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ゆうゆうかんかん 悠悠閑閑

悠悠閑閑へようこそ! 当ブログはフォーチュンクエストトラパス中心サイトです。 二次小説や日記などがメインの ブログ名のまま、のんびり運営です。 よろしければどうぞ!

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FQ長編SS 第六話です。
《第六話》



私の眼下には、色彩やかな新緑のズールの森。
生命力豊かに森を染める若葉達は、単色ではなく、黄緑、緑、深緑、薄緑、黄そして、光と影。
その全てがズールの森を美しいコントラストで埋め尽くしていた。
それはまさに、『春色の絨毯』のようで。
あまりの美しさにただ、呆然と見下ろす。
シロちゃんに乗せてもらった時に何度も見ている景色なんだけどね。
本当に綺麗。


夏には夏の。
秋には秋の。
冬には冬の。
四季折々の絨毯を敷き詰めるズールの森は、今、春真っ盛り。




そして。

ズールの森から西へと伸びる街道。
その遥か彼方には地平線とあの、ドーマのテラソン山が見える。
周りの山々に囲まれながら堂々と構えるテラソン山は、まだ白く雪化粧した優雅な姿で、
以前トラップのお父さんが言っていた通り、美しさと厳しさを併せた威厳にあふれていた。
なんて言ったって、ホワイトドラゴンの祭壇があるんだもんね!
威厳たっぷりで丁度いいと思う!
ドーマの町はさすがにまだまだ遠くて、ここからじゃ見る事は出来ないけどね。
でもこのまま飛んで行くと、そのうち見えてくるんだろうな。
クレイの家は大きいし、サラのあの豪邸なら空からでも見つけられるかもしれない。
そして、ドーマのずっと手前。
ズールの森から伸びる、細長く続く道を辿ると、小さな町が見えてきた。
エベリンなんかより、ずっとずっと小さな町。
ドーマのように、有名な観光名所もない。
そう。
私の故郷、ガイナ。


数年前。
モンスターに襲われ、壊滅状態に追い込まれたあの町で私は突然、孤児になった。
大好きな両親の最後を目にする事も出来ずに訪れた、突然の別れ。
誰があんな事が起こるなんて、予想出来ただろうか。



もしも・・・・・




万が一・・・・・




チャグデスの死の行進が、ガイナを襲わなかったら・・・・・?



あの日から何度も渦巻くこの想いは未だ、私の中で生きていた。
「・・・・・・・・」
「パステル?大丈夫?」
隣から涼やかな声が心配そうに私の名前を呼んだ。
「へ?・・・・・あ!うん!ごめんなさい、シュテナ。私、ボーとしちゃって」
慌てて声の主に謝る。
涼やかな声の主はさっきからずっと私の手を握り、身体を風に乗せてくれているシュテナという、風の精霊なの。
昨日、説明を終えたシュリさんは今すぐにでも出発しそうな勢いだった。
でもねぇ。
さすがに冒険者としてはきちんと準備して、出発したいじゃない?
だから、シュリさんにはみすず旅館で一泊してもらう事にした。
そして今朝、日の出と共に準備万端で集合した私達。
そこで私の旅のパートナーとして紹介された精霊が、シュテナだった。
風に乗るにはかなりコツがいるみたいで、魔法も使えない素人の私には到底無理な話。
だから精霊の力を借りて風に乗り、空を飛んで行くのだと言う。
もちろん。
クレイやトラップ達にもそれぞれパートナーの精霊がいる。
一応、説明しておくね。


クレイの精霊、シュウは一言で言うと小柄で無口。
でも、さむーいダジャレが大好きで、どこかのおじさんみたい。
トラップの精霊、シュッカはとっても陽気な性格。
悪戯が大好きで、出会ってすぐにトラップと意気投合していたもんね。
ルーミィはシロちゃんと一緒に、シュクトゥークという精霊が。
実はシュクトゥークは、シロちゃんがホワイトドラゴンだって事を見抜いちゃった。
でも、精霊相手じゃ仕方ないよねぇ。
優しい性格だけど、少しオッチョコチョイみたい。
ノルの精霊はシュシュン。
シュシュンはとーってもおしゃべり!
ひたすら話し続けるシュシュンの話をノルはニコニコと聞いてる。
最後はキットンだけど・・・・・・
私に言わせれば、彼は不幸としか言いようがない。
ま・・・・・。
その理由はもうすぐわかる。



