ゆうゆうかんかん 悠悠閑閑
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ssは、素敵なイラストをプレゼントしてくださったとりさんに捧げます!!
設定としては、結婚後のトラパスです。
《青と緑の似合う人》
「わぁ!すっごく安ーい!!」
一人で買い物途中、思わず目を引く安さに私は、一軒の店へと吸い寄せられて行った。
体って正直なもので、気が付いた時には商品を手に握りしめていた。
あははははー!
私、こう言うところは昔から成長してないよね。
貧乏パーティの頃に染み付いた感覚は、簡単には無くならないみたい。
今はパーティも解散し、トラップと結婚した私はドーマで二人暮らし中。
昔みたいなジリ貧生活じゃないのに・・・・・相変わらず安いものに弱いんだよね。
トホホホ・・・・。
「おやおや!トラップ坊ん所の若奥さんじゃないか。どうだいそれ!安いだろ?
いやぁー。間違って大量発注しちゃってねぇ、返品は聞かないっていうからさぁ。
仕方なく、特別セール実施中なんだよ!」
なるほど。それでこんなに安いのかぁ。
私がさっきから何を握りしめているかというと、実は『毛糸だま』なんだな。
なんと1玉、5Gだって!!
破格の値段だよね!!
これは買わなきゃ勿体無いよ!!
「買います!ください!!」
お店のおばさんは「ありがとね!」と紙袋に詰めてくれた。
私がこの毛糸を気に入ったのは安さだけじゃなく、色がとっても綺麗だったからなんだ。
空の青と草の緑が綺麗に合わさった、澄んだ青緑色。
うん!
きっと、トラップに似合うと思う。
ドーマの冬は厳しいから、あったかいマフラーを編んであげよっと。
今トラップは冒険に出ていて留守で、最低でも後一週間は帰ってこないんだよね。
だから、トラップが帰ってくるまでには仕上がるはずだもん。
丁度小説の方も一段落しているし、なにより・・・・・トラップのいない寂しさを紛らわす、良い方法かもしれない。
自分も冒険に出ている時は気付かなかったんだけど、ただ待つのって結構辛いんだよね。
家で一人ポツンと居てると会話も無いし、何をしていても一人で実は寂しい。
小説を書いたりもしているけど、気が付くといつもトラップの事を考えてる。
今何してるかな?
何処にいてるのかな?
トラブル起こしてないかな?
怪我してないかな?
・・・・・・トラップも私の事、思い出したりしてくれているのかな・・・・・。
そしていつも必ず最後に願う。
『無事に帰ってきますように・・・・・。』
と。
トラップが元気に帰ってきてくれるんだったら、私、寂しいの我慢してちゃんと待ってるからね。
いつもそんな風に思うんだ。
最近、リタが言ってた言葉をよく思い出す。
『パステルたちが無事に帰ってきてくれるとすっごく嬉しいよ!私は待つことしか出来ないけど、私は必ずここに居るからさ。ちゃんと待ってるから、いつでも帰っておいでよ!』
そう言って、冒険から帰ってきて猪鹿亭に行くとリタは、嬉しそうな泣きそうな顔で笑ってくれていた。
私を待ってくれている人がいる。
帰る場所がある。
それはとても心強い事実・・・・・・。
彼にとっても、そうであって欲しいと思う。
黙々と編み続ける事、5日目。
ついにマフラーは完成した。
したんだけど・・・・・問題がひとつ。
私、本当にただ黙々と編んでたのね。
何も考えずに。
そしたらなんと、すっごく長いロングマフラーが出来上がってしまった!!
どうしよう!?
あの時、毛糸玉を私は20玉買ったのね。
それだけ買っても、たった100Gだったんだもん!
あああぁ・・・・・。
それにしても失敗したぁ。
20玉全部使っちゃうなんて・・・・・。
こんなに長いマフラー、トラップは使ってくれないかもしれない。
試しに自分の首に巻いてみると、マフラーの端が床に着く。
歩くとズルズルと引きずっちゃう。
トラップの身長なら引きずる事は無いにしても・・・・・これは実用性に欠け過ぎるよね。
がっくりと肩を落としていると、急に表が騒がしくなった。
ん・・・・!?この声は・・・。
も、もしかして!!
慌てて窓から外の様子を覗くと、見慣れた盗賊団の姿を確認できた。
そして、逢いたいと思っていた彼の姿も。
予定より早い帰還に嬉しくなって、マフラーを握りしめたまま外へと飛び出す。
「トラップ!!お帰り!!」
「おぉっ!?よくわかったな。」
勢いよく玄関の扉を開くと、そこには驚いた表情のトラップが立っていた。
「怪我は無い?」
無事に帰ってきてくれたことに安堵しながらも、トラップの体を観察する。
あちこちボロボロになった服が冒険の過酷さを物語っていた。
「あぁ。服はあちこちボロボロになっちまったが、怪我はしてねぇよ。」
「そっか!良かった。おかえり、トラップ!」
トラップの言葉に安心して、やっと心から嬉しい笑顔になれる。
「おぅ!ただいま。・・・・それにしても、おめぇさっきから何持ってんだソレ。」
トラップが言ってるのは、もちろんあの無駄に長いマフラーの事。
「あはは・・・!コレねー。トラップにマフラーを編んでたんだけど、失敗しちゃった!」
えへへー。と笑う。
一人の時は自分の失敗に情けない気持ちで一杯だったけど、なんだかトラップの顔を見たら大した事じゃない気がしてきた。
それはきっと、トラップが無事に帰ってきてくれた嬉しい気持ちのほうが強いからかな。
「ぶっ!おまっ!それがマフラー??だーっははっはっは!!!どんだけ長いんだよ!?」
昔と変わらないトラップの無邪気な笑い声に嬉しくなりつつも、あえて頬を膨らます。
「だから、失敗しちゃったの!」
もう!トラップ笑いすぎー!!
