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ゆうゆうかんかん 悠悠閑閑

悠悠閑閑へようこそ! 当ブログはフォーチュンクエストトラパス中心サイトです。 二次小説や日記などがメインの ブログ名のまま、のんびり運営です。 よろしければどうぞ!

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《虎トラブルトラップ!!》


新しい年を迎えて3日目の朝、事件は起きた。




「ぎ、ぎぼぢわるぃ・・・・み、みず・・・。」

この世のものとは思えないような声を絞り出してリビングに現れた人物。
顔は土気色だし、口元を常に手のひらで抑えている・・・『抑えてないと、何か出る。』そんな雰囲気。
それにいつもの身軽さはどこへやら。
足取りは重くフラフラだし・・・・これは明らかに二日酔い。

いや。
彼の場合、二日酔い処ではない。
大晦日から飲み続けてるから・・・・四日酔いかな?

今にも倒れそうな彼の心からの願いを聞き入れるべく、コップに冷たーい水を入れて差し出す。
ま。実際さっきまで倒れてたんだけどね。彼は。
「ほら、お水。トラップ大丈夫?」
やっとの思いでソファーに腰を落としたトラップは、虚ろな目線を泳がして水を捉えるとのろのろと手を伸ばしてきた。
あぁーあ。
今回の二日酔いは相当ヒドイ。
「トラップ、キットンにお薬貰ってきた?」
キットンの薬はよく利くみたいで、時々トラップがお世話になっているのを私は知っている。
「・・・・まだ・・・・水・・・おがわり・・・。」
うぇっ。と口を押さえながら差し出されたコップを受け取りながら、
「ちょっと。吐くならトイレに行ってよ!?」
そう注意しても、力無く帰ってきた返事は
「む・・・むり・・・水・・・」
だった。

もう。仕方ないなぁ。
トラップに水のおかわりを渡すと、私は階段へと向かう。
キットンに薬を貰う為に。
「トラップ。キットンにお薬貰ってくるから、そこで待っててよ?」
トラップの後ろ姿にそう声を掛けると、
「ぐぇ・・・。」
はぁああ。
なんとも情けない返事・・・・。




「キットン入るよー?」
コンコンとドアをノックして覗くと、机に向かってブツブツ言っているキットンがいた。
「ねぇ。トラップが二日酔いの薬が欲しいんだけど・・・キットン?」
さっきから話しかけているのに返事が無い。
キットンはずーっと、ブツブツ言って何かの薬を調合中みたい。
「ちょっと!キットン!聞いてるの!?」
肩をゆさゆさ揺らしてやる。
「わっ!?いきなり何するんですか!調合が・・・!!」
キットンの文句は続いてるけど、トラップの容態も一刻を争うんだから!!
(ただの二日酔いだけどね。)
「トラップが二日酔いでしんどいから、いつもの薬が欲しいんだって。ある?」
「なんですか!?そんな事で私の大切な実験を邪魔しないでください!
・・・まったく。そろそろ取りに来る頃だと思ってちゃんと用意してありますよ。
そこにある黒い丸薬がいつものです。トラップに渡してください。」
そう言って、机の隅に置かれた黒光りした丸薬を指差した。

「わかった!ありがと、キットン。」
薬を受け取ってドアに向かうとキットンに呼び止められた。
「パステル!酔いがひどい様ならトラップに、10粒くらい飲むように言ってください。」
「・・・・わかった。」
こんな不味そうな薬を10粒も?
私は絶対ごめんだけどね・・・・。




「トラップ、薬貰ってきたよ?」
リビングに戻ると、ソファーで相変わらずぐったりとトラップが倒れていた。
「・・・・トラップ?生きてる??」
コップに水を汲んでトラップの顔を覗き込むと、うっすらと目が開いた。
恨めしそうな視線で見上げてくる。
でもそんな目をしても、自業自得だもんね。
飲みすぎたあんたが悪いんでしょうーが。
「はい。キットンからお薬貰ってきたよ?10粒飲んでだってさ。」
薬と水を差し出すと、一気にトラップの目が見開かれた。
「じゅうっ!?・・・・・・おぇっ・・・」
気持ちはわかるけど、彼の行動に同情の余地は無い。
「そ。ほら!飲んだらすぐに楽になるんでしょ?一瞬の我慢なんだから頑張って飲んで!」
そう励ますと、渋々と体を起こして私から薬を受け取って口へ放り込む。
次の瞬間、私から水を奪い取ると一気に流し込んだ。


