ゆうゆうかんかん 悠悠閑閑
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*長編SS 第一話*
きっと、この世界に意味の無いものなどひとつも存在しないんだ
繰り返し昇る太陽や、遥か彼方の星の瞬きさえも同じ
このピンクに染まる愛らしく、柔らかな頬を撫でる風のように
広野を駆け、森を抜け、海原を渡り、山瀬を超え、
そう
風は吹く
どこまでも
その風はいつか巡り巡って、再び、その頬を優しく撫でるだろう
彼女の幸せを願って 。
《第一話》
「あ!ぱぁーるぅ。むこーからかぜさんがくうよ!」
麗らかな昼下がり、薄い雲と暖かな太陽が昇る晴天のシルバーリーブ。
そんなモンスターもお昼寝しそうな陽気の中、私はルーミィとシロちゃんを連れて散歩に出た。
まさに村は平和そのもの。
「へ!?かぜさん?」
可愛い小さな指先を見ると丁度、エベリンからの乗合馬車が到着したところ。
特に目立った観光名所も無いこの村で客が降りる事はあまりない。
と言うか・・・ほとんどない。
ここはシルバーリーブのメインストリート。
その入り口にある乗合馬車の停留所は、今日も閑散としていた。
ま、いつもの事だけどね。
でも、今日は違ったみたいで・・・
停まったばかりの乗合馬車から、一人の男性が降りてきた。
冒険者か旅人なのか。
膝丈ほどの薄汚れたマントを羽織り、肩から斜めにやはり薄汚れたカバンをかけている。
武器は持ってないみたいだから、旅人なのかな。
「ほら。ね!かぜさんきたでしょー?」
私のスカートの裾を引っ張りながら、にこぉと笑顔のルーミィ。
「え?」
勝手な推測をしていた私は慌てて視線をルーミィに戻す。
『かぜさん』って、あの男の人のこと?
う ん。
知らない・・・・人だと思うけどなぁ。
私が忘れているだけなのかなぁ?
思わず首を傾げる私に
「知らない人デシよ?」
ルーミィの隣でシロちゃんが小さく囁いた。
シロちゃんがホワイトドラゴンだって事は秘密だからね、彼なりに配慮してくれたのだろう。
「ねぇ、ルーミィ。あの男の人を知ってるの?」
どんなに自分の過去の記憶を掘り起こしても、やはり『かぜさん』に該当する人物は見当たらなかった。
「ううん!しあなーい!」
ニコニコと笑顔で首を横に振るルーミィ。
同時にシルバーブロンドの綺麗な髪が左右に揺れた。
・・・へ?
ルーミィ知らないの??
じゃあ、『かぜさん』って、どう言う事?
ポカンと口を開けたまま、再びメインストリートを挟んだ反対側に立つ男性に目をやる。
いつの間にか乗合馬車は出発したあとで、一人残された男性は珍しそうに辺りを見回していた。
よく見ると不思議な装飾を付けている。
腰よりも長いプラチナの髪をひとつに束ね、端正な顔立ちは長旅のせいなのか、マントのように薄汚れていた。
そのまま男性と目が合ってしまった。
げ。
私・・・見過ぎた?
思わずなんとも居心地の悪い、ぎこちない笑みを私が浮かべた瞬間
ゴォオオオォォォォオオォォオ!!!
何の前触れもなく、いきなり目の前から突風が襲ってきた。
「きゃああぁ!何っ!?」
咄嗟に自分の身体を守ろうとして、はっと我に返る。
あまりの暴風にルーミィとシロちゃんの体が浮いてるじゃない!!
小さな体を必死に抱き寄せると、ぎゅっと二つの温もりを抱き締める。
耳元で風がゴウゴウと響く。
腕の中に暖かい温もりがある事に安堵しながら、あと一歩気付くのが遅かったら二人とも確実に飛ばされていたかと思うと、嫌な汗が流れる。
危ない。
本当に危なかった。
とは言え・・・いきなりな暴風は止む気配は無いし、気を抜くと私の体すら持って行かれそうなのだ。
暴風にふらつく足で必死に地面を踏ん張りながら、私は目の前の状況を理解出来ずにいる。
だって・・・!
さっきまで風ひとつ無い平和だったのに。
いまや、砂と葉っぱが宙を舞い、どこかの店先に置いてあっただろう樽が目の前を転がっていった。
仕舞いには、キャウキャウ鳴きながら犬が飛ばされて行くのを可哀想だと思いながらも見守るしか出来ない。
前に進むことすら風が阻むのだ。
成す術が無いとはこの事。
あぁっ!
そう言えばあの男性はどうなったのだろう?
停留所の屋根はガタガタと揺れて、今にも吹き飛んでしまいそう。
その前で一人、空に向かって両腕を振りながら何かを叫んでいるさっきの男性。
「・・・・・・・・・・・???」
なんだか・・・・見てはいけないものを見てしまった気分なんだけど。
「かぜさん、こまってるおぅ・・・」
腕の中のルーミィが心配そうな声をあげた。
うーん。
あれは『困っている』とは違うような・・・?
だってさっきから
「ほら!落ち着くんだ!」
とか、
「大丈夫だからっ!とにかく風を止めて!」
とか。
暴風の中、髪を振り乱したまま何も無い空に向かって独りで叫んでいる。
いやぁ・・・。
取りあえず貴方が落ち着くべきじゃないの?
だって風に話しかけても・・・・ねえ?
風が止むわけ無いじゃない?
こっそりと心の中で男性に呟く。
「かぜさぁーん!るーみぃこあくないよっ!!だいじょーぶらよっ!!」
突然ルーミィが空に向かって叫んだ。
次の瞬間。
ゴゴゴゴオオオオオオオォォォォォオオ・・・!!
「 っ!?」
もう、目を開けていられないほどの爆風。
後ろでは民家の壁や屋根がバリバリと嫌な音を立てるのが聞こえる!
このまま立って居たら、3人とも飛ばされるのは時間の問題だ。
現に、風がズリズリと容赦なく足を持っていこうとしているもの!
だから、立ってないで座り込もうと僅かに右足を動かしたその時。
ふわり
自分の身体が僅かに宙に浮いたのが分かった。
う・・・そっ!?
無我夢中でルーミィとシロちゃんを強く抱き締め直す。
ちゃんと私が守らないと・・・!!
尋常じゃない爆風に制御できない自分の身体。
その恐怖に思わず、民家の壁に叩きつけられる自分たちを想像して本能的に身を固くする。
が。
「きゃあああああああああああ !!!??」
呆気なく、私たちの身体は爆風に飛ばされてしまったのだ!
(*4/10加筆修正済み)
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