「俺もパステルとパーティ組みたかったなぁ!このまま掻っ攫ってもいい?」
「はいっー!?」
目がグルグルしてきた!
気が付くと、私はアルテアさんの腕の中にいて。
だ、抱きしめられてる!!??
「あっ!あのっ!?アルテアさん・・・?」
何が起こってるのー?
「・・・そんなに殺気立って後ろに立たないでくれる?」
「そいつから離れろ。」
「なんでお前に命令されなきゃいけないのかなぁ?ねぇ。パステル。」
「ト、トラップ・・・?探しに来てくれたの?」
相変わらず抱きしめられたままの私からはトラップの姿は見る事は出来ない。
「離れろっつってんだろ。」
「せっかくパステルと二人っきりだったのにね。・・・仕方ないなぁ。パステルはトラップの所に戻りたい?」
もしも、戻らないって言ったらアルテアさんにどこに連れて行かれるのか・・・。
「えーと・・・すみません。戻りたいです・・・。」
「そっかぁ。」
少し残念そうな表情で私から少し身を引くと
「俺、パステルに振られちゃったなぁ。」
なんて言い出すではないか。
「振って・・・!?振ってないですよ!!そんな!恐れ多いです!!」
アルテアさんの爆弾発言を力一杯否定すると、
ぱっと笑顔になって
「良かった!じゃあ今度はお邪魔虫の居ない時にデートしようね!」
ほっぺに『ちゅっ。』と衝撃がきた。
「「えええぇえええー!!??」」
トラップの絶叫と私の絶叫が重なる。
「そうそ。パステルもうすぐ誕生日なんだろ?」
「えぇぇえーと。そ、そうでしたっけ?」
「あははっ!うん。そうみたいだよ?これ、俺からのプレゼント。」
きらりと光ったソレは・・・
「うりゃあぁあああぁあー!!!!」
私の目に留まることなく、トラップによってキラキラと光る雪原の中へと飛んでいった・・・・。
「ちょっと!!トラップなんて事するのよ!?アルテアさん!すみません!!」
「トラップ・・・おまえなぁ・・・。あー。パステルは気にする事ないよ?」
「で、でも!!」
トラップってば、なんて失礼な事するのー!?
「パステル、本当に良いんだ。その代わりに必ずデートしてね?」
「は、はいっ!!私でよければ必ず!!」
「こらっ!?パステル!?」
「うるさいっ!トラップは黙ってて!」
「くっくっく・・・トラップ、ばぁーか。自業自得だ。じゃ!パステルまたね!約束だからね!」
「はい!約束します!本当にすみませんでした!」
「アルテアッ!お前ワザとだろっ!?汚ねぇーぞ!」
アルテアさんに向かって怒鳴り散らしてるトラップを軽く無視しながら走り去っていく。
「あ!パステルー!!」
雪の中を走り去っていくアルテアさんが振り返って私の名前を呼んでる。
「はい!どうしたんですかー?」
「誕生日、おめでとう!!」
ほんわか胸の中が暖かくなる。
「あ、ありがとうございます!!」
「じゃあねー!」
そう言って素敵な笑顔を残していった。
「・・・・・帰るぞ。」
「あ。トラップ迎えに来てくれてありがとね。」
「んなことはどーでもいい。パステル、あいつとデートなんかすんじゃねぇぞ!?」
「はぁ?何言ってんの?誰のせいだと思ってるのよ!?」
「うっせぇー!今度あいつに付いてってみろ!ただじゃすまねぇぞ!?」
「何?お金取られるって事?」
「アホかぁっ!!!!」
END
戻る
☆パステルを祝う会 PART2☆
《ある朝の出来事》
誰もいない弓道場での朝練中。
ぎり・・・・・
耳元で弦が放せと囁く。
矢が飛ばせと呟く。
的を見つめて狙いを定め、放す。
「パンッ!」
弓道場に心地良い破裂音が響き渡った。
くうぅぅーっ!
この矢が的に当たったときの音が私は大好き。
何度聞いてもいい音!
そうやって一人、余韻に浸っていると突然声を掛けられた。
「いいんじゃねぇの?今の。」
「トラップ!来てたの?」
「ああ。さっきな。」
「今の良かったよね?自分でもそう思う!」
「矢も真っ直ぐ飛んでたし、狙いも十分だろ。今のを忘れないでもう一回やってみそ?」
「うん!」
トラップに促されてもう一度弦に矢をつがえる。
「何があっても平常心だからな。りきみすぎんなよ?」
「う、うん。」
すー。はー。
呼吸を整える。
よし。
「当てようとか欲を出すなよ?狙いが狂うぞ。」
「・・・・わかった。」
・・・ちょっと黙ってて欲しい。
せっかくの精神集中が切れちゃうじゃない。
もう一度。
すー。はー。
弓道は呼吸も大事。
ゆっくりと弓を打ち起こす。
「ほら。肩に力が入ってるぞ。力抜けって。」
「・・・・・・。」
うるさいなぁ。
教えてくれてるのは分かってるんだけど、自分のペースでやりたいじゃない?
それをごちゃごちゃ言われたら本当に集中できない。
「余計な事考えてんじゃねぇぞ!平常心で集中しろ!」
プチン!
何かが切れる音がした。
「さっきからうるさーいっ!!あんたのせいで集中できないでしょうが!!ちょっと黙っててよ!」
「なんだと!?せっかく教えてやってるのにその言い草はっ!?」
「やいやい五月蝿いって言ってるの!私の矢に・・・・射貫かれたい?」
「・・・・すみません。黙ってます。」
「絶対だからね?」
しっかりとトラップを睨み付けて牽制すると、
「・・・・わあーったよ。」
と口を閉じた。
それを見届けた私は再び的に向かう。
すー。はー。
うん。
平常心。平常心。
ゆっくりと弓を打ち起こしてバランスよく弓と弦を引く。
さっきと同じように、耳元で弦が鳴る。
ぎり・・・・。
しっかり狙いを定めて・・・・。
よし!
