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ゆうゆうかんかん 悠悠閑閑

悠悠閑閑へようこそ! 当ブログはフォーチュンクエストトラパス中心サイトです。 二次小説や日記などがメインの ブログ名のまま、のんびり運営です。 よろしければどうぞ!

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《冒険者カード クレイ編》


「ねぇ、クレイ。冒険者カード見せてくれない?」
「え?別にいいけど?・・・はい。」
「ありがとー!」
「でも今さら冒険者カードなんか見て、どうするんだ?」
「ほら『冒険時代』の特集コーナーで、私の小説の登場人物を一人ずつ詳しく紹介するって言ってたでしょ?まずはリーダーのクレイからになったの。」

実は、なんと私が書いている小説が、かなり人気らしいのだ!
えへへへー。嬉しいよね。私もついに、作家らしくなってきたのかなぁ。
だってね、最近ファンレターの数が以前より、グンと増えていた。
その中には読者からの質問でよく、クレイの誕生日はいつですか?とか、トラップの身長は何センチですか?なんてよく聞かれるんだよね。
そんな話を印刷屋のご主人にすると、じゃあいっその事、全員の紹介を載せてみましょう!読者もきっと喜びますよ!と、話はとんとん拍子にすすんでいった。

でも私の小説ってほぼ、ノンフィクションでしょ?主人公は私、パステルだし他のメンバーもほとんどありのまま書いている。
だから夕べみんながそろった時に、雑誌に誕生日やイラスト(私が書くから似てないかも・・・)を載せても大丈夫かって事と、身長とかを測るのに協力してほしい、簡単なインタビューもさせてね。という話をしたんだけど・・・。

「・・・クレイ、もしかして忘れてた?」
おそるおそる私が聞くと、
「あはははは。そういえば、そんなこと言ってたよな。すっかり忘れてたよ。」
ごめん、ごめん。と笑いながらクレイは、頭をポリポリと掻いた。
するとソファで一人、ゴロンと横になっていたトラップが口を挟んできた。
「けっけっけっ。クレイちゃん、もうボケちゃったんじゃねぇーの?」
「ぼけてない!」
すばやいクレイの突っ込みとこぶしが飛んだけど、トラップはもちろん、ヒョイと避けてしまった。
「んもう。トラップはちょっと黙っててよね。」
私がクレイの冒険者カードを書き写しながら、ぴしゃりと言うと、クレイの横から「けっ!」と悪態をつく声が聞こえた。

「えーっと、体力が70で、カルマが・・・うわぁ!クレイのカルマ35だって!すごーい。さすがだねー。」
私が素直に褒めると、
「そうかなぁ?特に何もしてないんだけどなぁ?」
と首をかしげた。
あはは。クレイらしいよね!こういう所がカルマ35の所以だと思うんだ。
「ふむふむ・・・で、レベルがなな、と。本当にクレイ、ここ最近一気にレベルが上がったよね。」
ほんと私たちって冒険はいろいろしているのに、なかなかレベルは上がらないんだよね・・・。
とほほほほ・・・。

「ほっほー。クレイはレベル7ですか。さすがファイターですねぇ。」
キットンが鉛筆で頭をポリポリ掻きながら、こっちを見ていった。
うわあぁ・・・、汚いなあ。もう。
「でもよー、ルーミィ以外全員レベル5なのに、なんでファイターがレベル7な訳?一番率先して戦ってんのに、おかしくね?」
フテ寝していたはずのトラップが、体を起こしてこっちを向く。
「ふむ。確かに。トラップの言う通りです。なぜでしょうか?」
キットンもトラップの意見には賛成できるけど、納得が出来ないらしく、腕を組んでウーンと唸った。

「?????」
私には意味がわからない。
「なんで不思議なの?クレイ最近、すっごく強くなったと思うよ?あ。いや、前から強かったけどね。」
「ええ。クレイが強いのはみんな知ってますよ。でもそうじゃないんです。」
「だよな。なんでだ?」
トラップとキットンの言っている意味すらわからない私に、さらに意味不明な答えを返してきた。
強いけどそうじゃない?んん?どういう事なのー!?

私の頭が軽く、パニックになっていると、クレイがため息をついて
「それはきっと、昔の俺がモンスターを倒すのを躊躇ったり、逃げてばかりだったからだよ・・・。」
どよーん。と、明らかに落ち込んでしまった。
「ク、クレイ・・・。」
うっ。落ち込んじゃったじゃないー。
なんて声をかけるべきか、私が悩んでいると、
「ぎゃははははっ!クレイそれは間違ってます。」
キットンの馬鹿笑いに頭に響く。
「私とトラップが言ってるのは、そういう事じゃ無いんですよ。クレイが不甲斐無いだめだめファイターなら、我々他のパーティーのレベルが上がるわけ無いでしょう?」
そうでしょう?と念を押されて、私もクレイもノルもあいまいにうなずいた。『だめだめファイター』ってのが気になるけど・・・。
た、確かにそうかも。だってファイターが一番に逃げたりしたら、盗賊や詩人、ましてや農夫なんてクワ放りだして逃げ出しちゃうよね・・・。
納得した風の私たちを見て、キットンは続けた。

「クレイ、あなたのレベルが低い理由はひとつ!」
びしっ!と、クレイを指差す。おぉ!どこかの探偵みたいだよ、キットン!
「それはクレイ!あなたのクエスト不在率の高さですよ!!ぎゃはははははは!!!」

