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ゆうゆうかんかん 悠悠閑閑

悠悠閑閑へようこそ! 当ブログはフォーチュンクエストトラパス中心サイトです。 二次小説や日記などがメインの ブログ名のまま、のんびり運営です。 よろしければどうぞ!

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FQ長編ss 第七話です。


《第七話》


「おめぇ、その顔ブサイクだからやめろって」


はっとして顔を上げると、私のすぐ隣をトラップが平行して飛んでいた。
シュテナの反対側をシュッカに手を引かれて風に乗るトラップ。
そのトラップの不機嫌そうな顔。
「んもー!いつも何よ!?ブサイクブサイクって!女の子に対して失礼だと思わないの!?」
私がボーッとしてたりすると、トラップはいつもこう言ってからかってくるんだよね。
「失礼?あにがだよ。不細工な顔してっから悪いんだろーが」
さっきとは変わって、ニヤニヤと嬉しそうな表情だ。
きぃ        !!!
ああ言えば、こう言う!
マジに受け止めるだけドツボに嵌ると解っていても、つい、口が動く。
「大体ねぇ。私が不細工だからってトラップに何か迷惑かけた!?
私がどんな顔してようと、トラップに文句を言われる筋合いはないわ!」
そう言ってトラップをキッと睨むと、彼は黙ったまま片眉を少し上げた。
毎度毎度のことながら、本当に腹が立つ!
そうトラップに啖呵を切った私の隣で、シュテナがポツリと呟いた。
「迷惑はかけてないだろうけど、心配はかけたんじゃない?」
「・・・・え?」
シュテナの意外な発言に驚いてシュテナを見ると、無表情のまま私を真っ直ぐ見返してきた。
一瞬、頭が真っ白になる。
心配・・・・?トラップが?
再びのろのろと、トラップへ顔を向けると今度は『不機嫌そう』ではなく、『不機嫌』な顔が待っていた。
その上、私と目が合うと軽く睨まれ、そっぽを向いてしまった。
な・・・・なんなのよぉ。一体。



『おめぇさ。んな顔してると、ほんとブスだよな』
『そんな顔してっと、ブッ細工になるぞ』



記憶を漁ると出るわ、出るわ。
トラップに今まで何度言われたか分らない台詞。
トラップがこう言うのは決まって、私がボーっと両親のことやガイナのことを思い出しているときで・・・
言われた時はいつも、トラップの嫌がらせだと思ってたけど。
あれは彼なりに心配・・・・してくれてたって事?
そう思うと急に、胸にじんわりと暖かいものが広がる。
そうだ。
ちーっとも!素直な性格じゃないトラップは、励ます時もおどけたり、おちょくったり。
誰かを心配する時も、彼は彼なりのやり方でしか心配出来ない人だ。
私はそんな彼の言動を真に受けていつも、いつも。
怒ってた。
あ。
私ってば、ついさっきも啖呵を切ったばかりじゃないの!?
うぅ・・・
でも。
トラップは怒る私に対していつも、嬉しそうな悪戯っ子な笑顔を返してくれてたんだよね。
今は不機嫌な顔でそっぽを向いてしまっているトラップだけど、その横顔にさっきの笑顔が重なった。