「あ!パステル、誕生日予定空けとけよ?」
びよ
なんとも情けない音をさせながら矢が飛んでいった・・・。
もちろん矢は的には当たらず、外れていた。
「・・・・トラップ、ちょっと的の横に並んで来てもいいよ?」
にこっと私が笑顔で的の方を指差すと
「こえっ!」
と、トラップが後ずさった。
「大丈夫!次は絶対外さないから。・・・・的も大きいしね?」
「的って俺の事だろうが!パステル、悪かったって!!」
「本当にそう思ってるの!?邪魔するんなら出てってよ!?」
「だあら謝ってるだろ!次はちゃんと黙って見とくから!」
「・・・・・次邪魔したら命は無いわよ?」
「へーへー。」
・・・・この後の朝練習が練習にならなかった事は言うまでもないけどね!
END
戻る
☆パステルを祝う会 PART3☆
《助手席の眠り姫》
のどかな昼下がり。
昼休憩も終わってポカポカ陽気の中をひたすら、ヒポを走らす。
「けっ!相変わらず全滅かよ。」
昼飯を食って満腹のうえ、これだけいい天気の中を何もすることなく座ってるとそりゃ眠くもなるだろう。
仕方ねぇとは思っても一人、寝たくても寝れねぇ状況の俺に対する気配りとかはないのか。
・・・・特にこいつは。
さっきから隣でコクリ。コクリ。と船を漕いでるパステル。
「おい!寝てないだろうな!?」
グラリと頭を傾けたパステルは、肩をビクリとさせた。
「・・・ほへ?ね、寝てないよ!大丈夫!大丈夫!」
・・・・寝てやがったな。
「俺だって昼寝したいのを我慢して運転してんだからな!助手席に座ってるヤツは寝るんじゃねぇ!」
「うぅぅ。寝てないって!ちょっと考え事してただけだから。あはっははは・・・。」
「ったく。バレバレだっつぅの!」
「・・・・やっぱり?」
エヘヘ。と誤魔化し笑いのパステルをチラリと睨んでやる。
「もうすぐズールの森に入るし、そこを抜けたらシルバーリーブに着くんだからもう少し起きてろよ!?」
少しでもこいつと2人だけの時間が欲しいと思いながら。
まぁ・・・後ろにはパーティ全員が漏れなく乗ってるけどな。
全滅だからほっといてやる。
「ふああぁあぁあ・・・。」
返事には大きな欠伸が返ってきた。
「・・・・パステルさん?」
ギロリと再び睨むとアワワと慌てて口を押さえて
「だ、大丈夫!うん。あと少しだもんね。ちゃんと起きてるよ!」
「本当かよっ!?」
思わず突っ込まずにはいられねぇ。
「うぅ・・・。じゃあさ!私が寝ないようになんか話しようよ!しりとりとかは?」
「しりとりぃー?ルーミィじゃあるまいし。しりとりなんかしてどうすんだよ!?」
「あれぇー?ダメ?頭使うしいいと思ったんだけどなぁ・・・。」
俺はルーミィレベルかよ!
「却下!」
「却下って・・・。あ!ズールの森が見えてきたよ。」
前方に大きな森が見えてきた。
「おぉっ!本当だ帰ってきたなぁ。」
「うんうん。ズールの森が見えて来ると帰ってきたって気がするよね!」
「だな。」
「私ね、ズールの森を通るたびにあの頃の事を思い出すんだ。」
「あの頃?」
「うん。ルーミィと出会って、トラップに助けられた時の事。」
「ああぁ!ボロボロの浮浪娘2人がスライムにキャーキャー言ってたやつか。」
けっけっけっ!と意地悪そうに笑ってやる。
案の定、パステルは頬を膨らませて
「浮浪娘って!!・・・まあ、間違ってないけどさ。」
そう言って目の前に迫ってきたズールの森に懐かしそうに目を向けた。
ヒポは止まることなく森の中へと続く道を走り続けていく。
14歳の頃の俺が森の中を歩いている。
クレイと2人で。
ふざけ合いながらまだ先の長いエベリンを目指していた頃。
俺らの修行の旅は始まっていた。
「きゃあぁあぁああっ・・・!!」
あの時俺の耳に聞こえてきた少女の微かな悲鳴。
それがパステル達だった。
思い返せば、よくあの悲鳴を聞き取れたと自分でも思う。
パステル達と出会って一緒に過ごした日々。
笑って、泣いて、ケンカしてまた一緒に笑いあう。
そんな中で俺の中に芽生えた感情。
すべては必然であるかのように・・・・・。
「・・・・なぁ。パステル。俺さ・・・初めてお前を見つけたからきっと・・・・パステル?」
「・・・・くぅー。」
「って!!寝てんのかよっ!!」
コツン!
「!!!!!!!」
自分の左肩にはキラキラと太陽の光を受けて輝く蜂蜜色のパステルの髪が見えた。
「・・・・ったく!しゃーあねぇなぁ!!」
この森を抜けてシルバーリーブに着くまで貸しといてやるよ!
俺様の大切な左肩をなっ!!
出会って4年・・・・・今もこいつが俺の隣にいる。
END
戻る
☆パステルを祝う会 PART4☆
《スパルタも遺伝?》
今日は私の20数回目の誕生日。
え?
正確には何歳かって?
もう。
いいじゃないそんな事は!
「おかあさん!お誕生日おめでとう!!」
振り返ると、トラップ譲りのサラサラの赤毛を今日は縛らずにおろしている娘がいた。
「ありがとう!!」
「はい!誕生日プレゼント!」
そう言って娘から渡されたプレゼントを見て思わず、がっくりと肩を落としてしまった。
「ええぇえー!?またこれなのぉー!?」
深草色の表紙に書かれた
『誰でもわかる!! マッパー入門』
の文字・・・・・。
実はこの本を貰うのは5度目になる。
つまり・・・・5年前から毎年誕生日プレゼントはこの本で・・・
今年で5冊目。
「・・・・プレゼントはうれしいんだけど、そろそろ他の本がいいなぁ。」
貰ったものに対して注文をつけるなんてしたくないけど、毎年同じじゃそろそろ文句も言いたくなる。
でも・・・・
「だーめっ!」
「えーん!」
「おかあさん!せめてドーマの街中で迷子にならないようになってもらわなきゃ困るんだからね!」
「うぐぅう・・・。」
「お父さんが冒険中、いっつも私が探しに行ってるんだから!」
「・・・・はい。その通りです・・・。」
「私とパス太が修行に出たら、誰もお母さんを探してくれないんだからね?」
「大丈夫よ!その頃には迷子にならないと思うし。ね?」
「だ・か・ら!そうなって欲しいからこの本でちゃんと勉強してよ!じゃないと私、安心して冒険者資格取りに行けないじゃない。」
「お姉ちゃん・・・厳しいなぁ。」
「お母さんの為に厳しくしてるんだからね!今年こそ頑張ってよ!」
「ふあーい・・・。」
誰に似たのかスパルタ教育の娘・・・・。
このあとちゃんともうひとつ、プレゼントを用意してくれてるんだよね。
実は・・・。
毎年ありがとね!