「・・・・・あ。」
「ぶふうっっ!!!」
「あああっ!!なるほど!」
「うっひゃっひゃっひゃっひゃ!!」

見ると、クレイは口をポカーンと開けたまま、固まっている。
ノルは噴出し、私は思いっきり納得!トラップは案の定馬鹿ウケ。
「考えてみりゃ、解ることだよなー。うっひゃっひゃっひゃ!あー、腹いってぇ!」
「そうだよ!キットンの言うとおりだよ。ヒールニントの時はリズーにやられてお留守番だったし、JBのダンジョンではオウムだったよね!」
「ありましたねー。オウム!!」
「あぁ!あったなぁ、オウム!ひゃー。なつかしー!」
「誰のせいだ!誰の!!」
「くれー、とりさんだったおう!」
「そうデシ。オウムさんだったデシ。」
「・・・・・・・。」
「そういえば、俺の肩で寝てた・・・。」
「・・・・・・・。」
「あっはははは!クレイ、そんな顔しないでよ?ね?」
「だぁ     !はらいて     !」
「パーティ唯一のファイター不在で、ホワイトドラゴンとブラックドラゴンに会いに行くとか聞いた事ありませんよ!」
「そういえば、最近サラさんの奇跡の花を取りに行った時も、クレイ牢屋に捕まってて行けなかったもんね。」
「そうです!そうです!グリーンドラゴンに会った時も、クレイ不在でした!」
「うひょー!クレイちゃん不幸すぎて、俺、腹割れそーだ!」
「くれー、ふきょーすぎだおう!」
「本当デシ。クレイしゃん、かわいそうデシ。」
「・・・・・・・。」
「クレイ、囚人服の似合ってたから・・・。」
「ノル。もうこれ以上、何も言わないでくれ・・・。」

「いやー。クレイの不幸っぷりは、素晴らしいですね!ファイターのレベルは7ですが、不幸レベル30は行ってますよ。」
「レベル30って、ジュン・ケイさん並って事!?」
「レベル30!!最強じゃねーか!クレイ!!すっげぇー。」
「えー!?不幸レベル30のファイターって、強いのか弱いのかわかんないよね。あはははっ!」
もうみんな言いたい放題。
「その点我々は、ファイター抜きで3頭のドラゴンに会って無事なんですから、なんて幸運なんでしょう!!」
「「「おおおぉっ!!!」」」
「本当だー。すごいね、私達。」
「おいおい。不幸レベル30のお方を目の前にして、私達は幸運なんて言ってやるなよな。ぶっぷっぷぅ!だっせー。」
もうみんな、笑いのスイッチが入っちゃって、止まらなくなっていた。

ガタンッ!!

急に大きな音がして顔を上げると、クレイが無言で部屋を出て行ってしまった。
あーあ。怒っちゃったよね、クレイ。さすがに謝りに行かなきゃ。
そう思って椅子から立ち上がろうとすると、トラップに止められた。
「いいーって。しばらくほっといてやれよ。大丈夫、大丈夫。」
根拠ゼロの大丈夫なんですけど・・・。全然大丈夫そうじゃなかったよ?
クレイの心配よりも、新しいいたずらを思いついた顔で、トラップの顔は輝いている。
「それよりさー。パステル、雑誌に載せる時不幸レベル30って書いとけよ!」
「な!?バカ!書くわけ無いでしょ?何考えてんのよ!」
おバカな事を言うトラップにあわてて反論すると、
「いいじゃないですか。あくまでも小説の登場人物なんですから、多少のフィクションは許されると思いますよ?」
キットンに続いて、ノルまで言い出した。
「うん。まるまるその通りにしなくても、いいんじゃないかな。」
「れべうさんじゅ-う!れべうさんじゅ-う!」
「クレイしゃん、レベル30デシか?すごいデシ!」
よく解ってない1人と一匹。
「ほら、ノルもルーミィもシロも言ってるじゃねーか。作家には、ちょっとした遊び心も必要だってな。」
「何?それ。」

トラップの言い分はよくわかんないけど、たしかに多少のフィクションは面白いかも。うん。
「よし。じゃあ、書いちゃえ!」
メモ用紙に、不幸レベル30と書こうとすると、
「やめてくれ    !!」
バッターン!と扉が開いて、クレイが真っ赤な顔で入ってきた。
あら。どっか行った訳じゃなかったのね。扉の向こうできいてたみたい。
「パステル!頼む!一生のお願いだから、書かないでくれっ!!」
両目に涙を浮かべながら、必死に懇願するクレイの横から、可愛い声がふたつ。

「ぱーるぅ。書かないんかぁ?」
「どうするデシ?」
「うーん、どうしようかなぁ。」
「頼む!この通りだ!パステル      !!」
床に頭を擦り付け、土下座までして頼むクレイと、周りでニヤニヤ笑っているパーティ。
ぐるりと見渡して、私は決めた。

「面白いから、書いてみようかな。」
その瞬間、床に突っ伏したクレイを見て、トラップは得意げに、
「お。クレイの不幸レベルが1上がったぞ。」
「おお!それはめでたいですね。レベル31ですか。レベルアップおめでとうの歌でも歌いましょう。さあ、クレイもご一緒に。」
そう言って、キットンとトラップとルーミィとシロちゃんは、輪になって歌いだした。

「レベルアップーおめでとうー!
 レベルアップーおめでとうー!
 レベルアップーおめでとうぉー!
 レベルアップーおめでとうー!」

1人打ちひしがれているクレイの肩をノルがポンポンと優しくたたくと、感動した様子で瞳を潤ませてクレイは、
「ノル・・・!ノルだけだ。俺の味方は!!」
ノルの手をしっかと握り返して、泣き出してしまった。そんなクレイに、ノルはいつもの優しい瞳のまま言った。

「クレイ。レベルアップ、おめでとう。」
その後クレイは一週間、パーティの誰とも口をきくことは無かった・・・。



おしまい。


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