ゴクゴクゴク・・・。


「うえぇっ!クソまずっ!!うげぇぇぇ!」
流石キットンの薬は即効性があるのか、顔色が一瞬で良くなったのがわかる。
薬であの二日酔いが治るんだもん。
美味しくない事くらい、仕方ないんじゃないかぁ。
『良薬口に苦し』って言うもんね。
そんなトラップの様子を見守っていた私は、ある異変に気がついた。
「トラップ・・・?頭に何付けてるの?」
そう。
トラップの頭から黄色い丸いフワフワした物が現れて、ピクピクと動いている。
「あ??頭ー?」
そう言って自分の頭を触ったトラップの顔が固まる。
たぶん・・・・トラップの頭から耳が生えている。
信じられないけど。
あまりの出来事に時間が止まったんじゃないかと思うくらいの静けさが訪れた。


「ぱぁーるぅ!たらいまだおぅ!!」
元気一杯のルーミィの声で2人とも我に返る。
次の瞬間、みるみるとトラップの体が縮んでいった。
な!?何が起きてるのー!?
「ぱーるぅ?いないんかぁ?」
ひょっこりとドアから顔を覗かせたルーミィを呆然と見つめる。
「どーしたんら?ぱーるぅ。」
「パステルおねぇしゃん、どうしたデシか?」
2人の後ろからクレイとノルも「ただいまー。」と顔を出した。
その間もどんどん縮んでいくトラップ。
今や大きさはルーミィくらいになっていて・・・・しかも、全身からふわふわした黄色毛が・・・・
「パステル?そんな顔して何かあるのか?」
わらわらとみんながリビングに入って来てソファーに集まった頃には、トラップの大きさはシロちゃんよりも小さくなっていた。

「パステル!?なんなんだこれは?モンスターか?」
「かわいー!ぱーるぅ!!この子、なんて言うんだぁ?」
「・・・かわいいな。」
 
全身黄色い毛に覆われて黒い縞模様。
ふわふわの可愛い耳を付けて、うしろからは虎模様のしっぽも・・・・。
頭の髪の毛の部分だけは、彼のトレードマークでもある赤毛のままなんだけど。
そう!
まさに虎!!
・・・・大きさはかなり小さいけど。モルモットくらいの大きさかな。

「ト、トラップ!?どうしたの一体!!??」
そう叫んだ私の言葉に、クレイとノルの目がぎょっ!と見開かれる。
「トラップだって!?コレが!?何が起きたんだ?」
「トラップ・・・かわいいな。」
「とりゃー?ぬいぐるみみたいだおう!」
「トラップあんしゃんの匂いがするデシよ!」
鼻をくんくんと『虎トラップ』に向けてシロちゃんは嬉しそうにしっぽを振っている。
ルーミィが嬉しそうに近づいていく。
「ばかっ!ルーミィ!くるんじゃねぇーよ!」
虎トラップから焦った叫び声が聞こえる。
その声もかなり小さくて聞き取りづらい。
しかも、虎トラップは危うくルーミィに踏まれそうになっていて・・・・。
わわわ!
本当に危ないよ!
必死にちょろちょろと逃げ回っているから私達の足元を走るたびに、私達のバランスも崩れてしまいそうでトラップを踏んでしまいそうになる。
ノルに踏まれたら、ぺっちゃんこになっちゃうよ!

「トラップ!危ないから!!踏まれる前にこっちにおいで!」
そう手を差し伸べると、虎トラップは一目散に私の腕を駆け上って左肩に止まった。
いつもトラップがシロちゃんを肩に乗せているのと同じ場所。
「はぁっ!はぁっ!」
私の耳元で虎トラップの荒い息が聞こえてくる。
そんな虎トラップに恐る恐る声を掛け来たクレイ。
「本当に・・・トラップなのか?また、魔女に呪いをかけられたのか!?」
クレイの言葉に『フーッ!』と全身の毛を逆立てて
「ちげぇーよ!!犯人はあいつだ!キットンの薬のせいだっ!!」
「はい?私がどうかしましたか?おや。トラップの様子を見に来たのですが出かけたのでしょうか?でも変ですねぇ。さっきのはトラップの声だとおもったのですが?」