でも・・・
この本は来年も増えていく気がしてならない・・・。
口が裂けても言えないけど。
END
戻る
☆パステルを祝う会 PART5☆
《約束のケーキを食べに行こう。》
キーンコーン
カーンコーン
ひとつの鐘を合図に、静まり返っていた廊下が一気に喧騒に包まれる。
「パステル。今日はクラブ行くの?」
鞄に教科書を詰めていると声を掛けられた。
「うん!行くよー。」
顔を上げると帰り支度のすっかり済んだリタの姿があった。
「バイトは?」
「バイトは今日は休み!へへへ!」
そう。
今日のバイトは、わざわざ休みを取ったんだよね。
だって今日は・・・。
「パステル・・・・なんか嬉しそうね?」
リタの言葉に思わずドキリとしてしまう。
「えっ!?そ、そう?」
へ、平常心よ!!
だって、誰にも言うなって言われてるもん!
「うーん。バイトが休みだから・・・・?違うわよね?」
うぅぅう・・・・・。
リタの視線が痛い・・・・。
「えへへー。な、何でもないよ?本当に!なんでも無いって!!」
やだなぁ!なんて誤魔化して笑ってみるけど・・・・。
「何?怪しいわね。パステル、本当に何も無いの?」
疑われてる。
思いっきり疑われてるよ!!
「ナイ!ナイ!本当に何の予定も無いもん!」
「・・・・・ふーん。そう。」
しばらく疑いの眼差しを向けてたリタだけど、私の不自然なまでの『ナイナイ』連呼に検索を止めてくれたようだ。
よ、良かったぁ。
リタやマリーナにばれたら五月蝿いから見つかるなよって注意されてるんだよね。
本当は隠し事なんかしたくないんだけど・・・・今回だけは許して欲しい。
ごめんね!リタ!!
「じゃあさ、パステル。クラブが終わったら一緒に帰ろう?付き合って欲しい所があるのよ。」
「えっ!?」
心の中で親友に謝罪をしていると、思わぬお誘いが。
いつもなら一言目にはOK返事なんだけど・・・。
「あ・・・・。ごめん!今日は寄りたいところがあるから・・・・。また今度でもいい?」
「なんだ。用事があるの?それって、どうしても今日じゃなきゃダメな事?」
「うん・・・。ごめん・・・・。」
あぁあぁー。
リタに嘘つかなきゃいけないなんて!
ううん。
用事があるのは本当なんだけど、その内容が言えないから・・・・結局は辻褄の合わない嘘を付く事になるわけで・・・・・。
「そっか・・・・。じゃあ仕方ないよね。」
良心が痛む。
「リタ、ごめんね?また今度ちゃんと付き合うからね。」
「ううん。いいのよ。実は今日、パステルの誕生日でしょう?だからパーティでもしようかなって思ってたのよ。」
「!!・・・・・リタ・・・・・。」
ちょっと残念。
そう呟いて悲しそうに笑ったリタの顔を見たら、これ以上嘘なんか付いていられなかった。
「リタ!私の為にありがとう!!・・・あのね本当はクラブが終わったらトラップとケーキを食べに行く約束なの。」
「!?トラップと?2人で!?」
トラップごめん!!
きっと、トラップには怒られるだろうけど・・・・こうなったら精一杯謝ろう。
「うん・・・・。実はね・・・・・」
そうなんだよね。
実は今日は私の誕生日2月5日で。
トラップと2人でケーキを食べに行く約束をしてたりする。
クリスマスのときの約束だからって・・・・。
私はリタ達も誘おうって言ったんだけど、トラップは黙ってろって言うんだよね。
何で?って聞いたら、『あいつら何かとうるせぇし、俺とお前の約束だろ?』と言われた。
そう言われればそうだし、わざわざ誘うのも悪いかなっと思って黙ってる事にしたんだけど・・・・。
私の説明をリタは黙って聞いてくれた。
「・・・・ごめんね。最初から隠したりしないでちゃんと説明すれば良かった。」
頭を下げて謝ると、
「そう言うことなら仕方ないわね。いいよ。許してあげる!」
「本当!?」
「うん!トラップのヤツの気持ちも解らなくもないからね!パステル、正直に話してくれてありがとね!」
「ううん!!リタ、本当にごめんね!誕生日パーティも・・・・ごめんね?」
もしかしたら前々から準備してくれてたのかもしれない・・・。
そう思うと申し訳なくって・・・・。
「あら!大丈夫よ!2人でケーキを食べに行くだけでしょう?終わってから私の店に来てくれたらいいんだから!」
「えっ!?終わってからでもいいの?」
「もちろんよ!パステルがバイトを入れてる事も考えてたからね!幸い明日は土曜日だし?パステルの誕生日、盛大に祝うわよー!」
「あ、ありがとうっ!リタ!!」
嬉しい!!
本当に嬉しい!!
ぎゅーっとリタに抱きついてもう一度お礼を言う。
「本当にありがとう!嬉しいよ!楽しみにしてるっ!!」
「うん!任せといて!腕によりを振るうわよ!」
ぽんぽんとリタに背中を叩かれて
「そうだ。ちゃんと、トラップも連れて来てよ?ふふふ・・・・。」
どこかイタズラそうなリタの声が聞こえてきた。
「?うん!わかった!ちゃんと連れてく!」
そうリタと約束して、私は弓道場へと向かった。
********
クラブの帰り道。
空は茜色に染まって綺麗な夕日が出ていた。
「パステルー。行くぞー。」
着替えが終わって部室から出ると、弓と矢筒を持ったトラップが待っていた。
「お待たせー!」
日曜日に弓道の試合があるからね。
もちろん私も弓と矢筒を持っている。
もちろん教科書の入った鞄も。
・・・・・トラップは持ってないけどね。
「トラップって家で勉強してないの?」
「そ。おめぇとは違って勉強しなくってもよゆーなの!」
「えぇー!?うっそだぁ!」
トラップってば授業中もよく寝てるもん。
いつ勉強してんだろう。
でもテストの成績とかは悪くないんだよね。
特に理数系は強い。
「・・・・店。どこにするか決めたのか?」
トラップが視線を反らしながら聞いてきた。
店。
ケーキ屋さんの事だろう。
「うん!前から行ってみたかった所なんだ!すっごく美味いんだって!」
ニコニコしながら雑誌の切抜きをトラップに見せる。
リタとマリーナも絶賛のお店だったから間違いない。
「・・・ふーん。これ、リタの店の近くじゃねぇ?」
「え?そうなの?」
思わず雑誌の地図を覗き込む。
リタはそんな事、一言も言ってなかったけど?