キットンのパートナーの説明の前に、私のパートナーについて少し詳しく紹介しよう。
どちらかというと、女性的な印象を受けるシュテナ。
だけどシュリさん曰く、精霊に性別は無いんだって。
そしてフリッシュと同じ薄緑色の細長で綺麗な身体。
身長は私と同じくらいかな。
シルバーリーブの町で暴風を起こしたフリッシュは身長も小さく、言動も子供らしくって可愛らしい印象の精霊だったけど、シュテナは逆。
落ち着いた大人の女性みたい。
ただ・・・

「パステルの顔ってずっと見てても飽きないわねぇ。面白い顔」

「は、はあ。面白いって・・・・」
言い方に遠慮が無い。
それはそれは、気持ち良いくらいにね。
しかも、シュテナに悪気が一切ないから怒るに怒れない。
今も、「ふふ」と優美な笑顔を浮かべているもんね。
「だってパステルったら目をキラキラさせて地上を見ていたかと思うと、
遠くを見てニヤけたり、俯いて青い顔したり。気持ち悪いわよ」
うっ・・・・。
き、気持ち悪いって・・・・・。
まあ・・・でも確かに。
手を繋いで飛んでいる相手が、一人で勝手に百面相していたらそれは相当、気味が悪いだろう。
でも、でも!
それを正直に言うかなぁ!しかも本人に向かって。
        む。
本当にいい性格してるよ。シュテナ。
「でもパステル。もう少し『飛ぶ事』に集中して欲しいわ。
あなたの様に魔力のカケラも無い人間を飛ばすのは結構大変なのよ。
まあ。『彼』のように喚き暴れないだけマシだけれど」
ため息混じりにそう言った風の精霊、シュテナの視線の先を追うとそこには




「うぎぃゃああああああああああああ~~~~~!!」




朝日が輝く晴天の空を真っ二つに裂くような、キットンの絶叫が響き渡っていた。
幸か不幸か。
いや。
断然、不幸だなありゃ。
キットンのパートナー、風の精霊シュージィはとてつもなく、悪戯が大好きだった。
その悪戯ぶりは、トラップのパートナーのシュッカの遥か上を行く。
なんせ、手を繋いで飛んでいたかと思うと、いきなり手を離すんだよ!?
もちろん自力で飛べないキットンは問答無用で、急降下。
地面に向かって、まっさかさまだ。
これを見たときはさすがに、キットンの最後を覚悟したもんね。
でも、それをシュージィはゲラゲラ笑いながら追いかけてキャッチする。
上下にホバリングしたり。
キットン、やられたい放題。
だから、あの絶叫も仕方ないと思う。
かなりウルサイけどね。
実は、私もシュテナに手を引かれて初めて飛んだ時は大絶叫した。
いつもシロちゃんの背に乗せてもらう時は、シロちゃんの暖かい大きな身体の上に乗ってるわけでしょう?
白いふわふわの長い毛で身体をしっかり括り付けるしさ。
でも、自分の身体だけで浮くってすっごく、心もとない。
安定感が一切無いし、『飛ぶ』という感覚が私には一切理解出来ない。
シュテナに全身の力を抜いて、風に乗って飛ぶんだって言われても、風なんて見えないもん。
見えないものに乗れるわけがない。
もう、怖くて怖くて叫びっぱなしだったんだよね。
でもシュテナに冷ややかに、


「五月蝿い。あなた、このまま叫び続けるなら落とすわよ?」



そう言われてしまったら・・・・不思議と落ち着けた。
今もおっかなびっくりだけど、あれこれ考え事をしながら飛んでいられるまでになったもんね。
シュテナにはもっと、飛ぶ事に集中しろって怒られたけどさ。
だから、キットンが不幸で可哀想で気の毒で堪らない。



あれこれ考え込んでいる間に、ズールの森はいつの間にか通り過ぎていた。
そして、私の真下にはガイナの町。
上空から見下ろしているせいか、本当に小さい。
でも、私の大切な故郷。
再び湧き上がった渦巻く感情を、心の中で苦い思いで噛み締めた。
・・・・わかってる。
わかってはいても、何度も、何度も夢見た過去の夢。
私の望んだ『過去』が訪れる事はなかったけれど、それでもやっぱり夢見てしまう。
もう一度、あの人たちに逢いたい。と。



第七話

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