その声に全員が一斉に振り返る。
((((コイツガハンニンカ・・・))))
あまりの反応にキットンも驚いたらしく、
「はい?どうかされましたか?それにしてもトラップも懲りませんねぇ。酔いが治ったらまた出かけたのですか?」

「ふざけんじゃねぇー!!!」

トラップの叫び声が響き渡った。
「おや?トラップはどこですか?声はしますけど姿がありませんね。しかも、声もいつもより迫力に欠けてますし。」
「おまえ!!いい加減にしろよっ!?変な実験ばかりしやがって!懲りてねぇのはそっちだろーがっ!!」
「パステル。貴方の方から声がするのですが、トラップは一体どこに居てるのですか?」
「・・・・・・ここ。」
ちょん。と私の指差した先を見たキットン。

わなわなと震えていたかと思うといきなり、
「素晴らしいぃぃぃ!!」
と叫びながら私に飛びついてきた。
「きゃー!?ちょっと!キットン!くっつかないでよ!」
「うわっ!?パステル!!動くな!」
慌てて避けようと動いたものだから、肩に乗ったままの虎トラップの焦った声。
トラップを落とさないように手のひらで受け止める。
「「あ、あぶなかったぁー。」」
ほおぉー。とトラップと安堵のため息をついた横から、
「パステル!そのトラップを私に渡してください!!これは素晴らしいです!!しっかりデーターを取らなければ!!さあ!私の実験室に!!」
キットンの馬鹿でかい声が響く。
「う、うっせぇー!!!俺の耳にはおめえらの声はでか過ぎるんだよ!!耳がいてぇっ!」
両手・・・いや前足?で耳を塞いで、本当に辛そう。
「ほほう!やはり、動物ですからね!耳が人間の時よりも良いのでしょう!他はどうですか!?視力などは上がってますか!?」
まだデーターを取ろうとするキットンに、ついにクレイがキレた。
「キットン!!そんなことよりも解毒剤を作って来い!!さっさとトラップを元に戻すんだ!」
そう言ってクレイはキットンをリビングから放り出した。
「・・・・ったく!」

手をパンパントと叩きながらクレイは、少し小さめの声で虎トラップに話しかけた。
「トラップ、とりあえず元に戻る方法が分かるまで何かと大変だろうから、俺が面倒見てやるよ。」
そう言って私がしていたみたいに、自分の肩に虎トラップを乗せるとトラップが悲鳴を上げた。
「たっけぇー!クレイ!お前でか過ぎる!地面が遠くて怖い!!」
「ええぇー!?そんな事言われても身長は仕方ないだろ?」
「あほか!俺が落ちたらどうすんだよ!?パステルの方がいい!降ろしてくれ!」
必死にクレイの肩に爪を立てて捕まっているのか、クレイの顔が痛そうに歪む。
「はあぁ。・・・・パステル、こいつの面倒頼んでもいいか?」
「へ?あぁ。いいけど、私でいいの?トラップは。」
そっと、クレイから虎トラップを受け取りながら小さな声で聞く。
「おめぇが一番いいの!ノルやクレイはデカイし、キットンには何されっかわかんねぇし、チビ達にはおもちゃにされるのが目に見えてる!だからお前が一番安全なわけ。ま、そんな訳で頼むわ!」
こんなサイズのトラップならいつでも大歓迎だけどね。
「うん。了解!よろしくね。」
ふふふ。
本当に可愛い!
憎まれ口は変わらないけど、容姿が可愛いから迫力が無いんだよね。
可愛いって言ったらトラップは怒るだろうから言わないけど、ユラユラ揺れるしっぽやピクピク動く耳が堪らなく可愛い!!

しばらく一緒にいれるみたいだし、猫じゃらしでも探してこようかな?
「そう言えば二日酔いは?大丈夫なの?」
「・・・・・大丈夫みてぇだな。」
「「・・・・・・・・。」」
あの薬は一体、なんの薬だったんだろう。






******


「へ?あの時の薬ですか?あれはですねー。きっとあの時開発中だった『今年の主役になれる薬』と『二日酔い』の薬が混ざったみたいですねー。今年は寅年ですから。ま、彼自身そんなに悪い薬でもなかったんじゃないですか。結構楽しんでたみたいですから。でもあの薬は失敗作ですね。来年こそは成功させたい思います!」



おしまい。


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