ま。いっか。
近いならその後の移動も楽だしね!
切抜きをたたんでポケットに入れると
「おめぇ。ホールのケーキ丸ごと食べそうな勢いだな。」
けっけっけっ。と意地悪な笑顔のトラップ。
「丸ごとなんて食べれないもん!でも食べたいケーキが4個くらいあるんだよね・・・・。」
真剣に悩んでる私を見て、
「ぶはっ!おめぇー太るぞ!?」
と、いつまでも笑っていた。
もう!本当に失礼なヤツ!
・・・・でも、あの日の約束をちゃんと忘れずに守ってくれてるんだから、本当は優しいんだよね。
トラップって。
これから先、本当に私が『もういいよ。』って言うまで彼は付き合ってくれるのだろうか。
そして、この事をリタが知ってると聞いても約束を果たしてくれるのか・・・・。
とりあえず、ケーキを食べ終わるまでは黙っておこうかな。
えへへへー。
END
戻る
☆パステルを祝う会 PART6☆
《雪だるまと私》
リビングでのんびり暖炉にあたりながら本を読んでいる時だった。
「ぱぁーるぅ!うきだうまさんがよんでうよー!」
「うきだうまぁー!?」
テトテトと部屋に入ってきたルーミィに来客を教えられた。
・・・・んだけど。
誰?
うきだうまって???
「ゆきだるまさんデシ。」
ルーミィの横から黒曜石の様な綺麗な黒目が覗く。
ふわふわのシロちゃんの頭の上には毛糸の帽子がのっている。
きっと外で雪遊びでもしていたに違いない。
今シルバーリーブは例年にない大雪に見舞われていた。
朝起きると、ルーミィとシロちゃんは大喜びだったからね。
「雪だるまさんのこと?」
シロちゃんの助言のお陰で謎が解けた。
「そうだおう!うきだうまさんだおう!!」
なるほど。
さっきノル達が外に雪遊びに行くって言ったから、雪だるまが完成したから見に来て欲しい。
そう言うことなんだな。
それで、『雪だるまさんが呼んでる。』なのね。
ふふふ。
かわいいなぁー!
「わかった。じゃあ雪だるまさんのところまで案内してくれる?」
ルーミィとシロちゃんに案内を頼むと首を横に振られた。
あれ?
ダメなの???
「ダメなんだおう。ぱーるぅひとりでいかなきゃ。うきだうまさんが言ってたんだぁ。」
「そうデシ。雪だるまさんがあったかい格好をして来いって言ってたデシ。」
・・・・・注文の多い雪だるまね。
「そ、そうなの・・・。」
なんか変だなぁと思いながらも可愛い二人の事を疑っても仕方ないしねぇ。
「じゃあさ。どこに行けばその雪だるまさんに逢えるか教えてくれる?」
こうなったら直接雪だるまに聞くのが早いだろう。
私はマフラーとおそろいのニット帽をかぶり、コートを着た。
「わかったおう!こっちらおー!」
そう言って連れて行かれたのは玄関で。
でも家の周りを見渡した限りでは雪だるまらしき人物は見えなかった。
「どこにいてるの?」
そう聞くと、ルーミィは村の外れを指差した。
「あのねぇ。あっちの方にいたんだぁ。」
「あっちにいたデシ。」
シロちゃんもルーミィの言葉に頷く。
「あっちの方に行けばいいの?」
「うん。おっーきな木のよこにうきだうまさんがたってうよ。」
「大きな木の横ね。」
「そうデシ。雪だるまさん、僕たちが『こんにちは』って挨拶したら『オッス!』ってしゃべったデシ。」
「ねー。しおちゃん。」
「ええぇっー!?雪だるまがしゃべったの?・・・オッスって?」
「しゃべったデシよ。」
「うそじゃないもんね。」
「・・・・・・・。」
「ぱーるぅ!はあくいってぇ!うきだうまさんがかぜひいちゃうよぉ。」
「雪だるまさん、寒そうだったデシ。」
うーん。
その心配はないと思うけど・・・。
なんだろう。
普通の雪だるまがあるだけじゃないの?
とにかく行くしかないか。
「じゃあ、行って来るからね。」
そう、2人に声をかけると、
「いってらっしゃーい!!」
「いってらっしゃいデシ!」
元気よく送り出された。
大きな木は確か、この丘の向こう側に立ってた気がする。
私の記憶が間違ってなかったら・・・・・だけどね。
ここらへんは民家もないから人通りもない。
広い野原が広がってるだけなんだけど。
今は雪で覆われている。
静かな丘を登る。
ザク。
ザク。
ザク。
自分の足音だけを聞きながら。
丘を登りきると、一面に開けた雪原が見渡せた。
その奥には森が広がっている。
「あ。いた・・・。」
大きな木の横に確かに雪だるまが立っていた。
下り坂を少し小走りに近づいていく。
ルーミィたちが雪だるまがしゃべるって言うから、もしかしてモンスター?
なんて心配してたけど。
ふふふ。
いらない心配だったみたい。
だって、あそこに立っているのはどこをどう見ても普通の雪だるまだったから。
正真正銘雪で出来た、ザ・スノーマン!