そっか・・・。
そうだったんだ。
トラップとは長い付き合いだもん。
私はそんな彼の性格を十分に理解したつもりでいた。
理解してるつもりだったけど、本当の彼の本心までは見抜けてなかったのかも知れない。
じんわりと私の胸に広がった暖かい気持ちは今、沸々と湧き上がって全身を駆け巡っていく。
トラップにこんなにも心配されてた事に気付いて、嬉しさでいっぱいだった。
嬉しさでいっぱいになった私は、つい、堪え切れなくて。
「ねぇ、トラップ」
トラップの上着をくいっと引っ張る。
「・・・・・あんだよ」
相変わらずブスッとした表情のトラップは、こっちを見ようともしない。
でも、私は構わず続けた。
「トラップって本当、素直じゃないよねぇ。
なんかあっちゃあ、すぐ憎まれ口叩くしさ。いや、それがトラップだって分ってるよ?
分ってたけど、今回シュテナに言われなきゃ私、ずっとトラップの優しさを勘違いしたままだった」
「・・・けっ。俺の優しさだぁ?んなの、気のせいだろ」
僅かに赤みが差したトラップの横顔。
私は引っ張ったままだったトラップの上着を、きゅっと強く握りなおす。
シュテナもシュッカも黙ってくれてる。
「ううん。
気のせいじゃないもん。
トラップはトラップのやり方でいつも、私を叱咤激励してくれるじゃない。
あのさ、私・・・トラップには本当に感謝してるんだよ?
トラップは私を絶対甘やかさないでしょ?
そりゃあ確かに、ムカつく事も山のようにあるけどさ。
でも、それが私には一番効くみたいなんだよね。だから・・・」
「なぁーにが、叱咤激励だ。アホかっ!
んなもんなぁ、俺から言わせれば子守りと変わんねぇんだよ。
ドジで泣き虫でお人好しで。
目を離すとすぐ居なくなるおめぇに毎度、毎度、振り回される俺の身になってみろ!」
ううぅ・・・。
反論できないのが悔しい。
そんなにポンポン言われると、さっきの感謝の気持ちとか嬉しかった気持ちがどんどん萎んでいく。
「それにおめぇは甘やかすと、泣き言ばっかで何もしねぇ事くらい分ってんだよ!
優しくして欲しいならクレイの所にでも行け。
けっ!
誰もおめぇの心配なんか微塵もしてねぇーっつうの!勝手に勘違いすんな!」
そう言い捨てて、先に行こうとするトラップ。
その服を力一杯引っ張ると、トラップが『ぐえっ!』と鳴いた。
どうやら引っ張ったついでに軽く、トラップの首を絞めてしまったらしい。
ふーんだ!
人が折角素直に感謝の意を述べたと言うのに、この態度!
可愛くなぁ       いっ!!
だから私も負けじと言ってやった。




「あっそう!
じゃあ、私は別に勘違いしたままでいいもん!
トラップったら素直になれないから認めたくないだけなんだよねー。
本当は私の事、心配で心配で仕方ないんでしょう?
うん。うん。分ってるってば!
感謝してあげるから感謝しなさい!」
ふっふっふっ!
にまらぁ。と笑顔を浮かべた私の顔を、あんぐりと口を開いたまま凝視しているトラップの顔!
一瞬の空白。
「ふ・・・・っざけんなぁー!!」
トラップは顔を真っ赤にして叫んだ。
おおー!
照れてる!照れてる!
はっはっは!私だって言われてばっかりじゃないんだからね!
「くくく・・・」
ふと、隣から忍び笑いが聞こえてきた。
叫びながら飛び去ってしまったトラップを横目で見ながら、シュテナと笑いあった。



「ぱぁーるぅ!」
突然、シュリさんと先頭を飛んでいたクレイとルーミィ達に呼ばれた。
いつの間にやら、一番後ろを飛んでいた私とシュテナ。
「どうしたのぉー?」
シュテナと目配せをし、少しスピードを上げてルーミィ達に追いつく。
そんな私たちを嬉しそうに手招きをしているルーミィとシロちゃん。
「ほら!あそこ!ドーマの町が見えてきたんだ!」
クレイが嬉しそうにニコニコと指差す先には、テラソン山の麓。
トラップとクレイの故郷、綺麗なドーマの町並みが見えていた。
「うひょー!おい。あそこ、俺ん家じゃねぇーか!?って事はあれがクレイの家だな」
いつの間に機嫌が直ったのか、すぐ近くでトラップの声が聞こえる。
「ああ。で、あの大きい屋敷がサラの家だ」
ふわぁー!
やっぱりサラのお屋敷は、ズバ抜けて大きい!
すると突然、ルーミィがドーマの町に向かって大きな声で叫びだした。



「くれぇまま       っ!!
また、るーみぃにクッキィーいっぱい、ちょーらいねぇ          !!!
とりゃーのままも、またジャムつくってねぇ              !!!
るーみぃ、い            っぱい!あじみしてあげゆからねぇ           !!!!!」



これにはみんな大笑い!
トラップもクレイも笑いながらルーミィに近づき、ルーミィの頭を両側からワシャワシャ撫でた。
「ルーミィ。きっと、かあさんにも聞こえたから送ってくれるよ。クッキー楽しみだな!」
「チビすけ!それはぜってぇー、味見じゃすまねぇーだろっ!」
二人に撫でられて、あいだには嬉しそうなルーミィの顔。
ふふふ。
私たち一行はテラソン山を横目に、ドーマの町上空を通り過ぎて行った。



>第八話

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