「だっはははははっ!おめぇが編み物で失敗なんて珍しいなー。ぷぷっ!」
「だって、いろいろ考え事しながら編んでたら気付かなくって・・・・。トラップ笑いすぎだってば。」
私の言葉に片眉をピッと上げたかと思うと、にやりとイタズラそうに笑う。
「何?俺が居なくって寂しかったから?」
「ち、違うもん!!小説の事で・・・・」
「ふーん?俺はずっとおめぇに逢いたかったけど?」
反則的な言葉をこぼしながら、トラップは私の手からスルスルとマフラーを手繰り寄せていく。
「うっ。・・・・・・私もトラップに逢いたかった・・・よ?」
トラップはズルイ。
この長いマフラーの様に、私はトラップの思うがままに操られてしまう。
するん・・・!
長いマフラーの最後の端っこが私の手をすり抜けて、全てトラップの手の中に収まった。
「しかしほんっとーに、長いなぁコレ!」
そう言って自分の首に巻き始めた。
えぇっ!?トラップ、使ってくれるのー!!??
「トラップ!いいよ!やっぱり長すぎるもん。私、編み直すからさ!」
トラップの身長を持ってしても、やはり長すぎるマフラー。
ダランと垂れたマフラーが、不器用すぎる自分と重なる。
「確かに長すぎだな。こりゃ。」
くっくっく。と笑いながら「じゃあさ。」と言って、余ったマフラーを持ち上げる。
ぽふっ。
くるん!
「え・・・・・!?」
突然トラップに後ろ向きにされた私は、自分の首を見下ろして確認する。
そこには、トラップの首に巻かれた綺麗な青緑色のマフラーと同じものが巻かれていて・・・・。
「おおー!ぴったり!!」
後ろからトラップに抱きしめられて、ひとつのマフラーで繋がれた体。
背中にトラップの体温を感じて、ドキドキする。
「ト、トラップ・・・?」
「このマフラー、一人で使うには長すぎっけど、2人で使うならぴったりの長さだぜ?」
ちらっと肩越しに後ろを振り返ると、トラップの首から伸びた澄んだ青緑色はそのまま私を繋ぎとめていた。
「本当だ・・・・。」
2人で巻いても窮屈に感じない、心地良い距離を感じるそんな絶妙な長さ。
後ろからまわされたままのトラップの手を、きゅっと握る。
マフラーの力だけじゃなくって、自分の力でトラップを繋ぎ止めようと。
「いい色のマフラーだな。」
後ろから嬉しそうな声がして、前を向いたまま私も笑う。
「うん!絶対トラップに似合うと思ったんだ!綺麗な青緑色でしょ?」
「ん?俺はおめぇに似合うなぁって思ったけど?」
「ええっ!?そう???」
驚いて改めてマフラーを見つめる。
そうかな?私にも似合うのかな・・・・?
空の青と草の緑。
私の大好きな色。
だって、大好きな人を思い出させてくれる色だから。
うん!
やっぱりトラップに似合うと思う。
綺麗な赤毛によく映える青緑。
・・・・本当に私、トラップに逢いたくて仕方なかったんだ。
今日は素直に甘えてみようかな。
トラップの嬉しそうな勝ち誇ったような顔がチラついて、ちょっと釈然としないけど。
そこで私は小さなイタズラを思いついた。
「ふふふっ!」
「・・・・なんだよ?いきなり。」
突然笑い出した私を、訝しげに覗き込むトラップ。
「あのね!このマフラーがブーツ家代々の、ありがたーいマフラーだったら面白いなぁと思って!」
ふふふっと笑うと、耳元で不機嫌そうな声がする。
「・・・・・その話はもう忘れろっ!!!」
小さな悪戯。
いつもトラップの思うがままにされてしまうから、ささやかな反抗。
ごめんね?
もう意地を張らずに、素直になるから許してね?
ゆっくりと振り向くと、拗ねたトラップの顔が見えて頬が緩む。
2人を繋ぎとめてくれているマフラーを、くいっ!と手繰り寄せるとそのままトラップの顔が近づいてくる。
ちゅっ。
軽く唇に触れるだけのキス。
トラップの瞳を見つめながら、にっこり笑う。
「私も、すっごく逢いたかったよ。トラップ!」
おしまい。
とりさん!
本当に素敵なイラスト、ありがとうござました!!!
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