帽子を被ってニンジンの鼻をつけて両手は小枝で出来ていて手袋をはめていた。
変わっているところといえば・・・・。
ルーミィたちに倣って挨拶をしてみる。
「こんにちは。雪だるまさん。お呼びですか?」
「・・・・・・・・・」
残念。
雪だるまからの返事はなかった。
「私になにか御用ですか?」
懲りずに話しかけてみると・・・・
雪だるまの手のひらにとつぜん小包が現れた。
綺麗な黄色のリボンで飾られたその箱は・・・・。
「私にくれるの?」
「・・・・・・・・」
相変わらず返事は無いけど、わざわざ私を呼び出したってことは貰っていいんだよね?
「ありがとう。雪だるまさん。」
私がお礼を言うと、雪だるまさんは一言だけ
「誕生日おめでとう。」
そう、呟いてくれた。
END
戻る
☆パステルを祝う会 PART7☆
《HAPPY BIRTHDAY!》
もうすぐでお昼ご飯が出来そうな時、突然家の前に大きな馬車が止まった。
「・・・・・・・何事?」
「・・・・・・・さあ?」
隣にお玉を持ったまま飛び出してきたクレイに聞いても、何も解決しなかった。
・・・・まぁ、そう言う私も実はペンを握り締めたままだったりするんだけどね。
どこかの王族や貴族が使っているような立派な白馬の4頭立ての馬車だ。
そんな我がパーティとはまったく縁の無い代物が家の前に止まっている。
「なんだよ?人様んちの前に断りも無くいきなり止めやがって!」
毒づきながらトラップも家の中から出てきた。
「わぁーい!!まっしろなおうまさんらぉー!」
「ほんとデシ!」
ルーミィとシロちゃんの後ろからはノルとキットンも・・・・。
ぞろぞろと家の中からみんなが出てきた。
みんな興味津々!
そりゃそうよね。
すると突然、馬車の扉が開いて中から人が現れた。
とても身なりのいいおじさんは、私達を見渡すと嫌な顔ひとつせずにニコリと笑ってこう言った。
「突然の訪問をお許しください。私、リーザ国第一皇女アンジェリカ姫の側近をしております。
ゲイル・オイルソーと申します。どうぞお見知りおきを。」
そして、深々と頭を下げたおじさん・・・・。
「「「「「「「アンジェリカ王女
失礼にも絶叫する私達を特に驚きもせず、ににこやかに見守っているおじさん。
いやいやっ!
おじさんなんて呼んだら失礼だよ!
えー・・・・と、そう!側近のオイルソーさん!
「それで・・・アンジェリカ姫の側近のオイルソーさんがどう言った御用件でこちらに?」
アンジェリカ姫の側近だと知って慌ててお玉を背中に隠したクレイが聞いた。
うん。
バッチリ見られたたから、今更遅いと思うけどね。
「はい。実はアンジェリカ姫に代わりまして皆さまにパーティの招待状をお持ちさせていただきました。パステル・G・キング様は・・・」
「わ、私です!」
突然呼ばれて背筋がピンと伸ばす。
「こちらがアンジェリカ姫よりの招待状でございます。実はアンジェリカ姫直々にこちらにお持ちしたいと仰ってられたのですが・・・・さすがに王に止められまして。」
オイルソーさんは少し困った顔をしながら、私に分厚い招待状を渡した。
アンジェリカ姫なら言いそうだなぁ・・・。
それにしても分厚い招待状だなぁ・・・・王族からの招待状ってこんなものなのかなぁ。
流石だ。
「あのぅ・・・開けても?」
こんな所で開けていいものか一人思案して、結局オイルソーさんに尋ねた。
「ええ!どうぞ。あまり時間もありませんので。」
・・・・時間が無いって・・・?
「えぇっと、じゃあ失礼します。」
リーザ国の紋章を剥がす。
すると中から手紙の束が出てきたから驚く。
「なに!?もしかしてこれ全部、アンジェリカ姫からの手紙なのー!?」
やたら分厚いなぁと思ってたのよ!
「あの姫さん。手紙でもおしゃべりなんだな・・・。」
トラップが横から呆れ顔で覗き込んできた。
「申し訳ございません。よろしければ一番最後の手紙を読んでくださいましたら、用件が伝わるかと思いますので・・・。」
本当に申し訳なさそうなオイルソーさん。
「一番最後ですか?」
「はい。」
言われた通りに一番後ろの紙を一番前に持ってきて読む。
『そうそう!一番大切なことを伝えてませんでしたわ!
実は、リーザ国で私主催のパーティを行いますのよ。
それで是非、パステル達にも参加していただきたいんです。
馬車も一緒に向かわせますから、是非来てくださいね!
パステル達にお会いできるのを楽しみにしていますわ!』
なんとも一方的な・・・・アンジェリカらしい手紙だった。
「んだけ書いといて、肝心な事はそんだけかよっ!?」
トラップの突っ込みに思わず頷きそうになった。
「はい。そう言うことですのですぐに馬車にお乗りいただけますか?」
私が手紙を読んだのを見届けると、変わらないにこやかな笑顔で馬車の扉を開いた。
「え!?今からですか??」
思わず聞き返す。
今、すぐに馬車に乗れって言ったよね!?
「はい。パーティの開催まで時間があまりございませんので、今すぐにでも出発したいのですが。」
んな、メチャクチャな!
「はいはい!時間がございません!ほら皆さんお乗りになってください!」
ぐいぐいとオイルソーさんに背中を押されて、あれよあれよと馬車に乗せられた。
バタンと扉が閉まって、御者席から
「はい!ではみなさん、出発いたしますよー!」
そう言って馬車は走り出した・・・・。
「う、うそ・・・?」
「俺・・・・お玉持ったままなんだけど・・・・。」
「っつーか。昼飯は?」
「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」
客車のそんな会話が外には聞こえてないのだろうか。
馬車は無情にも走り出した・・・・。
リーザ国のアンジェリカ王女を目指して。
*********
「パステルー!!お待ちしてましたわー!!!!」
「アンジェリカ王女!!」
ぎゅうぅううううと私に抱きついて来たアンジェリカ王女は本当に嬉しそうに私達を大歓迎してくれた。
「パーティに間に合って良かったですわ!わたくし、ドキドキして待ってましたのよ!」
「ええぇっと。お招きくださってありがとうございます。遠慮なく来てしまったのですが(というよりも、連れて来られて)良かったのでしょうか・・・?」
だって、アンジェリカ姫のパーティってことは回りは、ロイヤルな方達なんだろうし、そんな中に我々が混ざっていいものなのだろうかと思ってたんだよね。
でも、アンジェリカ姫は
「もちろんですわ!だってあなた達は『アンジェリカのお仲間』ではございませんか!この国の英雄ですもの。わたくしのお友達もとても会いたがっていますのよ!」
「はあぁ・・・。それならいいのですが。」
「わたくし、皆さまの為に素敵な服を用意してましたのよ!さっ!早く着替えてくださいね!」
「い、今ですか!?」
もう・・・なんだかずっと驚いてばっかりで・・・・。
「ええ!だって、パーティは今夜ですもの!!」
なんてこった・・・・。
みんなの顔もげんなりしてる。
そりゃそうだよー。
長い間馬車に揺られてたんだよ?
