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ゆうゆうかんかん 悠悠閑閑

悠悠閑閑へようこそ! 当ブログはフォーチュンクエストトラパス中心サイトです。 二次小説や日記などがメインの ブログ名のまま、のんびり運営です。 よろしければどうぞ!

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《特別な人》


「トラップ。出来ましたよ!例の薬です。」
いきなりキットンに差し出された小さな飴玉。
「何がだよ。」
例ってなんだよ?
薬なんて頼んでねぇし。
第一、そんな怪しい薬誰が飲むかっつうの!
「一ヶ月ほど前に言いに来たじゃないですか。鈍感が治る薬が欲しいって。」
「鈍感・・・・?あっ!」
思い出した。
それは、今日から一ヶ月も前の話。


******


「なあ、キットン。」
その日、俺は気まぐれでキットンに話しかけた。
「・・・・・なんですか。今忙しいんです。」
こっちをチラリとも見ずに、机に向かって何かを調合しているキットン。
ま、返事があるだけ今日はマシか。
「例えばさぁ。鈍感が治る薬とか作れねぇの?」
冗談9割、本気1割。
本当にあればいいと思ってるわけじゃねぇけど、もしも・・・と考える。
あいつがもしも鈍感じゃなければ、どうなっていたのだろう・・・と。
「鈍感・・・・ねぇ。あなたはそんな薬に頼りたいと本気で思っているのですか?」
キットンは試験管を目線の位置に掲げて、少し振りながら呟いた。
俺を試すような言い方のキットンにも、今は腹が立たねぇ。
「んー・・・。いや、なんとなくそう思っただけ。」
本当にそう思っただけだ。
キットンにそんな薬を作って欲しいと頼みに来たわけじゃねぇから。
「そうですか。では邪魔なので出て行ってくれませんか?」
・・・・・冷てぇ奴だな。
「わぁーったよ。」
キットンに聞いてもらって、俺の気も済んだし?
今日は素直に出て行ってやるよ。
この話は今日限りでお終いだ。
きっと、キットンの奴も数分後には忘れているだろうしな。



******



パステルからバレンタインのチョコを貰った後、キットンに呟いた俺の愚痴。
キットンの奴、覚えてたのか。
「今日は丁度ホワイトデーですし、パステルのプレゼントに使ってみてはどうですか?」
怪しく差し出された薬は、どう見ても綺麗な飴玉にしか見えなかった。
「それであいつの鈍感が治んの?」
嘘くせぇ。
「多分ですけどね。即効性はありますが、持続時間は数分だと思います。」
数分・・・か。
数分あれば十分に鈍感が治ったかどうか、試す時間には十分だ。
「ふーん。」
キットンから飴玉を受け取って一応確認を取る。
「死んだりしねぇよな。」
「毒薬じゃないんですから、死んだりなんかしませんよ!失礼な!」
キットンは心外だ!と、プリプリ怒りながら去っていった。
ま。せっかくだし?
いっちょ試してみるか?


「パステル、これやるよ。」
握り締めたままだった飴玉をパステルに差し出す。
「私に?」
自分の部屋で小説を書いていたパステルに
「ほら。今日はホワイトデーだろ?」
そう、もっともな理由を付けて押し付ける。
「あっ、そっか。ありがとう!」
疑う事もなく、素直に受け取るとそのまま口に入れた。
「あまーい!!不思議な味だけど美味しい!ありがとう。トラップ!」
にこりと嬉しそうに笑うパステルを真っ直ぐに見つめる。
「なぁ、パステル。」
「ん?なあに?」
さて。
効果が現れるか否か。
「バレンタインの時、俺の為に特別なチョコを作ってくれて嬉しかった。」
キョトンとした顔のままのパステル。
その横で机に腰を下ろす。
「ビターチョコの事?」
「そ。自分が特別だと思ってる奴からの特別扱いだったからな。」
「特別・・・・」
俺の言葉を一人、口の中で繰り返したパステル。
このまま「何が特別なの?」とでも言われれば、薬の効き目は嘘になる。


だが。
静かにパステルの瞳が大きく見開かれ、その口から発せられたセリフは。
「私がトラップの特別・・・・って事?」
「っ!!」
通じたっ!?
一気に俺の胸が高鳴る。
嘘だろ!?
本当に鈍感が治ったのかよ!?
ドキドキと五月蝿い心臓を押さえつつ、落ち着けと自分に言い聞かせる。
でも・・・
俺の想いがついに伝わったのかと思うと、胸の奥から熱く込み上げてくる感動は抑える事が出来なかった。
素直に俺の胸に沸く「嬉しい。」という感情。
秘かに想い続けた年月を思うと、それだけで胸が一杯だった。
やべ・・・。
泣きそうだ。
パステルはさっきよりも赤みを帯びた頬と、少し潤んだ瞳で俺を見つめている。
「トラップ・・・それって、トラップが私の事を・・・きゃっ!」
最後まで聞かずにパステルの体を引き寄せ抱きしめた。
そして耳元で伝える。
「好きだ。」
ぎゅっと唇を噛んでたった一言。
ずっと、胸に仕舞ってきた想いを口にする。
言ったと同時に、俺の目から一粒の雫がこぼれた。
ダサいと思う。
格好悪りぃ。
男が泣くんじゃねぇよ。
いろんな想いが交錯しながらも、決して曲がらない俺の心。
それは、
こんなにもパステルが好きだと言う気持ち。
想いを口にしただけで涙がこぼれる程、俺はこいつが好きなんだ。
大切にしてきた想い。
いつの間にか、こんなにも大きく育った感情。
「トラップ・・・・」
腕の中のパステルが優しく、俺の名前を呼ぶ。
「トラップ、私、今までどうして気付かなかったんだろう。不思議なくらいトラップが好き。
知らない間に私もトラップが特別になってたみたい。」
そう言ってパステルの腕が俺の背中へ回る。

きゅっ。

優しく抱きしめられた。
目頭が熱い。
グッと我慢しても、再び静かに涙がこぼれた。
今度は止まることなく。
ただひたすら溢れ流れて行く。
大切なパステルへの想いと共に。


END

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