少しゆっくりさせて欲しい・・・・。
でも。
「さっさ!皆さん、そんなボケーっとした顔してどうしたんですの?時間がありませんから急いで身支度をしてくださいな。」
「・・・・もう、俺何も言う気しねぇ・・・・。」
あのトラップにこんな事を言わせるなんて・・・・・流石、アンジェリカ王女。
そして再び私達は言われるがまま、それぞれ連れていかれて、身支度をする事となった。
**********
「パステルー!!素敵ですわ!!やっぱりパステルには気品がありますわね!」
「あ、ありがとうございます。」
そうお礼をいうと、ぐいぐいとパーティ会場へと連れて行かれた。
もう何も言うまい。
重々しい広間の扉が開いて、キラキラと輝く広間が目に入った瞬間。
パン!パン!パン!
いきなりの破裂音に耳を塞ぐ。
何!?
何が起こったの!?
恐る恐る目を開けると、
「パステル、誕生日おめでとうー!!!!」
そこには見慣れた顔が並んでいた。
クレイ、トラップ、ノル、キットン、ルーミィ、シロちゃん。
ここまでは分かる。
だって一緒に来たんだもん。
でも・・・・
リタやマリーナの顔も見える。
「へ・・・?何で・・・?」
「ふふふ!大成功ですわ!パステル、今日が何の日か忘れてません?」
アンジェリカ姫の嬉しそうな顔と会場にいるみんなの顔を見渡す。
「何の日?」
「いやですわ!今日は2月5日。パステル、あなたの誕生日ですわ!」
「そうだっけ・・・?」
「ったく!主役がこれじゃあ、ひと芝居打った俺達がバカみてぇじゃねぇか!」
「トラップの言うとおりですわ!パステル。実はわたくし達はパステルの誕生日を祝う為に集まったのですわ!わたくし主催と言うのは本当ですけどね。」
うふふ。と可愛く笑うアンジェリカ姫。
その後ろに大きく
『パステル誕生日おめでとう!!』
と書かれた垂れ幕が目に映って嘘じゃないと理解した。
「・・・・本当にみんな、私の為に集まってくれたの?」
声が震える。
だってまだ信じられなかったから。
「あったりめぇーだろ!バカ!」
「トラップ・・・・」
「バカはあんたでしょ!パステル!とっても綺麗よ!!誕生日おめでとう!」
「マリーナ・・・」
「パステル。誕生日おめでとう。」
「ノル・・・・」
「おめでとうございます。パステル!」
「キットン・・・・」
「おめでと!パステル!素敵な誕生日パーティにしようね!」
「リタ・・・・」
「ぱぁーるぅ!!おたんじょーびおめれとーだおう!!」
「ルーミィ・・・」
「パステルおねぇしゃん。お誕生日おめでとうデシ!」
「・・・・シロちゃん・・・・。」
「パステル。わたくし、パステルの誕生日を知ったのがつい先日だったんです。それでみなさんにこんなにバタバタとさせてしまって・・・・・申し訳なかったですわ。」
「アンジェリカ姫・・・・いいえ。大丈夫です。」
熱い目頭を押さえて笑顔でお礼を言う。
「パステル?泣くほどいやでしたの?」
アンジェリカ姫の心配そうな顔が覗いた。
「これは・・・・嬉しくって泣いてるんですよ。アンジェリカ姫。素敵な誕生日パーティを開いてくださり、本当にありがとうございます。
みんなに祝ってもらう事が出来て、とっても幸せな気分でいっぱいです!」
相変わらず涙は溢れ出してくるけどいいや!
こんなに嬉しい事はないもんね!
「みんなも!ありがとう!!」
みんなに向けて心からお礼を言うと、嬉しそうな笑顔が広がった。
「よーし!!まずは誕生日おめでとうの歌でも歌うか!」
トラップの元気な声に歓声が上がる。
「わかりましたわ!では皆さん、いきますわよー!!せーっのぉ!」
お城のきらびやかな広間の一室。
少し不釣合いな大合唱が流れてる。
でも。
いいよね!
こうしてみんなの笑顔があるんだもの!
そして、私がこの世に生まれた日をこんなにも祝ってくれる人たちがいるだもん!!
心からひとつの想いが溢れ出る。
私、生まれてきて良かった!!!
「HAPPY BRITHDAY パステル!!」
この日、広間から笑いが絶える事は無かった。
END
戻る
絵チャ開催時のお題SS。
《なにかを食べている誰か。》
「腹減ったぁー!パステル、なんかすぐ食べれるもんねぇ?」
バイトから帰ってすぐにトラップから発せられた言葉。
「おかえりー。お昼ごはんは?食べなかったの?」
今は夕方。
夕食にはまだ早いし・・・何かすぐ食べるものあったかなぁ?
「昼飯、食いっぱぐれちまってよー。何でもいいから食わしてくれ。」
そう言ってトラップはお腹を押さえたままテーブルに倒れこんだ。
今日の朝は寝坊して朝ごはん食べて行かなかったもんね。
そんなトラップのお腹からは
ぎゅうるるうるぅぅ・・・・
ぐぅうううぅううぅぅぅ・・・
と壮絶な音が鳴り響いてる。
「ちょっと待ってて。すぐに作るから。」
そう言って私は台所に立つと、なにがあるか物色してみた。
ルーミィみたいなお腹を抱えたトラップは
「頼む・・・・一秒でも早く食いてぇ・・・。」
と呻いていて・・・。
わわわっ!
お昼の残りは残念ながらルーミィの胃袋の中に全部納まっちゃったしね。
かろうじてライスは残ってる。
よしっ!
「ええっと、コレとコレで・・・。」
取り合えず今あるもので出来るだけお腹の膨れるものを作らないと!
トントントン・・・・!!
パッパッと材料を切って、鍋に放り込む。
ジューー!!
いい音をさせてお肉が焼ける。
同時に美味しそうな匂いが台所に広がっていく。
すると背後から
ぐりゅるるるるるぅう・・・!
きゅるるるるるるぅう・・・!
「や、やばい・・・・匂いで余計に空きっ腹が刺激された・・・。」
「!!もう少しだから!頑張って!!」
「ぐうううぅう・・・・。」
急いでご飯を作りながらトラップを気遣う。
お皿にライスを盛っておかずを添え、最後に生卵をおとす。
「はいっ!トラップお待たせ。出来たよ!」
手早く、ガッツり食べれるように焼肉丼風プレートにした。
ゴクリ!
トラップの喉が鳴る。
「いただきますっ!」
まさに飛びつく勢いで食べ始めたトラップ。
「よく噛まないと喉につっかえるよ?」
そんな注意もトラップの耳には届いてないみたいだった。
夢中で食べきったトラップは、
「だぁー!!生き返った!」
ぷはー!と水を飲み干すと満足げな笑顔で私を見た。
「パステル、サンキュー!よし。無事腹も膨れたしちょっくら飲みに行ってくるわ!」
「はああ?何それ!」
信じらんないっ!
夕方といえど、まだ日も沈んでないのに!?
「約束があんだよ。空っ腹で飲んだら流石にすぐに酔っちまうからな!」
「だからって飲みすぎたらダメなんだからね!?」
・・・・・なんだか酒飲みの旦那を持った奥さんみたいな台詞・・・。
いやだ!
こんな旦那、絶対に嫌!
「じゃなー。」
ご機嫌で出掛けていったトラップの背中を見送りながら、今夜はどんなに飲みすぎても迎えには絶対行かないと心に決めた。
のに・・・・。
心に決めてたのに!!
「ちょっと!!トラップ!こんな所で寝ちゃダメだってばっ!」
「あー?パステルさんじゃあ・・・・ないですか?」
結局、ベロベロに酔っ払ったトラップを担ぐ羽目になっていた。
トラップの足には全く力が入ってなくって、ほとんど私にもたれ掛かってる状況。
重いなぁ・・・。
まったく。
しかも、『パステルさんじゃあ・・・ないですか?』ってなんで疑問系なのよ!?
「ほらぁ!しっかり自分の足で歩く!」
「うーん・・・・無理ぃ。歩けませぇーん。酔っ払ってるんでっ!」
「威張るなっ!」
私の肩に乗せられたトラップの顔からはお酒の匂いがプンプンしている。
もう・・・・・。
何でこんな事になってんのよー。
いっその事、このまま捨てて帰ってしまおうかと思ったけど・・・・流石にそれはね。
夢見が悪そうじゃない?
「・・・・なぁ。パステルさーん?」
だからなんで疑問系なのよ!?
「・・・・なんですか。トラップさん。」
半ば呆れ気味に返事を返す。
どうせ酔っ払っているトラップは、明日になったら今日の事を綺麗に忘れてるんだ。
適当に相手しとこ。
「今日のぉ・・・・なんだっけぇ。どーんぶり?」
「どーんぶり???ああ!焼肉丼の事?」
「そぉー。そぉー。どーんぶりっ!あれ!ウマかった!」
「・・・・そりゃどうも。」
日頃、トラップからこんな素直に『美味しかった!』って言われた事がないから、すっごく意外だった。
酔った勢いかな?
トラップの意外なお褒めの言葉に嬉しくなる。
ふふふ。
この調子なら、普段は聞けないトラップの本音が聞けるかもしれない。
そう思うと悪戯ゴコロに火がついた。
「トラップは私の料理、美味しいと思う?」
「んー?おぉー思うぞー。パステルさんの作るメシはウマイっすよぉー!」
千鳥足のトラップがフラフラしながら答えてくれる。
ぷぷぷっ!
これは相当、酔ってるよ!
私は必死に笑いをかみ殺しながら
「じゃあ、今一番食べたいものは???」
ニヤニヤ笑いながらトラップにそう聞くと、トラップはくるりとこっちを向いた。
トラップはなんて言うんだろう。
まだ酒が飲みたいとか言ったらこのまま置いて帰ってしまおうかと思いながら。
「ん?」
トラップを担いだままの私と視線がぶつかる。
次に目に映ったのはトラップの赤毛で・・・・・・
カプリ。
かじられていた。
私の首が・・・・・・トラップに。
「へ・・・?トラップ?」
痛くはないけど、何で私がかじられてるの?
一瞬の出来事に呆然となる。
「ごっそーさん。」
トラップはそう言うと再び私の肩に自分の頭を置いた。
そして、
「はーい、パステルさん?ちゃんと家まで連れて帰ってくださーい。」
そう言ってフラフラと歩き出す。
「ちょっと!私は食べ物じゃないんだからね!?目の前にあるからって、なんでもかじんないでよ。」
トラップにつられて家路へと向かう。
私がよいしょ!とトラップを担ぎ直して歩き出すとトラップが耳元で呻いた。
「うぅー。今日は飲みすぎたぁー。ハラ減ったぁー。」
「はいはい。もう少しだから頑張って歩いてください。トラップさん。」
酔っ払いの相手なんてするもんじゃないよね。
だって会話も行動も支離滅裂。
しまいにはかじられるんだよ?
次何かしたら、置いて帰るんだから!
「パステルさーん?わたくし、酔っ払ってなんかいませんよぉー。でっもぉー。君に酔ってまーすっ!」
「・・・黙れ。酔っ払いっ!!」
END
戻る
《なにかを食べている誰か。》
「腹減ったぁー!パステル、なんかすぐ食べれるもんねぇ?」
バイトから帰ってすぐにトラップから発せられた言葉。
「おかえりー。お昼ごはんは?食べなかったの?」
今は夕方。
夕食にはまだ早いし・・・何かすぐ食べるものあったかなぁ?
「昼飯、食いっぱぐれちまってよー。何でもいいから食わしてくれ。」
そう言ってトラップはお腹を押さえたままテーブルに倒れこんだ。
今日の朝は寝坊して朝ごはん食べて行かなかったもんね。
そんなトラップのお腹からは
ぎゅうるるうるぅぅ・・・・
ぐぅうううぅううぅぅぅ・・・
と壮絶な音が鳴り響いてる。
「ちょっと待ってて。すぐに作るから。」
そう言って私は台所に立つと、なにがあるか物色してみた。
ルーミィみたいなお腹を抱えたトラップは
「頼む・・・・一秒でも早く食いてぇ・・・。」
と呻いていて・・・。
わわわっ!
お昼の残りは残念ながらルーミィの胃袋の中に全部納まっちゃったしね。
かろうじてライスは残ってる。
よしっ!
「ええっと、コレとコレで・・・。」
取り合えず今あるもので出来るだけお腹の膨れるものを作らないと!
トントントン・・・・!!
パッパッと材料を切って、鍋に放り込む。
ジューー!!
いい音をさせてお肉が焼ける。
同時に美味しそうな匂いが台所に広がっていく。
すると背後から
ぐりゅるるるるるぅう・・・!
きゅるるるるるるぅう・・・!
「や、やばい・・・・匂いで余計に空きっ腹が刺激された・・・。」
「!!もう少しだから!頑張って!!」
「ぐうううぅう・・・・。」
急いでご飯を作りながらトラップを気遣う。
お皿にライスを盛っておかずを添え、最後に生卵をおとす。
「はいっ!トラップお待たせ。出来たよ!」
手早く、ガッツり食べれるように焼肉丼風プレートにした。
ゴクリ!
トラップの喉が鳴る。
「いただきますっ!」
まさに飛びつく勢いで食べ始めたトラップ。
「よく噛まないと喉につっかえるよ?」
そんな注意もトラップの耳には届いてないみたいだった。
夢中で食べきったトラップは、
「だぁー!!生き返った!」
ぷはー!と水を飲み干すと満足げな笑顔で私を見た。
「パステル、サンキュー!よし。無事腹も膨れたしちょっくら飲みに行ってくるわ!」
「はああ?何それ!」
信じらんないっ!
夕方といえど、まだ日も沈んでないのに!?
「約束があんだよ。空っ腹で飲んだら流石にすぐに酔っちまうからな!」
「だからって飲みすぎたらダメなんだからね!?」
・・・・・なんだか酒飲みの旦那を持った奥さんみたいな台詞・・・。
いやだ!
こんな旦那、絶対に嫌!
「じゃなー。」
ご機嫌で出掛けていったトラップの背中を見送りながら、今夜はどんなに飲みすぎても迎えには絶対行かないと心に決めた。
のに・・・・。
心に決めてたのに!!
「ちょっと!!トラップ!こんな所で寝ちゃダメだってばっ!」
「あー?パステルさんじゃあ・・・・ないですか?」
結局、ベロベロに酔っ払ったトラップを担ぐ羽目になっていた。
トラップの足には全く力が入ってなくって、ほとんど私にもたれ掛かってる状況。
重いなぁ・・・。
まったく。
しかも、『パステルさんじゃあ・・・ないですか?』ってなんで疑問系なのよ!?
「ほらぁ!しっかり自分の足で歩く!」
「うーん・・・・無理ぃ。歩けませぇーん。酔っ払ってるんでっ!」
「威張るなっ!」
私の肩に乗せられたトラップの顔からはお酒の匂いがプンプンしている。
もう・・・・・。
何でこんな事になってんのよー。
いっその事、このまま捨てて帰ってしまおうかと思ったけど・・・・流石にそれはね。
夢見が悪そうじゃない?
「・・・・なぁ。パステルさーん?」
だからなんで疑問系なのよ!?
「・・・・なんですか。トラップさん。」
半ば呆れ気味に返事を返す。
どうせ酔っ払っているトラップは、明日になったら今日の事を綺麗に忘れてるんだ。
適当に相手しとこ。
「今日のぉ・・・・なんだっけぇ。どーんぶり?」
「どーんぶり???ああ!焼肉丼の事?」
「そぉー。そぉー。どーんぶりっ!あれ!ウマかった!」
「・・・・そりゃどうも。」
日頃、トラップからこんな素直に『美味しかった!』って言われた事がないから、すっごく意外だった。
酔った勢いかな?
トラップの意外なお褒めの言葉に嬉しくなる。
ふふふ。
この調子なら、普段は聞けないトラップの本音が聞けるかもしれない。
そう思うと悪戯ゴコロに火がついた。
「トラップは私の料理、美味しいと思う?」
「んー?おぉー思うぞー。パステルさんの作るメシはウマイっすよぉー!」
千鳥足のトラップがフラフラしながら答えてくれる。
ぷぷぷっ!
これは相当、酔ってるよ!
私は必死に笑いをかみ殺しながら
「じゃあ、今一番食べたいものは???」
ニヤニヤ笑いながらトラップにそう聞くと、トラップはくるりとこっちを向いた。
トラップはなんて言うんだろう。
まだ酒が飲みたいとか言ったらこのまま置いて帰ってしまおうかと思いながら。
「ん?」
トラップを担いだままの私と視線がぶつかる。
次に目に映ったのはトラップの赤毛で・・・・・・
カプリ。
かじられていた。
私の首が・・・・・・トラップに。
「へ・・・?トラップ?」
痛くはないけど、何で私がかじられてるの?
一瞬の出来事に呆然となる。
「ごっそーさん。」
トラップはそう言うと再び私の肩に自分の頭を置いた。
そして、
「はーい、パステルさん?ちゃんと家まで連れて帰ってくださーい。」
そう言ってフラフラと歩き出す。
「ちょっと!私は食べ物じゃないんだからね!?目の前にあるからって、なんでもかじんないでよ。」
トラップにつられて家路へと向かう。
私がよいしょ!とトラップを担ぎ直して歩き出すとトラップが耳元で呻いた。
「うぅー。今日は飲みすぎたぁー。ハラ減ったぁー。」
「はいはい。もう少しだから頑張って歩いてください。トラップさん。」
酔っ払いの相手なんてするもんじゃないよね。
だって会話も行動も支離滅裂。
しまいにはかじられるんだよ?
次何かしたら、置いて帰るんだから!
「パステルさーん?わたくし、酔っ払ってなんかいませんよぉー。でっもぉー。君に酔ってまーすっ!」
「・・・黙れ。酔っ払いっ!!」
END
戻る